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10.じゃじゃ馬令嬢は主人公をスルーし推しへ一直線

(あぁ…神様…仏様…作者様…私が一体何をしたというのですか…。)


ステラは遠くを見つめながら考えていた。


(昨日の今日でバスティンに会いに行こうと思った矢先きにこの仕打ち…というかこの流れ。)


ステラは更に遠くを見つめる様に考えていた。


ステラは今…皇宮内の応接室にいた。


「、、ょう、、嬢、、ステラ嬢?」


ステラは自分を呼ぶ声でハッとなった。


「はい?」


ステラは咄嗟に言った。


「私との話はつまらないだろうか?」


そう言って苦笑いを浮かべていたステラの目の前に座っていたのはアーノルドだった。


「え?あ、いえ、、そんなことはありません。」


ステラは頑張って笑みを浮かべて言った。


(つまらない?うん。つまらないけど?つまらない以前にこの空間にいるのが苦痛ですけど何か?!私が目の前にいて欲しいと思う存在は常にバスティンですからね!つまらなさらそうに見えるなら追い出してくれても構いませんけど?いや、何なら追い出して!あんたのせいでバスティンに会いに行けなくてこっちはイライラしてるんですけど?この責任どうとってくれるわけ?!)


ステラは笑顔とは裏腹に内心は苛立ちながらそんな事を考えていた。


(私とした事がまたもや忘れていたなんて、、。私とバスティンの出会いや関係性以外のオンラブのシナリオは変わらず進んでるってことを。前回のお茶会もそうだけど今回のアーノルドからのお誘いで皇宮へ足を運ぶってことも昨日のバスティンとのデートが幸せすぎてすっかり忘れてたんだもんね。オンラブのステラは今の時期は本当ならバスティンとの接触なんてなくアーノルドにぞっこんだったから誘いを受けて幸せそうに嬉しそうにアーノルドに会いに行った場面だよね。)


ステラはそんな事を考えていた。


(しかーし!今のステラ、、つまり私はバスティンにぞっこんな訳だからこの誘いは幸せとは程遠い拷問に近い様なもんだよね。バスティンに会いに行けない&興味のない話をずっと聞いて微笑まないといけない拷問。

しかも、、確かこの場面って。)


ステラはそんな事を考えていた。


「そうか。それならばいいのだが。」


その時、アーノルドがにこりと微笑み言った。


(明らかに私の話など耳に入らず何か別の事を考えていたようだが。私の二人の時間など他の令嬢ならばきっと私に気に入られようと一生懸命話してくるだろうに。ステラ嬢はまったくそんな気配がないな。)


アーノルドはそんな事を考えていた。


「はい。」


ステラは更に頑張って微笑みながら言った。


(全然良くないけどね!もはやアーノルドの胡散臭い笑顔見るだけでイラつきは倍増してくるわぁ。)


ステラはアーノルドの表情を見てそんな事を考えていた。


(はぁ、、。早く帰りたい、、。これからもオンラブの内容がシナリオ通りに進むって思う面倒だなぁ、、、ん?んんん?だったらいっそのことオンラブのシナリオ自体変えれば私は晴れてバスティンとの時間が沢山作れるってことじゃない?うん!そうよ!あ〜何でこんな簡単で最高な案を思いつかなかったんだろう。バスティンばっかりに気が取られてたから仕方ないんだけどね。よし!そうと決まれば、、。)


ステラはそんな事を考えていた。


「今日、ステラ嬢を誘ったのは実は聞きたいことがあってな。」


アーノルドが言った。


「私に聞きたいことですか?」


ステラが??という表情で言った。


(オンラブのこの場面でアーノルドがステラに聞いてきたとこなんてあったっけ?確かこの場面ではステラがアーノルドとの時間が嬉しくてステラが主にアーノルドに声をかけてたと思うけど、、。)


ステラはふとそんな事を考えていた。


「あぁ。ステラ嬢君は、、。」


アーノルドがステラに言いかけたその時…


コンコンッ…


部屋の扉がノックされた。


(きた、、。)


ステラがノックを聞いて考えていた。


「殿下、ルノア男爵家のご令嬢グレイス様がお見えになられてます。」


執事が扉の外からアーノルドへ言った。


「グレイス嬢が?」


アーノルドが言った。


(やっぱりね、、。オンラブのこの場面はステラがアーノルドとの二人の時間を楽しんでいるところにグレイスがやって来る流れだった。その後アーノルドがグレイスをステラとの席に同席させたんだよね。てか…普通に考えたら別の女を平気で同席させるってありえなくない?マジでアタオカの発想じゃん。そのせいでステラはグレイスが同席するのを嫌とも言えず同じ空間でお茶をしてグレイスがアーノルドが好きそうな話ばかりをして和気あいあいとするところを目の前で見せられたんだったよね。これがきっかけでのちにステラは悪役令嬢と化すんだよね。まぁ、そりぁそんなんばっかりこれから見せられた挙げ句にあっさり見捨てられんだから悪役にもなるわ。)


ステラは小説の内容を思い出しながらそんな事を考えていた。


「ステラ嬢、もしステラ嬢が構わないならばグレイス嬢も同席させても大丈夫だろうか?」


アーノルドがステラへ言った。


「えぇ。構いません。」


ステラは頷きながら言った。


(グレイスが同席してくれた方が私はここを抜けやすくなるもんね。だから大歓迎よ〜♫カモン♫グレイス♫早くバスティンに会いに行きたい〜♫)


ステラは内心ウハウハでそんな事を考えていた。


(こちらから提案しておいてなんだがステラ嬢は他の令嬢がいても嫌ではないのか?まぁ、グレイス嬢を同席させて確認したいことがあるからな。)


アーノルドはそんな事を考えていた。


「グレイス嬢をお通ししろ。」


アーノルドが部屋の外にいた執事へ言った。


「承知致しました。」


執事が言った。


そして、しばらくしてステラとアーノルドがいる部屋にグレイスが通された。


「皇太子殿下にご挨拶申し上げます…。」


部屋に入ってきたグレイスがアーノルドへ挨拶をした。


「あっ、、。」


アーノルドへ挨拶をしたグレイスはアーノルドと共にステラが居ることに気づき思わず驚き声を漏らした。


「グレイス嬢、できる事ならば事前に連絡をしてくれる良かったのだが。」


アーノルドが困った様に微笑みグレイスへ言った。


「申し訳ありません、、。皇宮の近くまで来たものですから…殿下にお会いできるかと思い急な訪問をしてしまいました。まさかステラ様とご一緒だとは思わず本当に申し訳ありませんでした。」


グレイスは慌てて申し訳なさそうに言った。


「まぁ、今回はステラ嬢が同席を承諾してくれた為にここへ通したが次回からは来る前は連絡を先にしてくれ。」


アーノルドは優しくグレイスへ言った。


「はい。次回からは気をつけます。」


グレイスはホッとした表情で言った。


「グレイス嬢はステラ嬢の横の席へ座ってくるといい。」


アーノルドが言った。


「はい。」


グレイスが頷きながら言った。


そして、グレイスはステラの横の席へ座った。


(おいおいおい!普通はアポなしで皇族に会うなんてないよ?いや、前世でも皇族にちょい金持ちくらいが会うのもアポなしなんてありえなかったよ?!オンラブを読んででも疑問に思ってたけど…実際に目の当たりしてもありえないわぁ…。しかも…それを普通に軽く注意するくらいで終わるアーノルドもおかしいわぁ。これがヒロインフィルターってやつ?まぁ、二人の事は私には関係ないし礼儀がなってないとしても別にいいけどね〜。)


ステラはそんな事を考えていた。


「ステラ様、申し訳ありませんでした、、。まさかステラ様がいらっしゃるとは思わず。」


グレイスは申し訳なさそうにステラへ言った。


「謝らなくても大丈夫ですよ。私は構いませんから。」


ステラはにこりと微笑みながら言った。


「あ、ありがとうございます。」


グレイスはホッとした表情で言った。


(だって、私はあなたがここへ来ることは知ってたしあなたが来てくれたお陰で私はここを抜けれるんだからいくらでも居座ってくれていいもんね。さぁ〜隙を見つけてドロンするとしますか!)


ステラはそんな事を考えていた。


「グレイス嬢は最近も慈愛活動を行っているのか?」


アーノルドがグレイスへ尋ねた。


「はい。私のできる範囲の活動をさせて頂いています。」


グレイスはにこりと微笑みながら言った。


(そっか。確かヒロインであるグレイスは貴族の令嬢にも関わらず自身の男爵家の領域や帝都の街でも貧しい子供や戦争での元・敗国奴隷に対して積極的に慈愛活動を行っていたんだったよね。グレイスのそういうところにも確かアーノルドが心惹かれた理由の1つだともオンラブの中で書かれてたっけな。)


ステラは小説の内容を思い出しながら考えていた。


「そうか。ここ最近も帝都の街へ訪れているのか?」


アーノルドが更にグレイスへ尋ねた。


「いえ…今日久しぶりに帝都の街へ出向きました。」


グレイスは申し訳なさそうな表情で言った。


「そう、、か、、。」


アーノルドはグレイスの言葉を聞き何か考える様な表情で言った。


(え?確か昨日街でグレイスを見たけど。確かにあのグズ野郎達が暴行してる現場でグレイスを見たけど。それも暴行の現場を見ても知らないもの顔で特に助けを呼ぶでもなく去っていったけど。確かにグレイスだったんだけどな。でも、慈愛活動をしてるグレイスが助けも呼ばず素通りする訳ないよね。う〜ん、、。)


ステラはグレイスの言葉を聞き少し驚いた表情を浮かべてふと昨日の事を思い出しながら考えていた。


「あの、、もしかしてグレイス様には双子の姉か妹なんかいらっしゃいます?もしくはグレイス様と似ている従姉妹とか?」


ステラがもしやと思いグレイスへ尋ねた。


「い、いえ。私は姉妹はいません。従姉妹はいますが私とまったく似ていません。何故ですか?」


グレイスは??という表情で言った。


「あ、いえ。何とな気になったので、、。」


ステラは笑って誤魔化しながら言った。


「そうですか。」


ステラは??という表情のまま言った。


(双子の姉も妹も似てる従姉妹もいないか。じゃあ昨日見たのはグレイスのそっくりさんってこと?まぁ…でも世の中には自分に似てる人が3人いるっていうしその一人だったのかなぁ。)


ステラはそんな事を考えていた。


「殿下、以前殿下がお好きだと話されていた演劇のチケットが2枚ほど手に入ったのですがもしよろしければ一緒に行って頂けませんか?」


グレイスがアーノルドに少し上目遣いで言った。


「以前話していた演劇、、。あぁ!以前のお茶会の時に話していた演劇のことだな。」


アーノルドは思い出した様に言った。


「はい。」


グレイスは嬉しそうに微笑みながら言った。


(オンラブのこの場面で二人が話している内容までは細かく書かれていなかったけどアーノルドとグレイスはこんな話をしてたのかぁ。ステラは目の前でデートの約束なんかされたらたまらなかっただろうなぁ。)


ステラは二人の会話を聞きながら明後日の方向を向いて考えていた。


(演劇かぁ。演劇といえば昨日はバスティンと大道芸見れなくて残念だったなぁ。まぁでも見に行くチャンスがなくなったわけじゃないもんね!半年の間でバスティンといい雰囲気になったら半年経っても行けるんだし!)


ステラは明後日の方向を見ながらそんな事を考えていた。


「演劇か。最近忙しくて観れていないからとても魅力的な話だな。」


アーノルドは考えながら言った。


「では、ご一緒頂けますか?」


グレイスは上目遣いでアーノルドへ言った。


「そうだな、。」


アーノルドは顎に手をあて考えながら言った。


(演劇はとても魅力的な話なのだが。ステラ嬢は先程からずっとボーっとどこか見て心なしか落ち込んでいる様に見えるがやはりグレイス嬢を同席させたのをあまりよく思っていないのだろうか。少し二人に確認したいことがあったからグレイス嬢を同席させたが…それに加えて私がグレイス嬢と演劇を見に行くかもしれないと思いそれを複雑に感じているのか。)


アーノルドはステラをちらりと見て考えていた。


(それにしても、昨日はステラ嬢って私の名前を呼んでくれた。あの声が脳内で何回も再生されて脳が溶けそうだもんね。あの声をアラーム音にしたいくらいだよねぇ〜♡この世界にスマホがないのを日々残念に思うな〜。嬢なしで本当は呼んで欲しいけどまぁそれはおいおいってことで。私もどさくさ紛れにもっかいバスティンって名前で呼んでみる?いや…やめとく?もう少しバスティンの身近に居座ってからの方がいいのかなぁ。でも、身近に居座るのって以外に大変だってわかったんだよね。バスティンはずっと家に居るわけじゃないし騎士団の第二部隊の団長として皇宮へきてる事も多いし。ラスター公爵家にお邪魔するのは問題なくなったけど皇宮にはみやみに出入りできないしな。何かいい方法ないかなぁ…。)


ステラはアーノルドが思っている様なことではまったく考えてなくひたすらバスティンの事ばかり考えていた。


(出来ることなら1日も欠かさずバスティンの顔を毎日拝みたいんだよね。そして、バスティンの事を悪く言う奴は私がこてんぱんにしなきゃなんないしね!)


ステラは更にそんな事を考えていた。


「やはりご一緒すのは難しいですか?」


グレイスは残念そうな表情でアーノルドへ言った。


「いや、そんなことはないが、、。」


アーノルドが困った表情で言うとステラをチラりと見た。


(ステラ嬢は私がグレイス嬢と出かける事に対して何と思うのだろうか。)


アーノルドはステラを見てそんな事を考えていた。


アーノルドが自分の事を見てそんな事を考えているなど知る由もないステラは離れた場所を歩く人物を見て目を開いた。


(あれは!バスティン?!間違いない!私のバスティンセンサーに狂いなし!今日はバスティンは公爵邸で執務をすると思ってたけどまさか皇宮へ来るなんて。きっと稽古場に行くんだよね!こうしちゃいられない!私も稽古場へ行かなきゃ!)


ステラは目を輝かせてそんな事を考えていた。


「あ、私ったら。ステラ様がいらっしゃるのにこんな話をするなんて。もしかして、、ステラ様にもお誘いの話をされてましたか?」


グレイスはアーノルドの視線の先を見てハッとなり慌てて言った。


「いや、そういう訳ではないのだが、、。」


アーノルドは困った表情で言った。


「あの、ステラ様申し訳ありません、、。私がいきなり殿下にお誘いの話などしてしまい、、。」


グレイスは慌てて泣きそうな表情でステラへ言った。


「はい?」


ステラは内容はまったく耳に入ってなかったがグレイスに何かを言われたと目を輝かせたまま思い振り向いて言った。


「あ、えっと、、ですから、、ステラ様にいらっしゃるのに私が殿下に演劇のお誘いをしてしまって。」


グレイスは振り向いたステラの何故か明るい表情を見て戸惑いながら言った。


「あぁ、それならどうぞお二人で行って楽しんで来て下さい!演劇でも何でもお好きにして下さい!私には関係ないことですので。それに今日はグレイス様が同席してくださり助かりました。私はとっても大切な用事ができてしまったのでこれで失礼させて頂こうと思います。」


ステラは満面の笑みでグレイスへ言った。


「殿下、という訳なので私はこの辺で失礼させて頂こうと思いますがよろしいですか?」


ステラは明るい表情でアーノルドへ言った。


「え?あ、あぁ。それは構わないが本当に私がグレイス嬢と出かけても構わないのか?」


アーノルドは呆気に取られつつ言うもステラへ尋ねた。


「??はい。構いませんよ?殿下が行きたいのであればご自由にされればいいのでは?」


ステラは??という表情でアーノルドへ淡々と言った。


(何言ってんの?もしかして私が行かないで欲しい思ってると思ってんの?まったく、、。私はオンラブのステラとは違うんだから。)


ステラはそんな事を考えていた。


「そうか、、。」


アーノルドは何故か複雑そうな表情で言った。


「はい。では、私は失礼致します。」


ステラがアーノルドとグレイスへ言うと部屋から出て行ったのだった。


(よっしゃーー!脱出成功!グレイスサンキュ〜!!)


ステラは部屋を出るとルンルンでそんな事を考えながら騎士団の稽古場へ向かったのだった。




ステラは騎士団の稽古場へ到着した。


稽古場ではバスティンが第二部隊の騎士達と打ち合いをしていた。


(あぁ、、バスティン、、。やっぱりバスティンの姿を見ると落ち着くわぁ〜。癒やされるわ〜。かっこよすぎてやばいわ〜。)


ステラは打ち合いをしているバスティンを見てニヤニヤしながらそんな事を考えていた。


「あっ!ステラ様でありませんか!」


騎士の一人がステラに気づき声をかけた。


「こんにちは。」


ステラが笑顔で言った。


「今日はどうされましたか?」


騎士がステラへ尋ねた。


「公爵様に会いに来たのですが…打ち合いをしていて忙しそうですね。」


ステラはチラりとバスティンを見て言った。


「いえいえ!むしろ…団長に会いに来て下さり助かりました。」


騎士が切実な表情で言った。


「と、いいますと?」


ステラは??という表情で言った。


「ちょうど騎士たちが稽古を終えてそれぞれの別の作業に取り掛かろうと思ったところに団長が来られて稽古を続けられているのです。なのでステラ様が来られたお陰で休憩もできそうです。」


騎士が安堵した表情で言った。


「そういう事ですか。」


ステラは苦笑いを浮かべて言った。


(お父様が団長の第一部隊も稽古大変そうだなって話を聞いてて思ったけど第二部隊も負けてなさそうだなぁ。)


ステラは苦笑いを浮かべて考えていた。


「団長ーー!ステラ様がいらっしゃいましたよー!」


騎士がバスティンに向かって言った。


するとバスティンは手を止めステラ達の方を見た。


バスティンはステラを見て少し驚いた表情を浮かべた。


そして…


「よし!稽古は一旦終わりだ。皆…休憩にしよう。」


バスティンが稽古をしていた騎士たちへ言った。


「やった!ステラ様ありがとうございます。」


騎士が嬉しそうにステラへ言った。


「いえいえ。」


ステラは笑顔で言った。


「では私はこれで、、。」


騎士はそう言うと嬉しそうに休憩へと向かった。


そして…ステラの元へバスティンがやってきた。


「何故ここへ?確か今日は用事が出来たと朝一で手紙をよこしてきただろう?」


汗を拭きながらステラの元へとやって来たバスティンがステラへ尋ねた。


(バスティンの汗を拭く姿…頂きましたーー!!たまらん、、。汗を拭く姿すら画になるし愛おしい。あぁ…今の姿は写メりたい瞬間だったわぁ〜。)


ステラはニヤニヤしながら考えていた。


「ステラ嬢!聞いているのか?」


一人でニヤニヤして返事をしないステラへバスティンが言った。


「え?あ、はい?なんでしょう?公爵様の汗を拭く姿があまりにも画になりすぎていて思わず見惚れていて聞いてませんでした。申し訳ありません。」


ステラはバスティンの声にハっとなり不思議な言い訳をして言った。


「見惚れ?!コホンッ、、。それでどうしてかここへ?今日は用事ができたと言っていただろ?」


バスティンがステラの言葉を聞き思わず慌てたがすぐに冷静になり言った。


(まったく、、。この令嬢ときたらバカ正直に…それも自信満々な表情で。私にその様な事を言う者などステラ嬢くらいだぞ。本当に物好きな令嬢だな。)


バスティンはそんな事を考えていたが嫌な気持ちではなかった。

むしろ…どこか気持ちが落ち着く気がしていたのだった。


「そうなのですが。実は、用事というのはゲスペンテン師やろ…ではなく殿下から昨日手紙が届いていまして皇宮へ足を運ぶ形となったのです。どうやら私に聞きたいことがあったようでして。ですので本当は公爵様の元へ朝一番で行きたかったのですが難しくなったのです。」


ステラが事情を説明した。


(あれ?そういえばアーノルドは私に聞きたいことがあるって言ってたよね?途中でグレイスが来たか話が中断されたけど結局何が聞きたかったんだろ。まぁ、結局聞いてこなかったってことは大した事じゃなかったってことね。)


ステラはバスティンに説明していてふとそんな事を考えていた。


「ゲスペテン師とは一体、、。」


バスティンが思わず言った。


「あぁ、それは気にしないで下さい!」


ステラがきっぱり言った。


「それで、殿下に呼ばれたというのに何故ここへ?」


バスティンが言った。


(また殿下か、、。皇太子妃も迎えてない殿下が個人的に令嬢を呼ぶということは。)


バスティンはモヤっとしたものを感じながらそんな事を考えていた。


「あぁ、それはですね、、。一先ず座って話しましょう!」


ステラは笑顔で言った。


「ん?あぁ。」


バスティンは頷きながら言うと稽古場にある椅子へと座った。


「それで、話の続きですが殿下と話をしている途中に別のご令嬢が殿下を尋ねてこられてそのご令嬢も同席する事になったのです。」


ステラがバスティンへ説明した。


「なに?別の令嬢が同席だと?ステラ嬢はそれを了承したのか?」


バスティンは驚き言った。


「もちろんです!だって、そのご令嬢は最高のタイミングで殿下を尋ねてこられたのですから。」


ステラはニヤリとして言った。


「??どういう意味だ?」


バスティンは意味がわからないという表情で言った。


(普通は…皇太子妃がいない殿下に対して皇太子妃の座を狙う令嬢がいる中で殿下との二人きりの時間はチャンスだろうにそこへ他の令嬢が同席などしたら嫌なのではないのか…?)


バスティンはそんな事を考えていた。


「そのご令嬢が同席したことによって私はあの場から離れる事ができたのですから!私は一秒でも早くあの場を去って公爵様のところへ行きたかったので。」


ステラはドヤ顔で自信満々に笑い言った。


「昨日の余韻を残したまま公爵様に会いに行こうと思った矢先に皇宮へ出向く事が決まってどれほど気持ちが下がったことやら。皇宮に着いて殿下と話をしている間も頭の中では昨日公爵様が私の名前を呼んで下さった声が脳内でずっと再生されていて殿下の話なんてまったく耳にもはいってこなかったですよ。」


ステラが続けて言った。


「ですが…令嬢が同席してその場から抜ける機会を伺っていたら私のバスティンセンセーがビビビっと反応して稽古場へ向かう公爵様の姿が見えてこうしてはいられない!すぐに私も行かないと!と思いそのタイミングで殿下の話の相手はそのご令嬢に任せて私はここへ向かったのです!」


ステラは少し興奮気味に言った。


「今日はもう公爵様に会えないだうと残念に思っていたのでこうして会えて良かったです!こうして公爵様に会えたんですから結果的に皇宮に来て良かったです!殿下に感謝しないとですね!!」


ステラは満面の笑みで言った。


「フッ、、。」


その時…

バスティンが声を漏らして笑った。


「えっ?今、、笑いました?!」


そんなバスティンの声を聞き逃すわけのないステラがバッとバスティンの顔を見て言った。


「いや、、笑っていない、、。」


バスティンは真顔で言った。


「いいえ!絶対に笑いました!絶対です!誤魔化しても駄目ですよ!」


ステラは勢いよく言った。


「だから、笑っていないと言っているだろう?」


バスティンは真顔のまま言った。


「んんーーーー!」


ステラは頬を膨らませながら言った。


「絶対に笑ったのに!」


ステラは頬を膨らませながら言った。


そして…


「そちらの騎士の方〜!先程、公爵様笑いましたよね?!」


ステラは近くを歩いていた騎士に声をかけて尋ねた。


「え?!団長がですか?!団長は笑わないですよ!」


騎士はステラの言葉に驚き言うもないないと手をふりふりしながら言ったうとまた歩き出した。


「え?でもさっき本当に笑ったんですよ。」


ステラはげんなりした表情で言った。


「絶対に笑いましたからね!」


ステラは諦めずに言った。


(つい笑ってしまったのか、、。この私がか?だが、あまりにもステラ嬢の発想と行動が突拍子もない事に驚いたと同時に自分の気持ちに正直すぎてここまできたら清々しく思えた。それに…その行動すべてが私の事を考えての事だと思うと自然に笑みが溢れてしまったな。ステラ嬢のその迷いのない私に対しての気持ちを感じると胸の辺りが温かくなり満たされていく様な感覚になる。この感覚はこれまでに感じたことがない感覚だな。)


バスティンはそんな事を考えていた。


「話は変わるのですけど…今日は何だか騎士の方達が忙しそうに見えますが何かあったのですか?」


ステラがふと疑問に思ったことをバスティンへ尋ねた。


「あぁ。昨日から騎士団員の寮の寮母が娘の出産の為に長期休暇を取ってな。その為に当分の間寮の料理や洗濯や掃除など団員達で手分けしてやる事になったのだ。」


バスティンがステラへ説明した。


「え?でも、変わらず稽古やお仕事はあるんですよね?それに加えて料理や掃除に洗濯なんてかなり負担になるのではないですか?その寮母の方が不在の間だけでも他の方に来てもらうことはできないのですか?」


ステラは驚き困った表情で言った。


「期間が1ヶ月ほどだからそのくらいの期間であればその期間だけ寮母を探すのもな…という結論に至ってな、、。」


バスティンが言った。


「そうなのですか。」


ステラが言った。


(私も前世で両親が亡くなってじーちゃんに住むようになってからは学校から帰宅したら道場の手伝いに加えて自分の稽古、、更に稽古が終わったら家事と料理をやってたんだよね。じーちゃんにはなるべく負担かけたくなかったしね。だから騎士さんたちの大変さよくわかるわぁ。何か少しでも大変さが和らぐ手段とかないのかなぁ。)


ステラはバスティンの話を聞きそんな事を考えていた。


(ん?んん?!1ヶ月の間誰も雇わないなら…寮母さんの代わりを私がやったらいいんじゃない?そうしたら騎士さん達の力にもなれるしバスティンにも会えるじゃん!一石二鳥じゃん!何なら一石三鳥にだってなるかもしんないしね!私って今日冴えてるわぁ〜!)


ステラはまさに閃いたといわんばかりの表情で考えていた。


(そうと決まればお父様に今夜早速相談してみよう〜っと!)


ステラは一人でニヤつきながらそんな事を考えていた。


「まさか、また何か考えてるのではなによな?」


バスティンがステラの表情を見て言った。


「え?そ、そんな事をありませんよ。」


ステラはギクっとなるも誤魔化しながら言った。


「ならよいが、、。」


バスティンが言った。


(間違いなくまた何か企んでる顔だな。)


バスティンはそんな事を考えていた。


そんなステラとバスティンの様子を見ている人物がいた…

アーノルドだった…



アーノルドはステラが部屋から出ていった後に用事があるとグレイスにも帰ってもらい皇太子の執務室へと移動していた。

執務室の窓からは丁度騎士団の稽古場が見えるのだった。


「ステラ嬢はてっきり帰ったと思ったがあの後騎士団の稽古場へ向かったのだな。」


アーノルドが窓からステラを見て呟いた。


「ステラ嬢はあんな風に笑えるんだな、、。」


さらにアーノルドはステラを見て呟いた。


(数年前に会ったステラ嬢は私を見て緊張の混じった何かにときめいた様なそんな笑顔を浮かべていた。私は自分が皇族で尚且つ皇太子となってからは自分に会う人間の私に対する表情が偽りなのかそうではないかをいつの間にか身につけていた。近寄ってくる者の表情は大半が偽りだ。特に女性の笑顔は偽りがほとんだ。もちろん私の普段浮かべる笑みは皇太子としてのもので私自身のものではない…。)


アーノルドはそんな事を考えていた。


(そんな中でグレイス嬢は他の令嬢とは違い貴族令嬢でありながらも懇親的に慈愛活動を行っていると聞きとても感心した。他の令嬢とは違い我が我がと前に出ず弁えるところは弁える事が出来る令嬢で好感が持てた。ステラ嬢の様に飛び抜けてうつくしい訳ではなかったが愛嬌のあるところがまた好感を持てた。彼女とならば話をしても楽しいし二人で出かけてみるのもきっと楽しいと思っていた。昨日のあの光景を見るまでは。)


アーノルドは眉をひそめてそんな事を考えていた。


(昨日、私は個人的に会わなければならない者に会う為あまり目立たない身なりで内密に街へと繰り出した。待ち合わせの時間になっても待ち合わせ場所へ現れないので周辺を探していた。その時どこからか男の怒鳴り声の様なものが微かに聞こえ声のする方へ向かうと男二人が平民らしき人物二人へ暴行を働いてた。そして、そのすぐ近くにグレイス嬢の姿があった。グレイス嬢は慈愛活動をしているくらいだから暴行されている者をどうにかして救おうと思いその場にいるのだと思った。しかし、女性一人でどうにかなる訳でもなく見つかったら危険だと思いあまり私がその場にいるのは知られたくはなかったがグレイス嬢をそっと助けた後に暴行されている者を救おうとグレイス嬢の元へ向かおうとしたその時だった、、。)


アーノルドはその時の事を思い出す様に考えていた。


(グレイス嬢はまるで汚いものをみる様な表情でその場を通り過ぎて行った。助けを呼びに行ったのかと思いグレイス嬢を追いかけ様としたがどうやらグレイス嬢は助けなどを呼ぶことなくどこかへ歩いて行ってしまったのだ。私は信じられなかった。グレイス嬢が見たこともない様な表情で助けるどころか何もせず淡々と去っていったことが。)


アーノルドは眉をひそめながら考えていた。


(だが、私は一先ず暴行されている者達を助けなければと思い暴行現場へ戻った。しかし…現場へ戻り更に驚いたのはその場にステラ嬢がいたからだ。それもステラ嬢一人で暴行をしている男達を止めに入っていたからだ。ステラ嬢は男の一人に振り飛ばされ地面へ倒れてしまった。私は咄嗟に助けようとステラ嬢のところへ向かおうと思ったその時…ステラ嬢が立ち上がり男達に的確に回し蹴りをしたのだ。私は目の前の光景に驚愕してその場から動けずにいた。ステラ嬢はその後あっという間に暴行をしていた男達を気絶させて縛り上げた。男達を縛りあげたかと思えば暴行されていた者たちの傷の応急処置をしていた。それも…自らの服を破いてまでも…。手当されている男性が何故か反抗するも一瞬で黙らせ手当の続きをしていた。)


アーノルドはそんな事を考えていた。


(そして、驚く事にステラ嬢が手当していたもう一人の人物は私が会う予定だった者だった。何がありその者が暴行されてしまったかはその場では分からなかったが少なくともステラ嬢のお陰でその者が死なずに済んだのは間違いなかった。)


アーノルドはそんな事を考えていた。


(私の中でステラ嬢の印象が見る度に変わっていく。見た目とは裏腹に問題猫のロミオにも一瞬で懐かれ人目もはばからず走り出すし公爵家で大切に育てられた故にか弱いのかと思えば簡単に大の大人を倒すし…相手が男性だろうと関係なく目の前で服を破くし…応急処置の手際も物凄く良かった…。それにあんな風に無邪気に楽しそうに笑う。)


アーノルドは窓からステラを見てフッと笑みを浮かべて考えていた。


(だが、私にはあの様な笑顔を見せたくれた事は初めて彼女に会った日以来ないな。私の誕生パーティーの時もそうだったが…他の令嬢は私へ偽りの笑顔だとしてもそれを絶やさないが…ステラ嬢は自分の気持ちを偽る事なくいつも私には不服そうな表情だし笑顔も隠そうともしないあからさまな引きつり笑顔だ…。何故…私にはあの様な顔ばかりするのだろうか、、。)


アーノルドはモヤモヤするのを感じながら考えていた。


(ステラ嬢と会う度に何故だか彼女へ目がいってしまうし彼女が何を考えているのかも気になってしまう。そのせいもあるのと昨日のグレイス嬢の出来事もありグレイス嬢の誘いを断ってしまったな。あれはグレイス嬢ではなかったのかもとも思ったが…今日のステラ嬢のグレイス嬢に対しての質問を聞く限りきっとステラも昨日グレイス嬢を見たのだろう…。グレイス嬢の表情を見たステラ嬢も私と同じ事を考えていたのだろう…。私が今日ステラ嬢に聞きたかったのはもしかして昨日街でグレイス嬢を見たか?ということだったが聞かずともあれはやはりグレイス嬢だったのだとステラ嬢のグレイス嬢へと言葉で確信しな。グレイス嬢もまた偽りの自分を私へ話していたのだろう。本当に慈愛活動をしているのならあの場で暴行されている者を見捨てるはずがないのだから。)


アーノルドは眉をひそめながら考えていた。


(誕生パーティーの時も思ったがステラ嬢はラスター公爵の近くにいる事が多いのだな。パーティーでもステラ嬢はあの者とダンスを踊っていたな。あの噂が耐えない化け物公爵と呼ばれている男、、。バートン公爵が長年ラスター公爵を気にかけている様だから娘であるステラ嬢もラスター公爵を気にかけているのだろうか。公爵と一緒にいるところを見られならステラ嬢までもあまりよく思われないだろうに。心なしか…公爵の表情も柔らかい気がするな…。いつも無表情だというのに。)


アーノルドは窓からステラとバスティンを見ながらそんな事を考えていた。


(きっとステラ嬢は常に自分を偽る事なく自分に正直に相手へ接しているのだろうな。私にはあの様な笑顔を向けてくれないのだろうか、、。)


アーノルドは切ない表情を浮かべてふとそんな事を考えていたのだった……


ステラはそんなアーノルドの視線になんて一切気づいてはいなかったのだった……

ご覧頂きありがとうございます★


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ヤンデレ公爵令息の溺愛ストーカー日記♡転生令嬢の破滅回避生存日記☆(※不定期更新)



悪役令嬢でもなくヒロインでもないまさかのモブキャラに転生したので大好きなハンドメイドをしながら暮らす事にしました!(※不定期更新)


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