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夜空に輝く、光の雪


 『今夜は人類史上最大級の天体ショーが観れるでしょう』


 テレビの女性キャスターが興奮を隠しきれず手に持った原稿をデスクに何度も叩き付けながら隣にいる男性キャスターにその凄さを説明する。


 地球に彗星がやって来る。それだけ聞くと大したこと無いように感じる。問題はその軌道、地球との距離だった。一ヶ月前の専門家達の説明では、今の彗星の位置から角度が1度でも地球側に傾くだけで地球への衝突は避けれないと発表された。そして、今日まで彗星はその軌道を全く変えずに、まるでレールに乗った電車のように寸分違わぬ軌道で来てくれた。地球衝突の危機は完全に回避され全世界がその喜びに沸きお祭り騒ぎになっている。いよいよ、今宵、人類史上最大の彗星観測が行われようとしていた。


―――――――


 東の夜空が白く輝き始める。その輝きは夜のキャンパスを白銀の光でゆっくりと侵略し始めた。光は夜に影を生み出し、光と影のコントラストだけが世界を彩る。


 ・・・・そして、彗星は夜空に光の雪を降らせた。


―――――――


 ちょうどその頃、病室にこれから出産を迎える夫婦がいた。上半身のベットの角度を少し上げ大きなお腹を擦っている妊婦、そのとなりでパイプ椅子に座り、妻の手を握る夫は妻の大きなお腹をいとおしげに見ている。


 「・・健康に産まれてくれるだけでいいんだ」


 「フフ、そうね、特別な才能なんていらないわ、元気で優しい子に育って欲しい」


 夫婦の願いは一部叶わないことになる。


――――――― 5年後


 「お母さん、ホラッ」


 呼ばれた母親は子供の方に振り向くと、風船のようにフワフワと浮いたクマの縫いぐるみを操つり遊ぶ我が子がいた。


 降り始めた雨の跡が次第に乾いたアスファルトを埋めていくように、あちこちで子供に異変が確認されるようになった。


――――――― その5年後


 調査を続けていた国連は、地球に起こっている異変に対して、1つの調査結果を世界に発表した。


 それは・・・


 事の始まりは、あの彗星の年を起点としていると言うことだった。能力がある子供達を調査すると1つの共通点が浮かんだ。それは、彗星の年に胎児だったと言うことだった。


 国連は能力をもって産まれた子供達を監視するために、彼等にコードネームを付けた。


 彗星が飛来した年にちなんで。


 『Angel.number.children』と呼んだ。


――――― 地球通過から900万㎞離れた彗星内部


 「さっきの惑星で降らせたのが最後の種だ」


 「・・やれることはやったわ、あとは種が強く育つ事を願うしかないわ」


 《警報が鳴り響いた》


 索敵モニターには点滅するマルが、こちらに向かって移動しているのが確認できた。


 「奴等だ!」


 彗星の後方から、針の穴位だった光が近付くにつれて大きくなっていく。


 「はっ速いッ!」


 「ダメッ!追い付かれる!」


 光る玉は彗星を追い抜くと、彗星の進路を遮る位置で停止し、人型に姿を変えた。大きさを比較すると、彗星がバレーボール位だとすると、その人型は米粒くらいだろう。


 人型のゆっくりと腕を上げる手には光の槍が握られていた。


 腕が振られると、手から離れた槍は流れ星となり彗星へ流れ落ちた。


―――――――― 彗星内部


 「・・レアは・・」


 「あの子は、さっきの惑星に・・・彼等には気付かれてないわ」


 「すまない・・・・」


 「きっと強く、優しく生きてくれます、貴方のように」


――――――――― 地球の宇宙観測所


 地球の宇宙観測用遠距離望遠鏡だけが、彗星が突然消滅したことを、静かに観測していた。

 

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