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その2

◆ 


今度こそ確実に白雪姫を殺す____


確固たる決意を胸に。

王妃が最初にとった行動はナイフを持って白雪姫の森に向かう事、……ではなく、世界中から取り寄せた毒に関する書物を半年かけて百冊読む事だった。

おそらくは毒に強い体質と思われる白雪姫。

前回、闇の商人から手に入れた毒では殺す事が叶わなかった。

魔法の鏡曰く、回復力が尋常ではないらしい。

あんなに細い体のどこにそんな強さがあるのか。

だが、それでも白雪姫は『強い』というだけで本当に『不死身の化け物』ではないはずだ。

ならば、その強さを捻じ伏せる毒薬を自分で作りだせばいい。



王妃は連日連夜憑りつかれたように書物を読んだ。

専門用語ばかりが飛び交う内容に、最初は全く理解ができず、解らない用語を調べるだけで一日が終わってしまう事もあった。   

地道で根気のいる作業の連続。

読む、調べる、読む、調べる……を繰り返すうち、だんだんとペースが変わってきた。

読む、調べる、読む、読む、調べる、読む、読む、読む……


少しずつではあるものの、着実に知識が身についていく。

辛くとも苦しくとも努力あるのみ。

すべては白雪姫を殺し自分が世界一に返り咲く為。


いつしか王妃の執念は、この国の誰よりも深い知識と理解と技術を併せ持つ、薬物のエキスパートへと成長させていったのだ。




夏が終わり瞬く間に秋が消え、長い冬も離れ去り、季節は再び春になった。

城でも、街でも、森でも、いたる所で色とりどりの花が咲き蝶が舞い、溶けた氷に心が弾む。

降り注ぐ日差しは明るく、優しい風が人々をくすぐるたびに、陽気な歌と笑い声がこだました____



____一方、春の日差しも遮断する城の地下研究室では。


積み上がった書物の向こう側、ガラスの小瓶に入れられた無色透明の液体をうっとり眺める王妃がいた。

何日も眠っていないのか目の下が青黒い。

結った髪もざんばらに振り乱れ、疲労が色濃く見て取れる。

そんな状態であるにも関わらず、王妃は目をギラつかせ口角をこれでもかと上げていた。 

そして、


「できた……一年かけてやっと完成した……! これで白雪姫を殺す事ができるわ。……待っていなさい、白雪姫。もうすぐあなたを殺してあげるから……!」

  

こう独り言ち、研究室を後にしたのだ。









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