その8
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二年後。
年に一度開催される国内最大のダンスコンテスト会場に、更にビルドアップした白雪姫と七人の木こり達が、
【お母さん頑張って!】
と書かれた横断幕を掲げ観客席の1番前を陣取っている。
白雪姫は顔を赤らめ興奮気味に、
「ああ緊張する! お母さん大丈夫かなぁ……? うまくできるかな……? でも、あんなに練習したんだもの! 心配ないわ、きっと優勝よ!」
母親の健闘を両手を組んで祈っていた。
一方、コンテストのステージの横では、次の出番に向けて王妃が入念にストレッチをしていた。
二年前のあの晩を境に、美への執着が無くなった王妃は少しずつ変わっていった。
かつて王妃が暗殺用に作った毒は、改良を重ね最悪の猛毒から最強の解毒剤へと進化させた。
その解毒剤は、王妃の強い希望によって、各医療機関に無償で提供されている。
世界中のあらゆる毒を瞬時に解毒、この二年間に数多の命が救われたのだ。
……
…………
王妃は白雪姫の住む森小屋にも頻繁通い七人の木こり達とも仲良くなった。
姫の料理は絶品であっと言う間に王妃は太ってしまった。
ドレスがどれも着られなくなり、これはマズイとダイエットで始めたダンスは予想以上に王妃を夢中にさた。
朝も夜も時間を見つけて踊る王妃は上達も著しくて、どうせなら何か目標を持とうと無謀にもダンスコンテストにエントリーしたのだ。
もちろん、公平なジャッジを望んで身分を隠し平民の中年女性と偽っての事。
王妃はそれだけ本気で挑み、この日の為にハードな練習を重ねてきた。
そしてさらには、他の選手に差をつけようとアクロバティックな大技をたくさん盛り込んだ。
先生はもちろん白雪姫。
神に愛された身体能力の持ち主が猛特訓をしてくれたのだ。
特訓中も……そう、色々な事があった。
王妃はストレッチをしながら、おそらく一生涯忘れられないであろうあの日の事を思い出していた。
◆
ダンスコンテストにエントリーをした数か月前の森の中。
王妃は振り付けに後方倒立回転跳び、通称バック転を加える為に白雪姫から特訓を受けていた。
最初は恐くて怖気づき、やっぱりできない! と弱音を吐いていたものの、根気強く教えてくれる姫のおかげで、ちょっとした補助があればどうにかこうにか飛べるようになってきた、そんなある日。
王妃は意を決して白雪姫にこう言った。
「ねえ、だいぶ飛べるようになったわ。次は補助無しで飛んでみる。それでもしも上手くいったら……白雪、あなたに話しておきたい事があるの」
王妃は目を伏せ、ケガ防止にと白雪姫が着けてくれた軽量ヘルメットを外した。
この段階での成功率は半々だ。
ヘルメット無着用で失敗したらケガをするのは確実となる。
だが、あえてそうした。
バック転が成功したら姫にすべてを打ち明けるつもりでいた。
昔何度も殺されそうになった白雪姫。
その卑劣な犯人は他の誰でもない、王妃である事を正直に話して謝るのだ。
おそらくは許してもらえないだろう、王妃は覚悟の上だった。
このまま罪を黙っていれば、いつまでも楽しい時間が続くのかもしれない。
だが、それでは駄目だと思った。
白雪姫や木こり達を騙してるのと同じだからと。




