第3話 また明日
次の日の朝、いつも通り火乃香と下らない、それでも楽しい会話をしながら学校に向かう。下駄箱の所で彼女と別れ、自分の教室へと向かった。
廊下側、1番後ろ。
自分の席に荷物を置いて、暇つぶしに掲示板を覗く。担任の莉絵ちゃんは、若くて一生懸命な人で、背面黒板に掲示板を作り、そこに色々な連絡事項や町内新聞を貼ってくれる。
そこには、昨日からあった物と、もう1つ。
【花灯町 灯篭祭りいよいよ明日!】
○第82回、伝統ある祭り『灯篭祭り』が明日、8月17日水曜日に行われます。皆さんも是非行ってみてくださいね(*´꒳`*)
○お祭り最後の花袋川で行われる灯籠流しは圧巻!
といった、新聞部の記事が掲示されていた。
火乃香の誕生日3日前の、祭り。勿論俺と火乃香も毎年足を運んでいた。最も、俺はあの祭りは嫌いなんだけど。なんとなく恒例化してしまっているから、今年もあの灯籠流しを見るんだろうなぁ。なんてつらつら考えていると仲の良い友達が何人も登校してきたので、そこで考えるのをやめる。
その日も、あっという間に学校が終わって、下校の時間となった。俺も火乃香も帰宅部だから、大人しく帰ることにする。
「ほだくん、遅い!!」
既に門の所で俺を待っていた彼女に「悪い」と声をかけて、2人並んであるきだした。
いつもみたいに、ほのぼのと2人で真っ直ぐ家に向かう、つもりだった。
けど、
「おーっす!歩高、今帰りか?」
「おー、今日サッカー部は?」
「今日は休みー!それよりさー!!」
サッカー部の友達に、遠くから声をかけられてしまう。火乃香に断って、「こっちこっち!」と手招きする彼の元へ駆け寄って行った。
「ちょっとこれから花袋川まで付いてきてくんね?明日の場所取りしたくてさ。付き合ってよ、歩高〜!!」
「はぁ?」
「いや、俺さ。明日彼女と初デートで祭り行くんだよ!だから、いい所とっときたいわけ!だから、頼むよ〜」
火乃香は、と振り返るとニコニコしながら、「行っておいでよ、また明日。ね」と口をパクパクさせる彼女と目が合う。おれも「真っ直ぐ帰れよ」と口を動かし、友達の方に向き返った。
「行くけど、なんで俺なん?」
「だって、俺らの学校で毎年あの祭り行くの歩高ぐらいじゃん。だから、歩高が祭りマスターだろ」
「祭りマスター。って」
2人で笑いながら、花袋川までの道を歩く。その途中、道の脇に大量の花やお菓子、うさぎのぬいぐるみが備えられていたが、目を逸らして歩いた。
場所取りも終わり、家に着いた時には辺りは薄暗くて。俺は疲れていたのか直ぐに眠ってしまった。