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26 無くて七癖 前編

 大学を卒業して社会人になってから、そんなに経ってはいないが。もぅ既に「あの頃は良かったなぁ……」なんてジジ臭い事を言い出しているのは、俺だけじゃないはずだ。


 また、卒論の実験に追われたいか?

 と言われれば嫌だと即答するが、今も研究所に籠りっきりで、やっている事はあまり変わらないようにも思える。

 人間、隣の芝生は青く、過去も未来も時に羨ましく感じるものだ。




 俺の学生生活はどんなかと言えば、まぁ、女っ気のない生活だったなぁ。と思う。


 唯一初めて出来た彼女には、一週間もせずに別れ話しをされた。詳しく言えば三日でだ。

 大学の後輩で、学生の研究発表の場で俺の話しを聞いて一目惚れしたらしい。

 親友には「お前、研究業だけは無駄に能力あるからな。あん時の研究成果も中々の評価だったし。真顔で研究内容だけ喋ってれば、少々目つきの悪いテキパキした奴って感じだろ」

 なんてご評価下さった。無駄にとはなんだ。無駄とは。


 んで、後輩ちゃんとは講義の後にカフェに行ったり、夕食を食べに行って、出会ってから三日目の一日デートの帰りの時、振られた。

「ご……ごめんなさい!私の勘違いでした!だから、あの、本当……すみません!!!」

 と、勝手にまくし立てられて、走って帰って行った。

 会話から、少し思い込みが強そうな子だな。とは思っていたが……まさか告白する程の一目惚れもそうなのかよ………と唖然とした憶えがある。



 そういうレアなケース以外は、俺は女子受けがあまり良くなくて、なぜか友達どまりである。

 てわけで、今回の俺は学生生活で如何にモテるか。という議題で一人会議をしていた。



 そう!今回の世界は学園モノ!!!

 しかも、戦闘ロボットのパイロット育成機関による学園モノである!!


 学園モノ。そしてロボ。多くの男性陣は一度くらい妄想した事がある設定だろう。

 俺達の文明にだって戦闘用ロボットくらいいる。しかし、扱うのは軍事や自衛機関に居る人間だ。俺は科学者なんで、どちらかと言えば造る側の人間だ。


 なので、戦闘特化のロボットを動かすのはやった事が無い。今から生徒としてバーチャルダイブするのが楽しみである。

 俺の世界で人間を乗せたロボットは、操作を脳波測定によって行われていて、パイロットが普通に歩こうとするだけで同調して動く。あまり操縦している感じが無いし、こちらでも体験できるので、アナログに操縦レバーとか付いている程度の文明にしてみた。



 さて、そろそろ行かないとまずいのだが、どうすれば良いのやら。

 見た目をイケメンにする?

 でも……それでモテても、それはそれで虚しい気がする。見た目はいつのも赤髪だけの変更で、俺のまんまで年齢だけ十五歳頃の見た目で行くか。

 ほら、無表情なら俺ってまぁまぁな顔らしいし!!


 モテないと言われている、欲望だだ漏れはどうすれば良いのか分からん。

 俺の感情は普通の体と同じように、依り代の体に再現されるし、表情筋の再現具合を調節すると、全体的に表情の無い人間になってしまう。

 俺の中身はそんな寡黙なキャラではない。表情が全く無いのもモテるとは思えない。


 うーん………なんて悩んでいると、創造した世界は順調に育っている。そろそろバーチャルダイブを始めないと、時間だけが過ぎてしまう。


「悩んでやらないなら、行動あるのみ!いっくぜぇぇぇ!俺の青春!!!!!」

 なんてEnterを押して、俺はこの世界に行ったのだった。





 予め創っておいた身分や身元その他諸々を再度、俺は確認した。

 両親は二年程前に交通事故で他界。親戚も遠く、保険金や手当などから生活費と学費を出し、全寮制であるこの学園に入学した。

 まじでいつぞやのオタク文化でありそうな、ご都合主義の暗い影を持つ主人公的な設定である。しかし、俺自身はそんな痛々しいトラウマがある訳でも無く、設定を感じさせない明るい青年だ。


 今日は入学式で、これから過ごすクラスメイト達と会う記念すべき日になる。俺は既に入居手続きを終えている学生寮の自室で、制服の学ランに着替えていた。



 ブレザーとセーラー服。

 とても悩む選択肢であった。やはり夏場の暑い時期に薄着が映えるセーラー服は素晴らしいし、冬場の厚着にブレザー姿とかも良い。

 妥協案として、夏場のセーラー、冬場は上にセーターを着て貰えば、俺の好きな少し大きめな服を着る女子が観れるかもしれない。という結論に至って、この学園の制服はセーラー服に仕向けた。


 ダボついた長い袖からちょこんと見える指先とか可愛くねぇか?ほら、よく彼氏のワイシャツを借りる彼女とか、定番シュチあるじゃねぇか。

 あれはかなり萌える。風呂上がりで着る物無くて、下に何も着てない。とかなると最高だ。男物で丈もあるから、ワイシャツ一枚で足りてしまう。だけど、太ももが大胆に見える姿とか、なぁ。



 今は四月の春。まだ暑くは無いが、寒い時もたまにある時期で、人によっては俺の願望通りにセーター着てくれる子もいた。


 あ、そうそう。前回の件で懲りたんで、今回の世界は老若男女居る。俺の他にも男子生徒は居る。少女にガン無視されるよりは、ライバルが居る方が何倍も良い。


 ところで俺のこの世界での名前だが、仮名を適当に付けておいた。本名そのままだと、報告書を上げる時にこの人物が俺だとバレバレになってしまう。何かまずい事を起こしてしまっても、すぐにバレないようにする為だ。……ダイブのログなんかを見られたら、それも簡単にバレてしまうのだが。その辺は、有事の際にすぐに消すなり書き換えるよう準備しておこう。



 あぁ、あと。こっちに来るのが楽しみ過ぎて学園ライフの事ばかり考えていたが、ちゃんと敵も用意してある。

 惑星外生命体って事で、現在俺がダイブしているこの場からちょいと離れた場所に、敵の星も作っておいた。この文明の宇宙船の類を使えば一年くらいの道のりで到着する距離である。

 人間が宇宙進出の途中で敵と接触し、脅威に気付き対抗策を講じているうちに戦争が始まった。一度は押されたが、戦闘ロボの開発が進む事で近年は押し返してきている。そんな現状である。

 人間の本拠地である星の側にある衛星にて、宇宙空間での戦闘訓練も行える施設がこの学園なのだ。小さな衛星全てが学園という、半端ない規模の物である。


 敵の名前はシャンとザイクという二種が存在している。実はこの敵、先日研究所のデータバンクから適当にネタ探しとして漁っていた、ホラー小説のクリーチャーが元だったりする。タコみたいな邪神とか触手だらけの怪物とか出て来たっけか。映画もゲームもアニメも出てるらしい。興味ある奴は好きに見てくれ。

 シャンの方は全長十cm程のキモい昆虫みたいな姿で、他者の精神を乗っ取ったり出来て、植物の化物ザイクはシャンに使役されていて…………長いから以下略。


 どちらもその、おぞましい姿に通常の人間は見ただけで精神を病んでしまう怪物なんだが、創った本人の俺としては見慣れすぎて、キモい。くらいしか感想が湧かない。シャンは生物の精神を乗っ取ったりできるが、俺の精神や意識はバーチャルダイブによって操作管理されているので、効き目が無い。

 とまぁ、俺はこの敵に対する強靭な精神力を持つ者として、この学園の入学試験をパスした。という経緯になっている。




 入学式では定番な理事長の長話し、学生代表など、極々平凡な式であった。つまらないのでここも省こう。


 一クラス四十人。男女比は半々だ。女子が多い方が嬉しいが、なんか前回を彷彿とさせて気分が乗らなかった。

 しかし、クラス分けの際は理事長なんかに天啓を与えて、俺のクラスには美少女ばかり集めておいて貰った。野郎は何でもいいからランダムだ。

 教室に入ってみたが、とても眼福な光景である。理事長グッジョブ!!



「それでは、点呼と出席を取る」

 自己紹介を終えたクラス担任の教師は、一人ずつ名前を読み上げていった。

「ディールグ・ブラウン」

「……はい!」

 いかん。仮名だとピンとこないな。今のが俺の仮名である。ちなみに、名前は赤毛が多い地域の定番苗字と名前自体が赤毛を意味している。別に何でも良かったんで、見た目に分かりやすいのを選んだ。差別もない世界だし。

 この学園は世界各国の志願者が集まっており、最も使用人数の高い言語を共通言語としている。俺は翻訳が勝手に付くんで、その辺は楽なもんだ。



「では、これからは五人一組での行動をとってもらう。実技演習など、基本的にこのチームで戦闘時のチームプレーを学んで貰う」

 教師はそう言って、予めランダムに決めておいたらしいチーム表を読み上げる。


「次、第五班。アルマ・グレーナー、岡崎潤一(おかざきじゅんいち)、ディールグ・ブラウン、ヘレン・コレット、(リュウ) (シン)


 よっしゃ!女子三人チーム入った!!

 俺はどの子に当たったかワクワクしながら、指定された場所に集まる。いや、どれに当たっても可愛いんで既に文句は無いんだが。



 五人集まったところで改めて自己紹介となった。まずは俺が挨拶をする。

「俺、ディールグ・ブラウン。ディル。って呼んでくれ」


「あたしは劉 杏(リュウ シン)、シンでいいわよ」

 シンと言う少女は黒髪のストレートを一つに結んでおり、腰まで届くほどの長さを持つ。身長は百六十五cm程度だろうか。スッキリとした体型だが、中々胸もある。つり目でキリリと少しキツそうな顔付きをしている、美人タイプである。


「アルマ・グレーナーです。よろしくね」

 女子の中では一番の長身の子は百七十cm近いだろう。安産体型でお尻が魅力的だ。綺麗な肩にかかるブロンドは少し内巻きの癖がある。眼鏡が似合う、いかにも優等生な顔付きだ。


「はじめまして。僕は岡崎潤一(おかざきじゅんいち)って言います。どうぞよろしくお願いします」

 もう一人の男は俺とほとんど身長も変わらない。黒髪の小綺麗な、少々頼りなさげな奴。


「はじめまして。わ、私はヘレン・コレットです。よろしく……お願いします!」

 ラストは一番小柄な子である。胸も尻も膨らみは少なく、十五歳とは見えない華奢な身体つきだ。ショートヘアも合間って、可愛い少年と言えばそう見える。少し不安そうにおどおどしていた。




 教師の話しなどを聞き流しながら、俺はチームになった女子三人のデータをチェックしていた。攻略対象の情報は多いに限る。ダイブ中でもプログラムの設定なんか出来るし、他の奴には見えないが、世界を観察するディスプレイも見る事が出来るのだ。


「ディル!!」


 大きな声でふと気が付く。


「もぅ、呼んでるんだから返事しなさいよ。なにボーッとしてたの?」

 シンが横に立っていた。なんとも怪訝な顔をしている。

「いや、これから学園生活どうなるかなぁ。なんて考えててさ」

「ふーん。お昼ご飯食べに行くわよ。皆待ってるから早く」

 言われて見てみると、教室の入口に三人が待っていた。

「ごめんごめん、今行くから」

 俺は目の前に広がるデータをひと撫でして消し、席を立つ。

「?なにその手??」

「頭と指の体操さ」




 さて、食堂へと行った俺達は各々好きな料理を手に、一つのテーブルに集まっている。


 実は俺は、美味そうに食事をする子が結構好きだ。俺自身、そこまで味覚に自信のある人間ではなく、中々とは思っても心から食事に幸福感を感じにくい。


 その点ヘレンはそのか細い体躯に似合わない、男でも音を上げそうな山盛りの量を持ってきている。そんで頬をいっぱいにしながら、幸せそうな顔をして平らげている。

 膨らんだ頬は薄いピンクに色付き、細めた瞳はなんだか、とろんと恍惚な感じがする。がっつくわけでもなく、大きく切り分けた肉なんかを目を輝かせながら一度見つめる。口に入れると、どこを見ているのやら。顔をやや上に向けて笑顔で咀嚼に専念するのだ。口が空くと、次の物をフォークで刺しながら「これ、美味しいですね!」とか時々感想を言う。俺には出来ない芸当である。なんとも微笑ましい。


 俺はつい、にやにやしながらそんなヘレンを眺めているが、他の奴は唖然としていた。アルマなんかは「見ているだけでお腹いっぱい」なんて言う。

 ヘレンはそんな大量の食事を、大した時間もかけずに全部食べ切ってきまった。最後の一口が消えた時、凄い。とか、信じられない。だとかの感想が皆の口から出た。ヘレンは特に気にもせず

「この学園のご飯、本当に美味しいですね〜!毎日楽しみです」

 なんてニコニコしながら、まだ飯の話しを続けられるようだった。





 本日はガイダンスだけの為、午後の二時過ぎには自由になれた。せっかくチームを組んだんだから、授業以外でも皆で遊びに行こう!なんて誰かが言い出して、俺達は一緒に自由時間を過ごす事となったんだ。

 衛星規模の学園は教育・訓練施設等の他に、生徒やそこに住む人間の為に娯楽施設なんかも完備されている。買い物だとか、レジャーだとかだ。


 学園生活は軍事への研修期間とされ、少量だが成績により給料も出る。無料食べ放題の食堂に全寮制の住まいが完備されているので、無一文でこの学園を訪れてもやっていける。ただし、試験に合格できて単位を落とさない人間だけだが。




 んで、スポーツ施設に行く事になったのだが。

「シンは体柔らかいねー」

 俺の隣で潤一が感心して見る。目の前のシンは難易度の高いヨガのポーズを軽々やっており、骨が有るのを疑う軟体生物であった。

「ふふーん♪凄いのは体の柔らかさだけじゃないよ」

 得意気に言うシンの言葉は、間違いなくその通りだった。


 まずは身体能力の勝負だ!とシンの提案で、基礎的な運動能力テストをする俺達。

 シンは瞬発力、跳躍力、バランス感覚、俊敏性、持久力、等々……どれをとっても五人の中で一番。力は男に劣るものの、女子の中ではトップである。

 俺も高性能な体を用意している。あまりにチート過ぎると目立つので、少し控えめ設定だがそれも軽く超えていた。つまりシンはトップアスリートレベルってことになる。


「シンさんは凄いですね〜!」

 ヘレンは素直な感想を言い、体格的には有利かと思えたアルマはショックを隠し切れていない。

「まぁね。これだけは誰にも負けないわよ」

 この後行われたスポーツ大会でも、シンの一人勝ちであった。負けられん。と思ったが、天性の才能というやつなのだろうか、ダイブをやり慣れて身体操作が上手いはずの俺も、ついて行くのがやっとであった。

「くっそ〜、勝てねぇ……」

 肩で息をしている男二人を見て、多少息を整えつつも余裕ある顔で、シンは俺達に自信満々な笑顔を向けた。






 授業や実技訓練も始まり、俺達は段々と忙しい学園生活を送っていくようになっていく。


 今日は今期の試験日である。

 勿論俺も授業は受けているし、何より創造主である俺が講義内容の敵の特徴なんて網羅していて当たり前だ。

 ぶっちゃけると、忘れていてもディスプレイで確認できるし。

 なんてカンニング楽勝な俺だったが、学業成績優秀で、今後行われる実技訓練でもトップの成績だとあまりに完璧な感じもするし、近寄りがたいかな?なんて思って、学年トップ10常連。程度にとどめておいてる。


「ディル!ここ教えて!全然分からなかったのよ!」

 シンが先程終わった試験問題を片手にやって来た。シンは学力だけだと、赤点ギリギリ常連である。でも、向上心はあるので少しづつ点数は伸びている……はずだ。

「あぁ、これはな。この法則を当てはめると……ほら、出てきた」

「あー……そっかぁ。ここで使うのかぁ〜」

 やっちゃったー。なんて言いながら俺の解答を見ていた。潤一が細かな解説を挟んでいる。


「ディル!今回は負けませんよ」

 アルマは自信満々な顔をして、問題用紙にメモした解答を俺の目の前に掲げる。アルマはトップ10には中々入れないが、十番代には必ず居るくらいの賢さだ。

「よし。じゃぁ、自己採点すっか」

「あ、僕も混ぜてくれよ」

「わ、私もやりたいです!」

 なんて、残りの四人で答え合わせを始めた。シンは皆の作った回答を見た方が効率が良かった。


「ふふん、九十四点!今回も俺がトップのようだな〜」

「くっ……でも、ディルはマヌケなミスばかりですよ!もっと気を引き締めてやりなさい」

 お説教をアルマは言ってきたが、悔しさに赤面しているのがまた可愛いもんである。

「いやいや〜、二人とも凄いよ〜。ちょっと見せて」

 潤一は合いの手を入れつつ、俺達二人の回答メモをヘレンと共に見ていた。この二人は大体真ん中程度の順位である。


「あぁ!この問題、こうやるんですね!」

「ディルは応用問題が得意だけど、アルマは基礎がしっかりしてるよね。二人いると両方勉強になるよ」

 感心しながら呟く二人。

「そんな評価なんかしてねぇで、お前らのも見せろよ」

 見せて貰った回答は、やはり平均程度の正解率だった。しかし、潤一は理解が早い奴なのか、俺の回答をすぐに理解し、ヘレンやシンに解き方を教えている。

 そこまで分かるなら自分で解けよ。とか思ったが、向き不向きみたいなものがあるのかもしれない。



 その後も試験は一日中続き、流石に疲れた。

「あー、にしても今日は疲れたなぁ。これ終わったら呑みにい……」

 と、言ったところで皆の不思議な視線に気が付いた。あ、俺高校生だった。


「のみに?ってまるでお酒飲むような言い方ね」

「ディル!あなたそんな事してるんですか!?」

 アルマのキツイ声が俺に向けられる。

「あ。いやなんか……疲れたから甘いジュース飲みたい的な……」

「甘い物良いですね!私、食堂の特製パフェの大盛り食べに行きたいです!!」

 シンやアルマの不審な目に戸惑ってしまったが、ヘレンの食欲にフォローされた。

「あ!そうそう!あのパフェ凄いよな!!俺も気になってたんだよ!」

「じゃあ、終わったらすぐに食べに行きましょう!!」

 よく知らんが、ヘレンの話しに乗って皆で食堂に行き、誤魔化す事には成功できた。変な所から正体バレたら困るからな。



 そして大して甘党ではない俺は、四キロの特製パフェ大盛りに大撃沈している。


「……ぅえっぷ………ヘレン……お前、食べ慣れてるな……」

 目の前では、デッカイ金魚鉢みたいな器の底に溜まった、あと数口のアイスをすくい取るヘレンが居る。周りの奴らは俺を見てニタニタ笑っているが、言い返す気力は無い。俺の器はまだ半分減っていない。


「はい!いつも自分へのご褒美で、勉強や実技で頑張った日とか食べてるんです!やっぱりチョコバナナは定番ですが、おいひいれふ……………明日は実技試験だから、終わったらまた、この特製パフェ大盛りでイチゴ&生クリームにしようかなぁ〜。ブルーベーリー&チーズクリームも捨てがたいですよね〜……ディルさん?味わい過ぎるとアイス溶けちゃいますよ?」

 大きな一口を含み、もごもご喋るヘレンだ。チョコレートソースが口の周りについて可愛……

「……っぷ………俺、ちょっと……」

 アイス食べ過ぎで寒けしてきた。チョコがクドい……なんか頭痛と吐気してくる……ノリで頼まなきゃ良かった……。





 何はともあれ、親密さを高め楽しい学園生活を過ごし始めた俺達であった。

 さて、今度こそ本格的にラブコメ展開なんだろうか。なんて、期待しながら。

「うん。学園の建築ももうすぐ終わる。周辺設備も済んでいる。機材の発注も決まり、施設が完成したら運び込むだけだ。教育のプログラムも完成した。教師陣の採用も終わって……後は実際に動かすだけだな……」


私は自宅兼仕事場の書斎で、設立する学園の確認を改めてした。

勿論、具体的な作業は任せているが、学園理事長である私も、抜けている部分は無いだろうか常に確認するのは当たり前だ。


……そう言えば制服はどうするか。私服でも構わない。なんて思って考えていなかった。

折角校章を作ったから、指定の制服を作らせても良い。

様々な地域から子供達が集まって来るのだ。服装の質で収入差、イジメなんかが発生しては困る。これはいかん!かなり大事な内容なのに、これはきちんと考えねばならない。


私は制服を作る会社に、今すぐ資料を送って貰える様に連絡をしようとした。

何社もあるが、どれにするか……。そんな事を考えている時、私の頭にあるイメージと声が響き渡った。


『セーラー服です。セーラー服と学ランにしなさい。海兵の服を元にしているセーラー服は、軍事に関わる学生の意識向上に関わるでしょう……』


そんな男の言葉と、紺色の襟が着いたセーラー服と黒い学ランのイメージが私の頭一杯に広がった。


こんな感覚は初めての事で、私はこの現象に驚きを隠せなかった。これが、ヒラメキというものなんだろうか……。


私はこの気持ちのまま、セーラー服と学ランを主力としている会社数件に、資料請求の連絡をしたのだった。



珍しく、前後編です。

てか、毎回新しい世界観を一から説明した上で、主人公が長期間動き回る描写と最終的なオチまでの過程とオチで落として、更に7千文字程度のさっくりコメディーなんて、できるかあああああああああっ!!!!

ってなりました。一話内でまとめられません。今の自分の限界です。でもさ、多くの皆さんは一つの世界観を何十話も費やして語ってるんだから、二話くらい許してくれ。とか甘えたい。駄目かな。


7神は長くても七千字代にまとめて、さっくりコメディー目指してるんだ。許してください。後編も読んでください。後編のオチはとても酷くてオススメです。


次回26話後編更新は

5月6日(水)深夜0時頃

主人公の素敵な学園ライフはどうなるのでしょうかー(棒


本編最終回は27話。

その後の番外も面白いからお楽しみに。

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