10 新食材発見の過程
「うーん。見た目的には、干からびている感じはしないけど……どう思う?」
「見た目が凄く綺麗!カラバル愚連隊の肉にも、ひけをとらない色ね!ちょっと切ってみようよ!」
まぁ。大事なのは中身だからね。
「とりあえず、バラ肉と、モツをだしてみようか。ちょうどモツを見たいところだったし。よっ……と」
「凄いね!切ったところから全然血が滲まないわ!モツも綺麗!でも……これは水分が無くなってるわけじゃなさそうね」
血液限定で分離したから、その他の体液は残るから。
……はっ!
そっか、これはダメだわ。
「この方法は、お手軽に使うのは無理だね。残念だけど諦めないといけないみたいだ」
「え?いきなり何?なんで諦めないといけないの?解るように言ってよ」
確かに言葉足らずだったか。
「結論から言うと、普通の血抜きの後に、仕上げで使わないと、ダメだってことに気がついたんだよ」
「普通の血抜きって……同じことを2回に分けてするの?そんなことする意味がわからないわよ?」
同じじゃないって事に、モンスリーの言葉で気づけたんだ。
「実は同じじゃなかったんだ。普通の血抜きは血液のみを抜いてるわけじゃないって事さ。確かに血液が主に抜けるんだけど、血液が流れ出るときに、一緒に別の体液や老廃物が体外に除去される。ここが重要なんだよ」
「つまり、さっきの方法で最初から血を取り除いたら、臭い成分が残っちゃう?」
端的に言うとそうだね。
「そうなるだろうね。該当する物質をいちいち指定して取り除けば、素晴らしい肉になる可能性もあるけど…その数は最低でも数百種。もしかしたら千単位。更に言うと、僕が物質名を知らないという無理ゲーですな」
「蚕登でも知らないことがあるの?」
買い被りすぎだね。
「その通りだよ?そもそも知らないことだらけだって知ってるよね?僕がモンスリーにどれだけお世話になったことか。ありがとうっ」
「うぅ、凄く良い笑顔で、素直にお礼言い過ぎ!他の子には、やったら駄目だよ?その笑顔は、こ、恋人の私のなんだからね?」
何をおっしゃる?
「僕の笑顔ごときで、何かが起こるとは思えないし、お礼は大事だからね。そのお願いはきけないな。失礼はしたくない」
「くっ、なに、この可愛い生き物!もう、萌え死にそう!わかったわ!私を殺っちゃう気なのね?」
殺っちゃわない殺っちゃわない。
「とにかく、無理だってわかってくれたよね?」
「もうっ!流されたし!わかったけど、排泄物みたいに、全部一緒に分けるくくりは無いのかな?」
あぁ、それ。
僕も考えたんだよ。
「考えてみると体液とかがそれにあたるんだけどさ。多分無理、違う意味でね」
「別の問題に突き当たるってこと?」
バカでかい問題にぶち当たる。
「そうだよ。僕らの体重に占める水分の割合は、7割と言われてる」
「そんなに!?」
ビックリするよね。
「体液ってくくりだと、この水分の全てを引き抜いちゃう。つまり、100キロのオークが30キロになる計算だね」
「あの大きいオークが30キロ?それって、カラカラ……よね?」
間違いなくね。
「水分が抜けきって、カッチカチの干し肉よりも硬い何かになりそうなんだよ」
「それ……歯が欠けそうね」
鰹節にかじりつく感じになるだろうね。
ん?
「あぁ!削って食べれば良いんだ!オークの削り節として売ってみたらどうかな?」
楽しんで貰えると嬉しいです。
次回は17時です。