ある女々しい男の気持ち
ある女々しい男の気持ち。
昔から何もかもが嫌だった。
暇さえあれば恋の空想にひたって、それが唯一の楽しみだった。
白馬の王子様ならぬ王女様がいつか自分にも現れると願っていた。
いつか2人、手をつないで歩いて、キスをして眠って、何もかもすべて忘れたかった。
勉強にも仕事にも少しも興味が持てなかった。
勝っても負けても、うれしくも感じないし、くやしくも感じなかった。
この世の何もかもが、むなしかった。
愛してくれる女の子に優しくされている時だけ、温かくて幸せな気持ちでいっぱいになれた。
人に愛されたかったけど、人とかかわるのは怖かった。
もっぱら自室で妄想していて、進んで人と出会うことをしなかった。
愛してくれる人がいても、その愛の深さを疑ってしまった。
疑って試して遠ざけることを繰り返して、面倒くさすぎて捨てられた。
一途なつもりでいて移り気でもあった。
少し優しくされればすぐに恋を意識した。
恋してくれる人がいれば、自分の心をすぐすべてゆだねた。
冷たい孤独が怖くて怖くて、暖かな温もりを求めていた。
自分の性格に自信なんてなくて、自分が本当に愛されているとは思えなかった。
男なんて、自分の他にもたくさんいて、たいした違いはないと思った。
勉強ができたり、仕事ができたり、表面的な価値で飾ろうとした。
好きな女の子の気を引きたくて、そんな「お化粧」に精を出した。
勉強も仕事も、お化粧だった。
自分自身では、ほんの少しも興味なかった。
ただ、その時々に好きな女の子の、趣味に合う自分を飾ろうとしていた。
みんなに優秀だと言われることに興味はなくて、ただ恋の温もりが欲しかっただけ。
自分自身なんてなかった。
作ろうとしても無理だった。
自分が存在するとすれば、好きな人の目に映ったお化粧で飾った自分自身。
それで愛されれば幸せなら、それでもいいと考えた。
女の子は、眉を描いたりイヤリングをつけて自分を飾る。
男の子は、学歴や年収ないしその他肩書きでお化粧する。
心のどこにも闘争心なんて見つからなかったら、そんな依存心で生きていくしかないよね。
白馬の王女様の救いを夢見て、日々お化粧に精を出す男の気持ち。