表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
666年物語 運命を覆すために  作者: コノハナ
第四章 魔族の国
131/187

第十話 前哨戦

 フローリアの作戦をみんなで話し合った結果、冒険者に頼んで探してもらうことにした。クリスティーナ達はお金を必要としていないので、冒険者を雇ってお金がかかっても問題ない。

 もう一つの案、恐れやすいように商人を装う事も考えたが、時間がかかることを恐れやめた。


 クリスティーナ達はギルドに行く。中に入ると予想通り冒険者がたくさんいた。

 これなら、探索のクエストを依頼しても問題ないと考える。


 受付嬢のところにクエスト発注の話をするとギルドマスターのエンデリアの所に案内される。


「今日はクエスト発注か!?ずいぶんせわしないな。こちらとしては手数料で儲かるから問題ないぞ。だけどあまり派手にするとフェイルビラスを倒しても儲からないぞ。」


 エンデリアは当然の疑問を話す。

 

「それは全く気にしていませんよ。」

 クレソンが軽く答える。


 クリスティーナ達はお金に困っていない。『白銀の舞姫』のパーティーで稼いだお金もたくさんある。それに加えてアリリオが作った店舗がエリンシア中にありかなり設けている。


「問題ないようだな。で、どういう風に依頼するんだ。発見した奴がお前らの所に来るまでフェイルビラスがそこにいるとは限らないぞ。隠れ家を依頼目標にすることもできるが……どうする。」


「私の魔道具を使います。」

 今までフードで隠していた顔を出してフローリアが答える。


 エンデリアが顔をみて驚く。

(人族の中でも彼女は美人だと思うが、どこか高貴な感じがする。だけど冒険者でここに来てる。どんな事情があるのだろうか……だけど……詮索はしない方がいいんだろう。)

 エンデリアは思考を止めフローリアを見つめる。


 フローリアは懐から親指大の白い物体を出す。

「これは地面にたたきつけると魔力が立ち上る。それと転移の魔法陣が地面に描かれる。ただ長い距離には対応しない。だけどフェイルビラスを見つけて知らせてくれる分には十分問題ない。」


「なかなか便利な魔道具を持ってるな。……わかった。それでいけばいいんだな。」


「この道具はここに50個あります。ギルドで信頼できる奴に配ってください。その冒険者を四日間雇います。で、フェイルビラスを見つけた冒険者にはボーナスも払います。それでお願いします。」


「わかった。それでこちらはそれで募集しよう。冒険者の選別は任せてくれ。そちらの希望はなにかあるか?ランクに条件はつけるか?」


 フローリアは少し考える。

「フェイルビラスをみつけてすばやくその魔道具を叩きつける事ができる人なら誰でもいいです。ランクはあまり拘らない。できれば普段ここで活動している冒険者がいいと思います。」


「確かにここで活動している冒険者の方がいいな。人選はギルドに任せろ。」


 その後クレソンとエンデリアで依頼金額、魔道具の渡し方など細かいことを打ち合わせをする。早速今日から募集を始め、明日から実際に動いてもらうことにした。


 その後クリスティーナ達は町を出て、フェイルビラス達が出るという道を歩いていく。


「ここでさっさと見つかれば早くていいのですが。」

 マーガレットが誰宛ともなくつぶやく。


「一応さっきからレーダーを張って探っているけど、近くに気配は見当たらないな。まだ町から近いからかもしれないけどね。」

 フローリアがマーガレットに反応する。


 さらに山のふもとを歩いていく。みんな時々山を見つめる。見たところで見つかるわけはないが、思いがそこに詰まっている。まだ、そこまで焦ってはいないが日にちが経つと焦るかもしれない。

 

 さらに歩いていると山の中に入る小道が見つかる。

「山に入ってみよう。山の中で戦う可能性が高い。」

 クリスティーナの呼びかけで山の中に入る。戦う可能性がある場所をあらかじめ見ておくことは重要だ。


「魔物の気配がする。右手の方40メートルぐらい。大きめの動物型の魔物でこちらに向かってきてる。」

 フローリアが言うと、クリスティーナとジェイラスが素早く前に出て身構える。


 周りの木々をなぎ倒しながらビッグベアが二匹出てきた。全長三メートルぐらいの大きさだ。クリスティーナとジェイラスがそれぞれ一匹づつ受け持つように分かれていく。


 ビッグベアが右手を大きく振り上げジェイラスに襲い掛かる。が、すかさず剣を合わせて力ずくではじく。そしてそのまま首元に剣を突き刺しビッグベアを止める。


 クリスティーナを襲うビッグベアは体当たりで突きとばそうとするが、素早くかわし、すれ違いざまに首を切り落とす。ビッグベアが大きな音を立てて崩れ落ちる。


「強いですね。さすがはSランクです。」

 クレソンが感心する。それからも向かってくる魔物を倒していくが、襲ってこない限りは倒さないようにしていた。


 さらに進んでいくと開けたところにでた。ここで少し休むことにする。

「魔物のレベルはそこまで高くないな。フェイルビラスが潜んでいても不思議はない。」


「はい。これぐらいの魔物レベルだと魔除けの結界をすれば安心できる環境です。僕も魔除けの札を持っています。もうそろそろ夕暮れですし今日はここでキャンプしませんか?」

 クレソンの提案を受け入れここで人やを明かすことにした。


 朝になり、またフェイルビラスの捜索をはじめる。


 今日からは依頼をした冒険者がフェイルビラスの捜索に出ている。いつ呼び出されても大丈夫なように戦いの準備をしながらの移動だ。

 しばらく歩いているとフローリアが複数の人数の気配に気づく。


「付近に気配がするおそらく五人組、だけどフェイルビラスじゃない、たぶん討伐に出ているAランクの冒険者。……おそらく、今むこうもこちらの気配に気づいた。向かってきている。」


 しばらくすると五人の冒険者があらわれる。

 クレソンが先頭に立つ。


「おお、クレソンじゃないか!お前も討伐に来てるのか。ん!?周りは知らない顔ばかりだな。」

 冒険者たちの先頭に立つ男が話しかける。腕が四つあり身長もかなり高い。四本腕と言われる種族だ。身長も高くがっしりした体格だ。名前はグランドブランド。

 クレソンと向かい合って話している所を見ると、大人と子供だ。


「ええ、私も討伐に参加してます。周りはベルベネリウス様の知り合いです。」


「何か訳アリのようだな。まあ理由は聞かないが……情報交換でもするか?」


「そうですね。ただ、こちらは提供できる情報はないですよ。昨日捜索に入ったばかりです。ただ、冒険者をたくさん雇って捜索に入っていることは知らせておきます。」


「そこも何かわけがありそうだな。……この件が終わったらベルベネリウスの所に挨拶に行くからよろしく言っといてくれ。」

 そう言うとグランドブランドのパーティーは手を上げ去っていった。


「彼はベルベネリウス様の知り合いです。かなりの強さです。それと彼らがここにいたという事はフェイルビラスはここら辺にはいないという事です。仲間にアラクネー……蜘蛛の魔族の女性がいました。彼女らは索敵に優れた種族です。近くにいた生物の気配は逃しません。」


「ここにいても意味ないって事ね。それなら一度山のふもとに戻りましょう。」

 フローリアが手をふりみんなを呼び寄せる。近くに寄せて転移する。最初の日に入った山の麓の入り口に着く。


 山のふもとをさらに歩き進めていく。

「ここら辺は冒険者が入って探してくれているね。」

 フローリアも気配を探りながら歩いている。ギルドに頼んだ冒険者が働いてくれているようだ。


 日が傾きかけたころ特異な魔法の気配を感じる。フローリアが渡した魔道具が使われたようだ。

「よし、見つかった。私一人で行って、確認してすぐ戻る。まってて!。」

 フローリアが素早く転移する。


 転移した先に5人の盗賊――火狐のフェイルビラスを含む、がいた。

 フェイルビラスがフローリアの方を睨んでいる。

 そのそばに発見した冒険者がいた。


「君が発見してくれたんだね。ありがとう」

 そう言うとフローリアはその冒険者に手を触れる。そしてその冒険者に金塊を渡し町まで飛ばす。


 そして、素早くクリスティーナ達を呼び寄せる。

 突然五人の冒険者が現れて驚いた様子だ。


「討伐か!無駄なことだな俺らに勝てるわけないだろ。」

 フェイルビラスが叫ぶ。全身に火のオーラをまとわせている。


「お前がフェイルビラスか!」

 クリスティーナが睨みつける。

「私はフェイルビラスを殺る。その横にいる蛇魔人と水晶魔人はジェイラス、クレソンそれぞれ戦ってくれ。」


 そう言うとクリスティーナはフェイルビラスに斬りかかっていく。不意を突かれた形であったがフェイルビラスは炎で包まれた防御をする。しかし、その防御の上から弾き飛ばすように気を込め、フェイルビラスを遠くまで弾き飛ばした。

 そしてそのまま飛ばした先に進んでいった。


「フェイルビラスの横の二人はクリスティーナが言うように魔人だ。おそらく吸収装置を使ってる。」

 フローリアは断言する。

 そして素早く魔法を放つ。残った四人の内、蛇魔人と水晶魔人は軽く避けるが、後の二人はまともにくらい倒れる。


「私のこの魔法を軽くかわせるレベルだ。注意して戦って。援護と治療は任せて。」

 フローリアはクレソンに話す。


「はい。お願いします。私単独では厳しいかもです。相性的に蛇魔人の方に私は行きます。」

 クレソンは蛇魔人の方をキッとにらみつける。


「それなら僕は水晶に行きます。」

 ジェイラスが水晶魔人のほうに歩いていく。その途中蛇魔人が毒液を吐いて牽制しているが、フローリアが魔法で防いでいく。

 ジェイラスが水晶魔人に叩くように横なぎに剣を振るう。水晶魔人も全身水晶の刃と化した体の腕で受け止める。それでも力を込めて体ごと吹き飛ばす。

 蛇魔人と水晶魔人を連携させないように配慮した形だ。


「私の相手はお前かえ、弱そうだのお。三人まとめて来るのかえ?」

 女の顔にうっすらと鱗がかかっている。そのせいで顔全体が青味ががってとても不気味だ。

 

「まずは僕が戦います。」

 クレソンが細身の剣をだし斬りかかる。蛇魔人はサッとかわす。それでもかまわずさらに斬りかかるがスルスルとかわす。そして少し距離を取り蛇を放つ。

 蛇が口を大きく開けて噛みつこうと飛んでくる。クレソンは当然のように剣で叩き落としたり、かわすことによって体に触れさせない。フローリアとマーガレットの方にも何匹か飛んでくるが、フローリアの軽い火の魔法で叩き落とした。


 今度はクレソンは切り裂く風の刃を出しながら蛇魔人に斬りかかる。うまくコンビネーションを受かっているようで、蛇魔人に反撃のスキを与えない。何回も風魔法を出している内にそのうちの一発が蛇魔人にあたった。

 しかし、ちょうど鱗の所にあたったようでたいしたダメージを与えられていない。


「なかなかやるねえ。それならこちらも段階を上げよう。」


 そう言うと蛇魔人が変身し、人の形をした部分がほとんどなくなり全身鱗で覆われた。

 蛇魔人の攻撃が始まった。鞭をしならせるように右手を使いクレソンに襲い掛かる。かわしたところに口からはいた緑の液が襲ってくる。おそらく毒液だろう。

 今度はクレソンに反撃の時がない。一方的に攻撃続けられている。一度かわしたはずの右手の攻撃が巻き付くように体にあたってしまった。


(全身を強化してあげる。)

 マーガレットがクレソンに強化の魔法をかける。

(これで、早さに追い付くはず。)


 それでようやく反撃できるようになったが、蛇魔人の攻撃二に対し、ようやく一の反撃が程度だった。


 蛇魔人の右手の攻撃をかわした時、大きく避けてしまい地面に足を取られ滑ってしまう。その瞬間蛇魔人の左手が蛇に変わりクレソンの左手に噛みついた。


「これで、終わりさ。」

 クレソンの左手の噛まれたところから中心が紫になり、そして広がっていく。おそらく毒が回っている。


 マーガレットがすかさず毒消しの魔法を唱えようとするが、クレソンが止める。

 そして左手を切り飛ばす。

「僕の正体は泥の魔物なんです。だから時間さえあればすぐに戻ります。」


 そして、その切り取った手を蛇魔人に投げつける。クレソンがそして魔法を唱える。

 (爆裂)

 左手が蛇魔人の手元で爆発する。だが鱗に覆われているのであまりダメージが通ったように見えない。

 しかし、一瞬蛇魔人の気がクレソンから逸れる。その隙を逃さない。


 剣を蛇魔人の口に突き刺す。そしてその剣にクレソンの魔法『雷撃』を流す。蛇魔人の体が雷に覆われる。

 さすがの蛇魔人も体内には抵抗力がない。クレソンが剣を抜いた時地面に倒れこんだ。


 

 



 



 








 




 よければブックマークと評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ