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08 地獄の沙汰も金次第

物語唯一のシリアスバットエンドです。

ご注意下さい。

「くっそ〜。使い過ぎだ……」

 俺は目の前に並んでいる数字を見て歯軋りをした。

 実は天地創造には金がかかる。材料はその世界の物を使うからタダみてぇなもんなんだが、加工費がかかるのだ。


 前回の魔法文明にて降臨を行った際、体を大きく再現したり巨大な火柱で演出してみたり。あと、あれ。スレイプニルが以外と高くついた。


 新しい世界を創る度に、一定の予算が上層部から渡される。金額は実績とかに比例するが、見習いが取れても新米神様の俺。大した額ではない。

 俺くらいの新人だと本当は降臨とか早くて、精々天啓で人々に声だけを伝えたり、権力者等の夢に現れたりする程度が定番だ。


 前の自然崇拝や王墓文化なんかで、じみーーに、節約気味にやっていたのを繰り越してここぞと使ってみた降臨だった。

 …………結果は散々たるものだったがな。




「あー……またしばらく創造作業だけ?……そろそろ俺も歴史介入とか、天罰や奇跡を起こして俺教を世界宗教へと広めたいんだが……」

 天地創造での物や動植物を創る作業は嫌いではない。むしろ得意な作業だと思っている。様々な特性のものを創るのは楽しいが、やはり崇められたい気持ちもある。


 けれど派手な事が出来ない懐事情なのは明白だ。生物や環境をケチり過ぎると、文明の発達速度が鈍くなる。

  ここはやはり声だけの天啓や夢に出るしかない。いまいち俺の存在感が薄いし、気分が乗らない。




「うーん……なんか、いいの無いかなぁ……」

 ぼけーっと天啓についての事例資料を眺める。有名どころを眺めていると、ある人物名が目についた。


 ジャンヌ・ダルク

 キリスト教カトリック教会における聖人だ。


 そうだ。天啓を与えるっても、権力者のおっさんに話しかけても全然つまらん。才色兼備な女の子を創造して、その子にジャンヌのように神の言葉を授ける。戦争なんかで成果をあげさせ、俺教の流布に一役買って貰おう。

 それは面白そうだ。何よりも俺は少女が大好きである!




「んー、やはり金髪碧眼か……」

 世界の環境も中世ヨーロッパってやつに似たものにした。

 俺の助言があっても、理解や行動が出来ないようでは意味がない。文武両道にする為にも、知力体力、俊敏性などを高めておく。そして勿論美少女にした。色白にブロンドの髪。綺麗な肌を保ちやすいように、体を整えておいた。これは、成長したらすんげー可愛いくなるだろう。俺の趣味であるが、役得だ。

 産まれる場所は都市から離れた山間の村。本物のように田舎娘が神の言葉を授かり、活躍出世していくのだ。


 英雄の人生を再現する。

 どちらかと言うと先輩の得意な分野だが、俺にだって出来なくはない。

 そんな軽ーいノリで、俺はジャンヌが育つのを楽しみに世界を眺めたのだった。





 山の中では、数人の人間が狩りに出ていた。罠の仕掛けを見に行く者や、巣の目星をつけていた地域を探る者。大人と共に子供の姿もちらほら見えた。

 その大人達の中に一人、金髪のウェーブがかかった長い髪を、三つ編みにまとめた少女がいる。身軽な出で立ちたったが、少女と言えども狩りに来ている者達と変わらない、山の中の装備に身を包んでいた。少女は木の上に登り、真剣な眼差しで周囲の林を見つめる。静かに弓を引き、狙いを合わせる。視線の先には大きな鹿を捉えている。後は慎重に射抜くだけだ。


 風を切る鋭い音がすると大鹿の悲鳴が林に響いた。喉元を貫かれ、悶える鹿に容赦無く追撃が注がれてゆく。少女は大きな青い瞳で鹿を捉えたまま、逃げられないよう足を狙い矢をついでいく。周囲に血を撒き散らしながら一頭の大鹿は地に伏せた。


「やった……!」

 そこでやっと、少女は嬉しそうな笑顔を浮かべ呟いた。大きく息を吸い木を降りていく。大鹿の側に駆け寄ると、まだ息のある大鹿に短刀でトドメを刺した。

 立ち上がることが出来ない事を確認すると、少女はピーっと指笛を鳴らす。しばらくして仲間達が合図の音に集まって来た。大人達はその鹿の大きさに驚きながらも、よくやったと少女を褒め鹿の足を縛り村へ運んで行った。




 よしよし。と俺は彼女の成長を確認していた。

 中々活発な子に育っているようだ。やはり今は戦の乱世である。戦える身体能力は必要だしな。後は俺が夢に現れて彼女を導いていけば良い。彼女は今年で十二歳になったから、ここらで夢に出て指示を出して行こう。

 まずは武に秀でるよう剣の練習をさせ、十六歳頃にこの領地の募兵に参加すれば良い。そんで、その時の戦についての助言でもして彼女に進言させ、一目を置いてもらう。そんな感じでいこう。

 んじゃ、早速今晩にでも顔を出すか。





 夜になり彼女が眠りについた。ベッドに丸まって、すぅすぅと可愛い寝息をたてている。

 女の子の部屋にお邪魔しちゃう。男子的にはときめきシーンの一つだよな。しかも美少女の!夜の部屋!!むふふふふっ。



 彼女の夢に干渉を始める。夢の中の彼女は、いつも狩りをしていた山を歩いていた。いつもの俺の姿で、今回は普通に人間サイズにしておこう。

 彼女の目の前に光の塊が現れて、その中から俺が神々しく登場!呆気に取られていた彼女は、口を半開きにして俺を見ている。やはり、見とれるだけの事はあるよな。



「我は天地創造の創造主である。貴女はその才覚を我に認められた。よってここに導きの言葉を授ける」

 俺の言葉を聞くと彼女は驚き、口も開きっぱなしで目をまん丸にして俺に話しかけた。

「そ……創造主………かみさま……??」

「そうだ。我は神である。そして貴女にはこの国を救う力がある。貴女の行いによってはこの世界全てを幸福に導く事も出来るだろう」

「そんな……そんな事が私などに出来るのでしょうか……」

 彼女は俺の言葉に怖気付きそうにながらも、懸命に話しを聞いた。両手を握りしめ、緊張にか細く震えている。可愛い。


「できるとも。その為に我は貴女に力を授けている。貴女の努力が伴えば、必ずや結果はついてくる。貴女は神からの祝福を受けた者なのだ」

 彼女は俺の言葉を一語一句逃すまいと真剣な面持ちでいる。綺麗な青い瞳がじっと俺を見つめており、口元をぎゅっと閉じている熱心な姿。こういう姿はとても心地いいもんだな。

「……分かりました。神さまからのお言葉。私に出来ることならこの身を費やしてやってみます……!!」

 しっかりと頷き、不安そうに重ねていた手は力強い拳に握りしめられていた。彼女は息を一つ吐いて硬くなった体を緩めようとする。


「うむ。流石は我が認めた者だ。これからしばらくすれば、世は乱世の時代となろう。貴女が十六になるのその時までに、多くの事を見聞きし、剣の腕を上げよ。貴女はその乱世を終わらせる力を持つであろう」

「はい!!」

 彼女は力一杯返事をした。不安のある震えはもう見えない。

「決して諦めるでない。我は常に貴女と共にある」

 そう言って、俺は彼女の夢から立ち去っていった。



 この口調なかなか様になってるな!!やっぱり俺、神様の貫禄ついてきたって事か!!!





 さて、翌日彼女は何かを決心したような表情で目を覚ました。

 いつもの様に狩りを行い、日々の仕事を終わらせると、夕方前には剣の練習を始めていた。使われず、家の片隅にあった歯の欠けた剣を両手で持ち素振りを行っている。

 弓に秀ではいたものの、腕力はそこまでは無い。必死に汗を流しながら腕を振り上げる彼女の姿は、それから毎日続く日課になったのだ。よしよし。



 それから彼女は時間が出来ると、村で一番腕の立つ男の元へ剣の指導を仰ぎに行くようになった。始めは訝しむ男だったが、彼女の気迫に負けて指導を始める事にした。努力を絶やさぬ彼女に、いつしか男も真剣になるのは時間の問題だった。

 彼女の才能はみるみるうちに開花し、いつしか師である男を負かす程の腕前になっていくのは数年先の事である。


 そんな彼女を見ていた俺も何ヶ月かに一回くらいは彼女の夢に現れて、彼女の努力と成果を褒めてやった。


 彼女はその度に嬉しそうな笑顔になり、翌日は特に気合の入った様子で訓練に励んだ。

 勿論見聞を広める事も忘れていない。狩りで取った獲物を売りに街へ行き、多くの事を知っていく。人懐っこい性格の彼女は、市場や街の商人とも打ち解けるのも早い。様々な人と関わる中で、彼女はますます聡明にもなっていった。





 最初の夢から四年ほど経った。彼女が十六歳の誕生日を迎えた晩、俺は彼女の夢にまた現れる事にした。これからが本番である。

「貴女の今まで行い素晴らしいものであった。貴女の才覚は花開き、今こそその力をこの国で発揮する時である」

「お褒めの言葉、ありがとうごさいます」

 彼女は成長していくと共に、凛々しい姿は騎士にも見合うものとなっている。

 お〜。いいぞいいぞ!なんか始めて家臣を育て上げた感じで妙に嬉しいもんだ。子供の頃から育て上げた家来?どっちにしても良いものだ。


「貴女も知っておろうが、この国は戦が始まっている。まずはこの領地の募兵に行くと良い。手土産にこの付近を荒らす賊の首を持って行くと良いであろう。奴等は次の満月の夜に隣の村を襲う。頭は村長の家で宝を漁りに来る。待ち構えて打つのだ」

「承知いたしました」

 彼女は恭しく頭を下げ返事をした。うむ。結構である。





 その夢の後、彼女は数名の猟師仲間と俺の指示した場所に居た。そこには賊の連中が村を襲うための下見をしに近辺においた拠点だった。彼女達はすぐに隣村へ行き、村長と村人に賊の事を話し協力を仰ぐ。

 幸い隣村へは彼女達が足繁く通っており、顔見知りだったので話も早い。多少彼女が俺の助言を忘れてはいたものの、大体順調に事は運び、彼女は頭の首をその剣で落とした。


 その晩、俺はまたもや夢に現れ彼女に褒美を授けた。

「始めてとは思えぬ戦いぶりであった。その首を持ち、明日にでも領主の元へと向かうが良いだろう。貴女に一つ褒美を授ける。翌朝納屋へ行くが良い、奥に真紅の鞘に収められた剣がある。我が力を込めた物だ。大いに振るうがよい」




 彼女は俺の言葉通り、翌朝納屋に向かった。

 そこには俺のお手製の剣が置いてある。流石に魔法の無い世界なので炎なんて派手なものは出さなかったが、質量を少しいじっておいた物。彼女が触るととても軽い剣だが、他人が持つと大の男でも二、三人掛かりの重さを持っている。そんな代物だ。

 やはり、英雄には聖剣!エクスカリバーとかそのうち創りたい。出来れば俺が振り回したい。絶対カッコ良いじゃん?


 そんな剣と頭の首を持って彼女は領主の元へ足を運んだ。隣村の村長から賊討伐についての一筆も添えてな。

 女である事に抵抗を持たれたものの、彼女は募兵に受かる事が出来たのは実力あっての事だろう。



 その後の彼女の活躍は素晴らしいものだった。勿論、前日の晩に俺が現れて戦の助言をしてやっているが、彼女の戦いぶりも中々のものだったからだ。

 猟師をしていた為獲物を捉えて行動を予測する眼を養っていた彼女は、敵兵の動きを見切るのが上手い。獲物を狩る獣の様に、狙いを定めた後は猛烈な勢いを特徴とする。彼女の武功は周囲に認められ、一年程で自分の隊を持つ程度になっていく成長ぶりだった。


 一方、俺の助言は忘れている事がちょくちょくあり、戦への進言は進まなかった。まぁ、それより武勇が優れていたので、カバーできているから良いんだけど。

 そんなこんなで、彼女の地位はどんどん上がり、彼女のいる領地も勢いがあり戦での成果もめきめき上がる。俺としても、なんとも鼻が高いものだ。





 十二歳から夢に現れ出して五年程経っていた。兵について一年。彼女は十七歳を迎えた。

 上手くジャンヌに近づく彼女だが、重大な問題が一つある。



「あ。神、神ー!こんばんは〜」

 彼女はご機嫌な笑顔で俺の方に駆け寄って来た。

 初めは神として崇めていたが、軍に入ってからは戦や何かある度にしょっちゅう助言に現れる俺に、当初の気持ちはすっかり無くなっている。


「言葉を慎め!我の天啓があっての貴女の人生、忘れるでないぞ!!」

「も〜。神はそんな堅ったい言葉、言い慣れてないの知ってるんだから。もっと普通に話そーよー」

 けらけらと笑う彼女と、この餓鬼と思う俺は正反対の顔をしていた。


「で、今日は何?明日の戦の面白い事?」

 わくわくと無遠慮に俺に顔を近づけながら、いつもの様に彼女は話しを促してきた。聞かれるがまま、目的でもある天啓を与える。

「あ……ああ。明日の戦では本陣の背後から敵の伏兵が現れる……太陽が真上に登る頃にだ。貴女らは優勢の中、突然の伏兵に陣形を乱され、混乱に乗じて指揮官の首を持って行かれるだろう。本陣は見せかけとし、指揮官は早めのうちに違う場所に移動するか、守りを徹底的に固めるが良い。伏兵は二段構えで、騎兵隊の特攻の後、歩兵が押し寄せる。その為、対峙している敵陣の数は少々少ないはずだ。自惚れて動き、背後を取られるな」


 俺はいつもの様に、敵の作戦を細かく伝える。

 彼女は「なるほど、背後ね!」と分かっているのか。みたいな態度で頷く。


「いつもありがとうね。じゃぁ、明日は朝が早いから、もう寝るね。おやすみ!!」

 言うが早いが、彼女はさっさと深い眠りにつこうと目を閉じて夢の中で横になった。この五年の間で、俺の話しを切り上げる術を身につけてしまったのだ。

 ここから更に起こすのは、俺も一手間あって面倒くさい。


「っておい!まてまてまて!今日こそはお前に言う事がある!!」

 俺は彼女を起こす為に肩をガシガシ揺さぶってやった。

「あははは〜。やっぱ神はそれくらいの口調があってるね〜」

 能天気に笑う娘である。どこで教育を間違えたのだろう………。



 俺は額に手を当てつつ、彼女がそんな態度を取る理由はいくつか思いついていた。

 まず、俺の見た目だ。夢の中で現れている時も、俺の見た目は殆ど一緒にしている。服装と髪の色くらいしか変えてない。なので俺の外見年齢は人間の二十代前半。さらにやや童顔らしい俺の顔は、人によると十代にも間違えられる。

 親近感が湧き、 まるで近所の兄ちゃんにでも会いに行くかのようなノリになってしまったのだ。


 そして彼女も、女ながらも数々の生死をかける戦場をくぐり抜けてきた。おかげで物怖じしない図太い精神を構築している。

 この態度は実際の上官なんかにも同じ様なものだ。部下から反響の悪い上官にも怖気ずものを言い、部下の兵にも親しげに接する彼女は、末端の兵の人気者で信頼も厚い。



「いいか、お……我は神なのだ。貴女の近頃の無礼は……」

「えー!神さっきので良いのに〜。その「我」っての似合ってないよー」

「えぇい!口調などいいのだ!我がこの世の創造主であり、神であることに変わりはない!!」

「分かってるよ〜。神のおかげで私は英雄になれるんだもん。感謝してるよ〜」

 ラブー♡みたいにハグをしてくる…………なんだろう、女子からハグってもっと嬉しいはずなのに、こいつにされるとあまり嬉しくない……。


「だったら、この馴れ馴れしさをなんとかしろ!!」

 怒る俺を尻目に、彼女は抱きついたままエヘヘと笑ってくる。

「だって偉そうな神様より、身近な神様の方が民にはきっと人気が出るよ?」

「むむ……」

「私はハグできるくらいの神が好きだなー」

  両頬に親愛のキスを貰う。この馴れ馴れしさは神への冒涜だと分かっているが、美少女のハグからのキスに優しげな微笑みで返した。俺は紳士だからな……!



「と……とにかく!明日の戦は窮地に追いやられる危険がある!!忘れるな!!」

「はーい!あ、神顔赤いよー、変なの〜」

 またもや、あはははっと笑われる。

 俺はこいつらの文化みたいにベタベタする習慣も少ないので、自覚はある。しかし小娘に指摘されるのは屈辱的である。

「明日も頑張れるよう、しっかり寝てくるね。大丈夫!ちゃんと勝ってくるから!」

 俺の話しを遮って、彼女は本格的に眠りに入った。




 夢の干渉というのは、記憶に残るのが難しい。ただ現実世界の天啓よりも簡単で長時間行える利点性がある。


 なのでこの戦でも彼女は俺の助言を少々忘れたが、窮地の指揮官を守り切り、勝利に大きく貢献できた。輝かしい少女兵は英雄として、そして味方の間では女神として民に崇め始められたのだ。


 当の俺を差し置いてな。




「貴女の地位も功績も我の天啓のおかげであり……」

「神様かみさま〜崇めたて祭りたまえ〜」

 へへ〜っと彼女はわざとらしくおどけて地に伏せた。


「……愚弄するのもいい加減にしろよ……」

 俺の方はこめかみに青筋を浮かべている。

 一方明るい性格の少女は、このお調子者に成長している。頭が痛い。


「でも、目に見えない神様より、目の前の英雄にすがる気持ちも分からなく無いじゃない?民は真実を知らないんだし」

 肩を竦めて彼女は言った。

 最もな意見だが、俺は別に彼女を女神にしたてあげたい訳じゃない。


「大丈夫!神からの恩は忘れてないよ!ちゃんと神の凄さをこれから伝えてくるよ!私も偉くなってきたし!」

 任せて!と、彼女は豊かな胸を叩いた。

 俺はため息をついて、痛みを覚える頭に手を当てた。





 心配をよそに、約束通り彼女は俺についての話しを広め始めてくれたのだ。自分を女神の様にしてくれてた、連戦連勝を導く勝利の神であると。

 戦に翻弄された民や部下の兵達からの支持を得て、彼女は俺教をまずはこの領地で広めようと努力し始めてくれた。

 そして簡単にその後をまとめれば、彼女は輝かしい武勇と布教の活躍に目をつけられ、異端審問にかけられ十九歳でその生涯を閉じてしまったのだ。



 それを見届け、俺は凹んだ。かなり凹んだ。あんなに小まめに育ててきて減らず口の多いやつだったが、最後は忠義を全うしようと死んでしまった。って終わりだった。こんな所まで、ジャンヌ・ダルクに似せる気なんて全く無かったのに。

「しかも最期、火刑で……せっかくの純白の肌が……ぐずぐずで……」

 彼女の最後の光景を思い出し、口の中に酸っぱいものがこみ上げてきた。今まで彼女にしてやった事も思い出した。色々とテンションガタ落ちである。




 戦争に犠牲はつきものである。頭では分かっているし、気にする事では無いとも分かっているが、新米神様が慣れるのには時間が必要かもしれない。


 疲労感いっぱいの俺はうな垂れていた。

 彼女は死後、聖人になった。俺教は無い物とされたがその時はどうでも良かった。彼女の名誉が回復したのに、少し楽になった気がする。



 英雄の再現。という功労に俺の予算は少し増えた。

次回はこの8話の補足編として幕間を挟みます。

今回大雑把にまとめた彼女と主人公の関わりを、少し細かく描写したものです。


次回、幕間の更新は3月5日深夜0時頃を予定しています。

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