第三話 魔族の国 3
次の日ベルベネリウスは城の方に行き情報を集めるそうだ。ツカサ達とは別行動になる。知り合いがいるので、そちらの方から情報を得るみたいだ。
今日も別行動をするみたいだ。ただ、こちらに不慣れなのでベルベネリウスは案内をつけてくれた。
「クレソンと申します。よろしくお願いします。」
丁寧なあいさつをしてきた。
見た目は少年の吸血鬼のようだ。こちらにいた時に眷属にした少年らしい。
「クレソンはツカサ達の案内を頼む。ある程度事情を話しているから、安心してこの町を回ってくれ。」
ツカサとフローリアとマーガレットにクレソンが案内をして回ることにした。
エレーナ達三人は町中を散策だ。魔族の国には獣人族は結構いる。この三人ならそんなに目立たないだろう。普通に町を見回るぐらいなら何も問題ないとベルベネリウスも判断している。
ツカサ達は積極的に情報を探りに行くのと、人間なのでクレソンについてきてもらう。
「私は城で情報を集めるから、ツカサ達は町中でうわさをあつめてほしい」
ベルベネリウスはそう言うと出かけていった。
「人が多く集まるところは何処かな?」
ツカサはクレソンに尋ねる。
「酒場か商人町の広場ですね。今はまだ時間が早いから朝市に人は多く集まっていると思います。」
ツカサ達は広場に向けてあるきだす。町の中を歩くと遠くの方に城が見える。町の雰囲気は人間の町と変わらない。魔族の国の最大の都市だけあって賑わいがある。
広場では
「魔族の国には冒険者ギルドはある?」
「もちろんありますよ。人族の冒険者も来ますね。広場の後に行きましょうか。」
広場は買い物客と商品を売りに来ている屋台で混雑していた。かなり広い場所だけれども買い物客も多くいる。商人の掛け声と客の話声でざわざわしている。
「人は多くいるけど落ち着いて話をできるところじゃないね。」
フローリアがつぶやく。
確かに人はいるけれども多すぎて話ができる環境ではない。
先に冒険者ギルドに行ってみることにしよう。
クレソンが案内してくれた。広場からそんなに離れていなかった。
中に入ってみると人の世界にある冒険者ギルドとたいして変わりがない。受付が魔族の女性だとういことぐらいしか違わない。
周りを見渡してみる。朝早いという事もあってあまり冒険者はいない。待ち合わせで何人かいるぐらいだ。狼の獣人男性がいた。後で話をしてみよう。
張り出してあるギルドへの依頼を見てみる。
素材の収集や魔物の討伐依頼などが貼ってあった。魔物の討伐依頼は人のギルドよりも多い気がするが、その他の所は取り立てて変わったことはない。少し気になったのはランクが上の方に限定した依頼が張り出されてないところだ。何か理由があるのかもしれない。
その理由を受付嬢に聞いてみよう。ギルドカードをみせれば大丈夫なはずだ。
と、思ったが100年前のカードだった。
100年前に加入したギルドカードは使えるのだろうかと思ったが、よく考えると更新もしていないので無効になっているだろう。そのことをクレソンに相談してみる。
「私と一緒に行きましょう。それで話を聞いてみてください。」
クレソンがAランクのギルドカードをみせてきた。見かけは少年だけれどもかなりの実力者なんだろう。ベルベネリウスの眷属だけの事はあるようだ。
受付嬢にクレソンがカードをみせると受付嬢の顔が引き締まった。
「ギルドの依頼についてききたい。Bランク以上の依頼が張り出されていないけど、何か理由があるのかな?」
ツカサの質問に受付嬢の顔がこわばる。やはり何か特別な理由があるみたいだ。ツカサもクレソンと同じくAランクだと勘違いしているだろう。そして、人間がわざわざ魔族と一緒に来ていることも顔がこわばる理由としてあると思う。
「今ある高ランクの依頼をみせてほしい。掲示板にあるやつでは物足りないからね。」
「少し待っていただけますか。」
受付嬢は奥に行くと中の方の部屋に入り何やら話をしている。ギルドマスターと話をしているのかもしれない。
二、三分後受付嬢が出てきて奥の方の部屋に案内された。
部屋に入ってみると浅黒い肌の大柄な男性の魔族が座っていた。頭の上に角が生えている鬼族だろう。
「ここに人族が来るとは珍しい。しかもベルベネリウスの眷属まで一緒ときてる。高ランクへの依頼を出していない理由を聞きたいんだって?そこの人間族の三人も強そうだ。お前らには話してもいいかもな。――ああ、俺の名はべリエル。ここのギルドマスターだ。」
べリエルはツカサ達を値踏みするように見ている。ツカサもべリエルを見る。かなりの強さである事はわかる。帯剣していることもあり剣士だと思うが、魔力もかなりの量を持って居ることがわかった。魔剣士なのだろう。
「私たちはとある目的があって魔族の国に来ました。情報を集めにまわっています。この国が魔人達に襲われているのは知っています。」
「そこまで知っているのなら話は早い。高ランクの冒険者に頼みたいことがある。」
そう言うとべリエルは事情を話し出した。




