表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
666年物語 運命を覆すために  作者: コノハナ
第六章 未来への準備と仲間の活躍
65/187

第四話 新人教育

 『白い花の精霊』に殺到していた加入希望者は会費が必要だとわかると、かなりの人数が減った。金銭目的で加入希望していたようなパーティーなどが減ったと思われる。逆に加入はできないなだろうと思っていた新人冒険者などがグランベルさんに話を聞きに来ている。

 

 ツカサたちのパーティーは今日は前からいる新人パーティーと一緒にダンジョンに行くことになった。今後新人が入ってきた時に役立つだろうと思い引き受けた。

 人数が多くても意味がないので、クリスティーナとツカサ、フローリアと新人のパーティー四人で行くことにした。プライアのダンジョンに行くことにした。彼らは今12階で攻略が止まっているらしい。

 新人の名前はアレックス、アンドレが男性で剣士、ヘラルダ、マレイセが女性で魔法使いだった。

 まずは魔物と戦っていると所を見せてもらう。アレックス、アンドレが敵を止めつつ攻撃をしていく。そして後ろのヘラルダ、マレイセが隙を見て魔法をあてていく。取り立てて問題ないと思っていたが、二戦目にアレックスがキラーアントの攻撃を受け毒をくらってしまう。すかさずヘラルダが解毒の魔法を唱えて問題はなかったが、その分魔力と時間がかかってしまった。

 その後も何回か戦ってみて問題点が見えてきた。

「魔物にやられる事はないけど、解毒や魔法の攻撃で魔力がなくなって、撤退せざるをえなくなる。これが今抱えてる問題点かな?」

 ツカサが新人パーティーに尋ねてみる。

「はい、そうです、戦い自体は問題ないのですが。」

 リーダーのアレックスが答える

 魔力切れで撤退するのは仕方がない。ただ、その原因が毒を直すことに浪費してしまうのはもったいない。

アレックス、アンドレが毒をくらわないようにするのが一番だけど、それには二人の技量のアップが必要だ。一朝一夕でできる話ではない。

「毒消し草を持っていくという選択肢はない?」

 一応聞いてみる。

「買って行って使えば、魔力の消費が抑えられるのですが、その分お金の減りが激しくなって厳しくなります。」

 まあ、そうだよね。いちいち薬を使っていたら金銭の消費が激しくなる。それも問題だろう。稼ぎにダンジョンに来てるのに意味がなくなる。

「プライアのダンジョンは10階までは毒を出す敵はいないからさ、そこでレベル上げをして強くなってから12階を攻略を攻略するのはどうだろう?」

 新人パーティは少し戸惑った顔をしていた。冒険者は常に前に行く物だと考えているのだろう。

「それならさ、10階で戦った時と、今のまま12階で戦った時のどちらがお金が多く入るか試してみてよ。同じくらいなら10階で戦った方が強くなるスピードは速いしお得だよ。」

「わかりました。今度試してみます。」

 冒険者になる理由はいろいろあるだろうが、お金がたくさん入る方がいいに決まってる。同じようなら楽な方それは当然だ。

 その後は、12階より深くダンジョンに潜っていくことにした。当然、フローリアに保護を張ってもらい、安全を確保しながらだ。クリスティーナを前衛にアレックス、アンドレがサポート、後ろはツカサが魔法を唱えヘラルダ、マレイセがそのサポートといった感じだ。

 クリスティーナの戦いぶりに新人パーティーがあっけにとられていた。ダメージをくらわないのはもちろん、魔物の弱点を的確についていく。彼らもクリスティーナがすごいとは聞いていたようだが、これほどまでとは思わなかったのであろう。

 ツカサは自分の魔法もすごいと思うんだけど、クリスティーナと比べると仕方ないなと思った。


 ダンジョンを出て冒険者ギルドに向かう。今日手に入れたドロップアイテムを売りそれを均等に分ける。それでもかなり奥の方まで潜ったので、七人で割ってもいつもの彼らの稼ぎよりも多くなったはずだ。新人パーティーはまさか均等に分けてくれるとは、思っていなかったらしくてびっくりされた。

 確かに最後の方は彼らの働きはほとんどなかった。それでも一緒に戦ったから均等に割ることに問題はない。同じグループだし、彼らが教える立場になった時に、次の世代にその借りを返せばいいと思う。


 後日、ギルドにドロップアイテムを売りに行っているとグランベルさんにあった。アレックスのパーティーの事を聞いてみると、プライアのダンジョンの10階で戦っている。それでお金を貯め装備を充実させているそうだ。自分のアドバイスが役に立って何よりだ。


 屋敷に帰ってレプリーさんにも今日おこったことを相談した。

「新人の頃は先に先に進みたがるんだよ。まちがいではないんだけどね。でもリスクを忘れがちになるよね。だけど、ツカサのアドバイスを聞いたみたいでよかったね。」

「今回はさうまくいったんだけど。新人パーティーが陥りやすい事って何かあるのかな?」

「新人ってだけじゃないけど、金銭の配分でもめることが多いね。ある程度稼いでるパーティーなら問題にはならないけど、最初の方はあまり稼げないでしょ。そうしたら「俺の方が活躍したから多く貰う」とか主張しだしてもめる。そうするとさ、その場は収まったとしても、ダンジョンでの連携も悪くなりがちになるんだよね。一度悪い方に行くどんどん悪い方にころがっていくの。で、解散になってしまうの。」

「やっぱり、お金が問題になるんだね。均等にみんなで分けるのが一番もめない?」

 ツカサ達のパーティでは均等に分けている。その方がわかりやすく不満も少ないと思ったからだ。

「同じような強さのパーティならそれが一番いいやり方だね。だけど、三人いるパーティがいてそれに新たに加わった時とかは、単純に四分割はしないことが多いね。逆に公平じゃなくなるからね。――ツカサ、いろいろ聞いてくるけど何かあったの?」

「今後、新人のパーティーが『白い花の精霊』入ってきそうなんだ。その時に教科書みたいなものを作ろうと思って。」

「そうなんだ。それなら私も協力するよ。」

 その後ツカサとレプリーが作った教科書は新人冒険者たちに配られ、好評を得ることになった。また、のちにできる冒険者学校の教科書のたたき台としてあつかわれ、それを書いたレプリーの名は彼女の死後も冒険者の中で非常に有名になった。


 

 いつものようにリンデリウムの森に行き、スレイナさんからレアな花、草、アイテムなどをもらっていると。アネッテさんから声を掛けられた。

「ツカサ何か忘れてない?」

 アネッテさんがツカサにジト目で問いかける。何かあったっけとツカサが考えていると一つ忘れたことを思い出した。

 アネッテさんと戦うことだ!!

 コロシアムで戦う時に確かに約束した。完全に忘れてた。これはまずい。

「もちろん覚えてるよ。アネッテさんと戦う事でしょ。アネッテさんの魔力が回復するのを待ってたんだよ。」

 ツカサは慌てて言い訳をする。

「本当かな?完全に忘れてたこと思ってた。コロシアムで使った力は大分回復したから大丈夫だよ。早速、戦おうね。」

 いきなりすぎる。しかし、忘れてたことを悟られてはいけないので了承する。

 ツカサとアネッテが草原で向き合って対峙してる。フローリアが真ん中で審判のようにいる。この試合に審判がいるのかは疑問だが。

 フローリアが手をおろし試合が始まる。

 いきなりアネッテが木剣を振りかざしツカサの頭上を襲ってくる。わかってはいるが真剣勝負だ。魔法で防御をしつつ、火の玉を放つ。アネッては軽くかわす。

 今度は剣を素早くふりつづけツカサにあててくる。かなりの連続攻撃だ。全てをかわすのは無理と判断したツカサは、周りに結界を張りつつ戦っていた。

 ダメージはくらってないが魔力の消費が激しくなっている。これはまずいとツカサは思った。そう簡単にツカサの魔力が切れる訳はないけれども、こんな戦いはアネッテは望んでいないと思った。

 メリッサさんと戦った時の戦法をやってみよう。まずは水を出し霧を発生させた。これで視界を奪う。しかしアネッテはそんなことは関係ないとばかりに、ツカサの気配を探り襲ってくる。ここまではツカサの予定通りだ。

 そこで小さい魔法の粒を霧の中に巻き散らかす。一つ一つはたいしたことない魔法の玉だが、相手の集中力を削ぐ効果がある。そしてその間に本線の魔法の糸を出しておいた。アネッテが動くたび糸が絡まっている。魔法の粒に気を取られ気づいてないようだ。

 霧が晴れてきてアネッテがツカサの姿を確認し斬りかかってきた。その瞬間魔法の糸を引きアネッテのバランスを崩す事に成功した。そして、アネッテに風の玉を撃ちこもうとした。しかし。その瞬間ツカサの体も少し引っ張られた。おかげでアネッテの腹に打ち込むはずが半分ぐらいしか当たらなかった。アネッテもツカサと同じく魔法の糸で罠を仕掛けていたようだ。

「ツカサの戦法は見事だったね。戦ってとても楽しかったよ。今日の所はここまでにしよう。」

 どうやら戦いは終わったらしい。ダメージはそれほどないけれど、魔法の糸と最後のツカサの風の玉の防御で魔力を使い切ったみたいだ。魔力の差による判定勝ちだ。

「魔法の糸をやられてるとは気づかなかった。アネッテも魔法を使えるようになった?」

「ツカサの戦法をまねてみたんだ。魔力の方は大分戻ってきてる。記憶の方は相変わらず戻らないけど。」

「アネッテの事がレイカーヒルの町でも有名になってるよ。僕のパーティーが所属しているグループに加入した新人が『レイガンプに勝った女性はいないんですか』って聞いてくる。」

「私も有名人だ。それなら今度行ってみようかな。」

 アネッテが楽しそうに話し出す。

「うん。来てみて。グループのリーダーのグランベルさんも会ってみたいって言ってたよ。スレイナさんも僕の家に遊びに来てよ。アイテムのお礼もしたいし。」


 アネッテさんとパーティーメンバーの顔合わせはしておいた方がいいだろう。アネッテさんは僕らのスポンサーだから。





 








 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ