第十一話 作戦会議の始まり
翌朝、ツカサとフローリアはレスティアと一緒に町で治療をして回る。レスティアと一緒だと話が早く仕事がしやすいからだ。
ただ、アインスが来るまでひたすら治療を行った結果、病人、怪我人のほとんどは到着したばかりの人が多くほとんどの人に治療が行き届いた。
そのため、治療のために並んでいる列も途切れ治療も終わった。
「レスティアさんありがとう。手紙を渡してくれたんだね。おかげでアインス様に会うことができたよ。」
「こちらこそ、ツカサさん達が治療をつづけてくれて、感謝してます。今日も治療をおこなっていただけるとは思いませんでした。」
「アインス様の所にいってみようか」
ツカサがフローリアとレスティアに声をかける。
三人で転移してアインスが治療している教会にたどり着く。
なぜか。そこには人だかりができていた。病人や怪我人ではなく一目アインス様を見ようと教会に押し寄せていた。
「アインス様の人気はすごいな」
「『アインス様の使い』のこともありますし、何といっても、とてもきれいな方ですから」
そういうとレスティアはアインスがいる方に目を向ける。
(女性でもあの人に抱きしめられて、好きにならない人はいないわ。女性にも人気があるみたい。若い女の子もたくさん並んでる。もう一度お話してみたいな)
「レティシアさんがぼーっとしてるけどなにかあったのかな?」
小さい声でツカサはフローリアに話しかける。
「なんとなく、本体の僕が何をしたか想像がつくけどいえない。」
「アインス様が人気なのは治療の技術のすごさと、その美しさ?」
ツカサは改めてわかっていることを聞いてみる。
「自分で『美しさで人気』って言うのも恥ずかしいから、前は答えなかったのに、ツカサは少し意地悪だ―」
フローリアはツカサの肩に手を乗せはにかみながら答える。
「そろそろ、治療もおわりそうだね。シレナスさんがテントから出てきて、集まっている野次馬の整理をしはじめてる。―アインス様の印象が強くて気づかなかったけど、シレナスさんもかなりの使い手?」
「彼女はかなりの魔法使いだね。闇と邪の魔法はトップレベル。後、事務処理能力、問題の解決の早さも並じゃないね。」
シレナスが部下たちにテキパキと指示を与えている。動きに無駄がない。ツカサとフローリアを見て軽く会釈をする。
(フローリアはアインスの分身体みたいな者だから、挨拶をしたのかな)
教会にいた人たちも去り、医療団のテントの片づけが始まった。シレナスがこちらの方に歩いてくる。
「昨日、行ったとおり今後の方針を決めます。アインス様がお待ちですこちらにどうぞ」
「私は部外者だから、ここで失礼しますね」
レスティアさんが話す。
「いえ、レスティアさんもどうぞ、ツカサさんとアインス様が出会う手助けをしてくれたこと、エウロパでの治療団が成功したことに対してのお礼と、褒美を与えるそうです。」
「わたしはたいしたことはしておりませんが……」
あくまで謙虚なレスティアであった。
「褒美でもなんでもくれるものはもらっておこうよ。」
そう言ってフローリアはレスティアの手を取り、引っ張っていく。
レスティアはアインスが昨日手を取って、手にキスをされた事を思い出していた。
(フローリアさんの手の握り方はアインス様に似てる気がする)
レスティアはフローリアをみつめる。
(髪の毛と瞳は一緒、だけど顔は違う。でも、全体の雰囲気は似てる気がする。不思議な感じだ。)
「私の顔に何かついてる?」
フローリアはレスティアに問いかける。
「いえ、アインス様とフローリア様の雰囲気が似てるなと思いまして」
「アインス様に似てるなら光栄だな。」
(アインス様が本体、フローリアはそのコピーみたいなもの、レスティアさんはそれを感じとったのかな)
ツカサはそう思った。
応接室に5人がそろう。アインス、シレナス、ツカサ、フローリア、レスティアの5人だ。
「まず、レスティアさんへの褒美だね。昨日、教会にいったけど、建物が大分ガタがきてるようだ。立て直そう、併設している孤児院も新しくしよう。」
「ありがとうございます。教会のものと子供たちが喜びます。」
「それと、レスティアさんに個人的に金貨50枚、それとこのペンダントを与えよう」
ペンダントをレスティアに渡す。
ペンダントにはユリの紋章がかたどっていた。
「金貨は受け取れません。私はたいしたことをしてないし、またこのペンダントも恐れ多いです。」
「うん、それならその金貨は教会の運営資金にあてるよ。ペンダントはわたしからのプレゼントだから、受け取ってよ。―私からのプレゼントはいや?」
レティシアは大きく首を振る。
「そんなことは決してありません。大切に保管しておきます。私の一生の宝にします。」
そこから、ツカサがアインスが来るまでにした治療の方法。いまの教会の現状、エウロパの町の様子などの話に花が咲く。ツカサ、レスティアが主に話をし、聞き手はアインスだった。
「さて、そろそろレスティアさんを送ろう。私の手を取って。」
アインスがレスティアの手を握りしめる。二人はレスティアの教会に転移する。
「名残惜しいけど、ここでお別れだね。」
アインスはレスティアを軽く抱きしめる。
「また、時間があれば、会いに来るからね。その時はよろしくね」
「はい、いつでもお待ちしております。アインス様」
レスティアの頬が真っ赤になっている。
アインスはレスティアを放し手にキスをすると、転移で戻っていった。
応接間にはアインス、シレナス、ツカサ、フローリアの四人がいる。
「さて、これからの事だけど、今後6ヶ月間はたいした動きはない、そのあとひと騒動あるけどね。その間ツカサは好きに動いてもらっていいよ。この世界の仕組み、スキル、魔法について慣れてもらいたい。君のいた世界と異なるから最初は戸惑うかもしれないけどね。」
「まだ、スキルについては教えてないんだ。もう一人の私」
フローリアがアインスに話しかける。
自分が自分に話している様子はある意味シュールだと、ツカサは思った。
「わかったそれならまず最初に、ツカサを鑑定してみてもいいかな。ツカサは異世界人だからすばらしいスキルを持っている可能性がある。それから説明をはじめよう。何週もするうちに異世界からきた人達に会ったけど、ほぼ間違いなく素晴らしいスキルを持ってた。ろくでもないやつもいたけどね。」
 




