8話 発覚
軽い好奇心で聞いた話は決していいものではなかった
事の発端であるエリィが売られたことに関しては仕方がないことだと思うし本人も理解していた。
だがそこから続く話はおれにとって不愉快でしかなかった。
閉じ込められた施設で同じ行動をひたすら繰り返す毎日、そして“巫女”として祭り上げられ1人ぼっちになった孤独感、4・5歳の子が送る日常では決してない
“巫女”に選ばれた彼女はこの依頼の到達点である場所で『生贄』として死ななければならないと聞いた時にはフザケルナと叫びたくなった
しかも驚いたことに生贄にはおれたちも数えられていた
(くそがっ、ジョークのはずだったが…悪い予感は当たるもんだな)ビンゴじゃないか…
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語り終えたエリィはおれの横で泣いていて嗚咽が聞こえる
(10年も我慢していたのか…、そりゃあ無表情な顔にもなるはずだ)
自分がいつ死ぬかなんてわかりたくもない
(こりゃあ、動かないと男じゃねぇな…)
こんな少女が泣きながらつらい過去を話したんだ、助けるっきゃないっしょ
「…それで?ここまで話したんだ。そんな糞ったれな運命に抗ってみないか?」
「…えっ?」
おもいもよらない問いかけにエリィは泣くのをやめる
「助けてやるよ。心配すんなって、ここまで来て無視できっかよ」
「……の?私…助かるの?」そう聞くエリィの顔は涙や鼻水でぐしゃぐしゃになっている
安心させるようにおれはいつものような笑顔で励ます
「ああ、だからそんな顔すんなって。笑ってたら美人だぞおまえ」
「……うんっ、ありがとうっっ」
涙でぬれていたが今度のは無表情ではない明るい顔だった
このとき、離れて寝ていたはずの男たち5人のうち一人少なかったのだが、エリィは泣き疲れてそのままジークに寄りかかる形で寝てしまい、ジークも起こすわけにいかずにその場を離れなかったため気づくことができなかった……
~朝~
「なn“サッ”むぐ!?」
昨夜の話と自分たちが置かれている状況を3人に話すと反応はそれぞれで
『マジっすか!?』『そういうことだったか…』(ロイズ・部下の順)
坊ちゃんは激怒して大声を出そうとしたので素早くおさえた
察した坊ちゃんは興奮しながらも小声になって尋ねてきた
『じゃあなんですぐ俺達に言って逃げなかったんだよっ!?あの女を連れて逃げればすむ話じゃねーか』
「……あっ」おもわず素の声が出た
(そうすりゃよかった!!…でもあの状況じゃ寝るしかなかったし…)
などと焦りながら言い訳を探しているおれをゴミを見るような視線が集まり三人は同時に
「「「…バカが(ッス)」」」グッ…なにも言えない
「じゃあ朝まで待った理由は特になかったんだな」
「そうです…」
坊ちゃんは“ハァ”とため息をつくと部下に「あいつら縛っとけ」と命じる(…なんかムカつく)
男たちの捕縛をB&Bにまかせているとロイズが話しかけてきた
「まさかこんなことになるなんて…、でもそのエリーナって子も大変だったんスね」
「ああ、たまったもんじゃないだろうな」
と二人はジークのすぐ横で寝ている少女を見る、…よく寝てる
するとB&Bが戻ってきた、何かおかしい…
「おいっ!どういうことだ!!ひとり足りねぇぞっ」
その言葉に全員に緊張が走る
(まずい、ばれてたかっ…)
あの時すでに聞かれていたのかもしれない、とすると仲間に連絡でもしていたのか…
「おいっ、起きろエリィ!!みんなっ用意しろ!」
ゆっくりしてる場合ではないので強引にエリィを起こす
「どうしたの…?」
まだ顔がトロンとしているが状況を察して聞いてくる
「きのうの話が聞かれてて仲間を呼ばれてるかもしれない。さっさと逃げるぞ!」
手を引いていっせいに走り出そうとすると「まってっ」とエリィに止められた
「時間がないっ、急げっ」
「あの人たちは私がどこにいるかわかるようにしてる、…一緒に逃げるのは危険」
「じゃあどうすんだよ!もう時間がないんだぞッ」
坊ちゃんの言葉にエリィの顔に影がさす、そして決心したように顔を上げた
「私がおt「おまえらは三人で行けっ、俺が連れていく!!」ッでも…」
「“俺が連れていく”っておまえはどうするんだよっ?」
おれが犠牲になるような行動に坊ちゃんは異を唱えるがロイズはすぐにうなずく
「そっちのほうが得策ッス、行きましょう!」
「得策って、いいのかよ!」
「ジークさんなら大丈夫っス、むしろ自分たちは早く逃げるッス!!」と走り出すロイズ
ロイズの言葉がよくわからず戸惑っていた坊ちゃんだったが「チッ」と舌打ちをするとあとを追うようにして部下と走り去って行った
「おれ達もいそぐぞっ」
おそらく次、バトルが入ります