14 迫り来る愚連隊
「モンスリー、何が来たの?教えて」
「もちろんよ。さっき私たちが居た場所にカラバル愚連隊が現れたの……いつもの狩りに来たのね。単独でうろついてるオークが居ないから、集落まで確認に来たみたい」
遠くから、集落に異変がないか偵察してるって事だね。
「僕らがいる事をわかってるかな?」
「ううん、全然。向こうの索敵範囲が随分狭いみたい……全員で固まっておずおずと進んできてるから、私みたいな盗賊職のレベルが低いってことかな?」
あるいは、斥候が居ないのか……
通常あり得ないけどな。
「向こうがこっちに気付くまでの猶予はどれ位?」
「多分、こっちから声をかけなきゃ、1時間位はかかるけど…」
ん?
「けどって?何が気になるの?」
「馬鹿が暴発して、危険性とか気にせず踏み込んでくると、15分位で近くまで来るかも…」
その行為は、ある意味では正解か…
僕たちがオークは狩り尽くしたからね。
「こっちから挨拶に行ってみる?」
「うーん、あそこは隊長はともかく、他のヤツラはガラが悪いからなぁ…絡まれそうなのよね。止めとかない?」
気持ちはわかるけど…
「でも、このまま放っておくと、謎のオーク消失事件とかになって、更に僕らの功績も、信用されない可能性があるよね?そうなると困るんだ」
「そんなの別にどうにでも……あっ!そうか!あの短剣かぁ…」
ご名答。
「そうなんだよ。おかしな報告をされると、その辺りの辻褄が合わなくなる」
「うん。確かに!でもね。その方向で動くと、別の問題がない?」
うーん。
狩りの事を話すとなると……
証拠を見ない限り信用しないな。
ってことは……
あっ!
「オークの死体!」
「そうよね?それを出さなきゃいけないわ」
大問題だ!
「こんなところで荷車に載せて見せたら、牽引しての移動距離も長いし、鮮度も落ちる!そして、一番の問題は、少しでも受け答えにミスったら……異次元収納がバレる危険が高いね」
「そうなの。馬鹿共が四方八方から、やいのやいの言い始めると、辻褄が合わなくなると思うのよ」
確かに。
「コミュニケーション能力に、自信のない僕としては、厳しい話だね……」
「ねっ?私と蚕登だけの秘密って言ってくれた異次元収納の事が、知られちゃうかもしれないのよ」
えっと……
モンスリー、ごめんなさい。
確かに言ったけど、そういう乙女チックな方向ではないんだ。
純粋に命が危ないので、お願いしてる。
でも、夢を壊す意味もないよね。
可愛いモンスリーの事が大好きな事も事実なんだから!
「確かに、二人だけの秘密じゃなくなるのは、看過できない問題だね。すぐに、街に戻ろう!奴等より先にギルドに報告しちゃえば、さっきの問題は大方大丈夫だしね」
「えぇ!そうね。私達の我が家に早く帰りましょう!」
えっと……
それって?
しれっと同棲開始を宣言してるよね?
ま、でも今はそれを気にしてる余裕無いね。
「ん、じゃあ、ちょっと失礼して……モンスリー、しっかり掴まってよ?」
「へ?うわたぁ!ちょっ!待って?」
待たないよ。
とりあえず、カラバル愚連隊に気づかれる前に、ここを離脱しなきゃいけないんでね。
その後も走らなきゃ。
「能力値的にはこの方が速いんだよ。後で背中に背負い直すから、ちょっとだけ我慢してね!」
「やっ!我慢っていうか!お姫様抱っこされるの初めてで……嬉しくって!でも……少し恥ずかしいっ!」
照れた顔が愛らしいね!
カラバルの人たちから遠ざかったら、もう一度抱き締めよう。
うん、ぎゅっと抱き締めよう。
大事なことなので2回言いました!!
楽しんで頂ければ幸いです。