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第8話 選択肢、時々女神。

『で、どうするの? ここからは個別イベントだよ?』


 担任教員が教壇で話し始めるや否や、ここぞとばかりに問いかけてくる女神。……言われなくても分かっているさ。

 共通ルート内の個別イベント。ここで選ぶイベント次第で対応するキャラの好感度が上昇するのだろう。極まれにバッドエンド直行の選択肢が紛れ込んでいたりもするが……


『あなたが自制できる限りは大丈夫! どの女の子を選んでも萌え萌えキュンキュンなイベントが待っていること間違いなし! 女神のお墨付きだよ!』


 墨を付けるな、女の子の価値が下がるから。


『え、鮮度抜群だよ?』


 鮮度って何⁉ 女神って物理的に墨出せるの?


『女神的には常識って言うか~みたいな~』


 これ以上女神のイメージ崩すの止めて頂けませんでしょうか⁉ それと口調! またギャル出てるから!


『あのさ、今はそんな突っ込みより、選択肢について考えない?』


 急に素に戻るんじゃねえ! 正論だけど!


『ほらほら、早く決めないと先生の時間稼ぎが終わっちゃうから』


 どうにもこうにも釈然としないが、俺は正論にはめっぽう弱いからな! 大人しく従ってやるよ!


『突っ込んだら負け突っ込んだら負け突っ込んだら負け……』


 呪詛じみた暗示を無視して、提示されている三つの選択肢について考える。

 ――その一、唯とお買い物デート。

 イベント内容としては、近所のスーパーで一緒に夕食の買い物。帰り道に買い食いをして公園に立ち寄り、お互いにクレープなんかを食べさせ合ったりしちゃう感じだろうか。『クリーム、ほっぺに付いてますよ? もう、兄さんはお子様なんですから』とか言われちゃう? それでぬぐい取ったクリームをちょっといやらしく舐めて、『あ、食べちゃった……』って恥じらったりしちゃう⁉

 いい! とんでもなくありがちな展開だけれど、大いにあり!


『え、何このかつてないテンション。私は今何を聞かされているの?』


 ――その二、玲奈の様子を見に行く。


『あ、私のことは完全に無視なんだそうなんだ』


 これは約束も何もないけれど、取るべき行動としては非常に王道!

 朝あれだけ取り乱していた幼馴染を気遣って、一緒に下校。『せっかくだし、どこか寄っていこうよ』と誘われるがままにショッピングモールへ! 何かおそろいのものを欲しがる玲奈! 『だって、クラス別々だし……せめて洸と一緒の証明が欲しいの……』とか健気に訴えてくるのは反則でしょ⁉

 ツンデレの本質はギャップ! ギャップ萌え最高!


『……聞いているこっちが恥ずかしい』


 ――その三、鷲見とクラス会に参加。

 昼食の会場は近場のファミレスだろうか。まあそこは大した問題ではない。メインはカラオケ! 曲待ちの間にドリンクバーでばったりと出会う二人。『ちょっと疲れちゃったし、どこかで休まない?』と、こっそりとカラオケを抜け出し、向かった先は……


『あうとぉぉぉぉぉぉ!』


 おい、いいところで水差すんじゃねえよ。


『水を差さないと、ナニかさすところだったよね⁉ 女神、言いましたよね⁉ キスまでしか認めないって、確かに言いましたよねぇ⁉』


 お前が認めようが認めまいが、世界ってのは回り続けるんだぜ?


『わっかんないよ! なんで決まったぜ的な雰囲気を醸し出しているのか、女神ぜんっぜん分かんないよ! ちゃんと自分の言葉で語ってよ!』


 ちっ、うるせえ女神だ。


『そりゃうるさくもなるよ! ええ、なりますとも! 黙らせたいなら早く誰かを選んでよぉ! ほら早く!』


 なんだよ、やけに急かすじゃないか。


『ぎくぅ⁉』


 ……もしかして、この選択だけでルート確定したりしないよな?


『な、ななななななんのことかな~。女神、わっかんない!』


 露骨すぎるだろ、もうちょっと頑張れよ! 騙したい対象からも応援されるほどボロボロだぞ、お前⁉ 女神的に嘘つけないのはポイント高いかもしれないけれどさ!


『……ええ、そうですとも! 完全に完璧に完膚なきまでに確定しますとも! だって可愛い女の子にあなたが抵抗できるわけないもん! なされるがままに、流されるままに、魅力に溺れちゃえ! ばーか!』


 卑しい……いやらしい女神とは思えない言葉選びで捲し立てた後、声が聞こえなく(マイクがミュートに)なる。

 言うべきことは言い切ったから、どうするかは俺が決めろと言うことなのだろう。


 あどけなさの残る、小動物のような可愛さ全開の妹――唯。

 テンプレ金髪ツンデレで放っておけない幼馴染――玲奈。

 清楚系で大人の余裕を醸し出す魅惑の委員長――鷲見。

 俺が選ぶべき道は、選択肢は、


 ――既に決まっていた。

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