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666年物語 運命を覆すために  作者: コノハナ
第五章 運命の邂逅
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第三話 黒猫のリンクル

 エイベルとクライスロードは剣を突き合わせてにらみ合っている。お互いどれぐらいの強さか図っているのだろう。

 クライスロードは夜狐の一族だ。素早さが売りで素早い剣のさばきで敵を翻弄する。体に所々生えている毛は黒色であるのが特色。

 先に動いたのはクライスロードだ。剣を突き刺していく、その動きはかなり早い。エイベルはその攻撃が来るのをわかっているとばかりに余裕でかわす。

 そして、クライスロードもかわされても動じることなく余裕の表情だ。


「さすがにこの程度の攻撃じゃうまくいかないよな。」

 クライスロードはそう言うと変化を始める。毛の色はより黒く全身にいきわたっていく。そして目の色は従来は黒色だったが、どす黒い赤色が滲み始めた。


 クライスロードが剣を構え前と同じように突きを繰り出す。が、スピードがまるで違う。連撃がエイベルに襲い掛かる。剣を使わず体だけでかわしていたが、剣ではじかないとかわせなくなっている。

 クライスロードの顔に余裕が出てきた。まだ、魔法を使いつつの攻撃もしていない。これなら確実に勝てると思っていた。



 アネッテは狩りの時に監視していた女性の黒猫族と一緒にいた。

「とりあえず、名前を聞いてもいいかな?私はアネッテ、こっちはスレイナ。あなたは?」

「私はリンクル。」

「リンクルさんね。私たちも聞きたいことあるから泊まっている宿に来てくれるかな?」


 三人は宿に着いて部屋に入る。アネッテが予定より早く帰って来たせいで、まだ、誰も

戻っていなかった。

「まだ、他の人は帰ってきてないか。とりあえず少しお茶でも飲みながら話をしようか。……スレイナ頼むね。」

 リンクルは何か罠ではないかと緊張していたが、アネッテの落ち着いた雰囲気と女性という事もあって警戒を緩めていった。

「人の世界で楽しむものを持ってきているから、こちらではほとんど見ないと思うよ。」

 アネッテがさらに緊張をほぐすように話す。黒猫族のリンクルを見るとエレーナ達を思い出して、優しく接しないといけないと思ってしまう。

 

 しばらくするとスレイナがお茶とフルーツをもってやってきた。紅茶と『リンデリウム』産のフルーツで、魔族の国にはないものだ。アネッテが商人に化けてこちらで売った物はかなりの値段で売れている。

 柑橘系の匂いにが部屋に漂う。警戒気味にリンクルが口に入れる。自分が思ってた以上のおいしさに目を見開く。

 その姿を見てアネッテは思わずにやけてしまう。エレーナやその祖母のナタリーも可愛く食べてたなと思っていた。

 リンクルが食べ終わるのを待ってアネッテが口を開く。


「エイベルの事を聞かせてもらえるかな?」

「エイベルは私の師匠。『デモンズゲート』の一味を追ってた。」

 前は知らないと言ってたが今度はきちんと教えてくれる。警戒心が薄れたのだろう。


「それで、一味を倒した私を監視してたんだ。なるほど。で、そのエイベルはどこにいるんだい?」

「『デモンズゲート』の残りの残党を倒しに行ってる。私は危険という事で留守番になった。」

「危険を避けるのはいい判断だと思うけど、『デモンズゲート』を倒した相手を見張るのは危険じゃないのかい?」

 アネッテが意地悪な質問をする。


 リンクルが「あっ!」という顔をしてしまう。そこまでは考え付かなかったらしい。耳が前に倒れる。

「まあ。それはそれとして、師匠のエイベルの事を教えてもらっていいかな?」

 アネッテが助け舟を出す。

「はい、師匠は残党倒した後この町で落ち合う事になっています。師匠の予定では三日後ぐらいにこちらに来る予定。」

「倒せることは確定してるんだ。……師匠はそんなに強い?」

「強い。私が戦っても一回も剣を当てたことがない。しかもまだ変身してない人間の時。」

「師匠は変身するのか。それ行ってしまっていいの?」

 リンクルがまたもや「あっ!」という顔をしてしまう。


「変身するとなると師匠は人族ではないのね。てことは人と魔族と混じってる?」

 余計なことを言ってしまった後悔で口をつぐんでいるようだ。質問に答えるかどうか悩んでる。

「教えてもらえないかな?私も『デモン』を倒した時の事をちゃんと教えるから。」


 アネッテの優しそうな問いかけにリンクルはうなづく。師匠と雰囲気が似ているような気がした。

「師匠は魔族と人の血が混ざってる。いつもは人間の姿でいる、パワーアップする時に魔族の姿になる。」


(エイベルはアシュタロスか?魔族と人の血が混ざってる。剣の技が『デモン』と似ている。)

 アネッテがアシュタロスに剣の技を教えて、そしてその技をアシュタロスが『デモン』に教えたという事を意味する。エイベル=アシュタロスという事。


「リンクルはエイベルに剣を教わった?」

「私の剣技は師匠に小さい頃から教わった。」


 アネッテが話を続けていると宿にクリスティーナが帰って来た。アネッテはスレイナに来てもらうように頼む。

 クリスティーナが部屋に入ってくる。黒猫族のリンクルを見て「誰?」と思ったが口に出さず、椅子に座る。

 アネッテが今までのいきさつを話す。クリスティーナは黙って聞く。そしてリンクルに話し出す。


「リンクルさん。私と剣の練習をしない?試合形式で。」


 クリスティーナは戦ってエイベルがアシュタロスであることをリンクルを通じて確認しようとしてる。


 リンクルは突然の申し出に戸惑っている。そして黙って考え込んでいた。

「クリスティーナ。戦いたい気持ちはわかるけど、それは無茶でしょ。あなたと戦ってもわからないし、勝負にならない。リンクルさんを傷つけたらダメ。」

 アネッテはリンクルが気に入ったようだ。


「私は手加減する決して傷つけない自信がある。ね?リンクルさん戦いましょ。」

「そこまでいうなら私は戦う。手加減はしなくていい。」

 リンクルさんがお怒りだ。手加減という言葉が気に入らなかったようだ。

 アネッテはやれやれという顔をしている。


 クリスティーナとリンクルは中庭に出てお互いに剣を抜く。リンクルが先制しクリスティーナに戦いを挑む黒猫族という事もあり素早い動きが売りだ。

 しかし、クリスティーナは剣を使わず体を使う事のみによってかわす。リンクルが驚いている。まさかここまで通じないとは思っていなかったのだろう。

 少し離れて魔法を使いながらクリスティーナに挑む。しかし、魔法の出るタイミングがわかっているかのように魔法を魔法で撃ち消していく。


 リンクルが疲れてきたころにクリスティーナがリンクルの手をつかみ、その手に軽い電撃をあてる。リンクルが剣を落としてしまう。勝負ありだ。

 クリスティーナ納得した様子だ。

「間違いない。私とアネッテが教えたアシュタロスの剣技だ。」



 クライスロードとエイベルの戦いは続いていた。常にクライスロードが先手を取っているが最後の一押しが足りない感じだ。

 エイベルも苦しげな表情に変わっている。

 クライスロードはさらに吸収装置を頼った変化をする。全身の黒い毛にオーラがまとわりついている。


 これはまずいとエイベルも人間の姿から魔族の姿――といっても背中に黒い羽が生えてる姿―に変わる。

「お前魔族だったのか!!」

 クライスロードが叫ぶ。


 クライスロードは魔力を一気に噴出しエイベルに斬りかかる。エイベルを斬ったと思った瞬間かわされ心臓を剣で貫かれた。

 クライスロードは前に倒れ、体を覆っていたオーラは消えていった。


「変身しないと倒せないとは、吸収装置は厄介だな。」

 エイベルはそうつぶやくと、クライスロードが持ってきた略奪品の入ったバッグを持ち上げた。


 



 


 



 

 

 



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