2 モンスリー、愛の告白
「お、落ち着け!まだ慌てるような時間じゃない!」
「既にめちゃめちゃに慌てながら何言ってるのよ?大丈夫。蚕登の力があれば、レベルなんか低いままでも、いくらでも稼げるじゃない!」
そういう問題じゃない。
いつまでも、モンスリーに守って貰うだけとか辛すぎる。
「待て、待って!確かにレベルの上がり具合は少ないけどさ!能力値の上昇具合を見てみなきゃ、結論を出すには早すぎるよ!」
「ん?あぁ、蚕登が言ってた、能力の数値ね。私には、数値そのものは見えないけど、普通なら初期職業だから、平均的に強くなるはずよ?突出して高くなる能力が出てくるのは、私みたいにランクアップしてからだもの」
そう。
能力の数値が肝心なんだよ。
レベルアップ前はモンスリーと僕とでは、10倍では済まない開きがあった。
もちろん、僕の方が圧倒的に弱かったわけで。
その差を少しでも縮めたくて頑張ってるんだから!
「今回、モンスリーはレベルが2上がって、レベル88になったから……ページをめくって、と…能力値の素早さと器用さが8、それ以外が4上がったよ」
「前と同じで、私の職業適性からしても普通ね。まぁ、私には実際の数値は見えないんだけど。蚕登も私と同じで全体的に4上がったの?」
モンスリーを含めて、僕以外は職業とレベルと犯罪履歴しか見えない。
ページがめくれないから、各種の数値が載っている2ページ以降が確認できないんだ。
そのせいで、この世界では人間や亜人種の人にとって、犯罪を犯すリスクが激烈に高くなってる。
犯罪履歴が残って、他の人に簡単に確認されちゃうからね。
お陰で町中にいる人たちからは、ゆすりたかりを受けなくて助かった。
まぁ……
別の意味での苦労はするんだけどさ。
「僕の方も見てみよう。ページを……ん?」
「どうしたのよ?急に黙り込んで。…ははぁ、わかったわ。私よりも上がらなかったのね?落ち込まなくても良いわよ!……ずっと、私はずっと変わらず、蚕登と一緒にいるわ…」
愛の告白をありがとう。
でも違うんだ。
「うん、僕も一緒にいたい。でも、そうじゃなくてさ」
「なによ!一緒に居たいけど、仕方ないからどっか行っちゃうとか言う気なの!?そんなことさせないわよ!」
シーフ職のモンスリーに追われて僕が逃げ切れる訳ないじゃない。
そもそも、逃げるつもりもないけど……
そっち方向じゃなくてさ!
「1000上がってるんだ!」
「せんあがってるって?なによ?どういう意味?行くの行かないの?どっちよ!!」
ちゃんと愛の言葉に応えないと、話を聞く気になって貰えそうにないね。
「もちろん行かないよ!モンスリーとずっと一緒さ!」
「蚕登!」
うわぁ。
シーフ用の薄着な装備なのに!
そんなにぎゅっと抱きつかれたら、顔に胸があたるってば!
「ちょっ!駄目だよ!僕も男なんだからさ。色々反応しちゃうよ?」
「ふふっ。当ててんのよ!でも、こんなところじゃ流石に危ないわよね。続きはまた後で」
後でって…
嬉しいけど、アグレッシブ過ぎやしませんか?
僕としては嬉しいんだけど。
大事な事なので2回言いました。
まぁそれはそれとして。
「モンスリー落ち着いて聞いてね?僕の能力の数値が10から、1010に上がったんだよ。つまり、1レベルあたり500ずつ上がったってことだね」
「え?私の数値って…素早さと器用さ以外は175って言ってなかった?」
うん、今は4足して179だね。
「そうだよ。だから、大体僕の方が5倍以上に強くなった計算になるね」
「嘘よ!」
まぁ、そう言いたくなる気持ちもわかる。
楽しんで貰えると嬉しいです。
次も一時間後に投稿します。