『西風と冥王星』
西風と冥王星が、力比べをすることになりました。なぜでしょう。どこで知り合ったのでしょう。まあ、物語の進行上、どうでもいいことですけど。
冥王星って、まだ一周していないんですって。あ、正確じゃないですね。冥王星が発見されてからまだ百年たっていないのですが、冥王星の周期は二百五十年くらいなので、まだ三分の一周強というところなのです。それなのに、まだ一周していないのに、惑星から準惑星に格下げだなんて。ま、そのあたりのいらいらを、西風にぶつけた、と、まあ、そんなことにしておきましょう。
西風のほうは、といいますと、北風や南風のようにはっきりした季節感があるわけでなく、東風のように天神様のおかげで有名になることもなく、偏西風の大きな力にかき消されて、何が西風なのかのはっきりしたイメージもないままに秋の季語に祭り上げられたものの、大して使ってももらえないという悔しさを、冥王星にぶつけた、と、まあ、そんなことがあったようななかったような。
一本道を、向こうから、速記者が歩いてきまして、速記道具を手放させたほうが勝ち、ということになったのですが、西風は、先ほども言ったとおり、偏西風の大きな流れにかき消されて、気がついてももらえず、冥王星も遠過ぎて、影響を与えることなど、かけらほどもできませんでした。
これをきっかけに、西風と冥王星は仲よくなりました的な話になると思いますか。冥王星は、どんどん遠ざかっていくので、西風とは百年以上も会わないことになるのでした。
教訓:速記者のじゃまをしなくてよかったな、と。