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第八話 異常現象VS異常現象

 「……ふぅ、やっと止まったぁ」


 気力の調節に失敗した俺は、紆余曲折の末に何とか止まることができた。


「途中で何かとぶつかった気がするんだけど……何だったんだ?」


 強化を解除し、ゆっくり立ち上がる。

 あんなに派手に飛んだ挙句何かとぶつかったというのに、どこも痛くない。

 ただでさえ化け物出身の人間なのにさらに化け物になった気がする。


「ってかここどこだろう」


 ここがどこなのかはわかる。

 森だ。

 しかし城の周辺はどこも森なので、方向がわからないんじゃ意味がない。


「……これはジャンプでもして位置を確認するしかないな。今はあんまり身体強化したくないけど」


 怖いので今はあまり使いたくない。

 当分はできればルイシアと一緒がいい。

 暴走しても止めてくれるだろうからな。


 だけどこんな状況じゃどうしようもない。

 ジャンプして現在位置を把握しないと、ルイシアのところに戻れない。


「よし、こう考えたら勇気がでた!」


 早速身体強化を使う。

 今回は変な方向に飛んだりしないように気を付けて――ジャンプ!


 できた!と、思った瞬間。

 真下の自分が立っていた場所から青い光と共にバッカアァン!と音がした。


「?、なんだ?」


 空中で周囲を見渡すことを止め、そのまま元いた場所に降り立つ。

 するとそこには、球体があった。

 俺が倒れていたその位置だ。


「なんだ、こりゃ……?」


 気持ち悪い文様が刻まれた真っ白な球体が空中に浮いている。

 そして後ろを見ると、森が消し炭になって一直線の穴が開いている。

 つまり先ほどの光は俺への攻撃で、ジャンプしたおかげで避けたってことなのか。


「あれっ?こういうのどっかで聞いた気が……」


 文様が刻まれた空中浮揚する球体。

 ……球体?

 そこで、俺は思い出した。


「ああっ!そうか、あれだ!異常現象の破滅球体(デッドスフィア)だ!」


 異常現象によって生み出された、光線を打ちまくるという飛び回る球体、破滅球体(デッドスフィア)

 生物無生物構わず動くものすべてを焼き殺すと言われているやつだ!


 俺は破滅球体(デッドスフィア)に近づきそのまま抱き着く。


「まさかこんなところで同族に合うとはなぁ!俺は君と同じ異常現象のキメラだ!キメラのリックだ!よろしくな破滅球体(デッドスフィア)!」


 ……破滅球体(デッドスフィア)……ちょっと呼びづらい。

 何かいい呼び名ないかな。

 ん……よし、スフィちゃんにしよう!


「君はこれからスフィちゃんだ。よろしくな、スフィちゃん!」


 バッカアァン!


 抱き着いた俺の胴体を、スフィちゃんの破滅光線が貫く。


「もう、ダメだよ、無作法にそんなの撃っちゃ。森が傷つくだろ?」


 だが身体強化をしている俺には通じなかった。

 なみの攻撃では傷一つしないというのは本当らしい。


 しかし今の攻撃がなみの攻撃か……。

 相当な破壊力だと思うが、この程度じゃ人間の気力を打ち破るのは出来ないようだ。

 これで三種族のバランスが取れているってことは魔族と亜人族も方向性が違うだけで同じくらい強いということだ。


 そしてその上で、人類は異常現象に負けている。

 つまりスフィちゃんは異常現象にしては弱い方ってことになる。


「これは後でルイシアに聞いてみるか。まずは君の処遇だ。ん……できれば殺したくないんだけど……どうしたもんか。ってうおおっ、ダメダメ動いちゃダメ、今考え中なんだから」


 俺から離れるようとするスフィちゃんを抑える。

 攻撃が通じないことに気付いて距離を取ろうとしているのだろうか。

 頑張っても身体強化した俺からは逃げられないぞ?


「何者だ!」

「え?」


 一瞬スフィちゃんが喋ったかと思ったけど、すぐに違うと気づく。

 声がしたのは上からだった。


「誰?」


 見るとそこには頭に角を生やした人空を飛んでいて、ゆっくりと地面に降り立つ。


「貴様、何者だ」


 降り立った彼は……彼であってるんだよな?

 ルイシアみたいにかわいくないし。


 降り立った彼は左腕をなくしていて、腕のあった部分を苦しそうに右手で押さえていた。

 苦痛に歪んだ表情のまま俺を睨んでくる。


 ああ、そうか。

 あの目には覚えがある。

 ルイシアと始めて会った日、彼女が俺に向けていた視線だ。

 今のルイシアからは想像もできない警戒と恐怖の視線。


 つまり、彼は俺の容姿を見て驚いているのだろう。


「その角……しかし要請族(エルフ)の耳をしてやがる。正体を明かせ!」

「安心してくれ。あなたと敵対するつもりはないし、あなたの敵でもない。俺はこの森に住んでいるだけの一般人だ」


 スフィちゃんのこともあるし、彼といざこざになったらさすがに手一杯だ。

 ここは安心させてスフィちゃんを先に何とかしよう。


 バッカアァン!バッカアァン!バッカアァァン!


「こらこら、そんなの撃っちゃダメだって。大人しくしていろッ!」


 光線を乱射しながら暴れだすスフィちゃんを地面に抑え込む。


「いや一般人ってことはねぇだろ」


 ……なんか彼の表情、さらに優れなくなってない?

 安心どころか、困惑までしているような……。

 どうしたんだろうか。


「ここに住んでいると言ったな。一人でか?」


 あれ?そういえば、彼の声からは心地のいいあれが感じない。

 もしかしてこれも性別の差なのだろうか。

 俺と彼とルイシアの三人の中で、声がいいと思ったのは女のルイシアだけだ。

 まぁ、まだ自分の以外で声を聞いたのが二人だけだからわからないけど。

 それともただ単にルイシアが特別なのかもしれない。


「いや、もう一人いるけど。ってそういうのは後にしてくれ。今はこいつを何とかしないとうわああっ!」


 彼との会話に気を取られた隙にスフィちゃんが一際激しく暴れだし、対応できず逃がしてしまう。

 そして俺から逃げ出したスフィちゃんはその勢いで彼の方に飛んでいき……。


「へっ?くわあぁっ!?」


 そのまま体当たりをかましてしまった。


「えっと……生きてる?」

「…………」


 彼の様子を見ると、幸い気絶しているだけのようだ。


 さて、スフィちゃんをどうしたものか。

 本によるとあれは動くものすべてを破壊するという。

 このまま放っておくとルイシアのところに行くかもしれない。

 ルイシアのことだから彼女自身は大丈夫だろうが、その余波だけで城が崩壊されかねない。


「うん……なんとかしつけられないかな」


 できらば殺したくない。

 初めて出会った人類としての俺の仲間がルイシアなら、スフィちゃんは初めて出会ったキメラとしての俺の同族だ。

 仲間になれるかも知れない。


 が、その可能性は低いだろうし、このまま放っておくわけにはいかない。


「仕方ない。やるか」


 まずは制圧しよう。

 話はそれからだ。


 方針を決めた俺は全身に力を入れ、スフィちゃんに向かって突進する!


 バッカアァン!バッカアン!バッカアン!バッカアァン!バッカアァァン!


 迫り来る俺に光線を乱射するスフィちゃん。

 しかし体力がある限り、俺の防御は破れない。


「だからそれ撃つなって」


 気力の感覚を掴む手練の間、俺はそればっかやってたわけじゃない。

 趣味の読書はもちろんのこと、体力をつけるため日々運動を欠かさなかった。

 その程度の光線、痒くもない!


「今の俺には無駄なんだよ、おらっ!」


 後ろに下がりつつあったスフィちゃんに光線を無視して接近する。

 その勢いで上から拳を叩き込み、胴体の半分を地面に埋もらせる。


「君、頑丈だな……」


 まだ試しの途中だが、身体強化した俺の拳は相当な威力を持つはずだ。

 だから殴ればダメージがあると思ったのだが、そんな拳をまともに食らったにも拘わらず、スフィちゃんにはかすり傷一つなかった。

 弱い方でも異常現象は異常現象ってことらしい。


「しかしこれなら、いい試し相手になりそうだな」


 ちょうど気力の試しをしていたところだ。

 頑丈なスフィちゃんが相手なら、手加減の必要もない。

 調節に失敗して暴走しても問題ないだろう。


 バッカアン!バッカアン!


 埋もれていながらも抵抗してくるスフィちゃん。

 当然、俺にダメージを与えることは出来ず、森を破壊するだけ。


 そして同時に、破壊された森を見て思った。


「気力教わって本当に良かった……」


 心底そう思った。

 ルイシアには感謝しかない。


「さて、聞き分けの悪い子にはお仕置きだよな。その性根を叩き直してやるから覚悟しろ」


 その日、スフィちゃんには日が暮れるまでサンドバックとして付き合ってもらった。

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