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666年物語 運命を覆すために  作者: コノハナ
第六章 未来への準備と仲間の活躍
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第二話 種族の寿命

 首都にあるアリリオの店は順調に売り上げを伸ばしていた。アリリオ自体の商売のうまさもあるだろうが、アインスからもらったユリの紋章のカードの効果も大きい。店に入った時によく見えるところに飾ってある。

レベッカが封印の魔法で額に飾って固定しておいた。このカードはアインスがお気に入りの人や店に配布しているものらしく、そのカードがあることがステータスになる。このカードのおかげで店の信用度が上がった。また、アリリオをだまして儲けようとする輩の防止策にもなった。

 店の名前を『白銀の舞姫』にかえた。コロシアムでの戦いで『白銀の舞姫』の名前はニフルハイムにも浸透した。パーティーと同じ名前にすることで、後ろに強い冒険者が控えていると明示した。この措置によりアリリオと店を力による脅しから守ることができるはずだ。

 アリリオは頭がよく商売の才能はある。しかし、まだ若いし、武の才能はない。周りになめられないために、これぐらいのバックアップをする必要がある。ここまですれば少なくともアリリオが生きている間は、『白銀の舞姫』の店はうまくいくはずだ。


 今後の百年を考える上で、種族の寿命について、知る必要があるとツカサは思った。

人間の寿命は元いた世界と変わらないのだろうか?とか種族によってどれぐらい生きるのかを知る必要がある。

「人間の寿命はこの世界ではどれぐらいなの?」

 ツカサはフローリアに聞いてみる。

「人間の寿命は100歳ぐらいまで生きれば長生きだね。」

 ツカサがいる世界とあまり変わらないようだ。今、ツカサが知り合っている人たちは100年後はほとんど亡くなっている。

「ほかの種族はどれぐらい寿命があるの?僕のパーティーはエルフもいるし。他種族もいるから知りたい。」

「パーティにはたくさんの種族がいるからね、こんなパーティーは珍しいよ。今パーティーの種族から説明するね。」

 確かにいろんな種族がいる。最近、魔族まで加入したしな。

「エルフの平均寿命は300年から400年。竜人族は400年。獣人族は何の獣人かで異なるけど、レプリーさんの猫人族は人間と同じく100年。人魚族は200年から500年。魔族は種族によってまちまちだね。サキュバスは300年ぐらいと記憶してる。もちろんこれは思い病気にかからなかった時の話だよ。」

(種族のよって寿命は100年単位で違うのか。長寿の種族の方がいいと思えるが。何か問題があるのだろうか?エルフの数はこの世界ではすくないようだし、竜人族も絶対数は少ないようだ。)

「エルフと人魚族はかなり幅があるようだけど何か理由があるのかな?」

「エルフは個人差が大きいね、人魚族は性別による差が大きくて女性の方が長生きする傾向が強い、ただ、あくまで傾向で短いと200年それを超えれば500年ぐらい生きる。」

「なるほどねー。ところでアネッテさん、アインスさんの精霊族は何年ぐらい寿命があるの?」

「精霊族は寿命という概念はないよ、何千年も生きようと思えば生きれるよ。普通はその前に魂が擦り切れて消えるけどね。」

「魂がすりきれるってよくわからないけど……」

「ああそういえば、ツカサのいた世界にはそういう概念はないんだったね。精霊族にとってね、魂、わかりやすく言うと精神力は人間の体力みたいなものなんだ。精神力がなくなる……例えば生きていくのに疲れたとか、世界にあきたとかそういった理由で精霊族は死ぬ……というよりなくなってしまうといった方がいいのかな。長く生きているとそういった状態になりやすいんだよ。」

「シレナスさんはどうなの?彼女は人間だけど。影人だよね。」

「シレナスは今はアインスの影に入って生きている状態だから、アインスが亡くなるまで生き続けるよ。アインスが自然死なら。その時に一緒に死ぬ。アインスが殺されたなら、殺した相手を殺さすまで生きるね。」

 種族の寿命は大体わかった。これをもとに次の百年のための作戦を建てようと思った。


 アリリオ、レベッカ、レプリーさんも寿命は100年。という事はツカサが次の百年のために別れた時が、今生の別れという事になる。そう考えるとツカサは悲しくなった。


 そこまで考えていると、フィロメナさんの事を思い出した。彼女は魔族と人間のハーフだった。

「フィロメナさんはどうなのかな?彼女は魔族と人間族のハーフだけど」

「ツカサのお気に入りのフィロメナさんか。ハーフは基本的に二つの種族の平均を足して、二で割ったぐらいが平均寿命って言われてるけどね。――ただフィロメナさんは魔族と人間族のハーフでしょ。あまり例もないし、個人による差も大きいとおもうな。」

 

 よくわからない。一言で言うとそういうことだろう。それと、彼女を気に入っているのがばれてるな。フィロメナさんを見ると癒されるんだよね。


「寿命の話をしてると一つ疑問が出てきたんだけどね、普通は寿命が長い種族ほど人口が多くなると思うんだけど、エルフなんてそんなに人口は多くないよね。それ何かの理由がある?」

「ツカサが疑問に思うのもわかる。種族の寿命が長い種族は赤ちゃんが生まれることが少ない。だから、人数も増えないんだよ。前にメリッサが姉妹にあこがれてたようなこと言ってたでしょ。魔族は出生率が低いから、あこがれも強いんだろうと思うよ。」

 うまい具合にバランスが取れてる。これでは寿命の長い種族は増えない。


「それと、もう一つ教えてほしいことがあるんだ。物を作る魔法か物に魔力を込める魔法を教えてほしい。」

「いいけど何に使うの?その二つの系統の魔法は、攻撃魔法と違って覚えるのに人によっては時間がかかるよ。――そういえばツカサ、この世界に来た時に魔法を馬車を出そうとして失敗してたね。何かこだわりでもあるのかな?」

「今の仲間に指輪かもしくはカードでもいいけど、何か仲間の証の品を贈ろうと思って。で、それに魔力を込めておいて、百年後に会った時にそれを持っていれば、百年後も仲間でいてくれてる事の印にしようと思ったんだ。」

「仲間の証、そのための指輪、カード。されはいい考えだね。喜んで協力するよ。」

「それと、もう一つ理由があって、たぶん、アリリオとレベッカは次の百年後まで生きていない。亡くなる前に、僕のやっていることに賛同してくれる人――子孫でも、弟子でも、誰でもかまわないけど、カードや指輪を渡してほしいんだ。そうすれば、この世界を守っていく僕の意志が途切れる事なくつづいていく。」

「そこまで、考えてたんだね。私が周回していた時はシレナスにほとんどを任せてた。彼女が優秀だったから頼りすぎていたのかもしれないね。」

 フローリアが遠くを見るような眼をしてツカサにつぶやいていた。少し寂しそうだった。


「意志を継ぐか……、ちょうどいいタイミングだから、ツカサにスキルについて、まだ教えてないことを話すね。」

 フローリアが穏やかな口調で話をしだす。

「スキルは種類によっては譲渡できるんだ。親子とか師匠と弟子の間では譲渡ができる可能性が高い。お互いの信頼関係が強い間柄だね。アインスが数多くのスキルを持っているのはツカサも知ってるよね。あれはこの世界を何週もして譲り受けたスキルも含まれてる。ツカサのいた世界でアインスから大量のスキルをコピーしてもらったよね。あれと同じことができるという事だよ。だから、例えば武の名門の家系ではスキルの遺伝、スキルの親や祖父からの譲渡で優れた武の子孫が続いていく。誰にスキルを継承するか問題になんることもあるし、突然死んでスキルを継承できないこともあるけどね。」


 アインスのスキルの多さの秘密はわかった。何週もするうちに信頼関係を多くの人と結んだのであろう。

 フローリアの話はさらに続く。

「それと、つかさもうすうす気づいていたと思うけど、スキルは後天的に得ることもできるんだ。『小』の魔法適正しかないものでも、使い続けるうちに『中』になったりしていく。努力も報われる。」

「スキルの譲渡について質問があるけど、例えばアリリオの『博覧強記』は継承できたりするの?」

「その人独特のユニークスキルは譲渡できないことも多い。間に信頼関係があっても、受ける側の器が合ってなければ無理だね。」


 それから、ツカサとフローリアは早速物を創る訓練を始めた。まずは簡単な鉄の板から、それから徐々に難しい物のにチャレンジしていく。一日では四角い鉄の板しかできなかったが、『一ヶ月もすればカードや指輪も作れる』とフローリアは言った。その後は物に魔力を込める訓練の予定だ。ツカサはこの時間を去る前には余裕で間に合うみたいで安心した。


 ツカサの部屋で練習をしているとドアの方からノックが聞こえた。ドアを開けるとフィロメナさんがお茶を入れて持ってきてくれていた。明かりがついていたので何か仕事をしてると思い気を聞かせてくれたようだ。

「フィロメナさんいつもありがとう。僕ももう少ししたら寝るから。フィロメナさんも休んででいいよ。」

 フィロメナさんは相変わらず気遣いがいい。

「はい、ありがとうございます。姉の事でこの間はお世話になりましたので。」

「メリッサさんは過度につきまとわなかくなった?」

「はい。距離を置いて見守ってくれるようになりました。その代り、マリーナさんを距離を近づけて妹のようにかわいがってますね。」

「ははっ、メリッサさんらしい。魔族の人は身内が少ないからそうなるんだろうね。」

 ツカサが微笑みながら話す。

「ところで、ツカサさんに聞きたいことがあるのですがいいですか?」

「僕が答える事とができるなら答えるよ。」

「マリーナさんとティーナさん、それと私も思っていたことなんですが、フローリアさんはツカサさんの恋人なんですか?いつも一緒にいるし、親しげな様子だし。」

 フィロメナさんが大きな眼で見つめながら話す。

「え、そういう事になってるの?」

 ツカサは驚いてフローリアを見てしまう。フローリアも面食らっているようだ。

「えーっとね、フローリアと僕の関係を簡単に説明はできないんだけどね。師匠と弟子みたいなものと思ってくれていいよ。もちろんフローリアが師匠だよ。」

「そうですか。それなら良かったです……」

(私にもチャンスがあるみたいですね。)

 フィロメナの最後の方つぶやきはツカサには聞こえなかった。





 


 






 




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