交渉
はあ・・・」
ため息をつくと幸せが逃げるというのは本当らしいな。
とりあえず、めんどうな出来事に巻き込まれた後には絶対にそれを遥かに凌駕する出来事がやって来るんじゃないか?
そんなことを思いながら俺は指定の時刻に大遅刻してしまったことで憂鬱になっていた。
途中でトラブルに巻き込まれてしまったことは偶然だったとして、学園に戻るのにこんなにも時間が過ぎているのは誤算だった。
やっとの思いでたどり着いたヘームルシェル学園だが、怒られないだろうか?いや、考えていたってなにも始まらない。とりあえず学園長室まで行こう。
少し学園内を歩いてみてわかったんだが、一体どこに学園長室があるのかわからなかった。学園内で迷子とか笑えないな・・・
「学園内で迷子とか笑えないよなー」
考えていることをそのまま言われた。
その声の主はすぐ後ろにいた。振り向くとそこには一人の女性が立っている。そうだ、この人に学園長室の場所を聞こう。
「あのー。突然で申し訳ないんだが、学園長室ってどこか知らないか?」
「大丈夫だ、その必要は無い。なぜなら私が学園長だからだ。」
すげぇ偶然・・・いや、狙ってだろ絶対。でも、ちょうどよかった。わざわざ学園長室に行く必要が無くなったし、実際迷っていたわけだからな・・・
「立ち話もなんだし、とりあえず学園長室で話そうか。君のことを色々聞きたいからな」
そう言った女性はすこし微笑んだ。その微笑みは俺の考えをすべて見透かしているようだった。
「ちなみに私の名前はセピア・クレアだ。だが、学園ではしっかり学園長と呼べ」
「知ってるよ。あんたはかなり有名だからな」
セピア・クレア。幼い頃から魔導の扱いがとても上手く最年少で魔導ランキングの上位10位に入り、数々の事件を解決。その経験を生かし廃校寸前のこの学園をたった二年で国一番の魔導専門の学園にした天才だ。
尚、今もその力は変わっておらず、度々学園長指定の事件などが入ってくると言う。
そんな人が俺に用があると言うことはやっぱりこの人もこの武器が狙いなのか、そう思い俺は右手の甲を擦った。
「さぁ改めて。ようこそヘームルシェル学園へ、学園を代表として君を歓迎するよ。」
学園長に連れられ学園長室に来たその後に歓迎の言葉をもらった。
「そんな茶番はいいから早く本題を話せ」
俺は学園長が一体何をしようとしているのか知りたかった。武器が目的なのか、それ以外に理由があるのか、俺に気があるのか、・・・最後のは絶対無いな。
「まあ、そうあせるな。その前にいくつか聞きたいことがあってな、君はその『呪われた武器』についてどのくらい知っているんだ?」
「何も知らない。ただ、何もなかった俺に力をくれたものだ」
「ならばそこから話そうか。その武器は『ユグドラシル』というかつて世界を大混乱に招いた剣だ」
「なんだと・・・・」
昔、この世界は大きな戦争が何度もあったその中の1つ、最大最凶のとも言われる戦争
「世界樹戦争」
その戦争はある伝説から始まった。
「蒼深星、朱炎星、碧翠星、すべての星が一つに繋がるとき、世界に大いなる危機が訪れ多くの争いが生まれるだろう。さすれば、一人の勇者あらわる、その勇者、すべての争いを鎮めるだろう」
これがただの伝説ならば良かったのだが、その伝説にある勇者の使っていたと思われる剣が発見された。すると、いくつもの国がその剣を奪うために次々に戦争を起こしたのだった。
戦争はすべての国が無くなってしまうのではないかと言われるほど激しかったが、一人の勇者と名乗る人物がその剣を手に取り伝説と同じようにすべての争いを鎮めた。
勇者は戦争の原因となったこの剣を自分の命と引き換えにこの剣を永遠に自分を封印した。
「なのにその剣を君が持っている、さらになぜか呪われている、そんなものに興味を持つものは大勢いるだろう」
そう、この剣を持っていることは実際に多くの魔導ランキング上位の人たちは知っている状態なのだ。なぜ知っているのかはいまだに不明だった、やはり上位の人たちはチート級の力を持っているのだろうか?
「そこで私は君に交渉を持ちかけたのだよ。君はあの少女を蘇らしたいと思うだろ?」
「っ・・・・・」
そう、あいつを蘇させる可能性があると思い俺はこの話に乗ったんだ。
「じゃあ、交渉に入ろうか。君の大切なあの少女を蘇らせる代わりに、この学園の生徒となり、私の研究に協力してくれるか?」
「・・・わかった。ていうか、研究の内容は?」
「その話の前に君は決闘を知っているだろう?」
「もちろん知っている」
決闘とは
魔導士同士がどちらの方が魔導の扱いが上かを決めるための正式な決め方であり、魔導ランキングはこの勝率によって決まる。
始めるときはお互いの同意がないと始められず、専用の闘技場でなければ成立されない。相手を戦闘不能にするか、無力化することで勝敗が決まる。しかし、降参は無く途中で逃げ出すことが出来ないルールなのだ。
「君は決闘で戦えばいいんだ。そこで君の動きや能力を見て私は解析するからね。」
なんだ、すぐに了承してしまったからどんな研究方法か聞かなかったから解剖やら実験で研究するかと思った。ちゃんと聞いてから考えないといけないな。
「さて、明日から学園に編入するわけだが、必要なものは君の部屋に届けてあるからな。ほら、寮の鍵だ」
「どーも」
「君はもう帰って貰って構わないよ。手続きはこちらでするから」
そうして俺はこの学園に正式に編入することになった訳だが、どうやって決闘申し込もう・・・
何かきっかけがあれば学園の生徒には申し込めるのかな?まあ、今日はいろいろあって疲れたし新しい家に帰ろう。
寮は学園からすぐ近くにあった。はやく部屋に行って休もう。明日から学園生活が始まる、上手くやって行けるだろうか。待っていてくれユイ、必ず生き返らせてみせるから。