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666年物語 運命を覆すために  作者: コノハナ
第七章 クレスメイ半島の開発
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第六話 試験変更

 グレイヤードの住む屋敷にメイヤーとジェンナが来ていた。二次試験を合格したことと次が最終試験だという事を知らせたら、こちらに来ることになった。

 二人とも受かったことに喜んでいて、もしかしたら『次も』という思いでいた。


「アインス様に会ったんでしょ?どんな人だった。何を聞かれた?私の事何か聞いてた?」

 矢継ぎ早にジェンナが質問をする。

 どんだけアインス様が気になるんだよとメイヤーは思ったが、口に出すと面倒くさいことになるので黙っている。


「とても、聡明できれいな人だった。宰相だけの事はある。」

「それだけ?」

「個別にはされたけど、どの面接でも聞かれることを普通に質問してきただけだよ。」

 これは少し嘘をついていた。普通の質問のほかにクレスメイ半島の秘密も話していた。ただ、それを説明すると情報を漏らすことにもなりかねないので黙っていた。


「それで、最終試験は何をやらすんだ。」

 メイヤーが聞く。

「その準備もあって、二人にも来てもらったんだ。最終試験には四人が挑戦する。試験は実技と面接だ。」

「また面接するの?」

「次の面接は推薦者も含めて三人でするって、開発をサポートするから必要だという判断だと思う。」

 メイヤーとジェンナは黙って考え込んでいたが。ジェンナが思い出したように顔をグレイヤードに向ける。

「アインス様に直接会えるじゃないの!!、やった。まさか、こんなチャンスが来ると話思わなかったわ。」

 ジェンナは大喜びだ。

「俺、面接なんて今まで受けたことねえぞ。」

 メイヤーは不安がる。


「いまさら面接の訓練なんて間に合わないから、二人には普段通りでやってくれればそれでいいよ。」

「グレイヤードがそういってくれるなら、それでいいけどさ。」

 メイヤーも貴族としての礼儀ぐらいは心得ているので、礼を失する事はない。


「そっちはまあ予想の範囲なんだけど、実技ってのが問題があってね……。」

 グレイヤードが嘆く。

「そうだ実技ってなんだよ。開発で実技なんてわけわかんねえぞ。」

 メイヤーもそれに同意する。

「で、実技って何するの?」

 ジェンナが冷静に問いただす。



 三人が話し合っている少し前、ツカサとアインスは話し合いをしていた。

「僕のスキルで見るとグレイヤードはうっすらと発光してた。」

「ツカサのスキル『運命の煌き』で見た結果?」

「そう。自分が100年後に来てから初めて光る人を見た。今回の開発に適任かどうかはわからないけど、つながりは持っておきたい。」

「できればグレイヤードを開発に回したいとツカサは思う?」

 うかがうようにアインスが聞く。

「できるなら彼にやらせてみたい。アインスが重視しているクレスメイ半島の開発。そしてそこにうっすらだけれども『運命の煌き』に反応する人が現れた。運命を感じる。」

「私もツカサの件がなくても彼に開発を任せようと思っていた。だけど、今その最終選考に横やりが入った。」

「横やりって?」

「今回の試験に口を出してくる奴がいた。レスターの関係者だ。」

「レスターを合格させろと言ってきた?」

「いや、そうじゃなくて、間接的に試験の変更を求めてきた。私の考えでは応募者を含む三人で面接をして決めようと思っていた。それなら私の意中の候補を合格させやすい。だけど試験内容の変更を求めてきた。しかも私が反対しにくい案を提案してきた。」


「反対しにくいって……どんな案?」


 疑問に思ったツカサが聞く。宰相であるアインスが反対しにくい案ってなんだろうと疑問に思ったのだ。


「100年前王位を争った時に武力での勝負になったことをツカサは覚えているでしょ。あれを今回やろうって言ってきた。」


 ツカサは思い出した。自分が一年ほど前、この時代では100年前に武力で勝った方を王位につける提案をしたのだ。

「それはわかりやすいけどさ。王位ならともかく開発のリーダーに武力はいらないでしょ。」

 ツカサはもっともな意見を言う。

「そう、いらない。どこかを攻めるリーダーでもないし、この場合必要なのは武力よりも知力。だけど前回は私が試合による決着を提案した手前、反対はできなかった。」

「てことは今回の試験は面接なしになった?」

「さすがにそれは私が止めた。面接と試合。今回二次試験をクリアーしたのは四人。それでトーナメント式で優勝者を決める。ただし、優勝者が必ずしも選ばれるというわけではない。参考にするといった形にした。とはいってもあっけなく一回戦で負けた人は選ぶことは無理だ。」


「代表者一人による戦い?」


「チーム戦で三人による戦いになった。それと代理人も二人まで出してもいいことになった。つまり立候補者、推薦者の内一人は必ず戦う必要がある。」

「その仕組みはレスターに有利にできてる?」

「彼の推薦者は軍事畑の貴族。だから強い奴に知り合いも多い。だからこの形式に試験を変えられた。」


 ツカサは少し考え込む。試合形式になるとこちらのやりたいようにできない。


「ところで、なんでそこまでしてレスター陣営は開発の主導権を握りたがるのかな?」

 開発には利権が絡むとはいえそこまで力をいれる必然性がツカサは感じなかった。


「国のルールとして、開発した土地は開発した貴族が領主になれる決まりがある。国としてお金を出すから全てが開発した貴族の土地にはならないけど、それでも領地持ちの貴族になりたい奴は多い。国と関係なく土地の開発に行く貴族はいるけど、結構失敗してる。開発に成功しても持ち出しが多くて、いまだに赤字続きの領主も多い。国がお金を出すから、赤字のリスクがない。それだけでもおいしい開発なんだろうと思う。」


 リスクがなくて実入りが大きい。だから応募者が集まる、そういうことなんだろう。


「グレイヤードを選びたいけど、彼と彼の推薦者は剣の方はどんな感じ?助けいる?」


「グレイヤードの剣の実力は普通の貴族と同じぐらいだと思う。特にできるともできないとも聞いていない。

 推薦者はメイヤーとジェンナ。メイヤーはなかなかの剣の使い手。冒険者ギルドに登録して魔物を倒したりもしているみたい。貴族の中では強いと思う。

 ジェンナは女性の貴族、だから剣の方は無理だと思う。魔法も使えるとは聞いてないし、戦うのは無理っぽい。」


「前のように『白銀の舞姫』のメンバーが出て代理に立つのはまずいよね?」

 ツカサが確認のために聞く。

「うん。あまり良くない。『白銀の舞姫』は国にも商品を納めてる。どこかの貴族に肩入れするのは今後の事を考えるとね。」

 

 王位継承戦のように相手をつぶすならともかく、今後も付き合うなら肩入れは良くないという事だ。商会の名前とチームの名前が一緒だから余計にまずいかもしれない。


「となると前のようにクリスティーナが戦う事はできないのか。」

 クリスティーナは『白銀の舞姫』のリーダーとして顔もある程度知られている。


「恐らくグレイヤードは推薦人に女性もいることだし、誰かを代理に立てると思う。だけど、彼は貴族の中では身分は低い……私も知らなかったし、だから強い代理人を立てる事は厳しいと思う。」

 その言葉を聞いたツカサは考え込む。


「とりあえず、彼に接触してみる。それから対策を考える。」

「試験は一週間後だからあまり時間はない。」

「わかった。早めに手を打つ。」



 再びグレイヤードの住む屋敷の話

「開発の実技が剣での戦いって、何考えてるの?わけわかんないわ。」

 ジェンナがグレイヤードに不満をぶつける。

「そうだな。それがおかしいのは俺でもわかる。」

 メイヤーがうなづきながら話す。


「僕もそう思う。だけどなぜかそう決まった。だから対策を二人に相談したい。」

「お前とジェンナは戦うのは無理だろ。俺が戦うから二人は代理を立てろよ。」

「それが一番なんだけど、僕には強い奴の知り合いはいないし、強い人を雇う金はないよ。」

「私もいないわ。だけど親に相談したらいるかもしれない。聞いてみる。」

「俺は冒険者としても活動してるから知り合いはいるけど、お金がねえぞ。強い人を頼むと恐ろしいぐらいお金がかかる。だから無理だな。」

 

 三人とも厳しい表情をする。

「これだとレスターが決まったようなものじゃないのか?あいつ自身も強いしあいつの後ろに軍も付いている。」

「これレスターに決めるための出来レースじゃないの。不公平だわ。」

 メイヤーとジェンナが不満を口に出す。


「普通に考えるとそうだけど、これからどうにかならないか考える。最悪棄権する。」

 

 それから一日後グレイヤードの屋敷のドアを叩くツカサの姿があった。『白銀の舞姫』の使いとしてグレイヤードと約束をとり面会をするのだ。









 


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