4話 未知
「ふぅ…」
とりあえず看護師さんに言われた通りベッドに腰掛ける。キラキラした繊維みたいなものが視界の端に見える。
これはこれから大変なことになるのかなぁとか考えていると
「打ったところは大丈夫そうですね、これから先生が来て、お話する事は貴方にとって辛いことだと思うけど、命に関わるような事じゃないから安心してね。」
「わかりました。ありがとうございます。」
命に関わるような事だったら……と考えていた矢先に、看護師さんからの言葉で少し救われた気がする。
……でも、やばいことになっている事は薄々感じてはいる。それが現実にならなければいいなぁ……
*
5分くらい経っただろうか……俺の担当医と思われる人と、さっき嵐のように去っていった看護師さんが書類をいっぱい持って部屋に入ってきた。
「中野伊織さんですね?」
「はい、そうです。」
「担当医の畑誠です。突然でびっくりすると思いますが、検査等した結果、あなたは若返り、尚且つ性別的に女性になってしまいました。」
「……はい???」
薄々分かってはいたものの聞き返してしまった。わかっていてもびっくりするものはびっくりするし、若返り??性別的に??どゆこと!!?!?
……息を整えとりあえず質問してみよう。
「えーっと……とりあえず会社に…じゃなかった、運ばれて来たところから教えてもらって良いですか?」
なんで会社が出てくるんだよ!!と自分にツッコミを入れながら、混乱している頭で考えを絞り出して聞いてみた。
*
それから30分くらい話した。だいぶ状況が掴めて来た、と言ってもまだ不安はいっぱいある。まとめるとこうだ。
まず、ここは天王寺星峰大学病院。かなり有名な病院で研究機関も付随しているすごい病院。
現在は倒れてから10日経っているという事。
運ばれた直後は40度以上の高熱でICUに入れられ、命の危機があったこと。
身体に変化があったのは、高熱が出ている時、徐々に変化していったそうだ。
あと、人間にはない未知の機関があるそうだ。
「なるほど、大体わかって来ました。」
「そうですか、それは良かった。この症状前例が無いんですよねー、それで今後のことなんですが……」
ん?なんだか嫌な予感がするぞ??俺はモルモットになんかなりたくねぇぞ?いやだいやだいやだ!!
「まずは戸籍の変更ですね、貴方は女性になってしまっているので、こちらで色々手続きしておきます。」
「戸籍の変更は簡単に変更できないはずでは???」
「まぁまぁ私は色々と融通が効くんですよ……」
「な、なるほど……」
なんかすげぇ医者のところにきてしまった。危ない香りもするが、なんとかしてくれそうな人だなこりゃ。
「そして、貴方の身体の事を調べさせてください。前例が無いので、隅々まで。」
「え……?」
「先生、それはセクハラになるかと。」
看護師さんが突っ込んだ。たしかに今の俺は女性だ。だからそう言ってくれたのだろう。
「おっと、失礼。そういう意味ではなく、医学的に調べたいんですよ。未知の機関の事もありますし、性別の変化もあるので……もちろん謝礼は弾みます。」
なるほど、お金の心配はしなくてもいいという事か、これはものすごく助かる。今の状態で働けるなんて思ってなかったから、心配が一つ減った、ラッキー!!
「そうですね……定期的にこちらの病院に来ていただいて、検診を受けるって感じですね、1ヶ月おきくらいに来ていただけると良いですね。」
「うーん、わかりました。」
二つ返事で了解した。まぁこれからどうなるかわかんないから、病院にかかっておくメリットはあるし、この方がいいだろうと決断した。
「それでですね……これからなんですが、貴方には星峰高校に通っていただきたいんです。」
「……はいいぃぃ!?!??」