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666年物語 運命を覆すために  作者: コノハナ
第四章 魔族の国
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第六話 闇にうごめくもの

 ボルボロスとグランセダールとの国境沿いに通商『黒い森』と呼ばれる森がある。森が深く両国とも厳密に国境を決めているわけでなく、森が開けた所より向こうがボルボロス、あっち側がグランセダールという風に別れていて厳密な国境はない。森の側に道――とはいっても簡単に石で舗装されている―があり、両国の間で交易をする商人が行き来していた。

 だが、最近は盗賊の活動が活発になっていることもあり、商人の行き来が少なくなっていた。お互いの国としても警備の強化は行っているけれども、連携の悪さ、お互いを刺激しないために本格的に軍を出さない、事もあり商人にとっては大回りして別ルートを通らざるを得なくなっていた。


 『黒い森』の奥の分け入った場所に盗賊たちが住処を作っていた。

「どうも、商人の数自体が減ってますぜ。」

 森の中の盗賊団『デモンズゲート』の手下がボスに報告をする。


「そうか。さすがにやりすぎたかもな。だが、問題ない今度は本格的にグランセダールの方を襲う。こちらはまだ警戒度が薄い。今ならいけるさ」

 

 魔族だけれども人間に化けている。仲間にもその正体を明かしていない。名前は盗賊団『デモンズゲート』からとって、仲間からはデモンと言われている。氏素性もよく分からない。

 ただ、一ついえる事は圧倒的強さによって皆は付き従っている。一度盗賊同士の縄張り争いがあった時に一人で敵全てを倒した。しかも人間に化けたままだった。

 

「あと二つ報告です。一つは前にうちにいたランドレイクが倒されたそうです。誰に倒されたかははっきりわかりませんが、おそらく流しの冒険者だそうで、もう一つ俺たちと同じような魔人、フェイルビラスとボログランスを狙って国とギルドが手を組んだようです。潜入先の村から情報を得ました。」


 この報告をした男は吸血鬼の魔族、名はデルアイズ。吸収装置を使ったけれども魔人にはなれなかった。それでも普通の魔族よりは十分強い。また鋭敏になった五感を利用し付近の村や町をめぐり情報を集めている。


「ランドレイクが倒されたかあいつもそこそこ強かったのにな。油断でもしたか。馬鹿な奴だ。」


「私の方を狙う奴はいないのかい?最近派手にやったけどねえ。」

 気だるそうに氷竜魔人のアンダールーセントが尋ねる。最近彼女はある集落の住人をすべて切り裂いて殺した。

 その時の生き残りがアンダールーセントの存在を国に知らしめた。


「そちらの方の情報はないです。こちらまでまだ手が回ってないようです。」

 デルアイズが丁寧な口調で答える。


「そっ、つまんないね。」

 アンダールーセントは戦闘狂で残虐な女性。仲間と言えど機嫌が悪いと大変なことになる。両手に鋭い氷の爪を生やし敵を切り裂いていく。

 幸い今のところ機嫌は悪くなさそうだ。デルアイズもほっとした様子だ。


「こちらの方には来ないか。警備隊はフェイルビラス、ボログランスで手一杯で、軍はグランセダールに備えてなかなか動けないといったところか。」

 デモンは少し考え込む。


(となると、警備隊の手が足りない今のうちに村々を襲うのもありか。その分こちらも装置を使い強くなることができる。)


「デルアイズ、グランセダールの方で荒らしている奴を何人か戻ってくるよう言ってくれ、――グラデル、アポフィルス、イムサデリウスは必ず来るようにな。ああ、クライスロードこちらに来なくてもいいぞ。あいつまで来ると向こうが手薄になる。」


「わかりました。それでは俺が行ってきます。町の様子は別のものに探らせます。」


 デモンは軽くうなずく。


「それでは。」

 そう言い残し、デルアイズは部屋を出ていった。


「デモンにしては慎重だね。何か気になるかい?」


「ランドレイクを倒した奴が少し気にかかって。一種の勘だ。」


「ふうん、デモンにしては慎重だ。まあ、私は戦えればいいけどね。……あいつらが、来るまでしばらくは森で魔物狩りでもしとくよ。何かあったら連絡しとくれ。」

 アンダールーセントもそう言い残すと部屋を出ていった。


 部屋の中に一人デモンが取り残される。

(盗賊団を率いて3年になるが、今後どうなるかをここまで考えるのは初めてだ。強くなればいいのは確かだけれど、強すぎると国にも目を付けられるか……。あいつは吸収装置を俺たち9個持ってきた。恐らく俺たちで実験をしているつもりなのかもな。)


 デモンは誰にも言ってないけれども『道の光』『虫の知らせ』というスキルを持っている。

『道の光』その人物を見ると自分のプラスになるかどうかがわかるスキル。

『虫の知らせ』は自分の危機をうっすらと教えてくれるスキル。


 このスキルをいかして今まで生きてきた。盗賊に裏切りはつきものだけれども、裏切りそうな奴がすぐにわかるのは大きい。誰と付き合い、誰と戦い、何をするかを選んできた。


(今回、ランドレイクを倒した奴に嫌な感じがしている。だから勢力拡大のために勢力を二つに割ってたのを一部こちらに戻した。……気にしすぎかもしれないが、今までの経験から念を入れておく。―あいつらが戻って来るまで村を襲うのは控えとくか、戦力が整わないうちに敵と戦うわけにはいかないからな。)

 

 『デモンズゲート』は一時的に村々を襲うのを控えた。

 

 それがデモンにとって吉と出るか凶と出るかはまだわからない。



 

 グランセダールのとある場所にて


「装置を渡してきたか?」

 グレスホルムが側にいる男に尋ねる。


「はっ、全部で11個渡しておきました。」


「今度のは新しいタイプだから楽しみだ。」

 グレスホルムがいやらしい笑みを浮かべながらうなづく。


「今の所、フェイルビラス、ボログランスは暴れてます。もう少しで警備隊とぶつかるみたいです。ただ、デモンの所は思ったより暴れてないです。ランドレイクは倒されました。」


「ほう。なかなかの奴がいるな。―面白い、引き続き観察を頼む。」


 グレスホルムはおぞましい研究を付き進めていく。




 



 



 


 



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