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2. 初めての剣術、森探索

 翌日、朝ご飯を食べた後、俺はピーテと連れ立って、剣が上手なおっさんの所に行った。この世界は危険な生き物がいっぱいいるという。何をするにもまず自衛のために戦闘訓練が必要だとのことだ。他にすることもないし。


「よう、人族の坊主、鍛えたいのかい」


 猫耳はかわいいが、半袖の服からはみ出る筋肉がムキムキだ。おっちゃんの向こう側では、小さい子供たちが七人くらいで木刀の素振りをしている。


「剣、槍、ナイフ、弓矢、なにがいい? 俺はなんでもできるが、剣が初心者におすすめだぞ」

「槍がかっこいいかな」

「槍は初心者には難しいぞ。剣がおすすめだぞ」


 弓矢は難しそうだ。ナイフは弱そうだ。おすすめ通り剣術にしよう。というか、おっちゃん剣以外教える気なさそうだし。


「剣でお願いします」

「うむ、素晴らしい選択だ」


 おっちゃんから木刀を借り、まず握り方と簡単な振り方を教わる。ピーテもなぜか一緒になって木刀を振っている。


「素振り百本だ。一に鍛練、二に鍛練、三四がなくて、五に鍛練だ」


 木刀でも、結構きつい。だんだん腕が上がらなくなってくる。子供たちのチラチラした視線を感じて、なんだか恥ずかしいし集中できない。

 隣のピーテは涼しい顔で木刀を振っている。地味に悔しい。ピーテのおっぱいは、あるにはあるが慎ましやかで、派手に揺れたりしない。残念。


「ホクトさん、頑張って」

「ホクトさん、もう少しです」


 俺がおっぱいのことを考えているとも思わず、ピーテは無邪気に応援をしてくれた。かわいい声で呼び掛けてくれるって、すごくイイね。生まれて初めてだよ。彼女いない歴=年齢だし。

 その応援の甲斐あって、なんとかこなすことができた。美少女万歳。


「疲れた。もっと楽な攻撃手段ってないですかね。例えば、魔法とか」

「ありますけど、この辺では使える人は一人もいませんね」

「どうやったら、魔法使えるかな」

「さあ、私は知りません。ごめんなさい」


 おっちゃんが話を聞いていたようで、近づいてくる。


「魔法は元から持ってる魔力と素養とイメージ力だ。できる奴はすぐできるらしいぞ。できない奴はいつまでもできないがな、俺みたいに。でも剣もいいだろ。がっはっは」


 魔法あるんだ。さすが猫耳ワールド。剣と魔法の世界。ビバ異世界。

 あと、おっちゃん剣大好きだな。

 腕が痛い。もう働きたくないでござる。布団に入ってゴロゴロしてネットしたいでござる。


「始めは、やり過ぎてもいかん。今日はこれで終わりだ。また明日おいで」


 おっちゃんは俺の心の声を聞いたようで、つらい訓練から解放してくれた。木刀を返して、ピーテの家に帰る。


「次は森へ今日のご飯を取りに行きましょう」

「お、おう」


 ピーテが昨日会った時と同じ格好をして、二人で森に向かう。


「何を取るんだ?」

「サラダの葉っぱと、あればキノコです。お肉もいたら取りましょう」


 俺は丸腰である。長袖長ズボン、シューズを装備しているが、武器とかは持っていない。カゴもピーテが持っている。


「お肉って強い? 大丈夫?」

「慣れているので平気です。今のところ近くにはいないようです」

「ちなみに、お肉って何のお肉?」

「色々ですよ。色々」


 俺は『お肉』が出てこないことを祈りながら、ピーテの後を雛鳥のようについて歩く。情けないが、もし表示システムとかあれば確実に『ホクト Lv1 HP100 MP10 スキルなし』とかである。


「盾とか使わないの?」

「はい。避けたほうが確実なので。軽い私が盾だと吹き飛ばされるかもしれないですしおすし」

「俺は避けられそうにないよ」

「戦闘になったら、ちょっと離れて見ててください」

「はあ」


 『ですしおすし』とかこっちでは現役なんだな。まあそれはいい。初日も一人で森を歩き回る程度にはピーテはベテランなんだろう。大丈夫そうだ。


 ピーテはその辺の草を「サラダの葉っぱです」とか、「キノコ食べられます」とか言って収穫していく。俺もピーテが見逃したキノコを発見した。


「キノコ見つけたぞ」

「それは毒キノコです。食べられません」


 ピーテは見逃したのではなく、食べられないから無視しただけだった。俺の活躍機会は全然なかった。森は山ではなく平地なので、多少歩きにくいのを除けば、普通なら歩くのは大変ではない。

 木の下にドングリに似ている種がいっぱい落ちていた。これは保存食や商人に売るので集めるらしい。やっと俺の活躍の番だ。二人でたくさん落ちているドングリ風種を集め続ける。しかし俺はニートで体力があまりないらしく、そこそこ疲れた。


「疲れてきた」

「そうですか。それなら食材も最低限集まったので、村に帰ります」

「そうしてくれると助かる」

「でも、何か近くにいます。お肉です」


 しかしお約束である。敵さん登場のようだ。


「複数いるみたいです。この辺では珍しいです。こっちのほうへ来ます」


 向こうもこっちを見つけているようだ。木の間から五十センチくらいのリスが二匹現れた。


「ビックリスです」

「俺もびっくりするよ」


 俺は立ち止まって、ピーテが前に三メートルほど出る。すでに腰の剣を抜いて、構えている。


「ビックリスは素早いので、矢だと避けられやすいので剣です」


 こんなことなら、俺も剣を持ってくればよかった。ないよりはましだろう。


 左側のリスがピーテに飛び掛かるが、剣でいなされる。リスは剣をぎりぎりで避けたようでダメージはない。なかなか俊敏だ。ピーテとリスがにらみ合う。

 それを眺めていたら、いつのまにかもう一匹のリスが俺の目の前まで来ていた。すぐに飛び掛かってくる。

 俺は後ろに倒れる。リスは俺に乗ったまま「キュー。キュー」と鳴く。


「俺、ちょっとピンチ」


 俺の上にいたリスはいったん離れると、また飛び掛かってくる。俺はなんとか横に転がってそれを回避する。


「キュー」


 ピーテの方のリスのひときわ大きい鳴き声が聞こえ、そっちを見ると、リスが血を出して倒れていた。


「ホクトさん今助けます」


 ピーテが俺の近くまで来て、リスを牽制(けんせい)してくれる。俺はその間になんとか立ち上がった。

 三度リスが飛び掛かってくるが、距離が若干あり高さが低い。俺はここぞとばかり蹴り上げた。リスは俺の目の前で跳ね飛ばされて地面でぐったりしている。

 ピーテが慌てて近づいてきて急所を一突きにした。


「やりました。新手はいません」

「助けてくれてありがとう」

「いえ、どういたしまして。てへ」


 俺とピーテは、赤ちゃんのおんぶ紐のようなもので、それぞれリスを一匹ずつ袋に入れて背負って帰る。リスはお持ち帰り後ピーテの手により、毛皮とお肉、その他に解体された。お肉はピーテ一家分以外をご近所さんにおすそ分けする。


「人族の青年、なかなかやるね。ありがとう」

「いえいえ、ピーテのおかげですよ」

「ピーテは良いお嫁さんになれるぞ」

「そんな、えへへ。私やりました」


 というような会話を近所の人とかわした。なお、普段は村の周辺は魔法的な結界で守られており、動物類はあまり近寄ってこないらしい。なんでも村の中心にある長老の家に結界石なるものが設置されていて、それによる力だとかなんとか。


 今日の晩ご飯はリスの塩焼きにサラダ、キノコスープである。基本塩味しかないのが残念なところだが、リスもまあまあうまい。

 ちなみにトイレは一家に一つあり、汲み取り式だ。しかし中に『魔法の猫砂』が敷かれていて、臭いは全くしない。それだけでも助かる。猫人族だけに猫砂、素晴らしい。この猫砂と汚物は合わさってしばらくたつと肥料になるそうな。なお村では猫砂は輸入品なので製法、材料などは不明とのこと。

 異世界生活二日目はこうして終了した。



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