出会い
一度は伝説の武器を持ってみたいと思うだろうか?
その武器を手にした人物は世界を救うために旅に出たり、魔王を倒すために攻めこんだりするだろう。だが、その伝説の武器が呪われていたらどうする?
そもそも、そんなもの存在するだろうか?俺、一ノ瀬ハルキはそんなおとぎ話にもならないことは信じていなかったのに・・・
神はおとぎ話にせずに現実にした時、俺は始めて神を妬み恨んだ。これがただの伝説の武器だったら文句はない。持っているだけで英雄だし、みんなからは褒め称えてもらえる。
けど、呪われているんだぜ?持ちたいと思うか?俺は持ちたくなかった。絶対に面倒ごとになるからだ・・・
そう、あの店であの美少女に出会ったことも。
俺が呪われた武器を持ってからいくつかの月日が流れたある日、とある謎の手紙が来た。
「ん?なんだこれ?」
俺は符を開け中身を取りだしてとりあえず読んでみた。
「一ノ瀬ハルキ様
あなたはヘームルシェル学園に編入することになりました。
呪われた武器を持つあなたはやらなければならないことがあるので直ちに手続きを済ませてください」
全く知らないところから来たので調べたところどうやら国一番の魔導を専門に扱う学園から俺宛に編入のご案内だった、ご丁寧にパンフレットまでついていた。
俺には何もやることなんて無いのに、残念ながら俺には魔導の知識も技術は皆無である。
こんな物をを持ち歩いているせいで今まで何回面倒なことに会ってきたと思っているんだ。俺は案内書もろともゴミ箱に捨てようと思った時最後の一文が目に止まった。
「あなたが失った大切な物も手に入るかもしれません」
なぜそんなことを知っているんだ。しかし、こんなことが書かれてあるのなら嘘でも行くしかないな。あの時に失ったものがもう一度取り戻せるなら。
とりあえず俺は学園の編入の手続きを済まし手紙を送った、勢いで編入してしまったが大丈夫だろう・・・
俺はここでとんでもない失敗をしてしまったことに気づくのはもう少し後のことである。
俺は少し早く学園に着いてしまったので、少しばかり学園近くの町を歩くことにした。
その町には以前俺の住んでいた田舎とは全く違い貴族も町民も普通に行き来するところだった。俺は歩いているうちにだんだん腹が減っていてきていた。そこで、俺はとりあえずちょっと気になった店に入ってみた。
「いらっしゃいませー・・・。ってこの辺じゃ見ない顔ねあんた」
お客さんに対してそれはちょっとおかしいと思ったがどうやら常連客が通う店らしいので田舎から来た俺を見て言うのも無理はない。挨拶をしてきたそいつは俺と同じ年位で髪は綺麗な紅いロングヘアーに整った顔立ち。髪に似合った真紅の瞳。結構かわいい。というか普通に美少女だった。
「なにじろじろ見てるのよ」
「あぁ、すまない」
「自覚してるならやめなさいよ。ところであんたこの町に何しに来たの?もしかしてただの旅人?」
「いや、ここの学園に編入するために故郷からに来たんだよ。」
「へぇ・・・そうなんだ」
聞いてきたくせになんか興味無さそうに反応にするよ、とりあえず何か頼むためにおすすめを聞こうとしたときだった。
頼んでもないのに料理が目の前に運ばれてきた。見た目は豪華でこれから宴でも始まるんじゃないかと思うぐらいにボリュームも満点。明らかに一人で食べる料理ではないことは一目でわかった。
「これ、ウチで一番高いメニューだから」
「・・・頼んでないんだが」
「さっきじろじろ見てたじゃない、その詫びと思って食べなさい」
「謝ったじゃないか」
「謝って済むわけないでしょ!いいから食べなさい!!」
「なんでそうなるんだよ!!」
「あっ、代金はしっかり払っていってね」
「・・・」
この店員見た目はいいのに中身はマジでとんでもないヤツだな。運ばれて来た料理を食べないわけにもいかないので嫌々料理に手をつけようとすると、店員とのやり取りを見ていた隣の客がにやけながらいい始めた。
「あの娘の行動には少し目をつむってくれ。始めて来た客には
お前みたいにこの『宴会セット 花鳥風月』を食べさせるんだよ。」
どうやらマジで宴会用の料理だったらしい。今隣に座っている客はこの店の常連で俺みたいにこの料理を食べたらしい。そこで自分以外の俺みたいな客を見るのを楽しみに毎日来ているらしい。
世の中には変な趣味を持っている人もいるもんだ。俺はこの店に入ったのが間違いだったと今さらながら気づいた。
まあ、食べないのも失礼なのでとりあえずは食べよう・・・
隣の客は『頑張れよ』みたいなジェスチャーをしてくる。正直鬱陶しい。しかし食べてみるとなかなか美味しい。でも量がどうしても気になってしまう。時間通りに行けるかな・・・
今後の予定を考えているとバンッと音と同時に勢いよく扉が開き覆面を被った二人組が入ってきて叫んだ。
「動くな‼ ここの店の有り金すべてよこせ!!ついでにここにいる客も財布出せやオラッ!!」
見るからに強盗をしに店に入ってきたらしい。
さて、どうしたもんか・・・店内には俺を含め五人の客とあとあの店員だけである、強盗が武器を持ってる場合下手に動かない方がいいな・・・。そう思っていると地味に安全なところに行こうとしたとき後ろで店員が叫んだ。
「起動!!(リブートオン)顕現せよ‼聖なる剣プレアデス!!」
すると店員の手にはみるみる綺麗な剣が形成されていく。刀身には何やら文字が刻み込まれており柄の部分には龍の紋章がある。今、この場にいる俺以外の人が目の前で起きたことに驚きを隠せていない。剣が完全に形成された後、ようやく強盗の一人が我に帰り。
「なんだぁ?小娘が一人で頑張るのかぁ?大人しく金さえ出してくれれば痛い目遭わずにすんだのに」
強盗が挑発しながら武器を取り出した。しかし店員がそれと同時に峰打ちを繰り出していた。強盗は避ける暇もなく直撃し気を失っていた。
速すぎてもう一人の強盗は腰を抜かしていた。その後、勝ち目がないと判断したのか土下座の体型をとっていた。
「わかった!わかった!何もしない!ホントっ申し訳ございませんでしたぁぁぁぁ!!!!!」
強盗はさっきの早業を見てすっかり諦めたと思ったら・・・。
懐に隠していたナイフを取り出して。
「と、言うとでも思ったか!!このクソ野郎!!」
店員の隙をついたように襲ってきた。しかし、店員はその奇襲を読んでいたかのように華麗に避け、そのまま強盗の懐に忍び込み凄まじい蹴りを繰り出し吹っ飛ばした。強盗は店の壁に強打してのびていた。
俺は最初から目の前で起こったことを見ていたがこの店員はむちゃくちゃ強い。突然の出来事にも焦らずにその場を制圧する姿は見ていて感動するレベルだな。まあ、目の前でこんな事に巻き込まれるのはもう御免だけどな。
「あんた、どうして何もしなかったの?」
事も済んだし店から出ようとしたときだった、店員が俺に剣先を喉元に近づけてきた。なぜ強盗でもない俺にそんなものを突き付けるのだろうか?俺ってそんなに悪いやつに見えるのかな?と、一人で考えていると。また店員から。
「別にあんたのことはなんとも思っていないけど。」
じゃあ、話かけて来るなよ、ていうかこれ二回目だよ。さすがに助けてもらっていて、さらに無視するのは自分でもよくないと思ったので。
「また今度出会ったら教えてやるよ」
俺はそう言い残し店を後にした。店員は「今度っていつよー!!!今教えなさいよ!!」と叫んでいる。
これが後の伝説になった少年と少女の出会いだった。