同情なんてすんじゃねえよ
魔王城
そこはとても異質な空間だった。
天井はどこまでも続くような高さで、廊下を歩いていただけで感じられる圧倒的な支配感と恐怖、これは今まで感じてきた何よりも刺激が強かった。
「座れ」
俺は大きな玉座の前に座らされた
「魔王様、こ奴が侵入者です」
「ほう」
俺が顔を上げるとそこには圧倒的強者と言わんばかりの風貌をした女がいた。
(え、女だったの?声が低いから男かと思ったけど、、、でも美人魔王は嫌いじゃない)
俺は少しにやけそうになったが必死にそれを我慢した
「あの、すいません本当に僕何にも知らなくて…」
「黙れ!!誰がしゃべってよいといった。ここは魔王様の御前だぞ」
「すいません」
「まあいいセンリュウ。そしてお前、われの前に一人で来たということは勇者だな?」
(どうしよう。ここで勇者だと言ったら殺されるだろうし、でもこの人にうそをついても絶対にすぐ見破られそうだし)
「なんだ、違うのか?」
「はいそうです私は勇者です」
「勇者だと、ならばここで切って…」
センリュウが剣を構えた
「センリュウ。引っ込めろ」
「すいません」
センリュウは下がり、剣を引っ込めた
(あっぶねえ、下手なことを言ったらまずいなあ)
俺は緊張で汗だらだらになりながらも続きを言った
「ですが私はここにあなたと友好関係を築きに来たのです」
「友好関係…だと?」
「何をぬかすか、われらは魔族。その敵である勇者と手を結ぶなど絶対にない」
「センリュウ、われは話を遮られるのが好きではない。お前はいったん下がってろ」
魔王は鋭い目つきで言った
「す、すいません魔王様。ですが下がるというのは、、、」
「なら黙っとけ」
センリュウは何も言わずにうなずいた
「それで、勇者なのにお前は友好関係を結びたいんだな?」
「はい、そうです。私は確かに勇者としてこの世界に召喚されましたが、私を召還した王は私をただの自分の使い捨ての駒として利用しようと考えていました」
「現に私が金貨百枚と言われてもらったこの袋には金貨十枚と銀貨5枚それと銅貨20枚しか入っておりませんでした」
「ですから私は国王のために働くつもりなど毛頭なく、ただ自分自身一人で生きようとしているわけであります」
(よし、なんとかそれっぽい言い訳ができた)
「なるほど…人間族め、勇者に金貨百枚も与えれないとは相当力が弱まっていると見えるで、それでなぜわれらと友好関係を築くのだ」
「それは、戦争のない平和な暮らしをしたいからです。魔王様と今友好関係を結んでおけば心強いうえ、人間族にはないその聡明で寛大なお人柄で私が望む世界の平和を一緒に作れると思ったからです」
「なるほど、世界平和か。それは我も長年望んできたことだ」
魔王が自分に賛同してくれたため、俺は少し安堵した
「だがな、勇者よ。世の中自分の利益だけで動いてくれるほどやさしくない。そなたも何か我らにそれ相応のものを渡さなければ」
(きた、交換条件だ)
俺はもうすでにそこまでは想定済み、そしてそれへの最適解も用意していた。
「それは私の能力ではどうでしょうか」
「そなたの能力か」
「はい」
(俺はあくまでも勇者。魔王が納得するぐらいの能力値はあるだろう)
「ふん、ならばそこにあるあの赤い宝珠に触れてみろ」
俺の後ろには赤く光る丸い宝珠があった
「分かりました」
(これで何をするつもりだろう)
俺は少し怪しみながらも触れてみることにした。
パアッと赤い球が少し光ったかと思うとそこには数字と文字がいろいろ書いてあった。
「ほう、お前の名前は、粕井健司そして能力は
武力20
魔力10
知力20
どれも最底辺の数字だ…」
魔王は驚きを隠せなかったのか、目をまん丸くしたまま止まってしまっていた。
「スキルは
発見
発明
どちらも聞いたことのないスキルだな」
「俺の、勇者の能力が最底辺の数字に聞いたことのないスキル、だと、、、そんな」
魔王は少し黙った後口を開いた
「ま、まあ別にどこにも勇者は必ずしも最強とは書いてないからな、うん、まあそんなこともあるさ」
(へ、今俺魔王に同情されてる?もしかして?)
「はは、ははは俺の、俺の無双最強異世界ハーレム計画は!!!どこに、どこに行ってしまったんだ」
俺は悲しみと悔しさを隠せずその場で号泣してしまった
「おいおい、大丈夫だって。まあ少なくとも私たちに危害を加えることはなさそうだし、まあ仲良くしといてあげるよ」
(魔王様があんなにやさしく励ましてあげてるの初めて見た)
センリュウは思った
「危害を加えないんじゃなくて加えれないんですよお」
そういい、俺は泣きながら魔王城を後にした。




