第六話 エレーナの試験 4
「今までの続きでプロビデンスのダンジョンでいいかな?」
念のためにベルベネリウスさんに聞いてみる。
「今までの続きでいいよ、アルノーとサンドラもその方が訓練になると思うし。」
二人にも考慮してくれるようだ。ありがたい。ベルベネリウスさんのような強者の戦い方を見るのは、訓練としてもいいかもしれない。
昨日の続きの38階から冒険を始める。
「私が前で戦うよ、アルノーとサンドラはみてて、ツカサとフローリアさんはカバーをお願い。」
索敵から戦闘まで自分が中心にやるようだ。スイングマンモスが出てきた。鼻を振り回し強烈な打撃を与える敵だ。
ベルベネリウスは何も気にせず敵に近づいていく。当然、スイングマンモスは鼻を振り回し、ベルベネリウスに攻撃を仕掛ける。攻撃が当たったと思った瞬間、ベルベネリウスの体が消え一メートル離れたとこ現れる。
「あれどういう、仕組みなんですか?」
サンドラがツカサに尋ねる。ツカサはそんな仕組みなど知るわけがない。戦闘が終わったあと、直接ベルベネリウスに聞くのがいいだろう。
話している内にベルベネリウスがスイングマンモスへの距離を詰める。魔力がベルベネリウスの右手に集中している。右手に赤黒い剣が生えているように見えた。そして、その剣をスイングマンモスに突き刺した。
スイングマンモスから生気のようなものがベルベネリウスに流れているように見える。魔物の気配がどんどん薄くなり干からびるように倒れた。
「ベルベネリウスさん、すごいね。どういう仕組みの魔法か教えてくれませんか?」
「闇魔法の吸収の応用だよ。私は吸血鬼だから相手の生気を吸うことができる。それと吸収の魔法を組み合わせた。私のオリジナルの魔法だ。」
「それと、最初に使った魔法は影魔法の一つだ。あらかじめ何かに触れた瞬間に転移するように、魔法をかけてる。一メートルぐらいしか転移できない、だけど、敵への奇襲にはもってこいの魔法。」
サンドラが大きくうなずいているが、たぶん彼女には使えない。参考にするところは種族の特色を自分の魔法に生かしていくところだろう。
それから、ベルベネリウスは様々な魔法を使いながら魔物を倒していく。しかし、最後は必ず敵を吸収して終わる。ベルベネリウスにとっての食事のようなものかもしれない。
魔法の使い方はサンドラの参考になったと思う。
「アルノー。私と一緒に戦ってみよう。今度は私は剣で戦うから、サポートをおねがい。」
今まで手持無沙汰だったアルノーが嬉しそうにしている。ベルベネリウスさんなりの気遣いだろう。
ベルベネリウスさんは剣でどうやって戦うのだろうかツカサは興味を持った。
ボスの所に到着した。ここで戦い方を見せるつもりだ。
黒く大きな牛みたいな魔物が出できた。ラッシュブルだ。大きな角を立てて、敵に強烈な突撃をしてくる。正面の防御が非常に硬い。かわしてろを攻撃するかが倒すポイントだ。
「まずは自分が正面でかわすから、アルノーは側面攻撃をお願い。」
ラッシュブルが角を立てて、ベルベネリウスに突撃していく。ぎりぎりのところでかわす。すかさずアルノーが後ろに攻撃を仕掛けるが速さについていけず間に合わなかった。
「ぎりぎりまで近寄らないとあてるのは難しいかもね。もう一回やってみようか」
ラッシュブルがベルベネリウスに突撃してくる。かわした後、アルノーが攻撃を仕掛ける。当たったが、いまいち深く入っていない。
「惜しいね、もう少しでいい攻撃になったと思う。」
何回かやってみるが、うまくいっていない。
「アルノー足に魔力をためて俊足を使ってみてよ。」
見かねたサンドラがアドバイスをおくる。
確かに俊足を使えば、敵に攻撃を当てるまでの時間短縮ができる。
ベルベネリウスがかわしたラッシュブルに、アルノーが魔力を足に込め瞬足で突撃する。剣を刺すような感じでおこなった。ラッシュブルの側面に深く剣が突き刺さる。俊足の勢いを活かしたいい攻撃だ。ラッシュブルの体が倒れる。必殺の一撃だ。
「魔法と剣を融合したいい攻撃だ。この攻撃はアルノーの必殺技にしたらいい。」
ベルベネリウスがアルノーを褒める。アルノーは今の感覚を忘れないように、突きの練習を繰り返していた。
そろそろ夕方になるので、冒険をやめて冒険者ギルドに戻る。グランドタイガーの牙を渡し、ギルドで証明書をもらう。その足で屋敷に戻りエレーナに証明書を渡す。
エレーナは目をツカサに向ける。実に挑戦的な目だ。疑っているのかもしれない。
「ベルベネリウスさん。戦いはどうだった?」
「アルノーとサンドラは見事な戦いぶりだった。姉として誇っていいぞ。私もこの二人は気に入った。ぜひ一緒に短剣に行きたい。」
エレーナは衝撃を受けた。ベルベネリウスが戦いで褒める事なんてめったにないことだからだ。
「ベル、お前が気に入るなんて珍しいな。マーガレット以来か?」
たまたま側にいたメリッサが口を挟む。
「私だっていいものはいいというさ、お前も見たら気に入ると思うぞ。」
「そうか、それなら今度は私と一緒にダンジョンに行こう。」
メリッサが二人を誘う。
「二人とも待ってください。」
慌てて、エレーナが口を出す。
「二人はまだ『白銀の舞姫』のメンバーではありません。それに、そこにいる冒険者の二人の実力はわからないではありませんか!!」
「エレーナは後で二人と戦うつもりなのか?」
メリッサが落ち着いた声で聞く。100年前にツカサと戦ったことを思い出しているのであろう。
「ええ、特にこの男の冒険者とは戦う必要があります。」
「そうか。そこの冒険者手加減はしろよ。」
「もちろんですよ。今後仲間になるのですから。」
「私が勝てば仲間などにはしない!!」
「私が言った意味が分からなかったようだな。……まあいい。明日の段取りは私がつけてやる。エレーナは思いっきり戦え。」
メリッサはそう言うと屋敷の奥に消えていった。
(エレーナは自分と相対しているツカサとフローリアの強さもわからないのか。いくら強さを隠しているとはいえ残念なことだ。)
「それなら、私は試験をクリアーしてきた冒険者の試験をしてやろう。エリアスにも手伝ってもらえば十分だろう。エレーナは抜かりなく準備するがいい。」
次の日ツカサとは別の一組のパーティーが帰ってきた。クレセントロックを倒してそうだ。驚くべきは全員Dランクの4人組のパーティーだという事だ。
「君たちいいね。あの試験の意味がわかったのかい?」
エリアスが尋ねる。
「ええ、僕たちでは確実に魔物に遭遇して倒すことは実力的に無理だと思いました。また、グランドタイガー、スイングマンモスもダンジョン外で遭遇しても僕たちでは倒すことはできません。」
彼らはダンジョンの外では同じ魔物でも弱いという事を当然知っている。
「そこで、ダンジョン外クレセントロックにで遭遇する方法を調べました。あのモンスターは岩に偽装していて見つける事が困難です。ところが好物のアオトカゲが出た時は動き出します。アオトカゲを利用して探すことにしました。」
「いい手だね。その情報は魔物の習性を良く調べないとわからない事実だ。だけど、動いても君たちじゃあ倒すのは困難だろう?クレセントロックのガードは硬い。」
「まともに戦えばそうです。だけどクレセントロックは下からの攻撃に弱い事は知ってます。そこで落とし穴を作りました。中に串刺しになるように土の針の山を魔法で作りました。アオトカゲをうまい具合に使っておびき寄せて、クレセントロックを穴に落とし倒しました。」
まだ若いと言っていいリーダー格の少年が誇らしげに答える。
「君たちはみごとだ。ぜひ『白銀の舞姫』に加入してくれ。」
「はい、ありがとうございます。ただ、一つこちらも条件があります。パーティーには入りますが、この四人をバラバラにダンジョンに行かせることはやめてほしいのです。僕たちは小さい頃から一緒に暮らしてきた仲間です。だから、四人が離れる事は考えていません。」
「ああ、大丈夫だぞ。泣かせる話じゃないか仲間思いのいいパーティーだな。」
横にいたベルベネリウスが勝手に許可をする。彼女は仲間とか友達とかいう関係に非常に弱い。
エリアスが焦ってクリスティーナに聞く。彼女はこのパーティーのリーダーだからだ。
「実力が出せるなら。問題ない。」
クリスティーナが許可する。
「ただし、ダンジョンに行くときはかならず、他の『白銀の舞姫』のメンバー二人以上と一緒にいくこと。君たちのような良いパーティーを失いたくない。それでもいい?」
「はい。もちろん大丈夫です。自分たちの強さはわかってますから、大歓迎です。」
クリスティーナの問いに、喜んで答えていた。
「さて、本来なら自己紹介をお互いにするところだけど、少し待ってくれ。もう一組クリアーしたパーティーがいるんだ。」
「僕たちよりも早くですか?」
「ああ、三日目だな。」
「ダンジョンの外で倒したんですか?」
「いや違う。ダンジョン内でグランドタイガーを倒してる。」
「それはすごい。恐るべき強さですね。当然合格なんですよね?」
「これからエレーナとその冒険者の代表が戦う。それでその冒険者が勝てば合格だ。」
「なぜ、そんなことをエレーナさんに勝つのは無理ですよ。」
「いろいろ事情があるんだよ。今から戦うから見ときな。最高峰の戦いが見れるから。」
クリスティーナに最高峰とまで言わせる戦いのセリフに彼らは驚く。
一体どんな戦いが見られるのだろうか。
ツカサとエレーナが屋敷からでてくる。いよいよ二人の戦いが始まる。
「はじめっ!!」
審判のメリッサの掛け声が響いていた。




