3.じゃじゃ馬令嬢は戦地(推しの元)へ乗り込む
皇太子の誕生日パーティーから一夜明けた翌日…
ステラは朝から昨夜の余韻に浸っていた。
「はぁ〜……昨日は忘れられない日になったわ…。」
ステラは表情を緩めながら言った。
「それほど素敵な皇太子殿下の誕生日パーティーと社交デビューだったのですね。」
ステラの部屋へ訪れていたリサがステラの言葉を聞いて言った。
「えぇ…それはもう…最高だったわ…。」
ステラはニヤニヤしながら言った。
(あぁ〜生バスティン最高にかっこよかったわ〜。あぁ〜好き…。)
ステラはニヤニヤしながら昨夜のバスティンの事を思い出しながらそんな事を思っていた。
「もしや…社交デビューの記念すべきダンスを皇太子殿下と踊られたのですか?」
リサはニヤりとした表情でステラへ尋ねた。
「まさか!殿下と踊るわけないじゃない!ラスター公爵様よ!!」
ステラは嫌悪の表情でダンスの相手がアーノルドじゃないと言い切るとすぐに目を輝かせて相手はバスティンだと言った。
「はい…?皇太子殿下ではなく…ラスター公爵様ですか?」
リサは予想外のステラの言葉に驚きを隠せない表情で言った。
「そうよ!」
ステラはにこにこと笑みを浮べて応えた。
「ラスター公爵様?ですか?えっ…とあの…冷徹眼帯公爵と呼ばれているあのラスター公爵様ですか?」
リサは少し表情を歪ませながら信じられないという表情で言った。
「そうよ!でも…冷徹眼帯公爵なんかじゃないわ!まあ…眼帯はつけているけれど決して冷徹なんかではないわ!周りが本当の彼の事を何も知らないのに勝手に噂話をしているだけよ!」
ステラは少しムッとした表情でリサへ言った。
「あ……申し訳ありません…言葉が過ぎました。しかし…ステラ様はラスター公爵様とこれまでお会いした事などありませんでしたよね?」
リサは慌ててステラに謝るとふと疑問に思ったことを言った。
「えぇ。そうね…。でも…ラスター公爵様の話はお父様やお母様…お兄様から聞いていたからどんな方かはよく知っていたわ…。」
ステラはとても愛おしいそうな表情でリサへ言った。
(リサには前世からバスティンを知っていて推しであり恋した相手…なんて言えないもんね…。)
ステラはリサに話しながらそんな事を考えていた。
「そうなのですか…?私はてっきり皇太子殿下に想いを寄せられているのかとばかり思っていました。ステラ様は幼い頃殿下にお会いしてから殿下を素敵と言ってらしたので…。」
リサはどこか残念そうな表情で言った。
「あれはまだ私が子供だったからね…。憧れみたいな感覚だったのよ。」
ステラはリサの言葉に苦笑いを浮かべて言った。
(まぁ…オンラブのステラはアーノルドにぞっこんだったけどね…。私はあんな腹黒ペテン師なんてお断りだわ!)
ステラはリサに言いながらそんな事を考えていた。
「それで…実際に公爵様とお会いして公爵様はどの様な方でしたか?」
リサが尋ねた。
「それは…もう…最高だったわ…。やっぱり私が思っていた…ううん…思っていたよりも遥かに素敵だったわ。」
ステラは昨夜のバスティンの事を思い出して表情をうっとりとさせながら応えた。
「そうなのですか?」
リサはどこか信じられないという表情で首を傾げながら言った。
(ラスター公爵様といえば皇室騎士団第二部隊の団長を努める一方で色々な恐ろしい噂がたつ冷徹眼帯公爵とも呼ばれている方なんだけど…。
出生にも何なら悪い噂ばかりだけれど…。ステラ様はそんな噂を知っていながら公爵様を想っているようね…。)
リサはステラに言いながらもそんな事を考えていた。
「えぇ。もう…冷たい視線ですから素敵すぎて危うく昇天するところだったわ。」
ステラはその時の事を思い出しながら表情をほころばせなが言った。
「そ…それ程までにラスター公爵様を想っておられるのですね…。」
リサは幸せそうな笑みを浮かべるステラを見て胸がキューンとなるのを感じながら言った。
「そうなの!だからね!これからは私が公爵様を愛し幸せにしたいと思ってるの。だから…これからは…更にリサには苦労かける事があるかもしれないけどいい?」
ステラは自信満々に言い切ると急に上目遣いになりリサに言った。
「うっ……。わ…分かりました。」
リサはグッと堪える様な表情で応えた。
(ステラ様の上目遣いに昔から弱いのよね…。あんな輝いた目で謂われたら断れる訳ないものね…。)
リサはステラに応えながらそんな事を考えていた。
「とろこで…ステラ様がラスター公爵様を想っておられる事はご主人様達はご存知なのですか?」
リサはふと気になった事をステラへ尋ねた。
「えぇ。昨日…宮殿に向かう馬車の中で伝えたの…。将来は公爵様に嫁ぎたいと。」
ステラは笑顔で応えた。
「え…えええぇぇーー!と…嫁ぎたいとお伝えしたのですか?!ご主人様とジョシュア様はな…なんと?」
リサはステラの言葉を聞きとても驚き言った。
「それが…結婚なんて認めないって言われてしまったのよ…。」
ステラは困った表情で言った。
(全力で否定されたもんねぇ。いくら私を溺愛してるからってあんなに全力で拒否する事ないのに…。)
ステラはリサに言いつつそんな事を考えていた。
「あぁ…。それは…そうでしょうね…。ハハハハ…。」
リサはステラの言葉を聞き苦笑いを浮かべて言った。
(ご主人様…ジョシュア様…お気の毒です…。あれだけステラ様を溺愛されているのだから…きっとステラ様の口からそんな事を言われたらショックで頭を抱えられたでしょうね…。ご主人様は世間ではとても頭がきれて常に冷静で剣の腕前は帝国一で国が誇る公爵様であり帝国騎士団第1部隊の団長と言われているお方だというのにステラ様の前ではその威厳は何処へと言っても過言ではない程に溺愛されているんだものね…。それは兄であるジョシュア様も同じことだけれど…。きっと今後はお二人共にステラ様に振り回される事が増えそうね…。)
リサはステラに言いつつ内心はダニーとジョシュアを哀れみつつ考えていた。
「まぁ…いずれは絶対にお父様とお兄様の首を縦に振らせてみせるわ!それよりも…今やるべき事はどうしたらラスター公爵様を幸せに出来るかよ!」
ステラは気を取り直して真剣な表情で言った。
「具体的にはどうしようなどの考えはおありなのですか?」
リサがステラへ聞いた。
「いいえ!ないわ!まったくないの!」
ステラは何故か自信満々に言い切った。
(だって…私…前世でも恋愛経験0なんだから。漫画やアニメは沢山見てきたけどね…。)
ステラはリサに応えながらもそんな事を考えていた。
「はい?な…何も考えてらっしゃらないのですか?!」
リサはまたもや予想外のステラの言葉に驚愕しながら言った。
「えぇ…。でも…こういう時は思うがままに行動するに限るわ!」
ステラはどや顔でリサに言った。
「どうしてその様に自信満々に言い切るのですか…。まぁ…でも…ステラ様らしいといえばらしいですね。」
リサはどや顔のステラを見て呆れながら言うもやれやれという表情で笑みを浮べて言った。
「それでまずはどう行動されるのですか?」
リサがステラへ尋ねた。
「そうね…。まずは…公爵様に会いに行くわ!」
ステラは自信満々に言った。
「では…ラスター公爵家へ手紙を出す支度を致しますね。」
リサはステラの言葉を聞くなりすぐに手紙を書く用紙を持ってこようとして言った。
「いいえ!手紙はいらないわ!手紙を出さずに直接ラスター公爵邸に向かうわ!」
ステラは用意をしようとしたリサへ言った。
「はい?手紙を出さずにですか?ですが…それではラスター公爵様のご都合もわかりませんし何も言わず公爵邸へ行かれるのも失礼かと…。」
リサはステラの言葉に戸惑いながら言った。
「失礼なのは承知の上よ…。でも手紙を出したところで返事が返ってこないのがみえてるわ。それに直接行けばいくら公爵様でも無下に追い返したりしないはずよ。」
ステラは自信満々に応えた。
(小説の中でバスティンは元々邸に人を呼ぶような事をしなかったし昨夜の事もあって私が手紙を出したって無視されるのがおちなんだから。こういう時は正面突破に限るわ。)
ステラはリサに言いながらもそんな事を考えていた。
「ん〜ステラ様の言い分も一理ある気はしますが…何の連絡もせず行かれてもし公爵様が不在だと意味がありませんよ?」
リサはステラの言葉に納得した様に頷きながら言うとすぐに心配そうに言った。
「そこも問題ないわ!公爵様は長年の遠征から帝国に戻られたばかりだから邸で公爵としての仕事もたまっているだろうしたとえ仕事がたまってなくても今日は騎士団の訓練はないはずだから必ず邸にいらっしゃるわ!」
ステラは確信しているかの様にリサに言い切った。
(だてに前世で小説内の数少ないバスティンの行動の部分を何度も読み返してないもんね。バスティンは基本皇宮に用がない限りは公爵邸にいることばかりだったもんね。)
ステラはリサに言いながらそんな事を考えていた。
「そ…そこまで言い切れるのでしたら連絡せず公爵邸に行かれても公爵様には会えそうですね。」
リサは確信した様に話すステラを見て驚きながら言った。
「ええ!」
ステラは満面の笑みで応えた。
「そうとなれば早速ラスター公爵邸へ向かう支度をしないとね!」
ステラはわくわくしながら言った。
「そうですね!」
リサはそんなステラを見て微笑ましく言ったのだった。
そして…
ステラは支度を済ませると母であるミシェルにだけ行き先を伝えてリサと共に馬車に乗り込みラスター公爵邸へと向かったのだった。
「ステラ様、その花は?」
馬車の中でリサがステラの持っている花を見て尋ねた。
「あぁ…これはラスター公爵様にお渡ししようと思って庭から二輪だけ摘んできたの。」
ステラは笑顔で応えた。
「どうして二輪だけなのですか?」
リサは不思議そうにステラへ尋ねた。
「一輪は執務室に…もう一輪は寝室に飾ってもらおうと思ったの。でも花束だときっと煩わしく思われるだろうから各一部屋に一輪づつにしようと思ったのよ。このラナンキュラスは"幸福"という花言葉があるの。ラスター公爵様に幸福が訪れます様にと願いもこもってるのよ。」
ステラはどこか切なそうな笑みを浮べてリサへ言った。
(オンラブの小説内ではあまり細かくは書かれてなかったけどバスティンの住む公爵邸は前・公爵の事もあってどこか殺伐さを思い出させる様な雰囲気だったんだよね…。だから少しでも公爵邸が心地よいと思える様な場所になってくれたらなって思ってたんだよね…。)
ステラはそんな事を考えていた。!
「本当に…ステラ様はラスター公爵様の事を思っておられるのですね…。ステラ様の気持ちが伝わるといいですね。」
リサがステラへ言った。
「えぇ。まぁ…伝わるまで全力で公爵様に伝えていくつもりでいるけどね!」
ステラは自信満々にニヤリと笑みを浮べて言った。
「ハハハ…またステラ様らしいですね。」
リサは苦笑いを浮かべて言った。
(バスティン!今行くからねぇ〜♡)
そんなリサなど気にすることなっくステラはルンルンしながらそんな事を考えていたのだった。
※
ステラ達がラスター公爵邸に向かっているのと同じ頃…
ラスター公爵邸の執務室ではバスティンと皇室騎士団第二部隊副団長でバスティンが信用を寄せているペーターが話をしていた。
「昨夜の犯人はどうなっているんだ?」
「しっかり牢獄しているさ。」
「そうか。昨夜は私の代わりに色々と処理してくれて助かったよ。」
「あぁ。昨夜は殿下の誕生日パーティーだったから公爵であるバスティンが行かない訳にはいかなかっただろうからな。」
バスティンがペーターへ尋ねるとペーターは余裕な表情で応えた。
そんなペーターへバスティンはお礼を言うとペーターは軽めに言った。
「それで…昨夜のパーティーはどうだった?数年ぶりに帝都へ戻ってきた訳だし少しは楽しめたか?」
ペーターはニヤニヤしながらバスティンへ言った。
「お前も知ってるだろう…私が社交場を嫌っているのを…。」
バスティンは嫌そうな表情で言った。
「何だよ…。気に入った令嬢でも見つけてくれば良かったものを…。」
ペーターはバスティンの言葉を聞き残念そうに言った。
「…………。」
バスティンはペーターの言葉を聞き何故か険しい表情を浮かべて黙り返った。
「ん?!何だ?!もしかして気に入った令嬢でもいるのか?!」
ペーターはバスティンの反応見てニヤニヤしながら言った。
「そんな令嬢いない…。ただ…。」
バスティンはペーターの反応を鬱陶しく思う様な表情を浮べて言うも何かを思い出すように呟いた。
「ただ何だ?!」
ペーターは目を輝かせて言った。
「……。昨夜…師匠の娘に会ったんだが…。」
バスティンは昨夜を思い出すように言った。
「ん?バートン団長の娘?」
ペーターは予想外のバスティンの言葉を聞き驚き言った。
「あぁ…。私が遅れて皇宮へ着きパーティーが開かれている大広間へ行く途中に園庭にある木から師匠の娘が降って落ちてきたんだ。」
バスティンがペーターへ言った。
「?!おい…待て待て…。木から降って落ちてきたって?!公爵家の令嬢が?!」
ペーターはバスティンの言葉を聞き混乱気味に言った。
「あぁ。どうやら木から降りれなくなってしまった猫を助けたようだった。」
バスティンは淡々と昨夜を思い出しつつペーターへ言った。
「猫を助ける為に令嬢が木に登っただと?!」
ペーターは更に混乱気味に言った。
「あぁ。それでたまたまそこを通りかかった私が落ちてきた令嬢を受け止めたんだ。」
バスティンが更にペーターへ説明した。
「そ…それは良かったな…。バスティンが受け止めなかったら大事になってだろうからな…。それで…そのバートン団長の娘がどうかしたのか?」
ペーターはとりあえず一旦落ち着いてバスティンへ言った。
「団長に娘に…その場でプロポーズされたんだ。」
バスティンは表情ひとつ変えず淡々と言った。
「あぁ…。プロポーズな………って…えええぇぇぇーー!プ…プロポーズ?!」
ペーターはまたすぐに驚きを露わにして言った。
「何を考えているのか分からないし意味が分からないからあえて師匠やジョシュアの前できっぱりと令嬢に迷惑だと…自分は結婚する気がないと伝えたがな。」
バスティンは淡々と言った。
「え?!バスティン…それはそんなにはっきり言う必要なかったんじゃないか?!もう少しこう…濁して言うなり…。バートン団長もジョシュアも娘にそんな事言われて怒らなかったのか?確かバートン団長もジョシュアも騎士団では有名なくらいの娘妹バカだよな…。」
ペーターはバスティンの言葉を聞き違う意味で驚き少し呆れがちに言った。
「まぁ…師匠もジョシュアも苛立ってはいたが皇宮に行くのが遅れてしまっていたからその話はまた聞くからと即座にその場を後にしたんだ。」
バスティンが淡々と応えた。
「はぁ…。バスティン…。君はまったく…相変わらず淡々としているな。バートン令嬢はバスティンに冷たくはっきり言われて泣いてしまっとかではないよな?それでなくてもバスティンはいつも無愛想で周りから怖がられているんだから…。」
ペーターはため息混じりにバスティンへ言った。
(まぁ…バスティンがこうなったのも無理はないが女性への扱いにしてはさすがに酷いんじゃないのか…。)
ペーターはバスティンに言いつつバスティンの顔を見てそんな事を考えていた。
「………。いや…泣くどころか…。」
バスティンは昨夜の事を思い出し急に困惑した表情を浮べて言った。
「??泣くどころか…?何だよ?」
ペーターは不思議そうに言った。
「いや…泣くどころか…バートン令嬢はその後にファーストダンスを私に申し込んできた上に私がダンスを踊るのを承諾するまでその場を離れないだとか…私が周りから冷ややかな目線と陰口を叩かれていたら許せないと怒ったり…冷たくあしらった時に怯えて固まっていたと思ったのは実は私のその時の冷たい表情が素敵だっただとか……。極めつけには…これからも気持ちを伝えていきたいなど訳の分からない事を言っていたんだ…。」
バスティンは理解できないという表情を浮かべてペーターへ説明した。
バスティンの話を聞いたペーターは開いた口が塞がらないという表情を浮べて呆然としていた。
「っ!一体バートン団長の娘は何なのだ?!状況が色々と飛びすぎててついていけないんだが…。」
ペーターはハッとなりバスティンへ言った。
「いや…私もまったくもって意味が分からないでいる…とにかく嵐の様な令嬢だった事は間違いないが…。一体何を企んでいるのやら…。何の企みもなく私に近づくなどありえないからな…。」
バスティンは呆れた表情で言うも急に表情を険しくして眼帯に手を当てて言った。
「バートン団長の娘だぞ?何か企んでるなんてないだろう…。」
ペーターは呆れながら言った。
「師匠の娘だからといって信用できる保証などない。まぁ…昨夜の事も溺愛されている令嬢の気まぐれか何かだったかもしれないからな…。もう当分は会うこともないだろうからな。」
バスティンが険しい表情で言った。
その時…
コンコンッ!
執務室の扉が鳴った。
「旦那様…ドンクでございます。」
扉の外から執事がバスティンへ言った。
「ん?あぁ…。入れ。」
バスティンがドンクへ言った。
「失礼致します。」
ドンクはそう言うと扉を開けて部屋に入ってきた。
「どうした?」
バスティンがドンクへ尋ねた。
「はい…。お客様がおみえです。外でお待ち頂いておりますがお通ししてもよろしいですか?」
ドンクがバスティンへ伝えた。
「客?今日は来客の予定などなかったはずだが…。誰だ?」
バスティンは思い当たるふしがないと言った。
「バートン公爵令嬢様です。」
ドンクが言った。
「何だと?!師匠の娘が?!」
バスティンは予想外すぎる来客に思わず驚き言った。
ペーターも驚いた表情をしていた。
「はぁ…。何の連絡もなしに訪ねてくるとは…。いくら師匠の娘でも礼儀がなってなさすぎる…。申し訳ないが私は居ないと帰ってもらってくれ。」
バスティンは呆れた表情で言った。
「それが…。旦那様にそう言われたら伝えて欲しいと言われたのですが…。」
ドンクがバスティンへ言いにくそうに言った。
「?何だ?」
バスティンが言った。
「はい…。事前に手紙を出さず直接来たのはきっと手紙を出しても旦那様に断られるか無視されるのがおちだと分かっていたのに加え旦那様が邸に居られる事は知っているので直接会いに来れれたと…。」
ドンクは苦笑いを浮べて言った。
「何だと…?!」
バスティンは呆然と言った。
「ブハッ!ハハハ…バートン令嬢にはお見通しだってわけか!」
ペーターはステラの発言を聞いて思わず吹き出して笑いながら言った。
「ペーター!笑うな!」
バスティンはムスッとして言った。
「あと…たとえ帰れと言われても会ってくれるまでは断固としてその場を動かず待っているとのことでした…。バートン公爵家の人間は忍耐力の強さはご存知ですよね?だから帰れといっても無駄ですよ…とのことでした。」
ドンクは笑いを堪えながらバスティンへ言った。
それを聞いたバスティンは唖然としていた。
「ハハハ…バスティン。これは君の負けだな。もう会うしかないんじゃないか?」
ペーターか唖然としているバスティンを見て笑いながら言った。
(確かに…バートン公爵家の人間の忍耐強さはよく知っているが…。)
バスティンはそんな事を考えていた。
「はぁ…。分かった。バートン令嬢ここへ通してやってくれ。」
バスティンは大きなため息をつきながらドンクへ言った。
「はい。承知しました。」
ドンクは笑顔で言った。
「ここまで予想外の行動をする令嬢なんて珍しくて逆に興味深いな。ハハハ…きっと気の強そうな顔をしているんだろうな。」
ペーターが笑いながら言った。
「他人事だと思ってお前は…。」
バスティンはやれやれと言った表情で言った。
そして…
しばらくしてドンクが執務室へステラを案内してきたのだった。
リサとドンクは部屋の外に待機してステラのみ執務室へ入った。
執務室へ入ってきたステラを見てペーターは思わず驚いた表情を浮かべた。
(なんと…突拍子もない行動や言動をするからてっきり気の強そう顔をしているのかと思えば…これは…相当な美人な令嬢だな。帝国一といっても嘘にはならない程の美しさだな。これはバートン団長もジョシュアも溺愛するわけだ…。)
ペーターはステラを見てそんな事を考えていた。
「ラスター公爵様にご挨拶申し上げます。お目通りを許可して頂き感謝致します。」
ステラはきれいな姿勢でバスティンへ挨拶をした。
(あぁ〜今日もバスティンがかっこよくて尊すぎる…。バスティンは何だかんだいって絶対会ってくれるって思ってたんだよね。)
ステラはバスティンに挨拶しながらバスティンの顔を見て内心は悶絶しながら考えていた。
「どうぞお座り下さい。ところでご令嬢。この様な形で訪問されて一体今日は何のご用ですか?」
バスティンは呆れ気味にステラへ言った。
「この様な形での訪問お詫び致します…。ですが私が公爵様にお会いするにはこの方法が一番だと思いまして。現にこの方法は間違いではなかったでしょう?」
ステラはバスティンへ謝るとすぐににこにこしながらバスティンへ言った。
「それは!そうですが、、。そこまでして会いに来られたのですからよほどの要件なのですよね?」
バスティンはステラの言葉にグッとなるも淡々言った。
(あぁ〜淡々としているバスティンも素敵、、尊い、、。)
ステラはバスティンを見て内心悶絶していた。
「はい。昨夜もお伝えしましたが今後は私なりに公爵様に気持ちを伝えていくつもりです。それに、公爵様をこの国の誰よりも幸せにしたいのです!ですので気持ちを伝えるにも幸せにするのもまず会う事から始めなければと思いまして。」
ステラは自信満々に笑顔でバスティンへ伝えた。
ステラのあまりにも自信満々さにバスティンは唖然としていた。
ペーターも唖然していた。
「それに、それもありますが単純に公爵様に会いたかったのです。こうして公爵様に会えて嬉しいです。」
ステラはバスティンとペーターが唖然としていてもお構いなしに少し頬を赤らめるも満面の笑みでとても嬉しそうに言った。
(毎日でもバスティンに会いたい…。会って毎日でも好きって伝えたいな。あぁ…バスティン好き…。)
ステラはそんな事悶々とを考えていた。
(私を幸せにしたい?!それに会いたいが為にわざわざここへ来ただと?!)
バスティンはそんなステラを意味が分からないという表情を浮べて考えていた。
「はぁ…。私を幸せにするだの気持ちを伝えるだの…私をバカにしてからかっているのか?!昨夜初めて会った私に急にその様は事をして一体何が目的なのだ?!師匠の娘だからと言って何も企んでいないとどう信用しろというのだ?!」
バスティンはあまりにもステラが言うことが理解出来ず顔をしかめて言った。
(バスティンがこう言うのも無理ないよね…。バスティンの今までの事を考えたら…。でも…。)
ステラはバスティンに言われてそんな事を考えていた。
「確かに…公爵様がそう言われのも仕方ありません。ですが…ご安心下さい!これから私が企んでいるのは公爵様を幸せにしたいという事と自分の気持ちをただただ伝えたいだけという事を私が証明させて頂きますので!」
ステラはバスティンのしかめっ面なんて気にすることなく目を輝かせて自信満々にバスティンへ言った。
「ブハッ!!」
ステラがバスティンのしかめっ面を気にすることなくあまりにも自信満々に言うのを見てペーターは思わず吹き出した。
そんなペーターをバスティンを睨み見た。
「すまない…。」
バスティンに睨まれたペーターは苦笑いしてバスティンへ言った。
「と…いう訳でこれから私自身が公爵様へ言葉と行動で証明していきますのでしっかりと公爵様自身が見て聞いて確かめてくださいね!」
ステラは更に満面の笑みを浮べてバスティンへと言った。
「な…!何を勝手に話を進めて…。」
バスティンはそんなステラへしかめっ面で慌てて言うと…
「はい!ですから今後もこちらへお邪魔させて頂く事が増えると思いますのでよろしくお願い致しますね。あっ!居留守を使っても私には意味がないですからね?」
ステラはにこにこと笑みを浮べてバスティンへ言った。
そんなステラにバスティンは豆鉄砲を食らった表情をしていた。
(ふふふ…バスティンってたら困った顔も素敵すぎ!でも私は今後も一歩引くつもりがないもんね〜!)
ステラはそんなバスティンを見て考えていた。
「あっ!」
するとステラが急に声を出した。
「申し訳ありません…。私ったらすっかり忘れていました…。」
ステラはハッとしてそう言うと立ち上がりペーターの目の前へ行った。
「大変申し訳ありません…。ご挨拶が遅くなりましたがバートン公爵家のステラ・バートンと申します。」
ステラはきれいに礼をしながらにこりと微笑みペーターへ挨拶をした。
「私は皇室騎士団第二部隊副団長のペーターと申します。私は平民出身ですのであまりかしこまらないで下さい。」
ペーターは礼をしながらステラに挨拶すると軽く笑みを浮べて言った。
「平民だからなんですか?騎士団でしっかりとした功績を残し責務を果たしているから副団長の座にいるのですから敬うは当然の事です。もっと堂々とされていいと思います。」
ステラは首を傾げながら不思議そうペーターへ言った。
(バスティンがお父様とお兄様以外に信頼している人の1人ペーター。オンラブの小説内でバスティンの過去を知る数少ない人達のうちの1人であり平民出身とは思えない程の剣の腕前を発揮してバスティンを支えていた人であり最後までバスティンから離れる事なくバスティンと共に最期を迎えた人物、、。)
ステラはペーターを見てそんな事を考えていた。
ペーターはステラの言葉を聞き少し驚いた表情を浮べていた。
それと同時に温かい何かを胸に感じた。
(今まで貴族のご令嬢にこんな事を言ってくれた人がいただろうか。)
ペーターはそんな事を考えていた。
「ペーター様とお呼びしてもよろしいですか?それともペーター副団長とお呼びしたらいいですか?」
ステラがペーターへ尋ねた。
「あっ、はい。どちらでも構いません。」
ペーターはハッとなり慌てて応えた。
「ありがとうございます。では、ペーター様とお呼びしますね。私の事はステラとお呼びください。」
ステラが笑顔でペーターへ言った。
「はい。分かりました。ステラ様。」
ペーターは少しそわそわしながらステラへ言った。
「公爵様の事もお名前で呼んでもよろしいですか?」
ステラはどさくさ紛れにバスティンの方を見てにこにことしながら言った。
「断る!」
バスティンははっきり言い切った。
「残念です。」
ステラはしょんぼりした表情で言った。
(チッ!どさくさ紛れに聞いてみたけどだめだったかぁ〜。まぁ分かってたけどね。)
ステラはそんな事を考えていた。
「ペーター様、今後は顔を合わすことが増えると思いますので今後ともよろしくお願いしますね!」
ステラは気をとり直して笑顔でペーターへ言った。
「え?あ、はい。よろしくお願いします?」
ペーターはステラの言ってるいる事がよくわからないまま頭に??を浮べて言った。
「では、私はそろそろおいとましますね。公爵様の執務をこれ以上お邪魔をしてはいけませんので。」
ステラはバスティンの方を見るとバスティンへ言った。
「そうしてくれると助かります。」
バスティンはしかめっ面でステラへ言った。
「はい…。では、失礼致します。」
ステラはバスティンへ言うとペーターへペコッと頭を下げて部屋の扉を開けた。
「それでは公爵様また明日。」
ステラは満面の笑みを浮かべて部屋を出る間際に言って部屋を出たのだった。
「?!おいっ!明日って!」
バスティンがステラの言葉を聞き耳を疑いギョッとして慌てて言ったがすでにステラが出たあとだった。
「はぁ、、。」
バスティンは頭を抱えながら大きなため息をついた。
(一体何だったんだ。)
バスティンはため息をつきながらそんな事を考えていた。
「嵐の様なご令嬢だったな。」
ペーターが呟いた。
「まったくだ…。あまりにも衝撃が強すぎてまったく理解が追いついていない…。」
バスティンは疲れた表情で言った。
「また明日と言っていたよな?」
ペーターがバスティンへ言った。
「私にもそう聞こえた。」
バスティンが言った。
「ハハハ…だが…とても面白い方だったな。」
ペーターは思い出し笑いを浮べて言った。
「お前…他人事だから笑っていられるんだ。」
バスティンは笑うペーターへムスッとして言った。
「……だが…あんなに正面からはっきりバスティンへの好意が伝わってきて嫌な気はしないだろ?」
ペーターが考え込む様にバスティンへ言った。
「………。あれも本心ではどう思っているか分からないからな…。人間ほど恐ろしい生き物はいないとペーターもよく知っているだろう…。」
バスティンは表情を歪ませてグッと手袋をはめている左手の拳を握って言った。
「…………。」
ペーターはそんなバスティンを見て切ない表情を浮かべたまま言葉を詰まらせたのだった。
コンコンッ!
その時…
部屋の扉がなった。
「ドンクでございます。」
ドンクが外から言った。
「?入れ。」
バスティンが応えた。
「失礼致します。」
ドンクがそう言うと何かを持って部屋へ入ってきた。
「それは何だ?」
バスティンがドンクの持っているものを見て言った。
「こちらはラナンキュラスという花だそうです。バートン公爵様令嬢様がこのラナンキュラスを一本づつ旦那様の執務室と寝室に飾って欲しいとおっしゃいましたので花瓶に入れてまいりました。」
ドンクがバスティンへ説明した。
「バートン令嬢が?!」
バスティンが言った。
「はい。旦那様のお部屋はきっと殺風景だろうから花を飾り少しでも雰囲気が明るくなります様にと摘んできた下さったようです。」
ドンクがバスティンへ言った。
「………。」
バスティンは無言だった。
「一先ず…このラナンキュラスはこちらへ飾ってもう一輪は寝室に飾っておきますね。」
ドンクがどこか嬉しそうに言った。
「………好きにしろ…。」
バスティンはドンクの表情を見たらそれ以上言えなかった。
バスティンに言われたドンクは花瓶を執務室の机へ置いた。
そしてドンクは花瓶を置くと部屋を後にしたのだった。
(ドンクの奴…この一瞬でバートン令嬢に言いくるめられたのか?!本当にあの令嬢は何を考えているのだろうか…………。)
バスティンは机に置かれた花瓶を見つめながらそんな事を考えていたのだった………
ご覧頂きありがとうございます★
他にも連載中の小説がありますのでよろしければご一緒にご覧下さい★
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悪役令嬢でもなくヒロインでもないまさかのモブキャラに転生したので大好きなハンドメイドをしながら暮らす事にしました!
公爵令嬢シャーロットは、3度目の人生を生き抜くと決意しました!!
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