15 逆鱗
「モンスリー、しっかりしてよ。別に掴まってなくても大丈夫だけど、そんなに、くたっとしてると揺すられて気分が悪くなっちゃうよ?」
「うぐっ、だ、だって!こんな……これで肩に腕を回したりしたら、蚕登の顔がすぐ近くに来ちゃう!」
ん?
そんなに嫌がられるほど顔の辺りに変なものでも付いてたかな?
一応プロポーズされたんですけれども。
ちょっと泣きたくなる。
「そりゃ、そうなるでしょ?普通だよね?何か気になるものでも付いてる?」
「もぅっ!この世で一番お気に入りの蚕登の顔が、ついてるじゃない!こんなに至近距離じゃ、ドキドキしちゃうに決まってるでしょ!」
おぉ……
そっちですか?
良かった……
そして、可愛いなぁ…
「ドキドキして、もし手を放しちゃったとしても、大丈夫なように抱き締めておくから、心配しなくていいよ?」
「違うの、違うのよ……こんなに至近距離で蚕登の香りに包まれてると、ダメになっちゃいそうなの……」
どう、ダメになるのか気になるなぁ…
「あと、5秒で村から二キロ地点まで離れるから、一段落だよ?もう少しだけ我慢してね」
「えっ?もう?くっ!覚悟を決めなきゃ!えいっ!」
えっと……
さっきまで、くたっと力を抜けた状態だったのに……
急に抱き付いて首筋に舌を、這わせるとか。
何してくれてるのさ!
僕の理性を削りにくるのは止めてくれ!
「音を発てながら何てことしてるのかな?」
「ん?この機会に、蚕登を存分に味わっておこうと思って」
待て待て!
僕らはキスもしたことないのに、何をしている!?
「僕からは味わうような出汁は、出てないはずなんだけど?」
「蚕登の肌にキスしてるだけで、頭の芯から蕩けそうね。最高だわ!」
うぅむ。
そんなに気にいってもらって嬉しいけど…
反応が危険すぎるね。
「さて、一段落。はい、降りてね。今度は背負って行くからさ」
「えっ?そういう事なの?いっ、いい、いやぁ…本気?他の方法にしない?私は今のままで構わないわ。というか、今のままが良いの」
何を今更?
とりあえずモンスリーを降ろして、しゃがもう。
「そんなに慌ててどうしたの?流石に長時間移動するのにお姫様抱っこだと危ないでしょ?はい。僕の背中に乗ってくれる?」
「えっ?あぁ!鎧を着てたわね。なら、良いわ」
は?
混乱の最中に、ふわりとモンスリーの体が背中に密着して、鎧越しでも、その柔らかさが主張された。
「でも、さっきから、何を気にしてるの?」
「だって……私の胸が……蚕登の背中に直接当たったら。その……嫌……なのよ」
さっきまで、僕の首筋を舐め回してた人の言葉とは思えませんな。
だが……
それが良い!
つまり、その類い稀なる貧乳を恥ずかしがっての事だよね?
最高です!
貧乳を恥じらう乙女…
そんなの素晴らしすぎる。
「モンスリー……僕は君の魅力の虜だ。その可憐さで僕をずっと魅了し続けてね!」
「もうっ!可憐だなんて……初めて言われたわ。嬉しいけど本気?」
初めて言ったもの。
それに、この世界の男どもは、貧乳を有り難がる奴がいないみたいだしね。
「僕はモンスリーの愛らしい胸も含めて、大好きだよ!」
「可憐かどうかって話と、私の胸が愛らしいって話が、どうリンクするのか……興味があるわね」
おっと……
逆鱗に触れた感触がする…
楽しんで頂ければ幸いです。