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666年物語 運命を覆すために  作者: コノハナ
第五章 運命の邂逅
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第五話 蝕(むしば)まれた村

グランセダールに隣接する国ラスタメイル。そのラスタメイルの辺境にカミルという村があった。

 エイベルはこの村で生まれた。魔族同士の子供だったが何故か人と魔族が入り混じっている状態で生まれた。村の住民は驚いたが魔族の出生自体が少なく子供は歓迎された。両親が二人とも魔族だったという事も関係していた。

 

 エイベルは他の魔族の子供より体が弱かった。純粋な魔族よりも人の血が入っているせいだ。しかし、その分エイベルは魔法と剣技を磨き続けた。その結果他の魔族の子供よりも強くなった。

 

 そして12歳になった時ある事件が起きた。

 エイベルはいつものように村のはずれの森で狩りをしている時だった。

 森の中から全身に傷をおった男を見つける。

「どうしたの?」

 エイベルは声をかけるが男は倒れたままだ。しかし体が動いていることを見て生きてはいるんだと確信する。エイベルは大人を呼びに村へと戻った。

 

 男は村で一番大きい家の村長の家に運ばれた。村には治癒魔法の使い手はいるが、初歩的な使いしかいない。男に治癒魔法を使うがその時は血が止まるが、すぐにまた出血が始まる。

 打つ手がない状態だ。


 次の日今度はまた別の男が村にやってきた。エイベルがいつものように村のはずれで訓練をしてると声をかけてくる。

「やあ!聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

 男は明るくエイベルに話しかける。

「最近この辺に見慣れないやつを見なかったかい?ほおっておくと危険な奴なんだけど。」

 エイベルは思わずドキッとした表情を顔に出してしまう。

「お前知ってるな?案内してくれないか。」


 エイベルは教えて良いものだろうか考える。その男を見ると魔族を装ってはいるが人族の気配を感じた。これは人族と魔族土地が入り混じっているエイベルの特殊能力だ。なぜか会う人の人族の血が混ざっているかどうかわかる。

 この能力で両親を見た所二人ともにおおよそ10%ぐらいの人の血が混じっていた。

 その男は人族の血が混じっていて、50%は越えていると感じた。

 だから、何となく信じてももいいかと思った。


「村の中にいる。今治療中。僕についてきて。」

 そういってエイベルは男を案内する。

「ありがとう。俺の名はアシュタロス。お前と同じく魔族と人の血が混じっている。」



「これが俺とメンデイルの師匠のアシュタロスとの出会いだ。お前たちが知りたがっていた情報はこれか?」

 メンデイルがアネッテ達に問いかける。アネッテとマーガレットはようやく行方が知れたとうなづいている。

「私はアシュタロスの双子の妹です。」

 マーガレットが打ち明ける。

「あなたを見て俺は何らかのつながりがあると、雰囲気、姿かたちでそうなのかなと思いました。……ただ、魔力の質は違いますね。」

「ええ、そこは双子といえど違います。エイベルさん続きをお願いします。」

 マーガレットは話を待ちきれないようだ。



 エイベルはアシュタロスを村長の家に連れて行き。倒れた男の下に連れていく。男の容体はさらに悪化していて、治療の甲斐なく死を待つばかりの状態だった。

 その様子をアシュタロスは見てうなづいて部屋を出ていった。


「おじさんの用はもう終わり?」

「ああ。もう奴は死にかけてる。わざわざ俺が止めを刺すまでもない。もう助からない。亡くなるまでほっておく。その間だけこの村に滞在したいが、いいか?もちろんお金は払う。」

 2、3日後男は亡くなった。別の村から治療師を呼んできたけれど症状は変わらず、最後は力尽きるように亡くなった。


 その間アシュタロスはエイベルの家に泊まっていた。お金を払ってもらうという事でエイベルに連れられるまま泊まる事になった。

 そしてその間エイベルの剣の訓練をしていた。エイベルに剣の訓練をできるぐらいの腕の人はこの村にはいない。時分よりはるか上の実力者との訓練にエイベルは喜んでいた。


 男が亡くなって二、三日後村人に妙な病気がはやりだす。体がだるくなり怪我をすると血が止まらなくなる病気だ。村の治療師に治療を受けてもその場は血が止まるが、しばらくするとまた血が出てくる。

「まるで、亡くなった男と同じ症状だ。」

 これが治療に当たった治療師の感想だった。


 村の中だけでは対処できず助けを呼ぶ。村の人口の20%ぐらいが病気にかかってしまったからだ。幸いエイベルとアシュタロスはかからなかった。


「恐らく、あの男が病気の感染の元だ。病気にかかってないとわかるまでは他の所に行かない方がいいだろうな。」

 村人の目の前でアシュタロスが話す。村人達も病気の症状から見て納得する。

 アシュタロスは思いがけなくこの村に滞在を余儀なくされる。自分自身が病気にかかっていない保証はなく村を出ていくわけにはいかないからだ。

 

 仕方なくエイベルの剣の訓練の続きをする。閉じ込められた格好になるから、時間つぶしのようなものだ。

「感染してる人は魔族の血が濃いい人が多いみたい。」

 エイベルがアシュタロスとの剣の訓練の休憩時に何気なく漏らした一言だ。

「お前魔族の血が濃いいかどうかわかるのか?」

「はい。大体わかる。師匠は自分と同じくらいの血の濃さ。」

「そうか。となると俺とお前はかからないかもな。」


 病気の感染はじわじわ広がっている。今まで健康だった人も罹患していく。最初の方に感染した人も亡くなっていく。国は他の所に感染が広がらないように隔離した。

 さらに感染が広がっていくが、治療法も見つからず封鎖されただけだ。


 エイベルはどうやって感染を治める事ができるか考えた。魔の気配を探っていくと、村で亡くなった人が安置している場所、埋葬されている場所に集中していた。亡くなれば気配がなくなるはずなのに不思議に思う。

 そのことをアシュタロスに相談しにいった。

「魔族の血を媒介にして感染しているかもしれない。」

「どうしたらいい?」

「魔族の血をなくすために遺体を燃やした方がいいかもしれない。」

「わかった。村長に言ってみる。」


 しばらくして遺体を燃やして埋葬することになった。その後新たな感染者は出なくなった。それから一月後国の封鎖も解こうかという時に新たな問題がおきた。

 エイベルとアシュタロスはいつものように訓練をしていた。訓練が終わるころにアシュタロスが倒れる。

 エイベルはアシュタロスを抱え家に戻る。そして寝かせる。

 夕方になりアシュタロスが目を覚ます。

「あれ、俺倒れたのか?」

「ええ、師匠は僕と訓練中に倒れました。怪我か病気かわかりませんでしたので治療師に魔法をかけてもらいました。」

 村が隔離されていて病気がはやっていたせいで、高位の治療師が存在していた。


「なるほどそのおかげか。体が楽になってる。目の前が急に暗くなって力が入らなくなった。……俺の体の魔の気配を見てくれないか?」

 エイベルが目を凝らしてアシュタロスを見る。

「師匠の半分は魔族の気配が漂っている。ただ、頭の後ろあたりに魔族の気が集中している。」

「やはりそうか。自分の体を調べて何故か頭の方が重い。もしかしたら感染してるかもな。」

「治せてない?」

「さっきから聖魔法を使ってるが、治らない。かろうじて進行は抑えてる。」


 しばらくするとアシュタロスの症状もおさまり。また訓練が始まる。そしてそれから一週間後村の封鎖がとかれた。

「そろそろ、この村を出ようと思う。」

 アシュタロスはエイベルに告げる。エイベルはわかってはいるけどショックを受ける。

「僕も一緒に連れて行って!」

 思わず願望を言ってしまう。



「それからアシュタロスと一緒に冒険に出たんだ。」

 マーガレットが聞く。

「親を説得して出た。色々教えてもらいながらの冒険は楽しかった。だが、それから一ヶ月後事件が起きた。」

 エイベルの表情が暗くなる。

お読みいただきありがとうございます。

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