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1話

 ここは小さな村オルテラ。ここには仲良しな三人組が暮らしている。

 僕はこの村で何でも屋をやっている。友人のユーリと共に。


「なぁ、ちょっと最近やること多くないか?俺ら子供だぜ?いくらなんでもやることありすぎだろ」

「あはは、仕方ないよ。この村の近所の事も何故か迷い込んでくるんだから」


 僕たち二人はまだ仕事に付く年齢ではなかったのだが村長に頼み込みやっとの事で少しの雑務を出してもらえるようになって1年。何故か今では村一番の頼りになる人達と言われることもある程に信頼を得た。

 ユーリは紙にまとめてこなすべき依頼を精査している。ように見えるがユーリは面倒くさがりな面もありあまり進んではいない。


「ルッくんは進んだのか?」

「もちろん僕はもうすぐ終わるよ。けどなんで大型の依頼は全部断っているんだい?僕はともかくユーリは剣があれば戦えるでしょ?」

「何言ってるんだ。俺の剣の扱いは上手くないんだよ。弱い魔物はともかく強い魔物を相手にできるほどの胆力が俺にはないしな」


 そう言いながら少しずつ仕事を進めていくユーリ。ルヴィルはそんなもんなのかとだけ返して紙をテーブルに置く。そのタイミングでいつもの人からのプレゼントが迷い込む。


「今日の昼ごはんよ!私が持ってきたんだから感謝してよね!」

「へいへい、いつもありがとうございます。レイン様」

「あれ?ルッくんの分が聞こえないんだけど」

「いつもありがとう。レイン」

「そうそう、それでいいのよ!」


 他愛ない会話。この頃は人生の分岐点は急に現れるなんて思ってもいなかったしそもそもそんなものを信じてすらいなかった。しかしこの頃には既に僕達の運命は動き始めていたというのに。

 ここからさらに1年が経った頃。僕達は運命の歯車が動いていたことに気づいたのだ。


「レインがいない!」


 家単位で仲が良いルヴィルとレインタルトは朝にいつも挨拶を交わしている。なのに今日は時間になっても家から出てくる気配がない。不思議に思いレインタルトの家にノックしたのだが少しすると落ち着きを欠いた両親が出てきた。


「レインがいないんだ!どこにいるのか知らないか!」


 レインの父親に大きく揺らされながら考える。レインがいきそうな所を。しかし全く思いつく事はなかった。レインはやんちゃではあったが無言で何処かに出かけるような人ではない。何処かに出かけるなら必ず僕たちを呼びに来るからだ。


「すいません。僕たちもわからないと思います。一応ユーリにも聞いておきます」

「た、頼んだ!私は家周りを探して妻に村の意気込みをして貰うから何かあったら一旦私の家に来てくれ」


 それだけ言い残すと二人はそれぞれ目的にそって走り出す。そして僕も急いでユーリのところへ走る。するとユーリは既に話を誰かから聞いたようで血相を欠いた様子で走っていた。


「ルヴィル、今の状況は聞いた。ちゃんと親からレインの動きを聞いたか?」

「うん」


 レインは僕達にお昼を作る為に料理を作ってたんだけど今日は少し早かった。

 レインは料理の途中でないものに気付いて取りに行ってくると出ていった。いつになっても戻ってこなかったので慌てて探し始めた。


「そんな感じか。まあ一番の可能性は森か?あいつ絶対無断で森に出て野草を取ってきてるからな」

「僕も同じ考えかな。レインは無駄な心配をかけることを嫌ってるからね」


 ユーリは既にこうなる事を予測していたようで剣をこちらに投げると急いで森へ走り出す。少し走り森の中へ入るとすぐに子どもの足跡を見つける。


「予想通りってところだな。辿っていこう」


 森の中を進み続けるとその先には何かの穴が開けられている。その穴は補強や石畳のような加工もされていて魔物がやったとは考えにくい雰囲気だった。二人は意を決して進むことを決めると剣に手を伸ばしゆっくりと降りていく。


「不思議なこともあるんだな」

「不思議ってなんのこと?」

「そりゃ、誘拐されたにしては足跡がおかしいんだ。ここを作った目的が見えてこないこともまた違和感」


 確かにここは不思議な状態だった。足跡の少なさやどうやってやっているかもわからない光。どう考えても人工物。ユーリはそう言っていた。


「まあ何にせよ俺達は目的を確認するぞ」


 ユーリは今回の目的を確認する。ルヴィルはいつも通り全部なんとか片付くと思っていたがユーリの顔を見て考えを改める。


「今回、はっきり言ってヤバい。もし連れ去られたんだとしたら近くに魔族がいる可能性があるって事になる。もしそうなら村単位で逃げなきゃ全滅は逃れられない。ここは防衛設備なんてないからな」

「ほ、他の可能性もあるんだろう?」

「あぁ、それはもっとヤバい。魔族と関係を持っていた場合…」


 現在魔族と人族は冷戦状態にある。決定打に欠けるこの状況で攻めても逆に隙になるだけとお互いにわかっているのだ。故にお互いに動けない状況になっていた。そんな状態で魔族と仲良くやっている人族なんていたら間違いなく処刑もの。実際はそんな事なくとも情報を流していると疑われる。綺麗事を言っていても結局疑わしきは罰せられるのが世の常だ。


「でも前者だったとしたら早く事を済ませないとまずいよ」

「そうだな。村の人に声をかけたら後者だった場合に取り返しがつかない。ここは2人で最短攻略といこう」


 二人は武器を握る手を強くすると剣を抜く。名前はない普通の剣だがそれでもそこら辺にある剣よりも業物。

 思い切りよく走り出すが最深部はすぐだった。


「後者…か」

「レイン、どうして?」

「いや、まって!」


 レインはこの状況の説明をしようとするがここは村の近く。念入りに探されればすぐに見つかってしまう。

 ユーリは即座に判断し後ろに隠れていた魔族を一緒に連れ外に出る。


「手を貸していいのかい!?」

「お前は来ないほうがいい!これは俺の選択だ!」


 そう言われ脚が止まる。

 僕はそれでいいのか?でも魔族と関わりを持つことなんて法で禁じられているし…


 でもユーリとレインは僕の親友だ。どんな状況なのかはさっぱりわからないけどその行為が悪とは思えない。思いたくないだけかもしれないけど…


 それでも国ほぼ全てを敵に回す程の価値がある行為なのか?


 考えのまとまらない僕は気がつけば二人と魔族を見失っていた。


「これから…どうしよう。少なくとももう僕にはユーリ達の足取りは掴めない。ユーリが痕跡を堂々と残し続けるとは思えないし」


 それが僕たちの別れだった。









「ルヴィルリーダー。これはここでよろしいですか?」

「う、うん。そこに置いといてくれ」


 数年が経ち、僕は騎士団に入ることになった。そもそも僕たちがやっていた業務は騎士団がやるべき仕事。しかし手が回らないので代わりに雑用をこなしていた。こうして数年やっていた結果規模は大きくなり十数人にまで人数が増えている。そこに騎士団が目をつけた。


「騎士団の業務である仕事を引き受けてくれていた事を感謝する。それで提案なのだがこれほどの規模になった何でも屋の人材、君ごとこちらで働かないかい?人が足りないというのであれば人員は用意する。というか騎士団にいる人の中に何でも屋に入りたいという人もいてな。余裕があるなら指導していただきたい」

「す、少し考えさせてください」


 ここで断る選択肢はもちろんあった。でも僕には一つ大きな目的がある。それはユーリとレインを探すこと。失踪から1年が経ち噂が流れることがあった。ユーリ、レインが街道を歩いていたらしいと。幽霊騒ぎとして流れた噂だがルヴィルはもちろんそれが幽霊じゃない可能性が高い事を知っていた。噂はすぐに収まり情報が入らなくなったが騎士団ならその情報が入るかも知れない。


「お受けさせていただきます」

「そうか、それは助かる」


 こうして僕の人生は大きく動き出した。

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