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666年物語 運命を覆すために  作者: コノハナ
第二部 100年後の世界 第一章 100年ぶりの仲間
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第七話 エレーナの試験 5

 始まりと同時にエレーナが斬りかかってくるものばかりと思っていたが、予想外にも様子を見ていた。ツカサは魔法でエレーナは剣と魔法で戦う。常識的には魔法使いは近い間合いを嫌う。エレーナはツカサに何か不気味なものを感じたのかもしれない。

 このまま対峙しても面白くないのでツカサは様子見に小さい火の玉を放つ。エレーナは持っていた剣で真っ二つに火の玉を切る。こんなくだらない攻撃をするなと言っているかのようだ。

 驚かす攻撃をやってやろう。

 挑発に乗るみたいで何か嫌な感じはするが、売られた喧嘩はかわないといけない。

 ツカサはエレーナの周りに水の玉を数多く並べる。そして次々エレーナに水をぶつけていく。水の玉なので剣で切るとびしょ濡れになっていく。ダメージはないが地味な嫌がらせだ。

 エレーナもイラっとしてきたようで、ツカサの方に剣で斬りかかってくる。ツカサは細かい風の刃をだし牽制しながら避ける。

(魔法をなかなか使ってこないな。ここぞという時まで、隠し通すつもりかもしれない。)

 エレーナは距離を詰めて、剣で切り付ける攻撃をする事を繰り返している。近づくスピードは早いし、鋭いがいかんせんパターンが単調だ。ツカサは余裕でかわしていく。

 このままかわしていけば、エレーナの体力が尽きて終わりかもなと思っていた。

 しかし、ツカサが少し違和感を覚えていた。ツカサの防御パターンを一定方向に誘導しているように感じたからだ。

(たぶん、どこかの攻撃の時に変化をつけて、ダメージを与えるつもりなのだろう。)

 ツカサはいつでも防御魔法を展開できるよう準備しておいた。

 まだまだ、同じような攻撃は続いていく。ツカサはわざと同じようなリズムでかわしていく。エレーナが横なぎに剣を振るう。ツカサがパータン通りに後ろにかわした瞬間、エレーナの動きが変わった。今まではそこでいったん動きが止まっていたが、今回は違った。魔力を足の裏にため一気にツカサに近づき鋭い突きを入れる。一瞬エレーナの勝ち誇った顔が見えた。


 しかし、ツカサが素早く防御魔法を展開し、その突きを受け止める。

(防御魔法の準備をしていなければ危なかった。これがエレーナの魔法の使いどころなのだろう。)

 エレーナの策をかわし切ったところで、こちらの優勢は間違いいない。エレーナも連続した激しい動きで疲れてきている。

 ツカサは土の柱を次々にエレーナの側に立てていく。エレーナも突然出てくる土の柱をかわすことで精いっぱいだ。エレーナが土の柱に囲まれた。上から土の屋根を落とし土の牢屋の完成だ。

 エレーナも剣と魔法で柱を壊していくが、そのスピードはツカサの柱を作るスピードには勝てない。勝負ありだ。

「ずるいぞ、お前まともに戦え。」

 エレーナがツカサに向かって叫ぶが無駄だ。

 メリッサがツカサの右手を持ち上げる。戦いは終わった。


 土の牢屋を崩してエレーナを解放する。こちらに何か文句を言ってくるのかと思ったが、ショックを受けていてそれどころではないようだ。

 ナタリーがエレーナの所に近づく。

「エレーナ。なんで負けたかわかるかい?」

 やさしく問いかける。

「私が弱かったから。」

「そうだね、お前が弱かったからだね。だけど、それは戦う前にわからなかったの?」

「何回か会ったけどその時にはわからなかった。だけど今はわかる。あいつは化け物だ。私の勝てる相手じゃない。今思うとあいつは私が怪我しないように魔法を放ってた。強さが違いすぎる。」

「気づくのが遅かったのが、エレーナの失敗だよ。私が頼んでエレーナと戦って貰ったんだ。お前は調子に乗って聞き分けのない子になってただろ。それじゃあまずいと思ってね。少しは反省したかい?」

「はい、すみませんでした。」

 えらく素直に謝っている。相当こたえたみたいだ。

「一つ聞きたいことがあります。ナタリー婆ちゃんの知り合いにこんな強い人いたんですか?あの冒険者と一緒にいる女性も恐ろしく強く感じます。」

「私と知り合ったのは一週間ぐらい前だね。だけど、私の頼みを聞いてくれた。レプリー婆ちゃんに聞いた通りのやさしい人だよ。」

「レプリーさんの知り合い?」

「そう。『白銀の舞姫』を作って、百年ぶりに帰ってきたツカサさんだよ。」

「それじゃあ、私が負けるのも当然じゃない。何で私は今までツカサと気づかなかったんだろ。」

 エレーナもツカサの事は知ってはいるようだ。


「色々、挑発的なことを言ってごめんね。あれは本気にしないで。君と戦うためにしたことだからね。」

 ツカサがエレーナに謝る。今後の事もあるしこりは残したくない。

「うんわかった。私のためにしたことなんだよね。レプリーさんが優しい人と書いていたのがわかるよ。」

「書いていた?」

「うん。後で渡すけど、レプリーさんが書いてたツカサ宛の本があるの。私がナタリー婆ちゃんから受け継いでツカサが戻ってきたら、渡すように昔から伝言されてる。」

「そっか後でみせて、百年ぶりだから、このパーティーに何が起こったか知りたいし。」


 その後屋敷に入り新しく入ったメンバーの紹介が始まる。エリアスさんに認められ加入した四人組、女性剣士のアドリアナ、女性の魔法使いのバレンシア、リーダーで魔法使いの男性のプロスペール、槍使いの男性のロドリコと次々に自己紹介していく。

 次に、アルノーとサンドラも自己紹介をしていった。

 

 プロスペールとエリアスが話し込んでいる。試験の内容の話をしているようだ。

 ツカサのもとにバレンシアがやってきた。エレーナの一撃を防御した魔法を教えてほしいとのことだ。ツカサは後で教えるよと約束した。

 ナタリーの下にエレーナとアルノーとサンドラが集まっている。三人は仲良く話している。エレーナは前まではアルノーとサンドラに訓練をしていたというし、うまくやっていけるだろう。

 アドリアナとロドリコはメリッサとベルベネリウスの魔族コンビと仲良く話し込んでいる。


 ツカサは楽しそうに話す仲間を見て、これからの一年がうまくいくことを確信していた。


 



 

 






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