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22 振り返り報告

「わーいパパだ〜!!」

「ズルいズルい!!私もー!!」

「ねぇ。こっち!こっち!!」

「ちげーよ!おれの番だぞ!」



 只今俺はガキどもに揉みくちゃにされている。いつ子どもが出来たかって?残念ながら最愛の妻はおろか彼女さえ募集中の身だ。

 四方から腕やら服やらを掴まれグイグイ引っ張られる中、疲労感を拭えない顔をしつつ、笑顔を作りガキどもの頭を撫でてやる。俺はパパではない。神だと何度言えば……。


「まだ、兄さんや姉さん達と話しが終わってないからな。終わったら遊んでやろう」

『はーい!』

 ガキどもは手を挙げて遠くに散って行った。後で相手するのは……面倒だなぁ。

「で、話しの続きだが………最近は何か変わった事はあるか?」

「はい、大父。災害も特に無く、平和に暮らしていますよ」


 笑顔で答える男の顔には、腰を越える程の長い緑の髪が少しかかっていた。

 久しぶりだろう。俺的最強人類である。

 能力をとことん上げた故に、俺はこいつらを要観察対象として時々覗く義務が出来てしまったのだ。




 成長次第では、俺達の世界との外交も行う予定らしい。外交官である姉貴からこの前聞かされたんで、見込みありって事だ。もっと言えば、俺は俺達の文明すら脅かしかねない恐いものを生み出してしまった。とも言える。


 時たま俺達神様業の研究過程で生まれた高度文明にて、俺達に匹敵する文明を持つ世界と平和的な交友関係を結び、お互いの過度な干渉を控えるようにする。

 これが姉貴が最近転属した、外務省にある他世界外交官の仕事である。まさか、姉貴が遠い俺の上司になるとは思わなかった。是非とも公私共に会いたくない。


 どれだけこの世界が恐ろしいかと言うと、なにしろこいつらは頭が良いので、俺が観察の為世界に干渉するとすぐ気付くし。会いたいからってこちらに干渉してきて、俺をこの世界に引っ張り出してしまったりも出来る。

 簡単に言えば、俺達の世界に干渉して犯罪や戦争を起こそうと思えばやれてしまう技術があるのだ。ただ好戦的ではなく、こいつらは俺が大好きなだけなので、ご機嫌取りも兼ねて最近は俺も諦め、こうやって目の前に現れている。




「後、最近は自然を操るのがブームですね」

 男は「ほら、あっち」と、ガキどもを指差す。そこには魔法を使い、水や火を出して遊ぶ姿があった。

「木や土を積み上げて家を作るのも良いですが、これで建物を作るのも楽しい。って、最近大人達の間では建築・モニュメントブームでもあるんですよ」

 確かに……奇妙な格好をした造形物が随所に見受けられる。水や風、火で構成されている物もあり、維持するのにどんだけ体力と集中力を使うのだろうか。とも思ったが、こいつらはチートキャラである。そーいう心配は要らない。


「強いて言えば、ここ一週間ほど空がぐずついていて………光も作れるので問題は無いのですが。やはり食事は晴天の大空の元で取りたいですね」

 大して困ってない様子で男は話す。こいつらの食事は日光だ。つまり光合成できるって事。光と水で生きていける為、食料を調達したり畑を耕す事も無い。



 能力アップに経費を使った為、星にある資源は最低限にしてある。だから、物がかなり少ない世界なのだ。こいつらの文明の発展は物質的ではなく、単なる知的好奇心によって発展しており、主に僅かに居る猛獣と災害に備える以外は学術的娯楽に偏っている。

 俺を発見したのだって、俺達の文明でもかなり身体をいじらないと手に入らない、高い演算能力を生まれながらに備えているからだ。

 また、記憶力なんか凄まじい。自我が芽生えた頃から毎日の一挙一動を記憶しており、外部記憶の必要性が無い。口頭で伝えれば済んでしまう。

 なので本すら必要がない。食事も外に出れば終わりなので調理器具も無く、水を飲むコップくらいは作っていた……かな。雨を浴びて体温が下がるとか、地面で寝ると疲労が取れないとか。そんな事も無く家すら趣味の域である。


 本当に何もなくても生きていける様にしておいた。

 魔法もいつの間にか習得して、前に俺が作った魔法文明よりも自由自在に操っているしなぁ。



「そうだ。次の季節の終わりは、大父と出会えた日になります。ささやかですがお祝いをしましょう。光の良く当る……高台なんてどうですか?湧き水が美味しいんですよ」

 記念日のお祝いに一緒に飯食おうぜ。的な事を言っているが、もう一度言う。奴らは光合成が食事だ。出されるのは湧き水と沢山の日光のみである。逆に腹が寂しくなる。

「あぁ……そうだな……でも、こうやっていつも通りで構わないぞ」

 やんわり断っておいた。



「ねーねー。お話し終わったー?」

 あーー………待ちきれなくなったガキどもが帰ってきたぞ。

「……あぁ、約束したもんな。一緒に遊ぶか」

 渋々ではあるが、俺はガキどもと遊ぶ事にした。これも仕事なのだ。



「じゃあ、球を投げるから取って投げ返してねー!!」

 そう言って一人のガキは地面に手をかざす。土がぐぐぐっと盛り上がって球体を形作る。大きさはバスケットボールくらいだな。まだ10歳程度なのに、こんな風に遊び道具を簡単に作れるとは……末恐ろしいものだ。


「じゃあ、行くよ〜!!」

 笑顔でガキはボールを投た。あ、これヤバくね?

 そんな予感がよぎって身構えるが、ガキなのにプロ野球選手並の剛速球が飛んでくる。しかも、バスケットボールサイズの重たい土の塊だ。

 ズドンっ!!!!と音を立てて俺の腹に入った。なんとか両手で掴めたが、衝撃は殺せずもろ腹にくる。

「……ぅぉぐっ……」

 ばっ…………ばか……ぢ……から………め……。

 両手がじーんと痺れ、腹には重たい鈍痛が響き渡る。なんか、汗が吹き出してきた。


「次こっちこっち〜!!」

 ヘイ!パース!!って、飛び跳ねながら呼ぶガキにボールを投げつけた。なにこれ無茶苦茶重い。片手で投げてスナップを効かせようとしたが、手首に変な感じがしたのでとっさに止めた。

 ガキどもは俺が大好きなので皆パスを待っているし、率先して俺にボールを投げたがる。馬鹿力は男女関係なく発揮されている。


 俺がこの世界から出た後、疲労困憊で立ち上がれなかったのは言うまでもない。





 一度作った世界というものは、テーマの結論が出ると放置する事もあるが時折観察もする。何か有益な発展や進化があるかもしれないのでその為だ。


 俺は一番最初に作った植物世界を覗いてみた。始めてだったので大した事は出来なかったし、俺的最強人類の為に節約していたから植物以外何も居ない世界だ。

 あの時は毒に強化された種族を進化させて、評価が結構貰えた。また何か、面白いのが産まれてたら儲けもんだ。




 そこには、葉っぱの塊があった。長さは六十センチ程度だろうか、成人男性の腕くらいの太さの塊だ。それらを良く見ると、葉っぱ一枚一枚が細かく動いている。そして、小さな動きが集まり、まるで尺取虫の様に動き始めた。

 実際は尺取虫ほど均整の取れた動きはしておらず、歪み、進路を決めようとぷるぷる震えながら一歩一歩進んでいる。しばらく見ていると崖の淵まで来た。そこから後ろに仰け反り、反動で体をしならせバネのように跳躍した。

 飛び上がると薄っぺらな形状に変化し、僅かだが空を滑空している。その途中、種とおぼしき物を撒き散らす。次いでに何十枚もの葉っぱもバラバラと飛んで行った。

 無様に地面に着陸して、一旦は地面に葉が散らばる。だが程なく、ぐねぐねと葉っぱは動き出し、また尺取虫の様に歩き出した………キモい。とてもキモい。



 今度は全長三十センチくらい。切り取られたブロッコリーみたいな形状の植物を見てみた。根は地中には伸びておらず、凄まじく細かいひげ根が露わになっており、自身を支えている。

 変な形………と思って眺めていると、突然振動を始めた。根が高速の振動を起こして動いているのだ。なんでか?知らねぇよ。移動手段を持った植物とか?だったら報告としてはいい進化だ。とりあえず観察して…………………って、ブロッコリーはバイブレーション機能の様に振動するだけの様で、直径三十センチ程度の中をブブブブッ……と音を鳴らしながら不規則に蠢いている。いくら眺めていてもそれだけだ。

 そいつが毎回動くせいなのか、その三十センチの円は土が減って軽いクレーターになっている。なので、段差でそいつは外に出られない。ん?この振動って?え?んん?


「い………生き物として行動に意味を感じられねぇ……」


 なんか、前まで毒物特化の高度な植物が栄えていたのに………一回りし過ぎて俺にも理解が及ばない……なにがしたいんだ、こいつ。



 とりあえず凄く変な物が出来ていたので、データを回収して報告書を作ってみた。

 上司はそれを見てご機嫌だ。俺は変な生物を創り出す才能だけが、どんどん高評価になってる気がして複雑な気持ちになったのは………察してくれ。

もしも、7神の世界観で続編書くなら、姉貴様スピンオフかと思います。

多分、毎回失敗する主人公と真逆で、毎回華麗で爽快に成功する話じゃないかな。

だって、この物語最強キャラだからさ。なんで最強か知りたかったら、本編終了後の番外読んで下さい。



次回23話更新は

4月22日(水)深夜0時頃を予定しております。

次は彼岸明的な、なろう路線。



あと、「7日目神は休んだ」の執筆終了しました!

今まで通り週2回更新を続け、

最終更新は5月23日(土)になります。

ラストはオマケ含めて連続更新です。4話載せる予定。

なので、更新時間が少し早まるかもしれません。


あと1ヶ月程になりますが、どうぞお付き合い頂けると幸いです。

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