第十話 この世界にきた理由
ここまでで一区切りです。
ツカサとフローリアはアインスが宿泊しているところに向かう。門の所でシレナスが出迎えている。
「アインス様が待っています。こちらへどうぞ」
シレナスは二人を少し眺めた後、建物の方に歩いていく。
(男性と女性の二人が来てます。女性は顔に認識阻害の魔法がかかっているようです。また、人工的に作られた人形の確率がかなり高いと思われます。魔力は冒険者の上級レベルくらいだと思います。男性の方はいたって普通の人間ですね。ただし、魔力の総量は計り知れません。)
シレナスは念話でアインスに話しかける。
(二人ともこちらに対する敵意は感じられません。応接室に案内します。)
シレナスが部屋を案内し、ツカサとフローリアは応接室でアインスを待つ。
アインスが少し緊張した面持ちで部屋に入ってくる。
ツカサはアインスの顔を見た瞬間、驚いた顔をした。
アインスはそれをみて、不思議に思いつつも挨拶をする。
「はじめまして、アインスと申します。エウロパの町での治療については、感謝しています。だけど、なぜ、そこまでして私に会いたかったのかな? 君たちの目的は何?」
「私はツカサと申します。こちらの彼女はフローリア。あなたの名前を使ったことは謝ります。どうしても受け取ってほしい物があったのです」
ツカサは指輪を取り出しアインスに見せる。
アインスはじっと指輪を見つめる。指輪がキラリキラリと乱反射している。
「何らかの魔法を掛けているみたいだね。持った人に危害をくわえる事はないようだけど、私が持つと何かおこる?」
そう言うとツカサの手から指輪を受け取り指にはめる。
すると、指輪の中の光が静まりアインスの体に入っていく。
「これは記憶の指輪!!……なるほどわかったよ。ツカサがこの世界にきた理由、これから私がすべきこと。これからが始まりということだね。」
アインスは深くうなづく。
「ツカサの世界に取り残された私はうまくやっていける?この世界ではツカサは異世界人だけど、残された向こうの世界では私が異世界人だからね。少し心配だ。」
「それと、フローリアあなたは向こうの私が作った人形だね。ツカサにはその辺はまだ全部説明できなかったようだ。シレナスを呼ぶよ、今の状況を説明して彼女にも手伝ってもらわないと、666年後の未来は守れない。」
シレナスが部屋に入ってきた。
「シレナス、今から話すことは信じがたい話なんだけど事実なんだ。最後まで話を聞いてね。」
アインスは今までの出来事を話し始めるのであった。
アインスはロケットに乗り何回も100年間隔でワープして、666年後の世界を守ろうとしてきた。
ところが今まで何度も挑戦したが失敗してきた。その要因はいろいろあった。繰り返すうちに惜しかったと思う時があったけれど、どうしても666年後を越えれなかった。
ところが、前回のときも失敗してまた最初からやりなおしだと思ったが、なぜかロケットが最初の年からではなくツカサのいる世界に行った。
そこで、偶然出会ったツカサの病気を治した。
アインスはロケットに乗り込み自分の世界に行こうとしたが、ロケットに
『別世界への移転により、今度あなたが乗るとその体が異世界転移に耐えることができません』と言われた。さらに
『あと15分ぐらいで転移します。あなたのいた世界に戻ることができる最後のチャンスです』とロケットが告げてきた。
つまり、アインスはもう元に戻る事が出来なくなった。しかも時間が迫ってる。そこでツカサに頼み込んでこの世界に来てもらった。時間が少なかったので詳しいの説明ができなかった。で、記憶の指輪に託してこの世界のアインスに説明をしてもらおうとした。
試験的な意味も含めて指を渡す事をツカサに課した。その試験をツカサは合格した。
「なるほど、信じがたい話ですが、フローリアさん。―今は認識阻害の魔法は切ってるようですね。アインス様と同じ魔力の気配を感じます。今話したことは本当のようです。」
シレナスはうなづきながら理解しようとする。
「で、アインス様はツカサさんの世界に一人で残されてるということですね。何か変な事をしてなければいいのですが、」
「シレナスちゃん。そこは普通に心配しようよ。」
アインスが不満をもらす。
「向こうの世界では僕の妹がいます。僕と一緒の時にアインスさんに会っています。だから、僕のいた世界でアインスさんはひどい目にあうことはないと思いますよ。―それと向こうの世界で僕の命はあと半年位と言われてました。―それをアインスさんは助けてくれた。だから、今度はこの世界で僕がアインスさんを助ける番です。」
「これで概ね説明したね。明日治療を行った後また、話し合おう。今後の方針を決めないといけない。―もちろんツカサとフローリア(もう一人の私)も手伝ってね。『アインス様の使い』は無しだよ。」
アインスは微笑みながら話す。
 




