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王立迷宮殺人事件  作者: 荒瀬ふく
朔日の日記帳
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朔日の日記帳 36/45

「少し、太陰暦についてお話しておきましょうか」


二人は城を左手に見ながら通りを歩いていた、太陽が傾きかけ、目に入る光の影響か時おりテオは目を細めた。


「太陰暦とは仰ったように月を基準にした暦ですね。月の何を基準にしたか」


「たしか、満ち欠けだったでしょうか」


「正解、新月の日を1日とし、次の新月が来ると次の月の1日とした」


「新月から新月の間が1ヶ月」


「そうです、因みに新月の事を朔と呼び、満月の事を望と呼びます。なので朔から朔が1ヶ月、この1ヶ月、ひと月という言い方、概念の名前はお月様が由来です」


「いっかげつ、ひとつき。あら、本当ですね」


「ええ、他の言語や、他の文化圏でも天体の月と暦の月の関係は深くてですね、勇者様が残した手記には、この事への考察がかなりの量にわたり記載がありまして、さらには太陽や月、地球の位置関係などの類似性について…… と、話がそれましたね」


「うふふ、いつか講義でお聞かせ下さいまし」


「ええ、といっても今年の講義は残りは教授が…… いや、いつか必ず」


「はい、私もいつか必ずアカデミーの門をたたきますので」


「ええ、待ってますよ。近い将来になることを期待しています」


「ええ、近い将来に」


「ええっと、話を戻して…… 朔から朔が一か月まで話ましたね」


「はい」


「で、朔から朔までの平均が29.5日なんですね」


「中途半端ですのね?」


「そうなんです。なので昔の人は29日の月と30日の月を交互に並べました、59日でふた月、月の満ち欠けもこれで同調した。ほら、今も基本は30日と31日が交互に来るでしょう、あれ名残なんですね」


「なるほど」


「また話がそれました。いや、其れてないか……?」


「うふふ。先生、お気の済むようにお話なさって」


「ありがとう。うん、でも時間も限られますし、すこし端折ってしまいますが。続けましょうか。ええっと、実は昔も今も1年が12か月という事には変わりが無いんですね、するとどうなるか、わかりますか?」


「太陰暦の方が何日か少ないですものね、日がズレていきますわ」


「ええ、まさしく。暦がズレていきます、太陰暦の次の1月1日は太陽暦の12月の20日ごろになります。3年ほど経てば1ヶ月もズレることになります。するとどうなりますか。11月に播くのが良いと聞いて買ってきた種を知らぬ間に10月に播くことになったり、ズレがさらに進めば新年を真夏に祝ったりとなりますね」


「大変ですわ」


「そう、大変。ほっといたら日常生活にいろいろと不具合が出てきます。では、昔の人々はどうしたか。何年かに一度、1年を13か月としました。春分、秋分に夏至、冬至を基準として、それぞれ2月、5月、8月、11月が来るように調整しました」


「ええっと…… 」


「すこし解りづらかったですね。簡単に言うと、今年の2月は終わってしまった、ようは朔が3回きた、でもまだ春分が来ていない、じゃあ今月も2月って事にしようか。こんな具合です。おわかりいただけました?」


「……なんとなく」


「ですか。まあ、大事なのは暦と季節とのズレを少なくするために調節の為の月を入れました、これを閏月と呼んだ、さっきの例ですと1月、2月ときて閏2月の後、3月が来る暦にした」


「うるう…… 閏年の閏ですか?」


「そう、その閏。4,5年に1回だけ2月が1日増えるでしょう、実はあの増えた日の事を閏日と呼ぶんです。そして、今では閏日がある年の事を称して閏年と呼ぶ、1年が増えるわけじゃないのにね。ちなみに何故2月に閏日を設ける事になったかはご存じ?」


「いえ。あ、もしかして勇者様が?」


「そう、勇者様は2月が誕生月だったからねっ、てのはただの噂。ほら初代大主教様が2月生まれだったでしょう、教会がこの暦を採用するにあたってそうなったらしいですよ。あぁ、また、話がそれちゃったね。あ、次の角を左だ」

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