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 月はまるで逃げるように、雲のカーテンに隠れてしまった。


 「マナさん……」


 月明かりが無くなったせいで、咲良の表情を読み取ることは出来なかったが、その声は僅かに震えていた。


 突然現れたマナさんは、真っ直ぐ咲良を睨み付けながら咲良に近づく、気圧された俺は歩みを進めるマナさんに道を開けるしかなかった。


 反論など絶対に許さないその視線に、咲良はそれ以上言葉を出せずにいたが、キツく握った両手から僅かな勇気を絞り出そうとしているのが分かった。


 「私は!もう逃げたくない!」


 言い終わると同時に、パンッ!と乾いた音が鳴る。静寂の深夜に鳴ったその音は、眠りについた世界を起こしてしまうのでないかと思うくらいインパクト大だった。


 しかし、世界はそんな二人を気にする事はなく、再び静寂が辺りを包んだ。


 「少し頭を冷やすんだな」凛とした小さな声が響く。


 マナさんはそれだけ言うと旅館に戻っていった。


 どうした良いのか正直分からなかった。咲良が俺に何を言おうとして、マナさんに止められ、叩かれた。


 「…咲良」


 「錬太郎……ごめんね、先に部屋に戻って」


 栗色の髪がうつ向いた咲良の表情を隠す。


 「咲良…俺に出来ることがあれば言ってくれ」


 「大丈夫!ごめん……今は一人にして」


 これ以上の言葉は咲良を困らせるだけだと分かった。


 肌に触れる緩やかな風が冷たく感じた。


 まだ背を向けている咲良の肩に羽織を掛けると、旅館に戻った。


☆  ☆  ☆


 園庭を眺めるテラスでレイカは、一人で星空を眺めていた。


 


 


 


 


 

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