本当に俺って強いのか?
俺は魔王討伐に出向くため、魔王城への地図を王様からもらい早速出発することにした。
「え~と、とりあえずこの街をぬけたさきの洞窟に行けばいいのか」
俺は地図を見ながら今後の予定を決めることにした
まず地図には分かりやすく通らなければならない道、倒さないといけないモンスター、そしてその間にある中継地点の説明が書いていた。
俺はとりあえず金貨100枚がどれくらいの日にちもつのかを道行く人に聞いてみた。
情報によると、金貨一枚で一日は余裕で持つらしい。ほとんどの人は銀貨五枚で一日をやり通すらしいが、一金貨は銀貨十枚らしいのでおおよそ200日が限度と考えた。
「やっぱ俺は研究者だからなあ、どうしてもスケジュール管理から始めてしまう癖は抜けないな」
俺は本当は国を出てすぐに魔王城に行くつもりではあったが、やはりプランを最初に立てておくのが何においても鉄則ということで、とりあえず最初の一日はプラン決めから始めることとした。
そうして町の人々に聞いてゆくうちに銅貨10枚で銀貨一枚ということもわかった。
そして最新の防具や剣も一式そろえて金貨二十枚ということが分かった。
「なるほど、金貨百枚はなかなかの価値だそうだな」
ひとまず休憩していると、突然乞食の様な子から声をかけられた
「すみません、私たちに少しお布施をしていただけませんでしょうか」
その子の目は暗く、お腹は今にでも破裂しそうなほど膨れていた。
(学会で聞いたことがある。本当に何も食べられていない子たちは自律神経の乱れや、ストレスによって胃酸やガスが出すぎて逆にお腹が膨れてしまうと)
俺はあまり人をただで助けたりするのは好きじゃない。
その人のためにもならないから。
ただ、この子供は働こうと思っても働けないし、今俺にできることは少ない。
それにまず、これはこの子が悪いわけではない。
「分かった。ただし金貨一枚だけだぞ」
「金貨一枚、そんな、いいんですか?」
「ああ、ただし今日でその一枚を使うのではなく、余ったお金は貯金か投資するんだぞ。
経済学の観点からホームレスのほとんどがホームレスのままなのはその日もらったお金を酒やギャンブルに…」
「分かった。ありがとうおじさん」
その子は俺の経済学の話など全く興味なく、金を早くくれと言わんばかりの身振りをしていた。
(まったく。でも、まあいいか。俺も元は教育者、困っている若者を助けれるなら本望だ)
「待ってろ、いまだしてやるからな」
俺がもらった袋に手を突っ込むと、
「あれ?」
袋が異様に軽い。
もしやと思い袋の中を見ると
「やっぱなあ」
そこには金貨数枚と銀貨数枚、あとはほとんどうまく削られたただの石だった。
まず城を出てから俺はすぐに違和感は感じていた。
いたるところで人間が飢えで苦しんでいた。
ある人の周りにはハエが群がり、ある人は道のど真ん中で倒れていた。
だが人々はそれに目もくれず、平然と暮らしている。
それがこの国での日常なのだろう。
だから俺が金貨百枚の価値を聞いたとき、明らかにそんな大金を見ず知らずの急に表れた勇者に払う余裕があるとはとても思えなかった。
そして金貨をもらった直後、
「あ、その袋は城を出てから開いてください、城で金品を出すのはこの国ではマナー違反で」
王は金や銀でちりばめられた宝石をたくさん身に着けているのに。
あからさまにうそを言われたと気づき、俺はすでにそんなこともあろうかとお金がない場合の対策もしっかり考えていた。
「はい金貨一枚」
「ありがとう」
俺はとりあえずその子に金貨を渡し、改めて何枚ずつ金貨と銀貨があるか数えた。
結果
金貨十枚
銀貨五枚
銅か20枚
「ははは、金貨百枚とは程遠い額だな」
やはり王は俺を歓迎なんてもともとしていなかったんだ。
第一に衛兵をつけるといってもおそらくそこら辺の農民を無理やり連れて行くつもりだったのだろう。
今思えば俺が一人で行くといったとき、少しあいつの顔から笑みがこぼれていた気がする。
「整理すると俺が魔王を倒すまでのタイムリミットは、単純計算で21日程度ということになるな」
(まあたとえ21日しかなくとも俺ならこの無双パワーでパパっと倒せると思うが)
それが今となっては一番の俺の見落としていたところだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「はあ、はあ、おかしくないか?俺には勇者の無双パワーがあるはずなのになぜ今までのゴブリンや、ケンタウロスにこんな苦労してるんだ」
俺は道中地図に書いてある通りに魔王城へ向かっていたが、そこで出会う雑魚モンスターや中ボスモンスターたちに幾度も殺されかけた。
「ほんと、もう生き延びるのがやっとだったぜ」
俺はほとんど息切れしている状態で言った
「結局ゴブリンは村の兵士たちの手伝いを借りたし、ケンタウロスは俺が10日かけて作った落とし穴のトラップで仕留めたし。ほんと、何にも勇者らしいことできてない」
「ほんと、村の人たちが親切でよかった、もし手伝ってくれていなかったら今頃俺は…考えたくもない。そのせいで村に美女はいたものの恰好悪いところを見せるだけの羽目になったし」
俺がぐちぐち文句を言っているうちに魔王城が見えてきた。
「あれが、魔王城か。今までのモンスターたちにあんなに苦労してきたのに、魔王なんて倒せんのか?」
そういうと突然上空から何やら大きい鳥のようなものがこちらへ降ってきた。
ドスーン!!
「な、なんだ?!」
俺がたじろぐとその鳥のようなものが言った
「貴様、何者だ?今日は魔王様へ来客の予定はないが?」
(まずい、こいつ魔王の手下か。今俺はかなり消耗しているし戦える状態ではないのに。
それにこいつ、今までのやつらとは比べ物にならないほど強そうだ)
「答えないのなら今貴様をここで敵とみなし殺す!」
「ああすいません、俺その道に迷ってしまって」
「道に迷った?おかしいぞ。この道は王国から魔王城へと続く一本道。迷うなんてあるはずがない」
俺はビビって慌てて答えたので適当な言い訳をしてしまった。
「いや、あのそれはですね」
俺がしどろもどろしていると
「おいセンリュウ、どうした?」
低い、すべてのものを威圧するような声がどこからともなく聞こえてきた
「ま、魔王様。実は魔王領に侵入者を確認しまして、今そいつを問い詰めているところです。どうしますか?殺しますか?」
「侵入者?そいつは一人なのか?」
「はい、そのようです。ほかの人間の気配は感じ取れません」
「一人で魔王城に出向くとは、しかも人間が。ククク、面白いそいつをわが面前に連れてこい」
「い、いいのですか魔王様。そんな手を煩わせなくとも私が今ここで始末しますよ」
「いや、私は単騎でこの魔王に挑もうとするそ奴の顔が見てみたい」
「わ、分かりました」
そういうと声は消えた。
「おい、お前魔王様直々にお前をお呼びだ、ついてこい」
「え、魔王が?」
「魔王様だ!継承をつけろ」
「す、すいません」
俺は渋々その鳥の後をついていくことにした。
(はあ、絶対殺される。いやでも、まだ俺は力の使い方をわかっていないだけだ。大丈夫、人間は自分が本当に危機的状況にいるときに本来の力を発揮するらしいからな)
俺は少しばかりの自信と希望を携えながら魔王に会いに行くこととした。




