第四話 初めての仲間
ツカサとフローリアはクリスティーナを引きつれて、服屋に寄り服を買い。宿まで一緒にいった。クリスティーナは大人しくついてくる。奴隷商人から逃げていた時よりも、緊張感が取れ大分落ち着いて見える。これならいきなり逃げることはないだろう。ツカサは少し安心した。
「ではまず自己紹介からしよう。僕はツカサ、とある目的があって冒険者で旅をしてる。もし君が仲間になるなら一緒に冒険者として旅をすることになると思う。」
「私はフローリア。ツカサと一緒に旅をしてる。ツカサの先生役でもあり、仲間でもある。二人とも魔法使いだよ。」
フローリアが自ら自己紹介をするのは珍しい。クリスティーナを気に入ったのかもしれないな。
「クリスティーナも自己紹介をしてもらっていいかな?」
「私はクリスティーナ。ベンヘレンの一族出身だ。お前たちは私を助けてくれた。その恩は返す。だから、お前たちの仲間になる。ただ一つだけお願いがある。もし、別れたベンヘレンの一族に再び会うようなことがあれば、パーティを抜けるかもしれない。」
「ベンヘレンの一族か、あの身体能力もうなづける。」
フローリアがつぶやくように話す。
「ベンヘレンの一族って何?」
ツカサの問いにクリスティーナはどうやって説明しようかと考えるが、
フローリアが「クリスティーナでは説明しにくいだろうから、私が説明するよ」と言った。
「ベンヘレンの一族はね選ばれた一族って言われてて、その一族は年を取らず、年齢によって死ぬことはないっていわれてる。それに何らかの非常に優れた能力を持ってる。」
とんでもなくチートな一族だな。一種の不老不死に近いのかもしれない。クリスティーナも奴隷紋を付けてたにもかかわらず、素早い動きをしていた。あれが素晴らしい能力の一部なのだろう。
「それだけなら、非常に恵まれた人たちってことで理解できるのだけど、この一族はおおきな問題を抱えてる。まず、一族は女性ばかり生まれる傾向がある。ところがベンヘレンの一族の女性が子供を産んだ場合。その初めて生まれた子供に不老不死が伝わり、生んだ母親はその能力を失い普通に老いて死ぬ。二人目も生まれる事があってもその不老不死の能力は伝わらない。だから、ベンヘレンの一族は数を増やすことが非常に難しい。幻の一族って言われてる。」
「あと私からつけ加えるなら、一族の掟がある。一度はぐれたら。基本的に一族がその仲間を探すことはない。だから、私が一族を探し当てない限りもう一族とは会えない。」
まさに、選ばれし一族だな。改めてクリスティーナを見てみる。茶色く長い髪、すらっとした体型と強い意志を感じる茶色い目、モデルかと見まがうような美しい脚。日本にいたら足を止めてずっと見つめてしまうはずだ。
ツカサが見惚れていたのにクリスティーナが気づき、不思議そうな目で見つめ返す。
クリスティーナに見つめられるとどきっとするな。すべてを見透かされそうな気さえする。
「クリスティーナの条件で大丈夫。一緒に冒険していこう。ところでクリスティーナは何才なの?」
不老なら年齢はわからない、見かけでは20前後だと思うが、かなりの年を取っているかもしれない。
「20才だ。一族の中ではかなり若い方だと思う。」
「僕らは魔法使いで今まで戦ってきた。それなりには強いと思う。クリスティーナには前衛で戦ってもらうことになるけど、得意な武器は何?」
「軽い剣で切りつけながら戦う。切れ味の鋭い剣がほしい。君たちに敵の攻撃をとどかせやしない。」
頼もしい発言だ。奴隷紋を背負ってなお、あの素早い動きができることを見れば納得だ。
「それとスキルは何を持ってる?」
「鑑定をつかってもらっていいよ。それで確認してくれ。」
早速使ってみる。
クリスティーナ
瞬足 乾坤一擲 豪運 剣舞
いいスキルを持ってるな。特に乾坤一擲と豪運の組み合わせは、強い敵にかなりの威力を発揮すると思う。
「まずクリスティーナ武器を買いに行こう。その後冒険者ギルドによって、拠点となる家を探し、そこを拠点にダンジョン探索だ。」
武器屋に入りクリスティーナに武器を選ばせる。ツカサに武器の知識はない、なのですべてをクリスティーナに任せる。お金を気にするそぶりもあったが、気にせず買ってくれと言った。
ギルドに向かうとりあえずクリスティーナのギルド登録を済ませておこう。自分たちはランクを上げる必要はないが、クリスティーナはぜひ上げてもらいたい。
家はグランベルさんが住んでいる近くでいいと思う。ギルドの人に物件の相談をした。ここら辺のギルドの対応はすばやかった。明日、物件を見て借りよう。
今日の所はここまでにして、明日は朝からダンジョンに潜ろう。クリスティーナの活躍が楽しみだ。
初心者におすすめのダンジョンのプライアに行ってみる。クリスティーナはまず大丈夫だと思うが、安全の幅は取っておいた方がいい。
クリスティーナを先頭にモンスターと戦ってみる。ジャンボウサギ、アリゲーター、など比較的弱めの魔物がでてくるが、クリスティーナは敵の攻撃を全く寄せつけもしない。あっという間に倒していく。しかもその倒し方が美しい。常に敵の死角から攻撃でもしているようにみえる。敵に防御すらさせない。もちろん攻撃をくらうこともない。ツカサはプロテクションをクリスティーナにかけていたが意味がなかった。
ツカサ達はダンジョンを次々と下に下っていく地下15階まで来た。ボス部屋にたどり着く。今までのボスはクリスティーナには楽勝だったようだ。
15階のボスはダンシングベアーというらしい。大きい熊が俊敏に動き鋭い爪で攻撃をしてくるらしい。ギルドの人もここが初心者の壁になると言っていた。
「クリスティーナここのボスは少し強いらしい。無理せず危なくなったらさがってね。」
「いえ、大丈夫です。」
ダンシングベアーはあくまで強気だ。強い敵にどういう戦い方をするか見てみよう。
ボス部屋に入ってみる。ダンシングベアーが現れた。クリスティーナは敵に斬りかかる。素早い一撃がダンシングベアーの方から胸のかけて入る。しかし今までのように深いダメージは入らなかった。ダンシングベアーが怒り狂って、大きく手を上げ素早く爪を打ち下ろす。しかし、クリスティーナは素早くかわす。ツカサの目にはクリスティーナの残像が見えた。その残像に爪が打ち下ろされたようにみえる。その後クリスティーナはダンシングベアーの首筋に刀を当てた。血を吹き流しダンシングベアーが倒れた。その後から中くらいの魔石がでた。
圧倒的な強さだな。クリスティーナを仲間に入れることができて良かった。
「今日はここらへんでやめよう。家も借りないといけないしね。」
「そうか、物足りないけど今日はここまでか。今度はもう少し先まで行こう。ツカサたちの戦っている姿もみたいし。」
クリスティーナさんの頼もしい発言だ。
ギルドの近くまで転移で移動する。クリスティーナは少し驚いていた。
ギルドにダンジョンで得た魔石を売りに行く。金貨6枚がてにはいった。クリスティーナの働きで得たものだから、すべてを渡そうかと思ったが。クリスティーナが「仲間なら等分で分配」と言ったので金貨二枚ずつになった。
ギルドから紹介を受けた家を借りる。なかなかいい家だ。奴隷商人の店にアリリオとフィロメナを迎えに行こう。ここがこれからの拠点だ。彼らに屋敷の管理をしてもらう予定だ。
奴隷商人の店に行きアリリオとフィロメナを引き取る。そして借りた家に転移する。
「アリリオさん、フィロメナさんこの家の管理をお願いします。僕たちが留守の間を頼みます。今後、仲間増やしていく予定です。居心地の良い屋敷にするようお願いします。」
「それと、アリリオさんこっちに来て」
ツカサはアリリオのなくなった右腕を触ると、魔法を唱え復活させた。アリリオは信じられない目でツカサを見つめていた。
「……ありがとうございます。このご恩は一生忘れません」
アリリオは感激した様子でツカサにお礼を言う。
集まった5人でお互い紹介をおこなっていく。仲良くやってくれることを信じよう。
クリスティーナ、アリリオ、フィロメナこの3人がツカサの初めての仲間であった。




