7.じゃじゃ馬令嬢は推しとのお出かけチャンスをものにする
ステラは急ぎ足で騎士団の訓練場まで到着した。
訓練場では既に騎士たちが訓練をしていた。
(バスティンやお父様達はどこかなぁ…。)
ステラは訓練場を見渡しながら考えていた。
そして…
「あの…訓練中申し訳ありません…。第一部隊のバートン団長と副団長はどこにいらっしゃいますか?」
ステラは近くにいた訓練中の騎士に声をかけた。
ステラに声をかけられた騎士は一瞬固まった。
訓練場に女性が来る事はほとんどない上にステラの美しさに圧倒されていたのだった。
周りにいた騎士たちも思わず手を止めステラに魅入ったのだった。
「あの……。大丈夫ですか?」
固まった騎士を見てステラは心配そうに言った。
「え?あ…あっ…はい!大丈夫です。失礼致しました。バートン団長と副団長ですね。」
騎士はステラに声をかけられハッとなり慌てて応えた。
「ラスター団長!こちらのご令嬢がバートン団長と副団長に会いに来られていますがご案内してもよろしいでしょうか?」
騎士が少し離れている場所にいたバスティンへ大きな声で言った。
(何?!バスティン?!)
ステラは騎士の言葉を聞き目を輝かせて騎士が見ている方向を見た。
ステラの見る先にはペーターと軽い剣の慣らし合いしていたバスティンがいた。
(バ…バスティン…。バスティンの剣の振り姿…尊し…。)
ステラはバスティンを見てバスティンの剣の振り姿を目に焼き付けながらニマニマした表情で考えていた。
そして…ステラは嬉しそうな笑みを浮かべてバスティンへ手を振った。
騎士に声をかけられたバスティンがステラの存在を見て少し驚いた表情を浮かべた。
バスティンが見たステラは満面の笑みで自分へ手を振っていたのだった。
「バスティン…?」
横にいたペーターがバスティンへ言った。
「ん?あぁ。なんだ?」
バスティンがペーターへ言った。
「あれはステラ様だよね?私がバートン団長とジョシュアの所へ案内してこようか?」
ペーターがバスティンへ言った。
「……あぁ。そうしてやってくれ…。」
バスティンは少し間を空けて言った。
そして…ペーターが急いでステラの元へとやってきた。
「ステラ様…。ようこそおいで下さいました。」
ペーターがステラへ言った。
「ペーター様こんにちは。」
ステラは笑顔でペーターへ言った。
「ペーター副団長…こちらのご令嬢とはお知り合いなのですか?」
ステラが声をかけた騎士が不思議そうにペーターへ尋ねた。
周りの騎士たちも気になったのか聞き耳を立てていた。
「あぁ…。こちらのご令嬢はバートン団長のご息女でバートン副団長の妹さんだ。」
ペーターが騎士へ言った。
「初めまして…。バートン公爵家のステラ・バートンと申します。」
ステラはとてもきれいな仕草で優しい笑みを浮かべて騎士たちに向かって挨拶をした。
「「ええええええぇぇぇーーー!」」
その場の騎士たちは一斉に声を上げた。
「バ…バートン団長の娘さんですか?!あの…噂の…。」
騎士が驚いた表情で言った。
「はい。その…噂のというのは何でしょうか?」
ステラは頷きながら応えると騎士の言葉が気になり言った。
「あ…それは…ですね…。」
騎士は気まずそうに言った。
ステラはそんな騎士の様子を見て??という表情を浮かべていた。
(噂って何よ…。何で騎士団で私が噂になってんのよ。)
ステラは意味が分からずそんな事を考えていた。
「ハハ…その噂のというのは…バートン団長とジョシュアが騎士団内でいつもステラ様の溺愛話をされるので…。騎士団の騎士たちは第一、第二部隊合わせて皆ステラ様の話を幾度となく聞いてきたからなのです。」
ペーターは少し言いにくそうに苦笑いを浮かべてステラへ説明した。
「あ…あぁ…。そういう事だったのですね…。」
ステラは苦笑いを浮かべて納得した表情で言った。
(お父様とお兄様ったら…はぁ…まぁ何となくどんな話をしているかは想像はつくけどね…。親ばか妹ばかは永遠に不滅だろうね。)
ステラは苦笑いを浮かべたまま考えていた。
「ステラ様、バートン団長のところまで私がご案内致します。」
ペーターが気を取り直してステラへ言った。
「ありがとうございます。」
ステラは笑顔でペーターへ言った。
そしてステラはペーターに連れられてまずはバスティンの元へと向かった。
「ラスター公爵様…こんにちは。」
ステラは嬉しそうに満面の笑みでバスティンへ言った。
「あぁ。」
バスティンがステラへ言った。
(あぁ〜…訓練着のバスティンも素敵。素敵すぎて罪!)
ステラはバスティンを見てそんな事を考えていた。
「あ…そうだ…。ラスター公爵様よければこちらを皆さんでお食べ下さい。」
ステラはバスティンを見てヨダレが出そうなのを堪えて言った。
「これは?」
バスティンはステラから差し出されたものを見て言った。
「差し入れです。ちょうどお昼を食べてから数時間経つと思いますので休憩がてらにと思いまして。レモンの蜂蜜漬けとフルーツゼリーとレモネードです。」
ステラは笑顔でバスティンへ言った。
「気遣い感謝する。皆で頂くことにしよう。」
バスティンがステラへ言った。
「いえ!将来のラスター公爵夫人として騎士団の皆さんの事を気遣うのは当たり前のことです。」
ステラは笑み混じりのどや顔でバスティンへ言った。
そんなステラにバスティンは目を点にしていた。
ペーターはクスっと笑っていた。
その時…
「ステラ!」
第一部隊を引き連れたダニーがステラの姿を見て言った。
「あっ!お父様!」
ステラがダニーへと言った。
「ステラ!訓練場に来たなら真っ先に私の元へ来てくれたら良かったのに…。」
ダニーはステラがバスティンといるよを見て切なそうな表情でステラへ言った。
「つい先程来たばかりなのです。真っ先にお父様とお兄様の所へ向かうつもりでしたよ。お父様達の居場所が分からなかったのでこちらの第二部隊の騎士の方に尋ねたところペーター様とラスター公爵様がいらしたのです。ペーター様がちょうどお父様達の所へ案内してくれるとこだったのです。」
ステラはやれわれという表情を浮かべるも笑顔でダニーへ言った。
「そうなのか?!そうか…そうか!ハハハハ…。」
ダニーはステラの言葉を聞きとても満足そうに笑いながら言った。
「スー!!よく来たね!」
少し遅れてやって来たジョシュアがステラの元へと駆け寄り笑顔で言った。
「はい!お兄様!」
ステラは笑顔でジョシュアへ言った。
「第一部隊もこちらで訓練するのですか?」
ステラがダニーへ言った。
「ん?あぁ。少し休憩を挟んでから訓練というよりはちょっとしたゲームの様なものをするんだよ。」
ダニーはニヤリと笑みを浮かべて言った。
「ゲーム…ですか?」
ステラは少し驚き??という表情でダニーへ言った。
「そうだ。ルールは簡単で各部隊で弓矢を的に各自当てるというものだ。弓矢を3度放ち一番的の真ん中に当てた者が勝ちだ。もちろん真ん中でなくとも真ん中により近く当てた者が勝者となるのだ。勝った者には各部隊の団長に望みを一つ叶えてもらえるという特権が得られるのだ。半年に一度この様な事をすることで騎士たちの向上意識も高まり尚且いい弓矢の訓練にもなるという訳だ。」
ダニーがステラへ細かく説明した。
(各団長に望みを1つ叶えてもらてるですって?!それって第二部隊だとバスティンに望みを叶えて貰えるってことよね?!何?!この最高のゲームは!)
ステラはダニーの説明を聞き内心興奮気味に考えていた。
「ちなに望みってどの様な望みでもいいのですか?」
ステラがダニーへ尋ねた。
「度が過ぎた望みは無理だが…ある程度は叶えてやっているぞ。前回は私は勝利した者には防具が欲しいと言うのでプレゼントしてやったしバスティンは勝利した者に酒を奢ってやっていたな。」
ダニーは思い出す様にステラへ言った。
「そうなのですね…。」
ステラは頷きながら言った。
「せっかくだからステラも見ていけばいいさ。」
ダニーは笑顔でステラへ言った。
「……いえ…。そのゲーム…私も参加したいです!」
ステラは満面の笑みでダニーへ言った。
「な…何?!参加したい?!」
ダニーは予想外のステラの言葉に驚き言った。
「はい!」
ステラは自信満々に言った。
「スー…これはゲームというけれど遊びではないんだよ?それに的との距離も普段の訓練の距離よりも15メートル程離れているんだ。スーが弓矢を扱えるのは知っているけどいくらなんでも危険だよ…。」
会話を聞いていたジョシュアが心配そうにステラへ言った。
「ですが…見ているだけというのも退屈なので…。だめですか?」
ステラは目をキラキラさせてねだるような表情でダニーとジョシュアへ言った。
そんな表情をされたダニーとジョシュアはグッとなった。
「わ…分かった…。ステラの参加を許可する…。」
ダニーは呆気なくステラのおねだりフェイスに負けて言った。
「本当ですか?!ありがとうございます!」
ステラは嬉しそうにダニーへお礼を言った。
(ヨッシャー!!絶対にバスティンに望みを叶えてもらうんだい!オンラブの話中にこんな事を騎士団でしているなんて書いてなかったけどこんな最高な事をしてたなんて!)
ステラはそんな事を考えていた。
「ただし…私達が少しでも危険だと判断したらすぐ止める様に。」
ジョシュアがステラへ言った。
「はい。わかりました。」
ステラは頷きながら言った。
「と…いうわけでバスティン…ペーター聞いた通りステラも弓矢の的あてに参加する事になった。」
ダニーがそばに居たバスティンとペーターへ言った。
「承知しました。」
ペーターが少し心配そうな表情で応えた。
「……。師匠がいいというなら…分かりました。」
バスティンは面倒臭そうな表情で応えた。
(一体令嬢はどういうつもりなのだ…。弓矢は少しやったことがある程度では危険だというのに…。怪我でもしたらどうするつもりなのだ。)
バスティンはステラが危険をかえりみないステラの発言を不快に思いつつ自分では気づかぬうちにステラの心配をしつつ考えていた。
「あっ!そうだわ!お父様お兄様…騎士団の皆さんに差し入れを持ってきたので第一部隊の騎士の方達にも食べてもらって下さい。」
ステラは思い出した様にダニーとジョシュアへ言った。
「何?!差し入れを?!ステラ…ありがとう。私の娘は何と優しく気が利く子なのだ。」
「スーありがとう。スーの差し入れ久しぶりだから嬉しいよ。」
ダニーとジョシュアは周りの騎士たちに見られていてもお構いなしにデレデレした表情でステラへ言った。
そんなダニーとジョシュアを周りの騎士たちは普段の鬼のような面相からは想像できないという様に苦笑いを浮かべて見ていたのだった。
「皆!我が娘が皆に差し入れを持ってきてくれたので今から休憩をとる。」
ダニーが騎士たち全員に聞こえる様に大きな声で言った。
「「はい!!」」
騎士たちは一斉に応えた。
そして…騎士たちは休憩に入った。
ステラは座っている騎士たちに順番に差し入れにもってきたものを手渡して言った。
(あぁ〜こうしてると前世を思いだなぁ。じいちゃんの道場の生徒たちにこんな風にお茶やお菓子を出してあげてたなぁ。)
ステラは差し入れを配りながら前世を思い出しながらそんな事を考えていた。
差し入れを手渡された騎士たちはステラが天使に見えるかの様に皆魅入っていた。
そんな騎士たちに目を光らせて《お前たち命が惜しくばステラを見つめるな。ステラを見つめるなど1億年早いぞ!》と言わんばかりにもの凄い圧のかかった視線をダニーとジョシュアが送っていたのだった。
そんなダニーとジョシュアを見ていたバスティンは呆れて…ペーターは苦笑いを浮かべていた。
(的あての望み何にしようかなぁ。ありすぎて困るなぁ。結婚してくださいは既に言っちゃったしなぁ。写真撮らせてください?バスティンの着てるシャツをください?手を繋いでください?抱きしめてください?ん〜ありすぎて選べない…。毎日的あてしてくれたら毎日望み叶えてもらえるんだけどなぁ…。)
ステラは騎士たちがダニーとジョシュアに圧をかけられてる事など気づかないステラは一人色んな妄想をしつつ考えていたのだった。
※
そして休憩も終わりいよいよ的あてをする時間がきた。
「お父様…私は第二部隊で的あてをしますね。」
ステラがダニーへ言った。
「第二部隊で?!なぜだ?!私とジョシュアがいる第一部隊でいいだろう?」
ダニーは慌てて言った。
「お父様とは親子なのですし…お父様なら的あてをしなくてもいつでも私の望みを叶えてくれるでしょう?」
ステラがにこりと微笑みながら言った。
「それも…そうだな。ステラの望みなら的あてなどなくてもいつでも私が叶えてあげれるからな。」
ダニーはステラの言葉が嬉しくてデレデレしながら言った。
(お父様…チョロすぎ!)
ステラはダニーを見て思っていた。
「はい。ですので私は第二部隊の方で的あてに参加さますね。」
「あぁ。わかった。」
ステラはにこりと微笑みながらダニーへ言うとダニーは頷きながら言った。
(よし!これでOKね!第二部隊じゃなきゃバスティンに望みを叶えて貰えないもんね〜。)
ステラはルンルンで考えていた。
そして…的あてが始まった。
的は各部隊に5個づつたっていて的に対して5人づつ並び一人づつ矢を放っていく流れだった。
ステラは初めてということで順番は一番最後だった。
まずは…的あてに参加しない副団長であるジョシュアとペーターが矢を放ちお手本を見せた。
ジョシュアもペーターも見事に3本の矢を的の真ん中へと当てた。
(さすが副団長だけあるなぁ。でも…私も負けてないわ…。前世では弓道の全国大会で優勝したし今世でも前世の記憶を思い出してからこの世界の弓に慣れようと練習したんだから。)
ステラはジョシュアとペーターの的あてを見ながらそんな事を考えていた。
そして…その後ダニーの合図と共に騎士たちが矢を放ちだした。
騎士たちは順番に次々と矢を放っていった。
的までの距離があるせいか訓練している騎士ですらジョシュアやペーターの様に3本とも弓を的の真ん中に当てる事ができなかった。
そして…いよいよステラの順番が回ってきた。
ダニーやバスティンを含めその場にいた者達は皆ステラの事を怪我などしないか心配そうに見つめていた。
(思ってたより的までの距離ないなぁ。これくらいの距離なら前世で弓道やってた時の距離だなぁ。)
ステラは皆の心配をよそに的を見てそんな事を考えていた。
そして…
ステラが弓を持ち構えた。
その瞬間…騎士たちはおろかバスティンもペーターも驚いた。
ステラの弓を構える姿はドレスを着ているとは思えない程正確な構え方だった。
あまりにも凛々しいステラの姿にバスティンやペーターや騎士たちは魅入った。
そして…
ステラは躊躇なく弓を放った。
弓はスピードが衰える事なく見事に的の真ん中に刺さった。
そして…ステラは休む事なく2本目、3本目の矢を放った。
その矢も見事に的の真ん中に刺さった。
あまりにも一瞬の出来事にその場が静まり返った。
騎士達はもちろんのこと…バスティンもステラから目が離せなかった。
(何と…綺麗な弓の放ち方なのだ…。)
バスティンは自分でも無意識にそんな事を考えていた。
(よし!もらった!これでバスティンに望み叶えてもらえる!)
ステラは周りが静まり返っている事など気にもせず的に刺さった矢を見て嬉しそうに考えていた。
そして…
「ラスター公爵様〜!この勝負は私の勝ちですよね?ですので私の望みを叶えて下さいね!」
ステラは満面の笑みを浮かべて手を振りながらバスティンの方へと向かいながら言った。
そしてステラはバスティンやダニー達が座っている場所へ駆け寄った。
「お父様、的あてに参加させて下さりありがとうございました。とても楽しかったです。」
ステラは笑顔でダニーへお礼を言った。
「あぁ。しかし…ステラ、弓の腕を上げたな!」
ダニーは誇らしそうにステラへ言った。
「驚きました?」
ステラはにこりと微笑みながら言った。
「あぁ。さすがは私の娘た!構え方から放ち方まで完璧だったぞ!」
ダニーは誇らしそうに言った。
「スーは本当に凄いよ!自慢の妹だ!」
ダニーの横にいたジョシュアも誇らしそうに言った。
「へへへ…何だかそこまで言われると照れますね。」
ステラは照れ笑いを浮かべて言った。
「それより…騎士の方たちは何故急に静かになったのですか?」
ステラが騎士たちを指差しながらダニーへ言った。
「ん?そういえば…やけに静かだな…。お前たち一体どうしたのた?」
ダニーはステラに言われて騎士たちを見て言った。
(あ…もしかして…私が勝利を勝ち取った事で屈辱されたと思って気を悪くしてるとか?!うわぁ〜そんなぁ…。今後の事も考えて騎士たちは仲良くしておきたかったのに…。どうしよう…。)
ステラはハッとなり慌てて考えていた。
(オンラブの話中では騎士団の騎士たちの事とかは詳しくは書いてなかったからどんな感じかわからないしなぁ…。)
ステラは頭を悩ませながら考えていた。
「あの…恐らく皆ステラ様の的当てに呆気にとられてるのではないですか?」
ペーターが苦笑いを浮かべてダニーへ言った。
「何?!呆気にとられているだとと?!皆!そうなのか?」
ダニーは騎士たちへ言った。
ダニーが言う騎士たちは一斉に頷いたのだった。
「正直…私も驚きました。これまで他国との戦いで女性騎士を何人も見てきましたが…ステラ様程の腕をもつ者は見たことありません。それも…騎士ですらないステラ様が…。騎士たちが驚くのも無理はありません。」
ペーターは驚きを隠せない表情でダニーへ言った。
「バスティンも驚いただろう?」
ペーターがバスティンへ話を振った。
「ん?あ…あぁ…。そうだな…。」
バスティンは真顔で応えた。
「何だか…そんなに驚かれるなんて思ってなかったので何だか…悪いことをしてしまいましたか?」
ステラは苦笑いを浮かべてペーターへ言った。
「い…えい…悪いことなどではありません!」
ペーターは慌てて言った。
「そうですか?それならいいのですけど…。」
ステラはどこかしょぼんとした表情で言った。
「あの…皆さん…私が勝手に的あてに参加してしまった事で皆さんの気を悪くさせてしまったのなら申し訳ありません…。」
ステラは騎士たちの方を見て申し訳なさそうに言った。
「ステラ!何を言ってるんだ!」
「スー…そうだよ。スーが謝る事など何もないんだよ。」
ステラを見てダニーとジョシュアが慌てて言った。
「ですが…。」
ステラは申し訳なさそうに言った。
「ハァ…。令嬢…。あの者達を見てみろ。どう見ても気を悪くさせたというよりは令嬢に対して尊敬に近い眼差しで見ている様だぞ?」
見かねたバスティンがステラへ言った。
「え…?そうなの…ですか?」
ステラはバスティンの言葉を聞き騎士たちの方を見て言った。
「はい!ラスター団長の言う通りです。ステラ様の弓の放ち方は完璧と言ってもいい程でした!騎士の私どもも思わず見入ってしまいました。」
「その通りです。本当に驚きました。」
「あの様に綺麗な姿勢で矢を放つ女性は今まで見たことありません。」
「素晴らしかったです。完全に騎士である我々の負けです。」
「是非…騎士の我々にご指導頂きたい程です!」
「それはいい考えだな。是非我々にご指導下さい!」
「ステラ様は騎士団へ来られるだけで空気も和みます。」
「そうだな。ステラ様は美しく…弓も文句なしで…料理もお上手…。」
「あぁ…。その通りだ。」
「ステラ様!是非!我々にご指導下さい。」
騎士達は急に興奮気味にざわざわしながらステラへ言った。
「では…皆さん気を悪くされた訳ではないのですね。良かったです。」
ステラはホッとした様に笑みを浮かべて言った。
(良かった〜。気を悪くさせた訳じゃなかったのね〜。将来バスティンのお嫁さんになる予定なんだからバスティンが働く騎士団の騎士に嫌われたらどうしようもないもんね。本当に良かった〜。騎士の人達は思ってたよりいい人達ばっかりで良かった。)
ステラはホッとしてそんな事を考えていた。
そんなステラの笑顔を見た騎士達はドキッとしたのだった。
騎士達はステラをまるで女神を見るかの様な目で見ていた。
しかし…そんな騎士達の表情が一瞬にして凍りついた。
ステラの後ろでダニーとジョシュアが鬼の面相になり騎士たちを睨みつけていた。
(お前ら…軽々しくステラに話しかけるな…。何がステラに指導してほしいだ…。)
(ステラに馴れ馴れしくするなどいい度胸だな…。)
ダニーとジョシュアはそんな事を考えながら鬼の面相で騎士達を圧をかけて睨みつけた。
騎士達の表情を見たステラはもしやと思い後ろを振り向いた。
ステラが振り向いた瞬間にダニーとジョシュアは誤魔化す様に明後日の方向みていた。
(まったく…この二人ときたら…。娘が良く言われてるのに騎士達に圧をかけるなんて…。この二人の娘バカ妹バカには困ったもんね。)
ステラはダニーとジョシュアを見て呆れた表情で考えていた。
「そ…それで、ステラ様はバスティンに何をお願いするのですか?」
その場の空気を和ますかの様にペーターが慌ててステラへ尋ねた。
「そうだ!ステラ…バスティンに何をお願いするのだ?」
ペーターの言葉を聞いたダニーもステラへ言った。
「それは………。」
ステラはそう言うとバスティンをジッと見た。
ステラに見られたバスティンは??という表情を浮かべていた。
(令嬢は何を言うつもりだ…?また結婚してくれか…?)
バスティンはそんな事を考えていた。
「私の望みは…ラスター公爵様とのデートです!!」
ステラはドヤ顔で満面の笑みを浮かべてバスティンへ言った。
ステラがバスティンへ言った瞬間…一瞬シーンとなった。
そして…
「「えええぇぇぇーー!!」」
騎士達は思わず声を大にして言った。
ペーターはクスクスと笑っていた。
ダニーとジョシュアは思考が固まったかの様に呆気にとられた表情を浮かべていた。
バスティンも呆気にとられた表情を浮かべていた。
「なっ…!」
バスティンはハッとなり声を漏らした。
「異論は認めません!これは正当な勝負の中で勝利を勝ち取った者の特権です。無理くりな望みではありませんよね?」
ステラは強気でバスティンへ言った。
「ペーター様もこれは無理なお願いだとは思いませんよね?!」
ステラは目を見開き有無を言わせないという表情でペーターへ言った。
「え?あ…はぁ…そうですね…。」
ペーターは慌てて苦笑いを浮かべて言った。
「ほら!ペーター様もこう言っておられます!」
ステラはバスティンへ言った。
「お父様とお兄様もいいですよね?!」
ステラはダニーとジョシュアへも言った。
しかしダニーとジョシュアは固まったままだった。
(あれ?二人共何で固まってんの?まぁ…いっか!)
ステラは固まる二人を見て??という表情を浮かべて考えていた。
「ほら!お父様とお兄様も大丈夫と言っています!」
ステラはバスティンへ言った。
「おい!師匠とジョシュアは何も言ってないだろう!」
バスティンが慌てて言った。
「いえ!あの表情は大丈夫!と言っている表情でしたので!問題ありません!」
ステラは言い切った。
(もはや…ここは無理くりでも引き下がる訳にはいかないからね!)
ステラはそんな事を考えていた。
「なっ…!」
バスティンはステラの半ば無理くりな言い方に表情を歪めて声を漏らした。
「はい!決まりです!では…公爵様の都合がつく日を教えて下さい!教えて頂くまでここから一歩も離れません!あっ!公爵様が離れても教えてもらえるまでつきまといますので!」
ステラは表情を歪めるバスティンなど気にせず更に言った。
「………はぁ…。まったくどこからその図太さがくるのだ…。分かった…。望みを叶えたらいいのだろう…。」
バスティンはこれ以上言ってもステラが引き下がらないだろうと確信して諦めた様に言った。
「はい!ありがとうございます!」
ステラは表情をパァァァと明るくして心から嬉しそうに笑って言った。
(やったぁ〜!!バスティンとデートができる〜。色々悩んだけど最終的に出た答えはデートだったんだよね。前世でオンラブ読みながら何度バスティンとデートをしてみたいと思ったか…。それを思い出したらデート一択だったんだよね〜。)
ステラはルンルンでそんな事を考えていた。
「あっ…そうだわ!はい!」
ステラは何かを思いついたかの様にバスティンへ言うとバスティンの前の小指を立てた手を差し出した。
「何なのだ?」
バスティンは眉をひそめて言った。
「指切りですよ!指切り!」
ステラが笑顔で言った。
『この間…公爵様のお宅でやったでしょ?小指同士を絡める指切りを!』
ステラは小声でバスティンへ言った。
バスティンはステラに言われてステラと指切りした事を思い出した。
バスティンそれと同時にバッと下を向いた。
ドクっ…
バスティンはステラとの指切りを思い出すと急に胸が締め付けられる様な感覚に襲われ咄嗟に下を向いた。
(何…なのだ…?!胸が締め付けられる…。)
バスティンは意味が分からずそんな事を考えていた。
「公爵様?」
ステラはそんなバスティンへ声をかけた。
ステラに声をかけられバスティンはバッと顔を上げた。
そして…
バスティンは少し迷いながらもステラの差し出した手の小指に自分の小指を絡めた。
(バスティンの直の指ーー!生体温ー!この間は手袋越しだったけど今日は生ーー!!最&高…至福…。)
ステラは内心悶絶しながら興奮気味に考えていた。
そして…
「指切りげんまん…嘘ついたら針千本の〜ます!指切った!」
ステラは嬉しそうに言った。
そして…ステラはバスティンの指を離した。
「これで…本当に約束ですね!」
ステラは満面の笑みでバスティンへ言った。
「……あぁ…。」
バスティンは無愛想に応えた。
「ステラ…私は…そんな事許さないぞ…。」
「私もだ…。スーにそんな事はさせない…。」
固まっていたダニーとジョシュアがようやく正気を取り戻してバスティンを睨みながら言った。
そんな二人をステラはこれ以上言ったらどうなるかわかってますよね?と言わんばかりの表情で見た。
ステラの表情を見てダニーとジョシュアはグッとなった…
「お父様、お兄様、もう決まったのですからあれこれ言わないで下さいね!」
ステラはニヤリと微笑みながら言った。
「ステラ〜〜…」
「ス〜〜…。」
そんなステラにダニーとジョシュアは泣きそうな表情で言った。
そんな二人を見てステラはクスクスと笑っていた。
そんな様子を見ていたペーターと騎士達は苦笑いを浮かべていた。
そんな中…バスティンは自分の右の手のひらを黙ってじっと見つめていたのだった。
こうして…ステラは見事にバスティンとのデートの権利を得たのだった。
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