やっぱり来るんじゃなかった!
やっと着いた・・・電車で1時間ぐらいだったけどめちゃ疲れたわ。
そりゃ、美女が5人もいれば目立つのは分かっていたけど、ひっきりなしにナンパに来るな!
最初の方は、旅行でウキウキの彼女たちも笑うながら対応してたけど、徐々に表情がひきつってきてあしらい方も雑になって、もう30分後にはレイカと犬猫は喧嘩腰になるは、ルナさんはガン無視、ミーシャは爆睡、咲良と俺はレイカと犬猫をなだめるのに追われ、ティアちゃんと入れ替わったクロノスさんは、セルフィーがいないことにご立腹でナンパ男達に説教を始めるわで、全然ゆっくり出来なかった。
「今の男は本当にッ!情けないヤツばっかりね」
「そうなんですよ!クロさん!あんな男ばっかり寄ってくるから、まじでウザイんです」
「私が生きてた頃の男達は、優しいだけじゃなくて男らしい強い意志っていうのがあったけど、今の男は女に気に入られる事ばっかり考えてるのね」
・・・・振り向くのが恐い。今振り向いてみろ、「あんたも同類よ!」なんて言われるに決まってる。気配を消すんだ!空気になれ・・
大人しく歩きながら改札口を抜けると、目の前に広がっていた光景に胸が高鳴った。
開けた視界のさきには、どこまでも続く青い空と湖畔の匂い、道沿いに建ち並ぶリゾート旅館と行き交う人の楽しそうにはしゃぐ声が聞こえてきた。
そして、対岸の最新アトラクションの数々は乗ったときの想像をかきたて、早く乗りたい衝動を抑えられない。
目を輝かせながらこの光景を見ていたのは俺だけじゃなかった。特にティアちゃんは今にも駆け出していきそうなくらい無邪気に喜ぶ姿を見ると連れてきてあげて良かったと思う。
「それじゃまずは旅館に行きましょ、付いてきて」
そう言うとレイカは、出口に向かう人の波を横切り、関係者以外立ち入り禁止の扉を開くと地下へ続く階段を降り始めた。
まさか湖畔沿いの高級そうなホテルや旅館が取れなくて、地下にある旅館に泊まりますとかなのか?スーパー金持ちレイカ御嬢様でもむりだったのか・・
だか仕方ない、予約の手配やらやってもらったのに、湖畔が見える高級旅館が良かったなんて口が裂けても言えるはずがない。
階段を降りたさきには、駅のホームがあった。
「ホッ!ホーム!また電車に乗るのかよ!」
驚いてしまって声が出てしまった。
「そうよ、旅館が湖の反対側だから車だと2時間かかるから、湖の下に私鉄が走ってるのよ、電車なら30分で着くわ、まぁ使えるのは旅館に宿泊する人だけだけどね」
顔がひきつってしまう、宿泊費って幾らか聞くの忘れてたわ、薄っぺらい財布の中身を確認した。
「ちなみに宿泊費っていくらなんだ?」
「気にしなくて良いわよ、うちの系列の会社だから、宿泊費はいらないわ、それに今回はお父様とお母様もきてるからお金の心配はいらないわ」
「おじ様、おば様に会うの久しぶり、楽しみだなぁ」
咲良は子供の頃から、レイカの親に可愛がられていたよなぁ。
うーーーーん・・・聞いてないぞ!聞いてないぞ!レイカのお父さんには子供の頃に何度も会ったことがあって、凄く優しくてハンサムな人だった、お母さんの方は1度だけ会ったことがある、子供だった俺にも分かるくらいずば抜けた美人だが美人よりもなぜだか恐いってイメージを感じさせた。急に帰りたくなってきた。
もしかしたら、だからセルフィーは旅館に先乗りしたんじゃないか?!
まえにレイカが言っていた言葉を思い出した。「セルフィーは星月家に大きな借りがある」って、そのお陰で俺はセルフィーから修行を受けることができたんだ。
そもそもレイカや咲良が戦闘に慣れているのにも星月家の暗部が絡んでいるに違いない!
世界の政治、経済、軍隊などあらゆものに影響力がある世界有数の大企業、星月グループのトップがバカンスや子供に会うためだけに、こんな所に来るわけない!
”天井知らず”のセルフィー、太古の支配者クロノス・・・・うわぁぁぁぁぁぁ!もの凄いイヤな予感がする。
やっぱり来るんじゃなかった・・・・
時既に遅し、みんなをのせた電車はゆっくりと発車した。





