9.じゃじゃ馬令嬢は推しとのデートに奮闘し悶絶する(その②)
ステラとバスティンが大道芸が行われてる広場へと着いた。
「この場所であっているのか?」
広場へ着くと周りを見てバスティンがステラへ言った。
「はい…。ここの広場で大道芸が行われていると調べはついてます…。」
ステラも周りを見ながら言った。
「ですが…大道芸をやっている雰囲気はありませんね…。まだ時間が早かったのですかね…。」
ステラが首を傾げながら言った。
「あの…すいません。大道芸があるのはこの場所であってますよね?大道芸はこれからあるのですか?」
ステラが近くにいた男性に尋ねた。
「あぁ。大道芸ならさっき終わったばかりだよ。」
男性が言った。
「え…?終わった…のですか?」
ステラは目が点になり言った。
「あぁ。」
男性は頷きながら言った。
「そう…です…か…。教えて頂きありがとうございました…。」
アイラは男性へ言った。
男性はアイラに言われると歩き出し去っていった。
(そんな…。大道芸がすでに終わってたなんて…。うわぁ〜〜!!私がバスティンと写真を撮りたいあまりに障害物競走なんて出たから大道芸に間に合わなかったんだぁーー!!)
ステラは頭を抱えながらそんな事を考えていた。
そして…
「公爵様…申し訳ありません…。私が公園で障害物競走へ参加したせいで大道芸に間に合わなかった様です…。せっかく人気の大道芸を公爵様に見てもらおうと思っていたのに…本当に申し訳ありません…。」
ステラはバスティンへ申し訳なさそうに言った。
(あぁ…ステラあなたはなんてことをしたのよ…。デートの計画があたまっから崩れたじゃんか…。)
ステラはしょんぼりして考えていた。
「別に謝る必要はない…。終わってしまったのは仕方がないだろう…。」
バスティンは特に表情を変える事なく言った。
(別に大道芸が物凄く見たい訳でもなかったしな…。それに…先程の公園では大道芸を見るよりも貴重な体験をしたからな…。)
バスティンはそんな事を考えていた。
「それは…そうですけど…。」
ステラはしょんぼりしながら言った。
(はぁ…バスティンと大道芸見たかったな…。………ん?んんん?ちょっと待ってよ…?残念ながら今日大道芸は見れなかったけど…逆に大道芸を見ようと次のデートの約束をしたらよくない?)
ステラは残念そうに考えているとふと頭の中でポジティブ案が思い浮かんだ。
「あの…公爵様。今日は残念ながら大道芸を見ることが出来ませんでしので…次の機会にまた見に来ませんか?」
ステラはしょんぼりした表情から一転目を輝かせてバスティンへ言った。
「…どくさくさに紛れて次の約束をとりつけようとするな…。」
バスティンは呆れた表情で言った。
(本当にこの令嬢はコロコロ表情を変えるな…。それに…気持ちの切り替えが早いし常に前向きなのだな…。)
バスティンはそんな事を考えていた。
「え…?バレました?ハハハ…。」
ステラはギクッとなり言うと苦笑いを浮かべて言った。
(チッ…。だめだったか…。あわよくば作戦…即失敗…乙…。)
ステラはそんな事を考えていた。
「それで…次はどこに行くつもりなのだ?」
バスティンがステラへ尋ねた。
「あっ…はい。首都の街の屋台には美味しいものがたくさん売ってると聞いたので色々買って食べましょう!」
ステラはあっ…となり笑みを浮かべて言った。
「分かった…。」
バスティンは頷きながら言った。
そして…二人は屋台の方へと向かった。
(なっ…!!ここは…。)
ステラは屋台がある場所へ着くなり色々並ぶ屋台を見て驚いた表情で考えていた。
(なんて…天国なの〜!!どこからどう見ても前世のお祭りのテキ屋じゃんかぁ!オンラブの話中に描かれてた首都の街はアーノルドとグレイスがちょこっとだけお忍びでデートするくらいにしか描かれてなかったしこんな風に最高な場所だなんて思いもしなかったじゃん。)
ステラは屋台を見回して目をキラキラさせながら考えていた。
「公爵様、早速買って回りましょう。」
ステラは嬉しそうに笑いながら言った。
「あぁ…。」
バスティンは少し複雑な表情で周りを見ながら言った。
(やはり…私の存在を見ると明らかに嫌悪の表情を浮かべる者たちばかりだな…。先程…公園で令嬢の話を聞いていたのはあの場にいた者たちのみで首都の街のほんのごく一部の者たちだから…令嬢の話を聞いていない者たちからするとこういう反応になるよな…。)
バスティンは周りの者たち表情を見ながらそんな事を考えていた。
しかし…バスティンの心配をよそにステラは次々に屋台で食べ物を購入した。
屋台の人々はステラの美しい容姿と笑みを浮かべつつ《そんな目でバスティンを見るな!いいからさっさと商品を売れ!》と言わんばかりの圧に圧倒されていたのだった。
「公爵様…これ物凄く美味しいでので食べてみて下さい!」
ステラは持っていた串に刺さった肉を食べながら言うと笑顔でバスティンへもう一本の串を渡した。
「歩きながら食べるのか?」
バスティンは串を差し出された受け取るもステラへ尋ねた。
「はい!屋台といえば食べ歩きが醍醐味ですからね!食べながら他の屋台を見てまた買って食べてながら見て…が楽しいんですよ!」
ステラは笑顔で言った。
「……そういうものなのか…?」
バスティンが不思議そうに串を見て言った。
「はい!さぁ…早く食べて下さい!」
ステラか笑顔で言った。
「あぁ…。」
バスティンはそう言うと串に刺さった肉を一口食べた。
「…美味いな。」
バスティンが意外…という表情で言った。
(養子になる前もなってからも首都の屋台のものなど食べたことなどなかったが…)
バスティンは肉を噛みながらそんな事を考えていた。
「そうでしょう?」
ステラは満足そうに微笑みながら言った。
「これでビールがあったら最高なんですけどね!」
ステラが串を見つめながら言った。
(串にビールはてっぱんだよねぇ!前世ではよく焼き鳥やでオンラブのオフ会やって皆でお酒飲ん片手に焼き食べながら語り合ったよね〜!懐かしいな〜!あの時はバスティンとのデートをよく妄想してたよなぁ…。でも…今はそれが妄想ではなく現実になってるわけなのよ〜!幸…。)
ステラはニヤつきながらそんな事を考えていた。
「令嬢はまだ成人していないだろう。」
バスティンがニヤつくステラに言った。
「はい!でも…周りを見ていたら肉にビールが合うことくらいわかりますから!」
ステラはギクリとしながらも周りにいた男性達を軽く指さして誤魔化す様にどや顔で言った。
(おっと…危ない。前世では二十歳と成人してたからついうっかり…。)
ステラはそんな事を考えていた。
「まぁ…そうだが…。」
バスティンは指さされた先の串を片手にビールを飲む男性たちを見て言った。
「さぁ!他にも美味しいものたくさん買いましたから食べましょう!」
ステラが笑顔で言った。
(不思議だな…。令嬢と一緒にいるとここへ来るまでの事を悩んでいた事すら忘れさせてくれるな…。)
バスティンはそんな事を考えていた。
「あぁ。」
バスティンはどこか柔らかい表情で言った。
「公爵様…色々と食べ歩いたので残りの物は落ち着いた場所へ移動して食べませんか?」
ステラがバスティンへ言った。
(そろそろ…私の秘密のとっておきの場所へ移動してあの場所をバスティンだけに教えて二人っきりの時間を誰にも邪魔されず過ごしてやるわ!)
ステラはニヤニヤしながらそんな事を考えていた。
「……わかった。」
バスティンは頷きながら言った。
(あの紙に書いてあった誰にも教えていないとっておきの場所とやらに行くつもりなのだろう…。)
バスティンはニヤつくステラを見て考えていた。
(よし!あの場所へ着いてゆっくりした後に頃合いを見てバスティンに一休みしてもらってる間に例のパンを買ってきてバスティンと一緒に食べるんだから。あぁ〜誰も居ない場所でバスティンと二人きりなんていけないことを想像してしまうなぁ…。)
ステラはそんな事を考えていた。
そして…
ステラとバスティンは屋台がある場所から歩いて20分程の場所にある滑らかで小さな山へと到着した。
そして二人は山の中へと歩き出した。
「公爵様…こちらです。」
ステラが山道の途中にあった見るからに人が通る道ではない場所へバスティンを誘導しながら言った。
「ここを通るのか?あきらかに道ではないだろう?」
バスティンはステラが進もうとしている場所を見て言った。
「ご心配なく!」
ステラは自信満々に言うとその場所へ潜り込んだ。
(どう見ても…戦いの場などで隠れる様な場所にしか見えないが…。)
バスティンはそんな事を考えながらもステラに後に続き潜り込んだ。
潜り込んだバスティンは目の前の光景に驚いた。
そこは外からは想像出来ない程のきれいに作られた道があったのだ。
「これは…。」
バスティンは目の前に続く道を見て驚き言った。
「ねぇ?心配ないと言ったでしょう?」
ステラはニカッと微笑みながらバスティンへ言った。
「この道は一体…。」
バスティンが驚いた表情のまま言った。
「この道は…私が幼い頃にお父様達の目を盗んで内緒でこつこつと作り出した道なんですよ!」
ステラはどや顔で言った。
「何?!この道を令嬢が作っただと?!」
バスティンはステラの言葉を聞き驚き言った。
「はい!」
ステラは笑顔で応えた。
(前世の記憶が戻る前に…お父様に連れられて宮殿に行くために帝都に来たときにお父様がこの近くの店に寄った時にお父様を待ってる間にこっそり外に出て見つけた場所。最初は道?って感じの道だったけどその荒れた場所を抜けていったら頂上ではないけど別の頂上?らしき場所にたどり着いたんだよね…。それも帝都を見渡せる絶景ポイント!まさに映えだったんだよね〜。)
ステラは昔の事を思い出しながら考えていた。
(その日から…帝都に来るたびにお父様の目を盗んでこの場所にきては少しづつ絶景ポイントまでの道のりをちっさい手で作ったんだよね…。前世の記憶を思い出す前だったのによくやり遂げたよね…私ったら…。しばらく帝都を離れていたけど草が生い茂らない様に帝都を離れる前に処理してたから時が経ってもあの頃のままだもんね。)
ステラはそんな事を考えていた。
「まぁ…細かい事を置いといて先に進みましょう!進んだ先にある場所を見たらもっと驚きますよ!」
ステラは笑顔でバスティンへ言った。
「…っ…あぁ…。」
バスティンは驚きを隠せないまま言った。
そして…二人は道を進みその先へたどり着いた。
バスティンはたどり着いたその場所へ立ち驚いていた。
「どうですか?絶景でしょ?」
ステラは笑顔でバスティンへ尋ねた。
「あぁ…。これは驚いた。この様な場所があったとは…。」
バスティンは驚きながらその場から見える景色を見て言った。
「こうして見える帝都の街は陛下はもちろんですが…公爵様達…騎士団の方々が遠征先で何年も戦ってきて下さったお陰で守れた街なのですよ。」
ステラは帝都の街を指差しながら言った。
「私達が…守ったか……。」
バスティンは呟いた。
「えぇ。その通りです。周りがどう噂しようが公爵様達が守ってきた事実は変わりません。ですので…今は公爵様を誤解している国民が多いかもしれませんが…すぐに国民達も公爵様が偉大な方だとわかりますよ。現に…今日だけでも誤解が解けた人達はいますので。ですから…公爵様にはいらぬ噂などで傷つかないでください!」
ステラが真剣な表情でバスティンへ言った。
(傷つかないで…か…。幼い頃より周りからの冷たい反応は慣れていた。公爵家に養子に入ってからも…この傷を負ってからも…公爵の爵位を受け継いでからも…そんな反応には慣れていた…。いや…慣れたつもりでいた…。だが…今日街へ出て周りの視線などをどこかで気にしている自分がいた…。傷ついていないと思っていたが…私は…心のどこかで周りの反応に傷ついていたのだな…。)
バスティンは改めて自分の感情について考えていた。
(しかし…令嬢が自分の為に一生懸命人々に言ってくれた言葉…。こうして…何気なくこの場所へ連れてきてお世辞でもなく本気で思ってるのが伝わってくる令嬢の言葉…。それが…こんなにも嬉しいと思ってしまっている自分がいるだなんてな…。)
バスティンはフッと微笑みながら考えていた。
「あぁ…。分かった。」
そして…バスティンはどこかホッとした表情で言った。
そんなバスティンを見てステラは嬉しそうに微笑んだ。
「公爵様…さぁ…ここへ寝転んで下さい。」
ステラはその場に鞄から取り出した大きな布を敷いて言った。
(寝転ぶだと?!同じ布の上にか?!いくら私に好意があるからいってそこまで堂々とするのか?!)
バスティンは呆気にとられながら考えていた。
「さぁ…こうして…寝転んで空を見上げて見て下さい!帝都を見渡すのも絶景ですけど寝転んで空を見上げるのも悪くないですよ。日頃の疲れが取れていく様な感じになるのです。」
ステラはバスティンの反応見て自分がまずその場に寝転んで見せて言った。
(…そ…ういう意味か…。)
バスティンは急に自分の考えが恥ずかしくなりながら考えていた。
「…分かった。」
バスティンはそう言うとステラからなるべく距離を取り寝転んで空を見上げた。
「どうですか?雲の動きを見ていると疲れも飛んでいく様な気持ちになるでしょう?」
ステラはバスティンの方を見て言った。
「あぁ…。確かに…そうかもしれないな…。」
バスティンは空を見上げながら言った。
(グファッ……!バスティンの横顔がかっこよすぎて辛い…。そして…バスティンと同じ場所で二人で寝転んでるこの状況…幸……。)
ステラは内心は悶々としながら考えていた。
(こんな状況…師匠とジョシュアが見たら…発狂するどころか…私は刺されるかもしれないな…。)
バスティンはそんな事を考えていた。
そして…気づくとバスティンは空の景色と心地よい風でフッと目を瞑っていた。
「公爵様…?」
ステラはバスティンが急に静かになったので体を起こしてバスティンへ呟いた。
「あ…眠ってしまったのかしら…。連日お疲れなのね…。」
ステラは目を閉じているバスティンを見て呟いた。
「このまま少し寝かせておいてあげた方がいいわよね…。」
ステラはフッと微笑みながら言った。
(……令嬢は私が眠ってしまったと思ってるのか…。いや…何故…私はただ目を閉じて起きているのに寝たフリをしているのだ…?まぁ…いい…。このまま少し寝たフリでもしておこう…。)
バスティンはそんな事を考えていた。
「はぁ…それにしても…なので…バスティンはこんなに素敵なの…?寝顔までかっこいいとか罪すぎる…。この寝顔を写真におさめたい…。」
ステラがバスティンを見て言った。
(な…何なのだ?!)
バスティンは急にステラが言い出してそんな事を考えていた。
「あぁ…今日という日が終わらなかったらいいのになぁ…。そしたらずっとバスティンと一緒にいれるのになぁ…。」
ステラが続けて言った。
「バスティンには半年っていう期限を設けてもらったけど半年でバスティンが私の事を好きになってくれなかったら?半年後にバスティンが私の気持ちを受け入れてくれなかったら間違いなくバスティンは私と会ってくれなくなるよね…。最初から私の押しに嫌そうにしてたもんね…。」
ステラはゾッとした表情で言った。
(なぜ…半年で私が令嬢を好きになっている前提なのだ…。)
バスティンはそんな事を考えていた。
「もし…半年経ってもバスティンの気持ちが動かなかったら諦めるしかないんだよね…。」
ステラは切なそうに言った。
(令嬢が…私を…諦める…?)
バスティンは一瞬胸がモヤつくのを感じながら考えていた。
「まぁ…表向きは諦めたことにしてどうにかしてバスティンの近くにいるつもりではいるけどね。私のバスティンへの愛に諦めるなんて言葉はないもんね。」
ステラが自信満々で言った。
(結局…諦めないのか…。)
バスティンはどこかホッとしながら考えていた。
(?今…私はホッとしたのか?何故…ホッとする必要があるのだ。)
バスティンは慌てて考えていた。
「最終手段として…バスティンと既成事実作るしかないのかな…。バスティンを酔っ払わせてそのまま襲う?いや…バスティンはお酒強そうだし…そもそも恋愛のど素人の私にバスティンを襲うなんて高度な技は無理無理…。きゃぁぁぁ…ちょっと想像しちゃった…。バスティンと……。ぐふふふふ…。」
ステラは一人のニヤニヤしながら言った。
(令嬢ならやりかねない発想だな…。)
バスティンは考えていた。
「でも…バスティンとはお互いに気持ちが通じ合ってからそういう事したいもんね…。バスティンに抱きしめられ…キスされ…。ゔぅぅぅ……これ以上想像したら鼻血が出ちゃいそうだわ…
。」
ステラは顔を赤くしながら一人の表情をころころ変えながら言った。
(どんな想像しているのだ…。)
バスティンは考えていた。
「あぁ…バスティン…好き…好き…大好き…。後にも先にもバスティン以外を好きになることなんてありえない…。私の初恋…。たとえ…私の気持ちが伝わらなくても…絶対に私のすべてをかけてバスティンを幸せにしてみせる。」
ステラが言った。
(……一体…何故…そこまで私に対してそこまで思えるのか…。)
バスティンは考えていた。
「バスティンが…心から笑えて幸せだと思える日が早く来るといいな…。」
ステラは優しく微笑みながら言った。
「………この先…バスティンとキスできるか分からないし…今…ここでバスティンが寝てる隙にこっそりキスしちゃう?寝てるからバレないよね…?うん…。バレないわ…。」
ステラはバスティンの唇を見つめた後に間を空けて呟いた。
(な…何をする気だ!)
バスティンは慌てて考えていた。
そして…そんなバスティンをよそにステラはバスティンへ近づき自分の顔をバスティンの顔へ近づけた。
(ちょ…ちょっと待て!)
バスティンが慌てて考えていた。
(くそっ…。)
バスティンがそう思い目を開けようとしたその時…
「いや…駄目だよね。やっぱりキスはお互いに気持ちを確かめてからするもんだよね。うんうん!寝込みを襲うなんてよくないわね!」
ステラはさっと顔を離すとそう言った。
「よし!バスティンが寝てる間にパンを買ってくるとしますか。パンを買ってきて戻ったくらいにはバスティンも起きてるでしょう!一応…メモを残していっといた方がいいよね。」
ステラはそう言うと鞄から紙とペンを取り出してバスティンへ置き手紙を書いた。
そして…ステラはパンを買いに向かったのだった。
ガバッ………
ステラが居なくなると同時にバスティンが体を起こした。
「まったく…令嬢の考えは…。私が寝てると思って次から次にペラペラと…。」
バスティンが呟いた。
「また…勝手に名前まで呼んでいたし…。」
バスティンが呟いた。
「だが…不思議と聞いていて嫌な気持ちにはならなかったな…。」
バスティンはステラの残した置き手紙を見ながら呟いたのだった。
※
ステラは山から出て人気のハートパンが売っているお店へと向かった。
店に向かうとちょうど焼き立てのハートパンが店頭に出ていたので焼き立てを購入した。
(これが噂のパンかぁ。早くバスティンの所に戻って二人で仲良く千切って食べるんだぁ。楽しみ。)
ステラはパンを大事そうに持ってそんな事を考えながらバスティンの元へと向かっていた。
バスティンの所へ向かっている途中…
「この…虫けら!奴隷の身分の癖に!」
ステラが歩いていると人目のつきそうにない場所で誰かの怒鳴り声が聞こえた。
(何…?喧嘩…?)
ステラは怒鳴り声のする方へ近づいた。
すると…
そこへステラと同じ怒鳴り声を聞きその場へ近づいた人がいた。
ステラはその人を見て咄嗟に近くの酒樽の後ろに隠れた。
(え?!あれって…オンラブのヒロイン・グレイス?!)
ステラはその人を見て考えていた。
(どうして…こんな場所にグレイスが?オンラブにこんな場面あったかなぁ…。確かにグレイスは帝都の街にアーノルドとお忍びでデートしにきてたけどアーノルドと一緒じゃないもんね…。じゃぁ…たまたま通りがかりに怒鳴り声が聞こえてきたのかな…。グレイスは心優しい女性だからきっと怒鳴られてる人がいるのを見過ごせなかったんだろうね…。まぁ…グレイスが来たってことは怒鳴られてる人も助けてもらえるだろうし私は…早くバスティンにところへ…。)
ステラはグレイスを見てそんな事を考えながらその場を離れてバスティンの元へと向かおうと思った。
その時…
(え?!グレイス?!何故…素通りするの?!救いの手を差し伸べず?!え…えぇ…グレイスってそんなキャラだった?って…グレイスあっという間に行っちゃったよ…。どうしよう…。さっき…奴隷がなんちゃらって言ってたし怒鳴られてる人って奴隷ってこと?なら酷い目にあってんじゃないの?こんな人目につかない場所なら助けなんてこないんじゃないの…?もぉ〜〜!!)
ステラはグレイスがその場を足早に去って行くのを見て驚きながら考えていた。
そして…
ステラは迷った結果…怒鳴られてる人を助けようと怒鳴り声のする場所へと足入れた。
「この!この!いい気になりやがって!お前なんて生きてる価値もねぇんだよ!」
ステラが見た光景には男が二人いて一人が怒鳴りながら二人がかりで誰かを蹴り上げていた。
蹴られている人物は蹲り蹴られるがままだった。
そして…更には別に誰かが倒れていた。
(ちょっと!二人がかりで暴行するなんて!あれ以上蹴られたら死ぬじゃんか。それに…横に倒れてる人ってもしかして…もう死んでるとかないよね…?)
ステラは目の前の光景に驚愕しながら考えていた。
(はぁ…ったく…。)
ステラはため息混じりに考えていた。
そして…
「ちょっと!あんた達!何してるの!!」
ステラは蹴り上げている男たちへ近づき一人の男の肩を掴み言った。
「あぁ?なんだ?うっせぇな!」
肩を掴まれた男はステラを睨み付け言うと思い切りステラを押し倒した。
「きゃぁっ……。」
ステラは押し倒された同時に声を漏らした。
「なんだ…?お前…。」
男の一人がステラの声を聞きステラを見て言った。
「おいおい…なんだぁ?この奴隷を助けようとでも思ったのか?」
もう一人の男が言った。
「おい…。よく見たらえらく綺麗な顔してんじゃねぇか…。こんな奴隷を助けようとするくらいなら俺たちの相手でもしてくれよ…。」
男の一人がステラを見てニヤニヤしながら言った。
「相手が奴隷だからってあんた達が暴力を振るってもいいと思ってるの?それに今のこの国では奴隷制度は廃止されているでしょう、、。」
ステラは男達を呆れた表情で見つめながら言った。
「はぁ?奴隷制度の廃止が何だって言うんだ?!奴隷は奴隷らしくしてりぁいいものを…こいつは木で作った剣で素振りしてやがったんだぞ?奴隷のこいつがだぞ?そんな目障りなことしたんだ…。殴られて蹴られて当然だろ?奴隷なんだから。」
男は苛つきを覚えた表情で言った。
(こいつら…虫けら以下ね…。奴隷奴隷って…たとえ奴隷だって人間だっつーの…。)
ステラは男たちを見て考えていた。
「それより…この女…本当に上玉だな…。」
男の一人がニヤリとステラをいやらしい目つきで見て言った。
それ同時にステラが押し倒されたと同時にステラの手から落ちてしまったパンが入った紙袋を思い切り踏みつけた。
「あぁぁぁあー!」
ステラは紙袋を踏まれた瞬間大声で言った。
「な…なんだ?!」
男の一人が急に大声を出したステラに驚き言った。
「その紙袋から…足を離して…。」
ステラが低い声で紙袋を踏んでいる男へ言った。
「あ?」
男はステラに言われ言うと足元の紙袋を見た。
そして…ニヤリと微笑みながら次は思い切り紙袋を踏みつけた。
「あ!」
ステラはそれを見て言った。
「そんなに…大事なら手から離さなきゃいいのによ。」
「そりぁそうだ!ハハハ!」
男達は紙袋を踏みつけたまま笑いながら言った。
「許さない……。」
ステラがとても低く鈍い声で言った。
「あ?なんだ?」
男の一人が言った。
そして…次の瞬間…
ステラは男たちへ近づいた。
そして…
「よくも…紙袋を踏みつけてくれたわね…。あんたらの行動は…死に値するわ……。」
ステラはそう言うと…
男たちへ思い切り回し蹴りを食らわすとフラつく男たちの顎をしたから思い切り殴り上げた。
「「グファッ……」」
男たちは鈍い声を上げてその場へうずくまった。
「あんたら…本当に虫けら以下だね…。」
ステラは男たちを冷たい目で見ながら言うと…
トドメの一発で男たちの頭に踵落としを食らわせた。
男たちは起き上がれない程のダメージを食らってその場から動けずにいた。
そんな男達をステラは近くに置いてあった針金の様なもので男達二人をきつく縛り上げた。
そして…
「あんたら…この二人に土下座して謝りなさい。」
ステラは縛り上げた男達へ男達に暴行されたその場にいた二人を指差し言った。
暴行を受けた二人はどちらも男性で意識はあったのだった。
男達は謝る事に躊躇した。
「土下座の仕方知らないの?では…教えてあげるわ。こうするの!」
ステラは躊躇する男達へ言うと躊躇うことく男達の頭を後ろから力いっぱい押して額を地面につけさせた。
「はい!これが土下座ね!私が土下座を手伝ってあげてる間に早く二人へ謝罪しなさい。」
ステラが冷たく男達の頭を押さえつけながら言った。
「暴力を…ふるって…すいません……でした…。」
「すいません…でした…。」
男達は渋々ながらも暴力をふるった二人へ謝った。
「……あんたち…には…辛く酷い刑が処される事を願っておくから安心してちょうだい!」
ステラは男達の顔を上げるとにこりと微笑みながら言った。
(一先ず…こいつらの事は後で近くの人に居場所を伝えよう。そうすればすぐに街を巡回してる騎士達がくるだろうからね。)
ステラはそんな事を考えていた。
そして、ステラは男達が逃げられない様に思い切り二人の画面を殴り気絶させた。
(よし!これは正当防衛ってことで!)
ステラは気絶した二人を見て考えていた。
ステラはその後暴行を受けた二人の元へ近づいた。
まず…頭から血を流していた倒れ込んでいる男性の体を起こそうとした。
「触るな!」
ステラが男性の体を起こそうとした瞬間その男性がそう言いステラの手をはたいた。
(はい…?)
ステラは一瞬の出来事に呆気にとりていた。
「俺に……触るな…。女…なんか…。女…なんか…。どうせ…俺を…助けた見返りを…要求…してくるんだろう…。」
男性は痛みを感じながらも自分で体を起こそうとしながらステラへ言った。
だが…男性は酷く怪我をしていて自力では起き上がれずにいた。
「はぁ?自分で起き上がれなない人が何を言っているの?」
ステラは呆れた表情で言った。
「女…なんて…俺の…顔ばかりで…。」
男性は言った。
(この人…だいぶ拗らせ系じゃん…。よほど女性にいい思い出がないんだね…。よっぽどじゃないとここまで拗れないもんね…。でも…。)
ステラは男性を見て苦笑いを浮かべて考えていた。
そして…
ガバッ…
ステラは男性の言葉は無視して男性の体を起こした。
「触るなと…言っているだ…。」
男性が嫌そうに言った。
「いい?私は人を待たせているから早く戻らないといけないの!それに…虫けら以下の男達に遭遇した上に大切な物をあの男達にめちゃくちゃにされて今凄く私は機嫌が悪いわけ!加えて…あなた自意識過剰すぎるわ!女は顔ばかり…なんていう程イケメンでもないでしょ?私はあなたよりイケメンな人を沢山見てるからかあなたがイケメンだとは思わないし、まず親切にされたら最初にお礼を言うべきでしょう?女嫌いだろうが私には関係ない。私もお礼の一つも言えない男は嫌いよ。だから…今は大人しく言うことを聞きなさい!」
ステラは男性が反論する余地を与えないまま言った。
(まったく…拗らせてる奴ってどの世界にもいるんだよね。)
ステラはそんな事を考えていた。
そして、鞄の中からハンカチを取り出した。
(はっ…!これはバスティンから貰ったハンカチ…。これは使えるわけない。)
ステラはハンカチを見てハッとなり言った。
(ハンカチの代わりになりそうなものがないなぁ…。)
ステラは鞄の中を見て考えていた。
すると、あっ!と何か思いついた様に立ち上がると自分の服のスカートをビリビリと破いた。
その突拍子もない行動に男性二人は呆気に取られていた。
(今日は綿で作られた服を着てきてて良かった〜。)
ステラはスカートを破りながらそんな事を考えていた。
そして…ステラは破いたスカートを折り畳み男性の額に当て更に長めに破いたスカートを包帯代わりにして頭へ巻いたのだった。
他にも破いたスカートを使い応急処置が出来そうな腕や足首の手当をした。
「手際がいいんだな…。」
男性がステラの手当をしてる姿を見て言った。
「まぁね。昔から兄が怪我をしていて帰ってきてたから手当をしてあげてるうちにね。」
ステラは淡々と応えた。
「はい!できたわ!」
ステラが言った。
「あ…ありがとう…。助かった…。」
男性は俯き気味にステラへ言った。
「ふふ…。どういたしまして!」
ステラは笑いながら言った。
(さて…お次は…。)
ステラは次に蹴り上げられていた男性の手当を始めた。
「随分と…酷く蹴られたのね…。」
ステラは表情を歪ませて男性の怪我を見て言った。
(本当にあいつら…。)
ステラは苛つきながら考えていた。
「奴隷だからって…こんな扱いされていい訳ないじゃないの…。」
ステラは呟きながら手当をした。
そしてある程度の手当が終わった。
「一先ず…これでいいわね。」
ステラが言った。
「…………。んんん……。」
手当を終えたステラが男性の顔を見て言った。
そして…男性の伸びすぎた前髪をそっとすくい上げた。
男性はステラに髪を触られ体をビクッとさせた。
「あ…急に触って驚いた?ごめんなさいね…。でも…前髪が邪魔かと思って…。せっかく綺麗な目をしてるんだから隠さない方がいいわよ。それに前髪が目に入ると視力も悪くなるから気をつけてね。」
ステラは慌てて男性へ言うも男性の前髪を鞄からリボンを取り出してくくった。
「うん!こっちのほうがいいわ!」
ステラは満足そうに微笑みながら言った。
男性は固まっていた。
「とりあえず…私は助けを呼んでくるから二人共ここで大人しく待っていて。あの男達は当分目を覚まさないだろうから安心して。目を覚ます頃には連行されてると思うから。」
ステラは男性二人へ言うとその場を立ち去った。
その後…ステラは近くにいた人に事情を説明して現場に騎士を呼んで欲しいと伝えた。
負傷した二人の手当もお願いした。
後の事を任せたステラは急ぎバスティンの元へと向かった。
(あぁ…随分戻るのが遅くなった上に…ハートパンが無惨な姿になっちゃったよ…。)
ステラは駆け足で戻りながら考えていた。
そして…急ぎバスティンの元へ戻るとバスティンはまだ横になっていた。
「良かった…。まだ寝てるみたい…。」
ステラはホッとして呟いた。
その声を聞いてかバスティンが目を開けて起き上がった。
「あ…公爵様…お目覚めですか?」
ステラがバスティンへ言った。
「あぁ…。どうやら眠ってしまっていた様だな…。」
バスティンが言った。
(本当はずっと起きていたが…。それよりえらく帰りが遅かったな…。)
バスティンはそんな事を考えていた。
「ゆっくり眠れた様で良かったです。」
ステラがホッとした表情で言った。
「令嬢…!その服は!」
するとバスティンがステラの身なりを見て声をあげて言った。
「え…?あっ…これは…。」
ステラは慌てて言った。
(あぁ…戻るのに必死で服の事忘れてた…。さっき声かけた相手が私をジロジロ見てたのはそのせいか…。)
ステラは苦笑いを浮かべて考えていた。
「一体…何があったのだ?!」
バスティンが声をあげて言った。
(まさか…。何者かに…。)
バスティンは恐ろしい想像して考えていた。
「あ…実は…。」
ステラは気まずそうに言うとバスティンに何があったかを話した。
「そんな事があったのか…。」
バスティンはステラの話を聞き険しい表情で言った。
(誰かに…暴行などをされた訳ではなかったのだな…。)
バスティンはホッとしてそんな事を考えていた。
「はい…。ですが…今頃その男性達も保護されて男達も捕まってると思いますので…。」
ステラが言った。
「しかし…いくら何でも女性一人で大人の男に立ち向かうなど無謀すぎるし…一歩間違えたらとんでもない事になっていたんだぞ?」
バスティンは少し厶っとした表情で言った。
「分かっていますが…。人が暴行されているのに見捨てる訳にもいきませんでしたし…。」
ステラは気まずそうに言った。
「それはそうかもしれないが…。それより…何故…先程から泣きそうな顔をしているのだ?」
バスティンがステラの表情を見て言った。
(私がキツく言い過ぎたか…。)
バスティンは慌てて考えていた。
「パンが……。」
ステラが呟いた。
「パン?」
バスティンが言った。
「はい…。せっかく公爵様と食べようと思ったパンが男達に踏み潰されてグチャグチャになってしまったのです…。ハートパンは二人で半分づつ千切って食べると願いが叶うと言われているのに…。千切って食べる前から千切れてしまったのです…。」
ステラはしょんぼりしながら言った。
(あの…虫けらたちのせいで…。)
ステラは悔しそうに考えていた。
「………袋をこちらへ。」
バスティンがそんなステラを見て言った。
「??」
ステラは??な表情を浮かべながらも紙袋をバスティンへ手渡した。
バスティンは紙袋の中からぐちゃぐちゃになったパンを取り出した。
そして…ぐちゃぐちゃになったパンを同じ量づつ分けた。
「ほら…。半分づつ食べるのだろう?千切れてしまっているが一緒に食べたら問題ないのだろう?」
バスティンはそう言うとステラへパンを渡した。
「はい!!」
ステラはバスティンの言葉と行動に表情をパァっと明るくして言うとパンを受け取った。
(バスティン…天才…。というか優しすぎる…。さっきまで絶望の淵に立ってたのに今は天国にいる気分〜。)
ステラは嬉しそうにパンを食べながら考えていた。
「今まで食べたパンの中でこのパンが一番美味しく感じます。幸せです。」
ステラは満面の笑みでバスティンへ言った。
「大袈裟だな…。」
バスティンが言った。
そして…二人はパンを食べ終えると山を降りて馬車へ向かおうとした。
「これを…。」
その時バスティンがステラへ自分の上着を手渡した。
「え?」
ステラは??という表情で言った。
「そのスカートのままで歩くのはまずいだろう…。上着を腰へ巻くといい。」
バスティンが言った。
「公爵様……。ありがとうございます。」
ステラは微笑みながら言った。
(バスティン…あぁ…優しいバスティン…。オンラブを読んでいた時に本当は優しいバスティンだということを知ってバスティンに恋したのは間違いじゃなかったな…。)
ステラはそんな事を考えながら上着を腰へと巻いたのだった。
その後…二人は馬車まで歩き馬車へ乗り込むとバートン公爵家へ向かった。
馬車が出発してしばらくするとステラはコクッ…コクッ…と眠そうにしていた。
そして…深くコクッ…となった瞬間体がバランスを崩しバスティンが慌ててステラを支えた。
そして…バスティンはステラの横に座りステラを自分の肩に持たれかけさせた。
(結局…帰りもこの状況なのだな…。)
バスティンはそんな事を考えていた。
そして…バスティンはステラの腰に巻かれた自分の上着を見た。
(令嬢が…事件に巻き込まれたと聞いた時…危険をかえりみない令嬢の行動に腹がたったと同時にもしも…令嬢になにかあったらと思うと一瞬怖くなった…。この感情は一体何だ…?)
バスティンはそんな事を考えていたのだった。
そして…あっという間に馬車がバートン公爵邸へと到着した。
ステラは帰りの馬車でも寝てしまった事に後悔してしょんぼりしていた。
そこに馬車が到着した事に気づいたダニーとジョシュアが急ぎ外へ出てきてステラを迎えた。
「おかえりステラ…。」
「スーおかえり…。」
ダニーとジョシュアが何年ぶりかに再会したかの様にステラへ言った。
「ただいま帰りました…。」
ステラはそんな二人を見て苦笑いを浮かべて言った。
(二人共きっと…馬車が帰ってくるのを窓にへばりついて見てたんだろうな…。)
ステラはそんな事を考えていた。
「バスティン…わざわざ送ってくれた事に感謝する…。」
ダニーがバスティンへ言った。
「はい…。」
バスティンが言った。
「公爵様…今日は一日ありがとうございました。とても…楽しく幸せな一日でした。」
ステラは嬉しそうにバスティンへ言った。
「……あぁ。私もなかなか悪くない一日だったよ…。ステラ嬢…。」
バスティンがステラへ言った。
「え…?今…名前…。」
ステラはバスティンが自分の名前を呼んだ事に気付き信じられないという表情で言った。
「では…私はこれで失礼するよ…。」
バスティンはそう言うと馬車へ戻った。
ステラを背にしたバスティンはふっと笑みを浮かべていた。
(これで…令嬢の今日の計画は遂行完了しただろう…。)
バスティンはそんな事を考えていた。
「あ…上着は洗ってお返ししますね。」
ステラは慌てて言った。
「あぁ…。」
バスティンがそう言うと馬車が出発したのだった。
「ステラ…上着とはなんのことだ?!って……ステラ…一体…これはどういう事だ?!何故…スカートがこの様に破れているのだ?!」
ダニーがステラのスカートを見てゾッとした表情で言った。
「スー…どういう事?バスティンに何かされたのか?!」
ジョシュアも顔を真っ青にさせて言った。
(バスティンが…私の名前を呼んでくれた…。それに…なかなか悪くない一日だったって……。)
ステラは固まったまま考えていた。
「おい!ステラ聞いているのか?これは一体どういうことだ?!」
ダニーが泣きそうな表情でステラへ言った。
「スー!スー!聞いてるの?!何があったか説明してくれ!」
ジョシュアも更に顔を真っ青にして言った。
(名前を呼んでもらえることがこんなに幸せだなんて…。バスティン……。)
ステラは固まったまま考えていた。
そんなステラの耳で横で血相を変えて言っているダニーとジョシュアの言葉などステラの耳には入ってこなかったのだった…。
帰りの馬車の中でバスティンは窓の枠に何か挟まっていることに気づいた。
「これは…。」
バスティンが挟まっているものを手に取った。
"公爵様…
いらないと言われましたが…やはり今日という日の思い出なので公爵様にも持っていてもらいたいと思いましたので一枚お渡しします。
出来たら視界に入る場所に飾って頂けると嬉しいです。
今日は本当に幸せな1日をありがとうございました。
ステラより"
窓の枠に挟まっていたのは今日撮影さてもらった写真と手紙だった。
「ハッ……出来ることならか…。それは絶対にと同じではないか…。」
バスティンは写真を見て手紙を読んでフッと笑みを浮かべながら呟いたのだった。
そして…
ステラは家に入りようやく興奮状態から落ち着きを取り戻しダニーとジョシュアにスカートを破った経緯を説明した。
案の定…二人は激怒し暴行した男達を許さないとブツブツ呟いていた。
そして…二度と危険な事をするなと口酸っぱく言われたのだった。
その日の夜…。
「あぁ…今日は本当に幸せな1日だったなぁ…。」
ステラは障害物競走で手に入れた狼の人形を抱きながら呟いた。
その人形には既に左目に眼帯…左手に手袋をつけた。
ステラは帰ってくるなり人形に合うサイズの眼帯と手袋を自分で作ったのだった。
バスティンから貰ったハンカチもきれいにアイロンして小さな中が見えるショーケースへと大切に保管した。
(それにしても…今日はグレイスも偶然見かけたし…拗らせ系イケメンに…きれいな目をした奴隷くんにも会ったしで予想外な事もたくさんあったな…。)
ステラはふとそんな事を考えていた。
そして…いつの間にか人形を抱きしめたまま眠りについていたのだった…
この時のステラは自分が助けた二人の男性がオンラブに出てくる登場人物だったなんて思いもしていなかったのだった……
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悪役令嬢でもなくヒロインでもないまさかのモブキャラに転生したので大好きなハンドメイドをしながら暮らす事にしました!(※不定期更新)
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