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22.じゃじゃ馬令嬢は栄光と勲章を勝ち取った

ステラの部屋を後にしてバスティンはダニーの執務室へと戻っていた。


「きちんとステラを送り届けたのだろうな?」


ダニーが不機嫌そうにバスティンへ言った。


「はい。きちんとステラ嬢を部屋の前まで送り届けてきました」


バスティンは平然として頷きながら言った。


(ステラ嬢もブレないが師匠とジョシュアもステラ嬢の事になると本当にブレないな。ステラ嬢を部屋まで送り届けた事が相当嫌だったのだろう)


バスティンはそんな事を考えていた。


「ステラに何かしてないだろうな?」


ダニーは目を細めながら言った。


「何かというと?」


バスティンが言った。


「そ、それはだな、、」


ダニーは慌てて言った。


「つまり、、その、、」


ダニーは慌てたまま言った。


「つまり、バスティンがスーに手を出したりしてないかってことだ。まさかスーを抱きしめたりとかやましいことなどしてないだろうな?」


ジョシュアが慌てているダニーを横目にはっきりと言った。


「それは、、」


バスティンが言った。


そして急にバスティンが何かを追い出したかの様に顔を赤くした。


「おい!バスティン何だその顔は?!何故赤くなるんだん?!さては、、お前ステラにやましいことをしたのだな?!」


ダニーはバスティンの表情を見て怒り表情を浮かべて言った。


「バスティン答えろ!」


ジョシュアも怒りに満ちた表情を浮かべて言った。


「ちょっと、、2人とも落ち着いて」


ミシェルが慌ててダニーとジョシュアへ言った。


「やましいことなどしていません、、」


バスティンは一呼吸吸って冷静さを取り戻しながら言った。


「いや、嘘だな!あの顔は間違いなく何かあった顔だ」


ダニーが睨みをきかせて言った。


「そうだ。何もないのならば何故顔を赤らめるのだ?!」


ジョシュアは疑うような目で見ながら言った。


「いや、それは、、先程自分の口からステラ嬢を好いていると言ったことを思い出し今更ながら恥ずかしく思えてきたからです」


バスティンは上手く誤魔化しながら説明した。


(本当にそれについては改めて思い出すと恥ずかしい。しかし、何よりもステラ嬢が不意にキスをしてきた事をつい思い出してしまった。まさかあんな不意打ちを堂々としてくるとはな。恥ずかしいがるくせに堂々としていてステラ嬢らしいのだがな。それに私は自らステラ嬢の手を握ってしまっていた。この私が自ら他人、、それも女性の手を握るなど信じられない事だからな。だが、何故かあの時は無意識に手を握ったのだ。これも女性で初めて私のこの醜さが残り呪いと言われてきたこの手を嫌がる事なく自ら握ってくれたステラ嬢のお陰なのだろうな)


俺は内心恥ずかしながらも胸に温かいものを感じつつそんな事を考えていた。


「それだけで顔を赤らめる奴がいるわけないだろう!」


ダニーは納得がいかないという表情を浮かべて言った。


「いるでしょう」


ミシェルが呆れた表情を浮かべて話を割って入り言ってきた。


「何だと?」


ダニーがきょとんとした表情になり言った。


「ダニー。あなたも私に告白した時に自分の言ったことを後になり思い出して顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていたでしょう?人の事を責めれる義理はないでしょう?」


ミシェルは平然とした表情で言った。


「な、な、な、ミシェル!今ここでそんな話をしなくてもよいではないか!」


ダニーは恥ずかそうな表情を浮かべて慌てて言った。


(自分でもすっかり忘れていた。確かに私はミシェルに愛の告白をした際にその時は無我夢中だったが時間が経ち落ち着いてその時の事を思い出したら急に恥ずかしくなってしまったのだったな)


ダニーは少し顔を赤くして恥ずかしそうにそんな事を考えていた。


「え?父上もですか?!」


ジョシュアは思わず驚き言った。


「えぇ。だから公爵様に偉そうに言えた義理じゃないのよ」


ミシェルはフッと笑みを浮かべて言った。


「そうですか、、」


ジョシュアは苦笑いを浮かべてダニーを見ながら言った。


「分かったからもう言わないでくれ、、」


ダニーは頭を抱えながら言った。


(夫人はいつも穏やかで優しく冷静で師匠の事を立てる素敵な方だと思っていたがまさかこんなに強気な部分があるとはな。ステラ嬢によく似ているな。まさか師匠にそんな出来事があったとはな)


バスティンは少し驚いた表情を浮かべてそんな事を考えていた。


「では、この話はここまでにしましょう」


ミシェルが微笑みながら言った。


「わかったよ」


ダニーはしょんぼりした表情を浮かべて言った。


「師匠、、先程のステラ嬢の話ですが」


バスティンは真剣な表情を浮かべて言った。


「あぁ。お前もジョシュアもミシェルもきっとステラの話を聞き同じ事を考えているのでだろうな」


ダニーは先程とは打って変わり真剣な表情で言った。


ダニーの言葉を聞きジョシュアとミシェルも深刻そうな表情を浮かべた。


「でしょうね。今回の一件は高確率でステラ嬢を故意に狙ったものでしょう」


バスティンは表情を歪ませながら言った。


(ステラ嬢の話を聞く限りではそれ以外考えられないからな)


バスティンはそんな事を考えていた。


「恐らくそうであろう、、エリア外の場所にステラがいてたまたま熊に出くわしたというよりは何者かがステラを尾行していてタイミングを見計らい熊をあの場所に放したという方がしっくりくるからな」


ダニーは表情を歪めて言った。


「ステラならば感傷的になっていたとはいえ何か気配があれば感じたらずだ。しかし、熊に遭遇するまでは特に気配に気づいた様な話はしていなかったから恐らくステラを尾行していた者がいたとするならばそれは素人ではなく玄人ということになるな」


ダニーは更に表情を歪めて言った。


(ステラが狙われたとなると何故だ?理由は一体何なのだ?!)


ダニーは表情を歪めたままそんな事を考えていた。


「もしも本当にスーが狙われたのであれば今回のこの件は必ず我々の手で解決しなければなりませんね」


ジョシュアが額に血管を浮かせながら言った。


「もちろんだ」


ダニーも額に血管を浮かせながら言った。


「この件に関しては何か協力出来ることがあるならば私も協力するわ。それにお父様達にも協力を要請できるからいつでも言ってちょうだい。ステラが本当に狙われたのだしたらお父様やお兄様も血まなこになって協力してくれるでしょうからね」


ミシェルが真剣な表情で言った。


(お父様とお兄様は娘であり妹である私の事はもちろん大切だけど孫娘であり姪であるステラの事もダニー達に負けないほどに溺愛しているからね)


ミシェルはそんな事を考えていた。


「あぁ、ありがとう。君がそう言ってくれると心強い」


ダニーはミシェルの手をそっと握りしめながら言った。


「えぇ」


ミシェルは頷きながら言った。


「あとは、ステラ嬢には念の為に今後厳重な護衛が必要ですね」


バスティンが言った。


(ステラ嬢が狙われた可能性がある以上絶対に護衛をつけなければ危険だ。またいつどの様な形で危険な目に遭うかわからないからな。本当は私が常に側で守ってやりたいがそういう訳にもいかないしな)


バスティンは拳をギュッと握りしめながらそんな事を考えていた。


「あぁ。ただステラに護衛をつけると言えば必ず嫌がるだろうからステラにはバレない様に公爵家の影を護衛にあたらせるとしよう。影のあやつならステラにも気づかれないだろう。あやつは未だにステラと顔を合わせた事が一度もないから顔を見られても誤魔化せるだろうからな」


ダニーが真剣な表情で言った。


「そうしましょう」


ジョシュアが頷きながら言った。


「一先ずこの件に関しては後日ステラと殿下の体調が回復次第両陛下を混じえての聴取会が行われるからその時に詳しく話し合うとしよう」


ダニーが言った。


「「承知しました」」


バスティンとジョシュアが頷きながら言った。


「それでは私はこれで失礼します」


バスティンが言った。


「あぁ」


ダニーは頷きながら言った。


「師匠、、今日はありがとうございました。急に訪ねてきた上に、、ステラ嬢との事も認めて下さいましたから」


バスティンは真剣な表情を浮かべて言った。


「フンッ。ステラの前でああは言ったが私はまだ今回のステラを悲しませた事、傷を負わせてしまったことは許してはないからな!それに2人のこ、交際も心から許している訳ではないからな!」


ダニーは不満気な表情を浮かべて言った。


「ちょっとあなた!」


ミシェルが思わず言った。


「分かっています。今回ステラ嬢を悲しませてしまった事、一生の傷を負わせてしまったことは許される事だとは思っていません。しかし、私がステラ嬢を想う気持ちは本当ですのでステラ嬢を傷つけてしまった分まで不器用ながらも彼女を大切に幸せにしたいと思っていますのでその事だけは心に留めておいて下さい」


バスティンは真剣な表情でダニーの目を真っ直ぐ見て言った。


(そうだ、、ステラ嬢が私を幸せにしてくれると言った様に私も彼女を幸せにしてやりたいんだ)


バスティンはそんな事を考えていた。


「、、フンッ。とにかく今日のところは帰れ。また明日も仕事で会うのだからな」


ダニーは少し戸惑うもツーンとした表情を浮かせながら言った。


「分かりました。では、失礼します」


バスティンはそう言うとダニー達に頭を下げると執務室から出ていったのだった。


「ダニー、ジョシュア。二人とも不貞腐れるのはやめなさい。みっともないわよ」


バスティンが去った後ミシェルは呆れた表情を浮かせながら2人へ言った。


「しかし、母上、、やはりスーにまだ付き合うというのは早すぎます。スーはまだまだ私達と共に過ごすべきです」


ジョシュアは駄々をこねる子供の様に不満気に言った。


「そ、そうだぞ。ジョシュアの言う通りだ。ステラはまだこの家で我々と沢山時間を過ごすことが大切だ」


ダニーもムスッと拗ねた表情を浮かせながら言った。


「まったく、、どちらが子供なのやら。そんな事ではステラが嫁ぐ事になったらどうするつもりなのかしら」


ミシェルは呆れた表情を浮かせながら言った。


「ステラを嫁になどやらん!」


「そうですとも!」


ダニーとジョシュアは食い気味に言った。


「そんな事言っていたら本当にステラに嫌われてしまうわよ?」


ミシェルは呆れた表情のまま言った。


ミシェルの言葉に2人はズーンとした表情を浮かべた。


「それにステラのお相手はラスター公爵様なのだからいいじゃないの。私は2人はお似合いだと思うわよ。公爵様のステラに対する態度を見たらあなた達だって公爵様がステラの事を真剣に大切に好いている事を理解したでしょう?」


ミシェルが優しく言った。


「ダニーが公爵様を助けた時から公爵様がステラに出会うまでどんなだったのかを2人が一番身近にいてよく知っているでしょう?公爵様はこれまでどんなに辛くても弱音を吐くこともなければ功績を残しても笑顔を浮かべて喜ぶこともなかった方よ?毒の後遺症による傷痕の事で心無い事を沢山言われてきても感情を出さなかった方があんな風に声を出して笑ったり顔を赤らめて照れたりして表情を出していたのよ?」


ミシェルは真剣な表情を浮かべて言った。


ミシェルの言葉を聞きダニーとジョシュアは複雑な表情を浮かべていた。


(ミシェルの言う通りステラと出会ってからのバスティンは確かに変わった。変わったというよりは人間じみたと言ったほうが正しいのかもしれない)


ダニーはそんな事を考えていた。


(バスティンが倒れているのを助けた日の事は今でも鮮明に覚えている、、)


ダニーはその時の事を思い出す様にそんな事を考えていた。


前ラスター公爵が男児に恵まれず養子を迎えたのは周知の事実だった。元々ラスター公爵家我が公爵家は大二公爵家としていたがラスター公爵家の方は我が公爵家をあまり好意的には思っていなかった為に関わりを持つことはほとんどなかった。だから養子を迎えたと聞いても特には気にしていなかった。

しかし、父親に同行して来ていたバスティンを皇宮で初めて見た際に驚いた。

バスティンと前公爵が瓜二つだったからだ。

私はすぐにバスティンが前公爵の婚外子だと察した。

それと同時にきっと公爵家では酷い扱いをされているのだろうと思った。

前公爵夫人と令嬢は悪い噂が絶えなかったし夫人の方は公爵への執着心が凄い事が有名だったからだ。

そんな夫人が夫瓜二つのバスティンを見て普通の感情でいられるわけがないと思ったらだ。

その時私はバスティンを見て何故か放っておけない気がして騎士団に入り剣術を学ばないかと誘った。

それがバスティンと私達の関係の始まりだった。

その頃には既にバスティンはあまり感情を出すことのない無表情な奴だった。

バスティンの身体には無数の傷がありその傷が夫人や令嬢達から受けた虐待の傷だというのは聞かずとも察しがついた。

バスティンは剣に関してはジョシュアに怠らない程の腕前だった。

バスティンも徐々に私とジョシュア、そしてミシェルには警戒心を解いた様だった。

バスティンとジョシュアは気づけば友と呼べる関係であり良きライバルでもあった。

しかし、事件が起きたのはバスティンが騎士団に入団にしてから少し経った日だった。

公爵様へ行くと言ったきり何の音沙汰もなくなった。

私は何故か嫌な予感がしてラスター公爵家へ向かった。

しかし、その途中に私の予感は的中した。

森の中でバスティンが倒れていたのを発見した。

私はすぐにバスティンを邸に連れ帰り治療させた。

バスティンは毒を盛られていた。

生死を彷徨う程危険な状態だったがどうにか一命を取り留めた。

しかし、その代償に左目回りと左肩から手の甲まで毒の後遺症の醜い傷痕が残った。

バスティンはその傷痕を見て絶望しただろうにその感情すらも出すことをしなかった。

その上、公爵夫婦と令嬢が不慮の事故により他界した。

バスティンに毒を持ったのは夫人だということはすぐに検討がついた。

しかし、バスティンは家族の死を知り悔しくてたまらなかったろうにその感情すらも出さずにいた。

その後、バスティンが新たなラスター公爵家の当主となり当主と騎士団第二部隊の団長としての二つの仕事をこなしていた。

しかし、バスティンは社交場に出れば心無い事や噂話をされ戦場で成果を上げても非難された。

それでもバスティンは感情をむき出しする事がなかった。

まるで全てを諦めたかの様だった。

そんなバスティンを俺とジョシュアとミシェルは口には出さないがとても心配に思っていた。


(そんなバスティンが声を出して笑ってたな、、。バスティンと出会い月日が経ったがあんなバスティンは初めて見たな)


ダニーは昔の事を思い出しながらそんな事を考えていた。


「確かにバスティンとは長い付き合いですが笑ったところや照れたところを見るの初めてかもしれません」


ジョシュアが複雑な表情を浮かべて言った。


(初めて父上がバスティンを連れてきた時から同い年とは思えない程無表情な奴だったのにな、、)


ジョシュアは昔の事を思い出しながらそんな事を考えていた。


「それが他の誰でもなくスーで出会ってあんな感情が表に出たのですね、、」


ジョシュアは複雑な表情を浮かべて言った。


「そうだな、、」


ダニーも複雑な表情を浮かべて言った。


「そうよ。だからね、2人の事を温かい目で見守ってあげましょう。公爵様は二度とステラの事を悲しませたり傷つけたりしないはずだからね」


ミシェルは優しく微笑みながら言った。


「あぁ、、そうだな。バスティンは自分の発言に責任を持つ奴なのは俺とジョシュアが一番知っているからな、、」


ダニーは複雑な表情を浮かべて言った。


「そうですね、、」


ジョシュアは複雑な表情を浮かべて頷きながら言った。


「そろそろベインズがやって来るはずだから皆で一緒にステラの経過を聞きましょう。」


ミシェルが優しく言った。


「あぁ」


ダニーが頷きながら言った。


「はい」


ジョシュアが頷きながら言った。


そして、3人が執務室を出ようとしたその時だった…


「公爵様〜」


外からステラの声がした。


3人は急ぎ窓から外を覗いた。


「公爵様気をつけて帰って下さいね〜」


ステラが自室の窓から馬車に乗ろうとしていたバスティンに向かって大きく手を振りながら叫んだ。


「ステラ様!お願いですからベインズ様が来られるまで大人しくしていて下さい」


リサは慌てて言った。


「これくらい大丈夫よ。お父様のせいでラスター公爵家に当分行けなくなって毎日会えなくなるんだから今のうちに一秒でも長く公爵様の顔を拝んどかないといけないんだから」


ステラは呆れた表情を浮かべて言った。


(本当にとんでもない条件つけてくれちゃってさ。せっかくバスティンと両思いになれたのに毎日会いに行けないとか生殺しもいいとこだって話だよね)


ステラは不満気な表情を浮かべて言った。


「ステラ様ったら、、」


リサは困った表情を浮かべて言った。


(ハハ、、ステラ嬢は先程私の頬にキスをしたのをすっかり忘れているのか?)


バスティンは手を振るステラを見ながら控えめにステラに向かって手を振り返しながらそんな事を考えていた。


「ちょっとリサ。公爵様が手を振り返してくれたわ。リサも見たわよね?!振ってたわよね?!あぁ〜好き人にこんな風に窓から手を振って見送るのに憧れてたのよね。実際にやってみると幸福感が半端ではなちわね。最高だわ!あぁ〜本当に私達両思いなのね〜。あぁ〜幸せすぎて怖いわ」


ステラはニヤニヤと満足気な表情を浮かべて幸せに浸りながら言った。


(前世で何十回、、いや何百回この光景を妄想してきたか。まさか妄想が現実になるなんてねぇ〜。本当に夢じゃないかって思うくらい最高♡)


ステラはニヤニヤが止まらずそんな事を考えていた。


(あれだけステラ様が目を覚まさなくて心配したのにいざ目を覚まされてからもいつもと変わらないステラ様を見てると安静にしてもらわないといけないのに何だかホッとしている自分がいるわ。こんなに幸せそうにしているステラ様を見たら止めようにも止められないわ)


リサは困り笑みを浮かべてステラを見ながらそんな事を考えていた。


「あぁ〜次はいつ会えるのかしら、、こんな事なら部屋まで送ってもらう時にもっと時間をかけたら良かったわ。そしたらもっとイチャイチャ、、って。、、?!?!?!」


ステラはバスティンを見つめながら残念そうにそんな事を呟いたその時…


ステラがボッと顔を赤くした。


(そ、そうだった。あたしバスティンのほっぺにチュ、チューしちゃったんだったわぁ。ついさっきのことだっていうのにバスティンが帰る姿見つけて声をかけなきゃってので夢中になって忘れてたよぉ。穴があったら入りたいよぉ〜)


ステラは恥ずかしそうに赤くなった顔を手で覆いながらそんな事を考えていた。


(どうやら先程の事を思い出したようだな。まったく、、本当にステラ嬢らしいな)


バスティンはフッと笑みを浮かべて恥ずかしがるステラを見てそんな事を考えていた。


「おい!バスティン!ステラに手を振り返すな!ステラ!バスティンに手を振るな!私達の前でそんなやり取りを見せつけるな!」


その時、一階のダニーの執務室の窓からダニーが身を乗り出しながらバスティンとステラに大声で言った。


「バスティン!もう用が済んだのだからそんなところで立ち止まらず早く帰れ!」


ジョシュアは窓からバスティンに向かって不満気な表情で言った。


「ちょっと2人ともやめなさい」


ミシェルが慌てて2人へ言った。


「いいや!止めないぞ!バスティン早く行け!」


ダニーは不機嫌そうにバスティン大声で言った。


「ちょっと!お父様、お兄様どういうつもりですか?!公爵様になんてことを言うのですか?!」


ステラは自分の部屋の窓から一階のダニーとジョシュアへ怒りをあらわにしながら言った。


そんなダニーとジョシュアにバスティンは苦笑いを浮かべていた。


(これは前途多難だな、、)


バスティンは苦笑いを浮かべたままそんな事を考えていた。


「では、本当に失礼しますね」


バスティンが荒ぶるダニーとジョシュアへ冷静に言った。


「ステラ嬢、また、、」


バスティンはステラに向かって言った。


「は、はい!」


ステラは瞬時に笑みを浮かべて手を振りながら言った。


そしてバスティンは馬車に乗り帰って言った。


「お父様!お兄様!いい加減にして下さい!もう知りませんからね!」


ステラはバスティンが帰ったのを見計らって一階のダニーとジョシュアに向かって怒りを込めて言う思い切り自分の部屋の窓を閉めた。


「ステラ!待ってくれ!」


「スー、これは違うんだ!」


ダニーとジョシュアはまずいという顔を浮かべて言ったがステラにその言葉は届いていなかった。


「はぁぁぁ、、」


ミシェルはそんな2人を見て呆れた表情を浮かべて大きなため息をついた。


(だめね、、この2人は、、)


ミシェルはそんな事を考えていた。


(まったくあの2人ときたら本当に学習しないんだから!今回は許さないんだから)


窓を思い切り閉めたステラは不機嫌そうにそんな事を考えていた。


「リサ。お父様とお兄様が訪ねてきても絶対部屋に入れないでね。私が2人の顔も見たくないと伝えておいてちょうだい」


ステラはムスッとした表情を浮かべてリサへ言った。


「ハハ、、承知しました」


リサは苦笑いを浮かべて言った。


(御主人様、ジョシュア様、、頑張って下さい、、)


リサは苦笑いを浮かべたままそんな事を考えていた。


その後、ベインズが診察に来てステラはベインズが驚く程の回復を見せた。

傷痕の件もステラは落ち込むどころか愛の勲章と自慢げにいうステラを見てベインズは心から安堵した。


もちろんベインズの診察時も含めてダニーとジョシュアはその日から3日間ステラに一切口を聞いてもらえず2人は廃人化寸前にまでなったのは言うまでもなかった。

その後、ダニーとジョシュアはステラに何度も頭を下げ許しを請いた。

その結果、ステラは許す条件として2人からバスティンとのデートの回数を増やしてもらう許可を得たのだった。

ダニーとジョシュアはデートの回数が増える事は不満だったがそれよりもステラに口を聞いてもらえない方が恐怖だったからだ。


こうして無事に?!

ステラとバスティンのドタバタ愛の告白劇場は幕を閉じたのだった。




ステラが目を覚ましてから一週間後…


ステラはダニーとジョシュアと共に皇宮へ訪れていた。


両陛下ならびに皇太子を含めての狩猟大会での件について謁見する為だった。


ステラ達は皇帝であるアルゴンの執務室へ通された。


執務室には両陛下と皇太子を始めステラ、ダニー、ジョシュア。

そしてバスティン、ペーター、サティスが集まった。


「集まってもらい早々で悪いが早速本題に入ろう。その前にステラ嬢は体調や腕の傷の方はもう大丈夫なのか?」


アルゴンが皆に言った後に心配そうな表情を浮かべてステラへ尋ねた。


「はい。お心遣いありがとうございます。お陰様で体調の方も傷の方も順調に回復致しております。休養も明け普通に生活しています」


ステラは微笑みながら言った。


「、、傷痕が残ると聞いたのだが、、皇太子を庇う為にその様な傷を負わせてしまったこと何と詫びればいいのか」


アルゴンが複雑な表情を浮かべて言った。


「陛下、詫て頂く必要などありません。傷痕が残る事を私は気にしていませんので大丈夫ですので」


ステラは笑みを浮かべて言った。


「しかし、、」


アルゴンは戸惑い言った。


「本当に大丈夫ですからその様に気になさらないで下さい。それに殿下がご無事だったのですから何よりではないですか」


ステラは微笑みながら言った。


(まぁ、アーノルドを庇ったせいで傷を負ったの複雑なとこだけど結果バスティンと傷痕がオソロになったからアーノルドを庇ったせいでもいいよね。それにあそこでアーノルドが熊に噛みつかれて腕が千切れるなんて結果になってたらあたしの処刑フラグが立ってたかもしれないわけだしね)


ステラはそんな事を考えていた。


(ステラ嬢、、傷痕が残るなど傷つかない訳がないではないか、、そんな父上と母上の前だからと無理して笑わなくても正直に辛いと言ってくれる方がどれほどいいか)


ステラとアルゴンのやり取りを聞いていたアーノルドは苦渋の表情を浮かべてそんな事を考えていた。


「私の話は一先ずいいとして今回の件についての話を進めて下さい」


ステラは真剣な表情で言った。


「分かった。では、話を進めていくとしよう」


アルゴンは複雑の表情を浮かべるも頷きながら言った。


そして、ステラとアーノルドが狩猟大会で起こった件についてそれぞれ皆に話をした。


「つまり、、ステラ嬢の話を聞く限り今回の件は誰かの手によって故意に起きた事だと?」


アルゴンが表情を歪めて言った。


アルゴンの隣で聞いていたシャルルも衝撃を受けた表情を浮かべていた。


「あくまで私の推測ですが、、殿下のお話を聞いてもやはりその可能性が高いのではないかと思います」


ステラは難しい表情を浮かべて言った。


(アーノルドの話を聞いて誰かが故意に熊を仕向けたのがほぼ確信に近づいたね。アーノルドがあたしと熊がいるとこまでに向かう途中にエリア外だとしても人はおろか動物すら見てないなんて不自然すぎるもんね)


ステラはそんな事を考えていた。


「アーノルドはステラ嬢の話を聞きどう思うのだ?」


アルゴンはアーノルドへ尋ねた。


「私もステラ嬢と同意見です。そもそもこの時期にあんな場所に熊がいる事自体がおかしな事ですからね。それにステラ嬢が言っていた通りあの熊の興奮具合が異常でした。私自身熊を射止めた事がありますがあの様に異様な興奮状態で矢を射たれ剣を刺されても尚襲いかかれる力があるというのはどう考えても不自然でしたので」


アーノルドは深刻そうな表情を浮かべて言った。


(あの熊があそこまで興奮状態になければステラ嬢が腕を負傷することなかっただろうに)


アーノルドは悔しそうな表情を浮かべてそんな事を考えていた。


「ふむ、、。バートン公爵達も2人と同じ考えか?」


アルゴンがダニーへ尋ねた。


「はい。私どもも殿下やステラと同意見でございます。これは想像よりも厄介な事件だということは間違いないかと思います」


ダニーは真剣な表情を浮かべて言った。


「そうか、、。」


アルゴンが困った表情を浮かべて言った。


(話を聞く通りこの件は故意に誰かが起こした事だというのはまず間違いなだろう。それもそれを起こしたのは貴族であるということも間違いない。今回の狩猟大会へ参加している者達はすべて男爵以上の爵位を持っている者達だからな)


アルゴンは眉をひそめながらそんな事を考えていた。


「ステラ嬢の言っていた臭いとやらも気になるところだ。この件に関しては極秘で我々とバートン公爵達は信用のおける数人の騎士団の騎士たちと捜査を続けようと思うがどうだろうか?」


アルゴンがダニー達へ言った。


「我々は陛下のご意向通りに動くまでです」


ダニーが真剣な表情で言った。


バスティン達も頷いた。


「そうか。そう言ってもらえると助かるよ。来週行う予定でいる狩猟大会の表彰式でこの件については当たり障りない程度で参加者たちに発表しようと思っている。参加者たちにの中に怪しい者がいるのだとしたらあまり多くは語らない方がいいだろうからな」


アルゴンが険しい表情を浮かべて言った。


「「承知しました」」


ダニー達が言った。


「陛下、、。一つよろしいでしょうか?」


その時…サティスが複雑な表情を浮かべて言った。


「ん?どうしたのだ?」


アルゴンが言った。


「僭越ながら、、ステラ様が仰っていた臭いについて私からお伝えしたい事があるのです」


サティスは真剣な表情を浮かべて言った。


「臭いについて?何だ申してみよ」


アルゴンが少し驚いた表情を浮かべて言った。


「はい。ステラ様が仰っていた臭いについて私も熊を発見した際に気になっていました。恐らくあの臭いは"グンダリル"という薬草の臭いだと思われます」


サティスは表情を歪めて言った。


「グンダリル?!何なのだ?その薬草は」


アルゴンは驚き言った。


アルゴンだけではなくステラを含めその場にいた者が驚いた表情を浮かべていた。


「グンダリルとは私の故郷であるギャラバン帝国で使用禁止とされていた薬草の一つです」


サティスが表情を歪めて言った。


サティスの言葉にその場にいた者達は衝撃を受けていた。


(使用禁止な薬草ですって?!でも何でギャラバン帝国のそんな薬草がこの国にあるわけ?!)


ステラは信じられないという表情を浮かべてそんな事を考えていた。


(ちょっと待って、、。あの臭いを前世でも嗅いだことがあったけどどこだっけって思い出せなかったけど確かあの臭いは、、前世で住んでた家の近所で異臭事件が起きてその臭いの原因は近所の家の人が違法大麻を育ててその大麻を使用してたことだったんだよ。あの臭いは鼻につく臭いで嫌だったから覚えてるくらいだもんね、、でも、、それってつまりグンダリルって、、まさか、、)


ステラは一つの結論に至ってゾッとした表情を浮かべてそんな事を考えていた。


「もしかして、、その薬草が使用禁止になっている理由は中毒症状の様なものが現れるからではないですか?」


ステラは表情を歪めながらサティスへ尋ねた。


(大麻は違法薬物の一つだった。その大麻と似たような臭いがするってことはつまりそのグンダリルっていう薬草も摂取すると大麻と同じ様な症状が出るってことでしょ?)


ステラはグッと唇を噛み締めながらそんな事を考えていた。


「はい、、ステラ様の仰っる通りグンダリルを摂取すると中毒症状が現れる為に使用禁止になったのです」


サティスは表情を歪めて頷きながら言った。


(やっぱり、、)


ステラはゾッした表情を浮かべてそんな事を考えていた。


「その中毒症状というのはどういったものなのだ?!」


アルゴンが表情を歪めてサティスへ尋ねた。


「少量でしたらそこまでの中毒症状は現れませんが大量摂取もしくは使用回数が増えると思考回路が麻痺したり幻覚を見たり興奮状態に陥り凶暴性を増したりするのです。ですのでギャラバン帝国では使用禁止の薬草と認定されていました」


サティスが表情を歪めてそんな事を考えていた。


「まるであの熊の様ではないか、、」


アーノルドはゾッとした表情を浮かべて言った。


「はい。あの熊から臭った臭いはグンダリルの臭いにほぼ間違いないかと思います。殿下やステラ様の話を聞く限りあの熊をグンダリルを大量摂取したと考えられます」


サティスは表情を歪めて言った。


「まさかその様な使用禁止薬草が使われたとは、、」


アルゴンは信じられないという表情を浮かべて頭を抱えながら言った。


「しかし、なぜギャラバン帝国の使用禁止薬草がこの国で使われているのだ?使用禁止なのであればギャラバン帝国が敗戦国になる以前から厳重な扱いになっていたはずだろう?」


ダニーが眉をひそめてサティスへ尋ねた。


「グンダリルは使用禁止とされてから陛下の命令で薬草が生えている場所全て根本から燃やし薬草が生えない様に処理をしました、、しかし、、」


サティスは眉をひそめて言った。


「しかし何だ?」


ダニーが目を細めて言った。


「しかし、、グンダリルを手離せない中毒者達が多くいた為に闇取引などを行っている者もいました。これはあくまで可能性の一つですがこの国でグンダリルは使われたということは恐らくギャラバン帝国で闇取引をしていた者がこの国に住む者と取引をしたのではないかと思われます」


サティスは苦渋の表情を浮かべて言った。


「では、ポメニティア帝国内で今後もグンダリルが使用される可能性があるということか?」


ダニーが険しい表情を浮かべて言った。


「可能性がないとは言い切れません、、」


サティスは険しい表情を浮かべて言った。


「なんということだ、、」


アルゴンは頭を抱えながら言った。


「今回の狩猟大会でグンダリルが使用されたのだとしたら狩猟大会の参加者たちの中に闇取引をした人物がいるということになります」


バスティンが険しい表情を浮かべて言った。


「そういうことになるな、、」


アルゴンが険しい表情を浮かべて言った。


(最悪ね、、そんな物騒なものがこれ以上誰かに使用されたらたまったもんじゃないよね。今回の件だって一歩間違えてたらあたしもアーノルドも死んでたわけよ?はぁ、、この件は一筋縄ではいかなそうだね。それにあのルイルイ達に暴行してた奴からもグンダリルの臭いがしたって事は2つの事件が関係してるってことになるわけだしね、、)


ステラは困った表情を浮かべてそんな事を考えていた。


「この件は思っていた以上に慎重に調べる必要がありそうだな。今日のこの話は他言しない様にしてくれ」


アルゴンが真剣な表情を浮かべて言った。


「「承知しました」」


アルゴンの言葉にステラ達は真剣な表情を浮かべて頷きながら言った。


「バートン団長達とはまだ少し話をしておきたいからここへ残ってくれ。」


アルゴンがダニー達へ言った。


「承知しました」


ダニーが頷きながら言った。


「ステラ嬢はまだ療養が明けたばかりだろうから今日はもう帰って休むといい。今日は話を聞かせてくれて助かった。それにあの日賢明に息子を守り色々と手を尽くしてくれた事に改めて礼を言わせてくれ。ありがとう」


アルゴンが優しい表情を浮かべて頭を下げながらステラへ言った。


「私からもお礼を言うわ。本当にありがとう」


シャルルも優しい表情を浮かべて頭を下げながらステラへ言った。


「そんな!私は当たり前の事をしたまでですので頭を上げて下さい!」


ステラは慌てて言った。


(アーノルドを助けたのだって見殺しにすると後味悪いし自分に処刑フラグが立つのを阻止したかっただけだし)


ステラはそんな事を考えていた。


(貴族の令嬢が相手が皇太子だからといってそこまで身を挺して行動するなどなかなか出来る事ではないということをステラ嬢は理解していないようだな)


アルゴンはそんな事を考えていた。


(アーノルドが一緒にいたのがステラ嬢でなければ今頃こうして2人ともここに居られなかったでしょうに)


シャルルはそんな事を考えていた。


「だとしても礼を言うよ」


アルゴンは優しい表情で言った。


「陛下、、」


ステラは困った表情を浮かべて言った。


「アーノルド。ステラ嬢を馬車まで送ってあげなさい。ステラ嬢を見送ったのちここへ戻ってこい」


アルゴンがアーノルドへ言った。


「あ、あの、殿下にその様な事をして頂くわけにはいきません。見送りでしたらラスター公爵様にお願いしますので殿下はこちらで話の続きをして下さい」


ステラは慌てて言った。


(何でアーノルドなのよ!嫌よ!アーノルドに送ってなんていらないのよ!送ってもらうならバスティン以外の選択肢なんてあるかー)


ステラは内心は不満気にそんな事を考えていた。


「ラスター公爵とはこのままバートン公爵達と共に話を進めたいからここへ残ってもらう。ステラ嬢そんな気にしていいからアーノルドに送ってもらうといい」


アルゴンは優しく言った。


(いや、だーかーらーアーノルドにってのが嫌なのよ〜。空気読んでよ〜。バスティンがいいって言ってんじゃんよ〜)


ステラはそんな事を考えていた。


そしてバスティンの方を見て目で訴えた。


ステラに目で訴えられたバスティンは困った表情を浮かべていた。


(あ〜陛下が言うなら無理ってことね〜)


ステラは諦めた様な表情でそんな事を考えていた。


「では、、お言葉に甘えさせて頂きます。殿下よろしくお願いいたします」


ステラは諦めた表情を浮かべて言った。


「では、ステラ嬢を馬車まで送ってまいります」


アーノルドがアルゴンへ言った。


「あぁ」


アルゴンが頷きながら言った。


「それでは皇帝陛下、皇后陛下、お父様、お兄様、ラスター公爵様、ペーター様お先に失礼します」


ステラは皆に丁寧に礼をしながら言った。


「あぁ。気をつけて帰るといい」


アルゴンが頷きながら言った。


「気をつけてね」


シャルルが微笑みながら言った。


「帰ったら休むのだぞ」


「スーゆっくりね」


ダニーとジョシュアが言った。


「ステラ様お気をつけてお帰り下さい」


ペーターが言った。


「ステラ嬢気をつけて変えるのだぞ」


バスティンは優しい表情で言った。


「はい」


ステラは頷きながら言った。


(あぁ〜バスティン、、バスティン、、。久々に会えたんだからもう少しバスティンと同じ空間に居たかったよ〜)


ステラは名残惜しそうな表情を浮かべてバスティンを見ながらそんな事を考えていた。


(相変わらず考えている事が全て表情に出るな。だが、私も久々にステラ嬢と会ったのもありもう少し共にいたかったと思ってしまうな)


バスティンはそんな事を考えていた。


「では、ステラ嬢行こうか」


アーノルドが優しく微笑みながらステラへ言った。


「はい」


ステラは淡々と言った。


そして、ステラはアーノルドとサティスと共に馬車を停めている馬車まで向かった。


「その、、ステラ嬢。私のせいで、、私を庇ったせいで腕に一生残る傷を負わせてしまい申し訳ない、、」


アーノルドは急に歩くのを止めてステラに向かって頭を下げて謝った。


(急に何なわけ?)


ステラは呆れた表情を浮かべてそんな事を考えていた。


「殿下。頭を上げてください。先程も申し上げましたが私は傷痕が残る事をまったく気にしていません」


ステラは淡々と言った。


「そんなはずないだろう?そんな見える場所に傷を負って傷つかない女性がいるわけがないだろう。無理に大丈夫という必要はないのだ」


アーノルドは表情を歪めて言った。


(はぁ〜)


ステラは面倒くさいと言わんばかりの表情でそんな事を考えていた。


「ここにいますけど?本当に気にしていませんしこの傷痕は私にとって勲章の様な物で同情も憐れみもいりません。すのでこの傷痕の事で周りから何か言われようと好きに言っておけばいいくらいにしか思っていません。言いたい人には言わせておけばいい話ですから。その事が耳に入ってきたからといって私が傷つく事もありませんから」


ステラは堂々と言った。


(この傷痕はバスティンとの共通点の一つになったんだから周りが何と言おうとどうでもいいもんね〜♪あたしとバスティンだけのおそろいだもんね〜♪)


ステラはそんな事を考えていた。


「勲章?、、とは一体、、」


アーノルドは意味がいるわからないという表情を浮かべて言った。


「殿下が気にすることろではありませんので流しておいて下さい。という訳でもうこれ以上謝ったりしないで下さい。謝られる方が嫌な気持ちになりますので。いいですね?」


ステラは困った表情を浮かべつつ強めに言った。


「あ、あぁ、、分かった」


アーノルドは戸惑いながら言った。


(本当に気にしていないのか?傷ついていないのか?平気なフリをしているわけじゃないのか?私のせいで出来てしまった傷だから私が責任を取らなければと思っていたが、、)


アーノルドは戸惑いながらそんな事を考えていた。


(ステラ様は本当に自分の意志をしっかり強い方だな。俺を助けてくれた事もそうだがこの人は本当に何の見返りも求めずただ自分の思うままに行動しているんだろうな。殿下はきっとステラ様に惹かれている。殿下の気持ちがわかる気がするな)


サティスはステラを見ながら自分の髪を結ぶリボンを触りながらそんな事を考えていた。


「あぁ、そうだ。ステラ嬢、、今後はステラ嬢に助言された様にきちんと自分の皇太子という立場をきちんと考えて行動しようと決めたよ」


アーノルドはふっと笑みを浮かべて言った。


「そうですか。それはとてもいい心かげですね」


ステラはうんうんと頷きながら言った。


(あたし助言なんてしたっけ?まぁよく分かんないけどそう思うのはいいじゃないかなぁ。あたしには別に関係ないけど国としてはいいと思うしね)


ステラはそんな事を考えていた。


(ステラ嬢に言われると別に褒められているわけではないのに心が満たされる気持ちになり嬉しくなるな)


アーノルドはふっと頬を緩ませながらそんな事を考えていた。


「あぁ、ありがとう」


アーノルドは優しく微笑みながら言った。


(相変わらずペテン師笑顔しちゃって)


ステラは淡々とそんな事を考えていた。


そして、3人は歩き始めた。


「あ、そうだわ。サティス様。グンダリルの事なのですけど以前サティス様に暴行を加えた男たちの事なのですけど、、」


ステラはハッとなり慌ててサティスへ言った。


「あの者達からもグンダリルの臭いがしたと仰りたいのですね?」


サティスは険しい表情になり言った。


(やっぱり気づいてたのね)


ステラはそんな事を考えていた。


「はい」


ステラは頷きながら言った。


「それは一体どういう事だ?」


ステラ達の会話を聞いていたアーノルドが驚きながら言った。


「今言った通りです。以前私が首都の街でサティス様と元騎士団のアルイさんを暴漢から助けた際にその暴漢の男たちからグンダリルの臭いがしたのです」


ステラが険しい表情を浮かべてアーノルドへ説明した。


「何だと?では、その暴漢もグンダリルを摂取していたと?」


アーノルドは険しい表情を浮かべて言った。


「はい。恐らく間違いないかと思います」


ステラは険しい表情を浮かべて頷きながら言った。


「何という事だ、、。では、サティスを襲った暴漢達も今回の熊の件も繋がっているということか?」


アーノルドは表情を歪めて言った。


「まだ確実とは言えませんがその可能性は高いのではないかと思います。すでにこの話は父や兄、ラスター公爵様にしていますので今頃父が陛下にもその話をされているのではと思います」


ステラが真剣な表情を浮かべて言った。


「一応、サティス様にも確認しておいた方がいいと思いましたので」


ステラが言った。


「そうでしたか、、確認して頂きありがとうございます。私もあの暴漢に襲われた際の事を話すタイミングがわからなかったので確認して頂いて良かったです」


サティスは安心した表情を浮かべて言った。


「そらなら良かったです」


ステラが言った。


(サティスは天敵だけど今回はサティスがグンダリルの話をしてくれたお陰で色々と捜査が前に進みそうだから良かったわ。サティスの洞察力は"オンラブ"の中でもたまーに発揮されてたのを思い出したわ)


ステラはそんな事を考えていた。


そして、話をしていたら馬車が停まっている場所へ到着した。


「殿下、サティス様送って頂きありがとうございました」


ステラが淡々と2人へお礼を言った。


(送ってくれてあれだけどここにはやっぱりバスティンが来てほしかったよ)


ステラは内心は悔しそうにそんな事を考えていた。


「いや大丈夫だ。気をつけて帰る様に」


アーノルドは優しく言った。


(ステラ嬢は本当に私にはあまり微笑みかけてはくれないな。グレイス嬢や他の令嬢達は私がこの様に送るなどの対応したら皆嬉しそうに微笑んでくるのに、、)


アーノルドはそんな事を考えていた。


「ステラ様お気をつけてお帰り下さい」


サティスは優しい笑みを浮かべて言った。


「ありがとうございます」


ステラは礼をしながら言うと馬車へ乗り込み皇宮を後にした。


ステラが乗る馬車を見送ったアーノルドとサティスはアルゴンの執務室へと戻った。


(それにしてもグンダリル、、。本当にどこのイカれ貴族が闇取引して手に入れたんだろう、、)


ステラは帰りの馬車の中でそんな事を考えていた。


(誰にしろそれが誰で何が目的でグンダリルを手に入れたのかを早く突き止めないと結構厄介な事になりそうだよね)


ステラは更にそんな事を考えていた。


("オンラブ"の話中にグンダリルなんて薬草なんて出てこなかったから詳細がまったく分からんないから頭を悩ますわぁ。本当に"オンラブ"のストーリー展開は進んでるのにストーリー内容が微妙に違ってるのもあってちょっと戸惑うなぁ)


ステラはそんな事を考えていた。





ステラが皇宮へ訪れて一週間後…


だいぶ遅れて皇宮の大広場ホールにて狩猟大会の表彰式が行われた。


「狩猟大会から随分日にちが経過してからの表彰式になってしまった事申し訳なかった。皆も知っている通り狩猟大会で前代未聞の事態が起こってしまい大会を途中で中止する事となった」


アルゴンが集まった参加者たちに言った。


「陛下。恐れながら今回起こった件についてご説明頂いてもよろしいでしょうか?」


参加者の一人がアルゴンへ言った。


「今回起こった件についてだが皆もすでに知っている通り冬眠中のはずの熊がエリア外の場所に現れ皇太子とバートン公爵令嬢を襲ったのだ。2人は熊に襲われたもののバートン公爵令嬢の活躍もあり奇跡的に2人は生きて戻ってくるができたのだ。皇太子もバートン公爵令嬢も無事ではあったがこの気温の中体力の低下と負傷が見られた為と熊はすでに死んでいたが他の熊が現れる可能性がないとも言えないという事で安全を第一に考え大会を急遽中止にしたのだ。何故あの場に冬眠しているはずの熊が現れたのは不明だが今後この様な事が起こらない様に皇室騎士団と共にこれまで以上にこの様な事態が起きない様に全力を尽くすつもりだ」


アルゴンは真剣な表情を浮かべて言った。


(これくらい言っておけば一先ずは参加者たちは大人しくなるだろう)


アルゴンはそんな事を考えていた。


「それで皇太子殿下とバートン公爵令嬢はもう体調の方は大丈夫なのですか?」


参加者の一人が言った。


「見ての通り皇太子もバートン公爵令嬢も体調が回復した表彰式にも参加する事ができた」


アルゴンがアーノルドとステラへ手をかざしながら言った。


「皇太子殿下ご回復されて何よりでございます」


「殿下本当に回復されてようございました」


参加者達がアーノルドを見て言った。


(あたしも回復してるっつーの。ってこれみよがしにアーノルドに媚みえみえの目をしてあんな回復よかったねアピールするなんてねぇ。貴族って本当に面倒な人達だよね〜あたしも貴族だけど。あの媚媚軍団はアーノルドが狩猟大会で獲得した獲物達を誰に贈るかが気になってるだけだろうね)


ステラは呆れた表情を浮かべてそんな事を考えていた。


「この通りバートン公爵令嬢のお陰で大きな負傷もなく短期間で回復する事ができたのだ」


アーノルドはどこか不機嫌そうに参加者たちに言った。


(ステラ嬢のことは視界に入っていないのか?!私が無事だったのはステラ嬢のお陰だというのにこの者達は皇太子の私の目に留まる事ばかりしか考えていないのだな)


アーノルドは苛立ちを覚えながらそんな事を考えていた。


「さ、さすがはバートン公爵家の令嬢ですね。身を挺して殿下をお守りしたとは」


「ほ、本当ですな。」


「バートン公爵令嬢も体調が回復された様で何よりですな」


「その通りですな」


参加者たちはアーノルドの表情を見て慌てて言った。


(いや、わざわざあたしに気なんて使わなくていいってのに。身を挺してとかそんなお恐れた事でもないのにさ)


ステラは呆れた表情を浮かべてそんな事を考えていた。


(それより、、今回の件はあくまで熊が当然現れてあたしとアーノルドが襲われたって事のみを報告する事にしたんだね。まぁその方がこの件に関わってる人達を油断させる事ができるからだろうね。陛下と騎士団が本格的にこの件について捜査するってなったら足がつかめないかもしんないしね)


ステラは目を細めてそんな事を考えていた。


「さて、それではそろそろ今回の狩猟大会の表彰式を行うとしよう」


アルゴンが気を取り直し言った。


(確か"オンラブ"のストーリー通りなら5位はペーター様で4位がお兄様で3位がバスティンで2位がお父様で一位がアーノルドだったよね。でも今回はアーノルドはあたしと一緒にあんやことに巻き込まれたから獲物はほぼないに等しいだろうね。アーノルドから獲物を渡されるグレイスとしては残念だろうね。となると一位はお父様かバスティンかもね。出来るならバスティンが一位であってほしいよね)


ステラはそんな事を考えていた。


「では、第5位から発表する」


アルゴンが言った。


「第5位は、、皇室騎士団第二部隊副団長ペーター。獲得獲物は狐3匹、うさぎ2匹、イタチ1匹、イノシシ3頭、ヤマドリ2羽」


アルゴンが言った。


「ありがとうございます」


ペーターが一歩前に出て礼をしながら言った。


「獲物を贈る相手は決めているか?」


アルゴンがペーターに言った。


「私は獲物を騎士団へ貢献いたします」


ペーターが言った。


「承知した」


アルゴンが頷きながら言った。


「ペーターやるじゃないか」


ペーターの横にいたバスティンが言った。


「まぁな」


ペーターは照れつつ言った。


「続いて第4位はバートン公爵家バートン公子ジョシュア・バートン。獲得獲物は白狐2匹、イノシシ1頭、鹿1頭。」


アルゴンが言った。


「ありがとうございます」


ジョシュアが一歩前に出て礼をしながら言った。


「獲物を贈りたい相手は決まっているか?」


アルゴンがジョシュアへ言った。


「はい。我が妹であるステラ・バートンへ贈りたいと思います」


ジョシュアが笑顔で言った。


「承知した。」


アルゴンが頷きながら言った。


ジョシュアは満足気に笑顔でステラを見た。


(やっぱりそうなるよね。"オンラブ"の話中でもステラに贈ってたもんね)


ステラは苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。


「続いて第3位はバートン公爵家当主ダニー・バートン。獲得獲物はチンチラ一匹、鷹一羽。」


アルゴンが言った。


「ありがとうございます」


ダニーが一歩前に出て礼をしながら言った。


「獲物を贈りたい相手は決まっているか?」


アルゴンがダニーへ言った。


「はい。我が娘でるステラ・バートンに贈りたいと思います」


ダニーは笑顔で言った。


「承知した」


アルゴンが頷きながら言った。


ダニーは満足気に笑顔でステラを見た。


(ですよね。)


ステラは苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。


「続いて第二位は皇太子アーノルド・ウィル・ポメニティア。獲得獲物はセーブル一匹、鹿1頭。」


アルゴンが言った。


「ありがとうございます」


アーノルドは一歩前に出て礼をしながら言った。


「獲物を贈る相手は決まっているか?」


アルゴンがアーノルドへ言った。


(周りの貴族達が自分に自分にって目を輝かせてるねぇ。でも残念ながらアーノルドはグレイスに贈るって決まってんのよ)


ステラはそんな事を考えていた。


「はい。私はバートン公爵令嬢に贈りたいと思います」


アーノルドが笑みを浮かべてステラを見て言った。


「は?」


ステラはアーノルドの言葉に思わず呆気にとられた表情を浮かべて言った。


「バートン公爵令嬢は今回私を身を挺して守ってくれました。感謝の気持ちも込めて贈りたいと思います」


アーノルドは優しい笑みを浮かべて言った。


アーノルドの言葉にその場がどよめいた。


その中でも一層唖然とした表情を浮かべていたのはグレイスだった。


(いやいや何であたし?グレイスに贈るんじゃないの?グレイス見てよ。ズーンってなってるじゃん。そりぁそうでしょ。グレイス本人も自分が贈ってもらえると思ってただろうし実際"オンラブ"のストーリー的にもグレイスに贈るんだもん。てかマジでアーノルド空気読んでよ)


ステラは唖然とした表情を浮かべたままそんな事を考えていた。


ダニー、ジョシュア、もちろんバスティンも驚いた表情を浮かべていた。


「承知した」


アルゴンは何故か納得した様な表情を浮かべて頷きながら言った。


(いやいや何納得したみたいな顔してんのよ〜承知なんてしないでよ〜。そしてこの場の微妙な空気どうにかしてよ〜)


ステラは疲れた表情を浮かべてそんな事を考えていた。


アーノルドはそんなステラとは裏腹に満足気な表情を浮かべてステラを見ていた。


(ステラ嬢驚いているな。まさか私がステラ嬢に贈るとは思っていなかった様だな。だが、私は今回の事がなくとも最初からステラ嬢に贈るつもりだったんだ)


アーノルドはフッと口角を上げてそんな事を考えていた。


(てか、アーノルドったらいつそんな獲物をGETしてたわけ?!本当に主人公フィルター乙すぎるわ。てっきりアーノルドは収穫なしだと思ってたのに。でも待って!アーノルドが2位ってことはバスティンが1位ってことじゃない?わぁ〜絶対そうじゃん!アーノルドが獲物GETしてたのは予想外だけどアーノルドが2位のお陰でバスティンが輝かしい1位!最高じゃん)


ステラはハッとなりそんな事を考えていた。


「それでは続いて第1位、、優勝者を発表する」


アルゴンが言った。


(よしっ!優勝バスティンきたーーーー!!)


ステラは心の中では既に万歳をしながらテンションあげあげでそんな事を考えていた。


「この度の狩猟大会の優勝者は、、バートン公爵家令嬢ステラ・バートン」


アルゴンが大きな声で言った。


(よしよしラスター公爵、、ってえ?今、バートン公爵家って言った?)


ステラはニヤニヤを浮かべていたがアルゴンの言葉にそんな事を考えながら一瞬固まった。


(今、ステラ・バートンって言わなかった?)


ステラは固まったままそんな事を考えながら呆然としていた。


「優勝者がバートン公爵令嬢だって?!」


「殿下ではなく?」


「信じられないわ」


「しかし、陛下は間違いなくバートン公爵令嬢の名前を言っていた」


「そうね」


周りの参加者たちがざわつきながらそんな事を話していた。


「ステラ!凄いではないか!さすがはバートン公爵家の娘、、いや私の娘だ」


ダニーが嬉しそうな表情を浮かべてステラへ言った。


「スーはやっぱり凄いな」


ジョシュアも嬉しそうな満足気は表情を浮かべてステラへ言った。


「いや、、あの、、これは何かの手違いではありませんか?優勝者はラスター公爵様ではなくてですか?」


ステラは信じられないという表情を浮かべて言った。


(何であたし?てか、バスティンが5位以内に入ってないってどういう事?)


ステラは混乱気味にそんな事を考えていた。


「ステラ嬢、、実は私は今回獲物は0なのだ」


バスティンが苦笑いを浮かべてステラへ言った。


「え?ぜ、0ですか?」


ステラは驚いた表情を浮かべて言った。


「あぁ。ステラ嬢を探して獲物どころではなかったんだ。どうしてもステラ嬢に直接謝りたくてな」


バスティンは困った表情を浮かべて言った。


「公爵様、、」


ステラは困った表情を浮かべて言った。


(そんなあたしなんかを探す為に獲物が0なんて、、)


ステラは困った表情のままそんな事を考えていた。


「コホン、、。優勝者であるステラ・バートンの獲得獲物はミンク一匹、熊1頭」


アルゴンが咳払いをして言った。


「え?!熊ですか?!」


ステラは驚きアルゴンへ言った。


「あぁ。熊に矢を放った上に致命傷を与えて熊を仕留めたのはステラ嬢だからな」


アルゴンが頷きながら言った。


「ですがあれは襲われたので攻撃しただけであって、、」


ステラは戸惑いながら言った。


「そうであったとしても仕留めた事に変わりないからな。獲得獲物数としてカウントしたのだ」


アルゴンが言った。


「そうですか、、」


ステラは戸惑いながら言った。


(ミンクは馬っころが無事に帰ってきたのもあって無事だと思ってたけどまさか熊を倒したのもあたしの手柄になるなんてねぇ。それもグンダリルを摂取した凶暴熊をね、、。別にカウントされても嬉しかないんだけどね。ん?でもちょっと待って!グンダリルを摂取してるからって毛皮には問題はないわけだよね?てことはミンクだけじゃなくて熊の毛皮も加工したらバスティンにプレゼントできるってことよね?!やだ〜それって最高じゃん。それならあたりがたくカウントに入れさせてもらうわ)


ステラは最初こそ複雑な表情を浮かべていたがすぐに名案を思いつくと満足気は表情になりそんな事を考えていた。


「して、獲物を贈ると相手は決まっているか?」


アルゴンがステラへ尋ねた。


「陛下、取り乱してしまい申し訳ありません。この度は優勝者に選んで頂きありがとうございます」


ステラは一歩前に出ると冷静に礼をしながら言った。


「獲物を贈る相手は決まっています。私の獲物はラスター公爵様に捧げます」


ステラは自信満々の表情を浮かべて満足気に言った。


ステラの言葉を聞きダニーとジョシュアは口がポカンと開いていた。


(ハハ、、あたしがバスティンに贈るって言ってショックを受けてるね。自分達に贈ってくれるって思ってたんだろうけど普通に考えてあたしが贈る相手なんてバスティンしかいないでしょうに。まったくあの自信はどこから来るのやら、、そもそも狩猟大会に参加したのだってバスティンにサプライズでプレゼントがしたいが為に参加したわけだし)


ステラはダニーとジョシュアを見て苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。


バスティンはやれやれといった表情を浮かべていた。


(バスティンったらあの顔はまたあたしらしいって思ってる顔だよね。フフフ、、何だかバスティンのそういう表情を見るのも幸せだなぁ)


ステラは満足気にそんな事を考えていた。


(って、何でアーノルドはそんなショック受けた表情を浮かべるわけ?あぁ、、きっと自分が一番じゃなかったのがショックだったんだなぁ。それも女のあたしに負けたのが悔しいに違いないね。アーノルドもまさかあたしがミンクをGETしてるなんて思いもよらなかったでしょうね。獲物はあたしに贈るって言ってたのもまさかあたしが優勝するなんて思ってない上にどうせあたしを怪我させてしまったお詫びとかなんとかだろうしね)


ステラはふとアーノルドの表情を見てそんな事を考えていた。


(ステラ嬢はラスター公爵に獲物を贈るのか、、。やはりステラ嬢はラスター公爵に好意を抱いているのだろうな)


アーノルドは胸が痛むのを感じながらそんな事を考えていた。


そんなアーノルドをグレイスは複雑な表情を浮かべて見ていた。


すると…


「ラスター公爵ですって?」


「どうしてラスター公爵なんかに?」


「いくらバートン公爵とラスター公爵は同じ騎士団にいるからといって令嬢がラスター公爵に獲物を贈るなんてね」


「呪われてもいいのかしら」


ステラの言葉を聞き参加者たちがコソコソと話し始めた。


(相変わらず噂話とか陰口たたくのが好きな人達だね。ていうかあたしが誰に送ろうとおたくらには関係なくない?って話だよね)


ステラは不満気にそんな事を考えていた。


「承知した」


アルゴンが周りの雑言を消すかの様に言った。


「それと、ステラ嬢には優勝バッジとは別にもう一つ称号を与えようと思う」


アルゴンがステラへ言った。


「称号ですか?」


ステラは驚き言った。


("オンラブ"に狩猟大会で称号的な話なんてなかったよね?)


ステラはそんな事を考えていた。


「あぁ。優勝者がステラ嬢だと判った際に皇后と話をして決めたのだ。ステラ嬢は狩猟大会に女性として初めて参加した。初めての参加にして優勝した上に狩猟大会内で起きた事件から皇太子を身を挺して守ってくれた。よってステラ嬢には狩猟大会初クイーンの称号を与えるとする」


アルゴンは微笑みながら言った。


「《クイーン》ですか?」


ステラは驚いた表情を浮かべて言った。


「そうだ。狩猟大会という場で男性の参加者たちに劣る事なく獲物を仕留め、自分の身を挺して皇太子を守ったという勇敢な行動を称えてその称号を贈らせてもらう。ステラ嬢は狩猟大会に新しい風を吹かせてくれた。今後は狩猟大会にステラ嬢のように勇敢な女性が参加する事が増えるかもしれない。そんな願いも込めて狩猟大会に新しく《クイーン》という称号を作ったのだ。ステラ嬢はそんな称号を初めて手にする初代クイーンだ」


アルゴンは微笑みながら言った。


「今のステラ嬢にぴったりな称号だと思うわ」


アルゴンの横に座っていたシャルルが微笑みながら言った。


(なーんかよくわかんないけどどえらい称号を授けてもらうってことだよね?よくわかんないけどあたしの行動で称号が一つ新しく出来たと思うと何か嬉しいな)


ステラは口角を上げてそんな事を考えていた。


「皇帝陛下、皇后陛下。その様な素晴らしい称号を授けて下さり大変光栄に思います。バートン公爵家の一員としてもとても誇らしい事です。ありがとうございます」


ステラは胸を張り堂々とアルゴンとシャルルへ丁寧にカーテシーをしながら言った。


「あぁ。ではステラ嬢こちらへ」


アルゴンが言った。


「はい」


ステラは頷きながら言うとアルゴンの前へと立った。


「ステラ・バートン。そなたに新たな称号である《クイーン》の称号を与える」


アルゴンは大きな声でそう言うとステラの胸元に真っ赤な宝石があしらわれたブローチがつけられた。


「ありがとうございます」


ステラはカーテシーをしながらお礼を言った。


「ここに狩猟大会初代クイーンが誕生した事を称える」


アルゴンが大きな声で言った。


パチパチ…

パチパチ…


するとその場に拍手が巻き怒った。


(何かこれまた"オンラブ"のストーリーにはない展開で大事になっちゃったけど、、前世で剣道や合気道なんかの試合でメダルとかトロフィーもらう時みたいな感じで嬉しい気持ちなのは間違いないね)


ステラは拍手を受けてふっと笑みを浮かべてそんな事を考えていた。


赤く輝く勲章を胸につけたステラは美しいだけではなくとても輝いていてまさしく《クイーン》の称号そのもののようだった。


バスティン、アーノルド、サティスはそんなステラに見惚れていた事をステラは気づいてもなかった。


「さすがはステラだ!」


「バートン公爵家の誇りだよスー」


ダニーとジョシュアはステラ本人よりも嬉しそうに満足気に微笑みながら誰よりも大きな拍手をしながら言った。


(2人ともあたしより喜んでんじゃん。でもまぁ今日はあんなに喜んでくれる2人を見るのも悪くないかもね)


ステラは笑顔でそんな事を考えていた。


「お父様、お兄様ありがとうございます。お2人が狩猟大会への参加を許可して下さったお陰です」


ステラは満面の笑みでダニーとジョシュアへ言った。


「ステラ!」


「スー!」


そんなステラにダニーとジョシュアは感動したように言った。


「帰ったらお母様にも伝えないといけませんね」


ステラが笑顔で言った。


「あぁ。きっとミシェルもステラを誇りに思うだろう」


「今夜はステラの好きな物を沢山用意してお祝いしよう」


ダニーとジョシュアはにこにこしながら嬉しそうに言った。


「はい。あっ、そのお祝いの席にラスター公爵様をお誘いしても?」


ステラはどさくさに紛れに言った。


「駄目に決まっている」


「そうだよ!家族だけでお祝いするのだからバスティンは駄目だ」


ダニーとジョシュアを一瞬で不機嫌そうな表情になり言った。


「そうですよね、、」


ステラは苦笑いを浮かべて言った。


(チッ。ノリでいけると思ったけどやっぱり駄目か)


ステラは不満気にそんな事を考えていた。


「お父様達は一緒に帰宅できますか?」


ステラがダニーへ言った。


「いや。表彰式が終われば片付けがあるから私とジョシュアは遅れて帰宅するよ」


ダニーは残念そうに言った。


「そうですか。分かりました。では私は先に帰宅しますね」


ステラは頷きながら言った。


「あぁ」


ダニーは残念そうに頷きながら言った。


その後、表彰式は無事に終了した。


ステラは馬車の荷台に表彰式で贈られた獲物を積ませていた。

表彰式までの間獲物が腐敗しない様に保管されていたので獲物を持ち帰る事ができた。


(帰宅したらまず執事のテスとリサにお願いして獲物達の処理をしてもらわないとね。毛皮とかの加工はルイルイの元へお願いして肉なんかはうちのシェフに処理をお願いしたらいいよね)


ステラは積まれる獲物を見てそんな事を考えていた。


(早くバスティンにプレゼントする物が完成するといいなぁ〜)


ステラはニヤニヤしながらそんな事を考えていた。


「ステラ嬢」


その時、バスティンがステラの元へやってきてステラへ声をかけた。


「公爵様!」


ステラはバスティンの声を聞いてパァーっと満面の笑みを浮かべて言った。


「間に合って良かった」


バスティンが言った。


「どうされたのですか?」


ステラは言った。


「優勝、そして称号の授けられた事におめでとうと言いたかったのとこれを渡したくてな」


バスティンが優しい表情で言うとステラへ大きめの箱を手渡した。


「これは?」


ステラは不思議そうに言った。


「本当は狩猟大会の日にステラ嬢に渡そうと思っていた物だが私のせいで渡す事が出来ずにいたからな」


バスティンが苦笑いを浮かべて言った。


「開けてもいいですか?」


ステラが言った。


「あぁ」


バスティンは頷きながら言った。


(なんだろう、、。バスティンがあたしにプレゼントなんて嬉しすぎて本当は今すぐ飛び回りたい気分よ)


ステラはそんな事を考えていた。


「わぁぁ〜。これは弓ですか?」


ステラが箱を開けて中身を見て目を輝かせて言った。


「あぁ。ステラ嬢はやはり見ていたら弓が一番合っていると思ってな。狩猟大会で使ってくれと渡そうと思っていたんだ。渡す前に大会は終わってしまったがな、、」


バスティンはバツの悪そうな表情を浮かべて言った。


(あの時はアルイに嫉妬して自分自身で色々台無しにしてしまったからな)


バスティンはそんな事を考えていた。


「ありがとうございます!こんな素敵な弓を。本当嬉しいです。本当に本当。家宝として大切にしますね。」


ステラは満面の笑みを浮かべて嬉しそうに言った。


(バスティンからのプレゼント嬉しいなぁ♡嬉しくて叫びたいのを必死で我慢してるもん。ショーケースに入れて綺麗に保管して毎日眺めたい)


ステラはニマニマしながらそんな事を考えていた。


「家宝などそんな大それたものにしなくてもいい」


バスティンはふっと口角を上げて言った。


「いいえ!こんな最高のプレゼントを家宝にせず何にしろと言うのですか」


ステラは真剣な表情で言った。


(こんなに喜んでくれるのならば早く贈れば良かったな。まさか私が女性に贈り物をする日が訪れるとはな、、)


バスティンはステラを見ながらそんな事を考えていた。


(幼い頃、、まだ私が養子になる随分前に実母に道に咲いていた花を摘んでプレゼントをしたことがあったな、、母が喜んでくれると思って渡したが母は私から花を受け取ると私の目の前で"こんな花なんて何も役に立たない。こんな物を渡す暇があるなら上客な男を見つけてこい"と吐き捨てて花を握り潰してその場に捨てていたな、、。私はきっとあの頃まではどこかで母に愛して欲しいと思っていたのかもしれないがあの日を境に二度と母からの愛情を望む事はなかったな。あの日以来人に贈り物などしたことがなかった。師匠やジョシュア、ペーターにすらも贈り物などしたことがなかった。そんな私がこうして好いた相手に贈り物をするとはな、、。これも全てステラ嬢と出会ったお陰なのだな)


バスティンは昔の事を思い出しつつそんな事を考えていた。


「ステラ嬢に贈った物だから好きな様にしてくれるといい」


バスティンはふっと口角を上げて言った。


「はい!」


ステラは嬉しそうに微笑みながら言った。


(ショーケースの中に保管するのもいいけど今日は弓を抱いて寝ようかな。バスティンからのプレゼントなんだし肌身離したくないもんね)


ステラはニヤつきながらそんな事を考えていた。


「それと、、これなのだが」


バスティンがそう言うと胸ポケットから何かを取り出しステラへ見せた。


「これは、、私が作ったマスコットキーホルダー」


ステラがバスティンが見せてきた物を見て驚きながら言った。


「どうしてこれを?」


ステラが驚いた表情のまま言った。


「実は、これは熊が倒れていた場所に落ちていたのだ。それを私が拾って持っていたんだ」


バスティンが言った。


「そうだったのですか、、」


ステラが言った。


(あの時、どこ探してもなくてなくしてしまったんだと残念に思ってたけどまさかバスティンが拾ってくれてたなんてね)


ステラはキーホルダーを見ながらそんな事を考えていた。


「あの日、これを渡しに来てくれたというのにあの様に酷い態度を取ってしまった。あの様な態度をとっておいておこがましいかもしれないがこれはこのまま私が貰ってもいいだろうか?」


バスティンが気まずそうに言った。


(やはりあんな風に手を振り払い受け取らなかったのだ、、やはり無理な話だろうか)


バスティンはそんな事を考えていた。


「もちろんですよ!だってこれは公爵様の為に思いを込めて作った物なのですから!むしろ公爵様に拾って貰えて良かったです。あの日ポッケに入れていたはずのキーホルダーがなくてどこかに落としたか川に流されてしまったのだと残念に思っていたのです。だからこうしてなくなった訳でなかったので安心しました」


ステラは笑顔で言った。


「そうか、、。ありがとう、、」


バスティンはステラの笑顔に胸が温かくなるのを感じて安堵した表情を浮かべて言った。


「自分で言うのも何ですけど最高の出来のキーホルダーなんですよ!」


ステラは自信満々な表情で言った。


「本当だな。上手く作れているよ」


バスティンはふっと口角を少し上げて言った。


(ステラ嬢が思いを込めて作ってくれた事が伝わるからだろうか、、こんなに嬉しい気持ちになるとはな。これを作る為に以前材料を買っていたのだな)


バスティンはそんな事を考えていた。


「次は人形を作ろうと思ってますので期待していて下さいね!」


ステラは嬉しいに微笑みながら言った。


「あぁ。期待して待っているとしよう」


バスティンは優しい表情を浮かべて言った。


(あの日以来バスティンの表情が柔らかくなった気がしてやばい!えぐい!たまらない!最高!マジで抱きつきたい!バスティンがこうやって表情を和らげてくれる事が本当に嬉しい。"オンラブ"の話中では最後までバスティンが表情を和らげてるとこを見られずバスティンは死んでしまったから)


ステラは嬉しさを感じつつそんな事を考えていた。


「では、私は師匠達のところへ戻るよ。ステラ嬢は気をつけて帰るんだぞ」


バスティンが言った。


「はい。わざわざありがとうございました」


ステラは笑顔で言った。


「荷物も積み終わったみたいなので行きますね」


ステラが言った。


「あぁ」


バスティンは頷きながら言った。


そして、ステラは馬車に乗り込んだ。


ステラは馬車の中からバスティンに手を振った。

バスティンはそんなステラに小さく手を振り返したのだった。


ステラの乗った馬車が出発した。

バスティンは馬車が行ったのを見送るとダニー達の元へと戻った。


(あぁ〜最後の最後でバスティンに会えて良かったぁ。しかもプレゼントまで貰って)


ステラは馬車の中で弓の入った箱を抱きしめながらそんな事を考えていた。


(今日は何か色々と予想外の事とか起きて驚いた事沢山あったけどバスティンからプレゼントも貰ったし何よりも"オンラブ"の話中にも出てこなかった称号を授けて貰ったもんね。何気に最高の勲章だよねぇ)


ステラは胸元につけているブローチを見ながらそんな事を考えていた。


(どの世界でも勲章って嬉しいもんだよね)


ステラは上機嫌でそんな事を考えていた。


("オンラブ"のストーリーの一つの狩猟大会もどうにか終わったしこっからは特にストーリーが進んだとしてもアーノルドに興味もないあたしにはあんまり関係ないストーリーばっかりだもんね。だから特にこれまでみたいに気にする必要もなさそうだしね。処刑ルートもこの感じなら大丈夫そうだしね)


ステラはそんな事を考えていた。


(この先はステラ&バスティンラブラブシナリオにするのみだよね〜♡)


ステラは上機嫌でそんな事を考えていた。


こうして色々あった狩猟大会は終わりを迎えたのだった。


この時のステラは自分に少しづつ魔の手が伸びようとしている事など知る由もなかった…

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