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18 生物の特異性

「んーー??面白いの??何系だよ……」


 俺は椅子に座り両手を組んで頭をひねっていた。つい先ほど上司である腹の出たおっさんから、

「そう言えば君、生き物創るの得意だったよね。なんか面白いの頼むよ」

 と、注文を受けたのである。

 面白いってどんなんだよ!!とツッコミまではしないが聞いてみると「君のいいようにやって構わないからさ」と、適当な答えをされた。


 んー……何だろう。あまり今までやらなかった路線で行ってみれば良いのか??

 よく分からんが、何でも良いと言ってるし。俺は適当に思いつくまま作業を始めたのである。



 世界については科学技術が進む人類文明にした。大分人間が科学的能力を身に付けてきた頃、俺はとても慎重に時期を選びながら、ある小さな無人島にその生き物を後だしで出現させのだ。


 その無人島は人間の足でゆっくり歩いても、一日程度で外周を回り切れてしまう程度大きさだ。一年を通して春のような穏やかな気候を保ち、肉食動物はおらず、小さな草食動物と植物ばかりの場所である。


 まず最初に今回の面白動物の食料になる植物を増やす事にする。

 見た目は背の低い松と言ったところか、太い幹に太めの枝が段々状に横へ広がり、地面に近い場所を覆うように生えている。葉は一般的な楕円型で多くの葉をつけワサワサした感じだ。

 俺は草原地帯が主だった無人島にこの植物を群生させ、一番勢力を強くしておいてやる。

 さて、食料も安定して増えたところで俺は問題の生物を発生させる。




 全長四十センチ程度のそれは、もこもこと柔らかな毛で全身がつつまれ、手足は短足でちまちま歩き、毛の色は白地に黒の大きめなブチがある。

 力はとても弱く爪はあるが、デコボコとした樹皮に軽く引っ掛かればいい程度なので大して鋭くないし、短足で手が届かないから引っかかれる心配はまずない。基本的に四足歩行でそこまで器用に動かせない。


 先程の植物の葉しか食べないので、肉食動物の様な武器になる歯はついていない。

 しかもこの葉っぱ、動物に食べられないよう有毒性である。栄養の乏しいこの葉をこいつらは起きている間はずっと食べている。しかし消化吸収も悪く、解毒にエネルギーを消費してしまうので実質、取り込めている栄養は含有量の四十%に満たない程度だ。

 なので日がな一日、二十時間程度は寝て過ごしているのである。


 身体的精神的ストレスにも弱く、島は温暖な気候なのにもこもこの毛皮を被っている。だが体温調節の機能がなく、寒くても暑くても死ぬ。動けるが激しく動き過ぎると熱を発散できず死ぬ。

 仲間同士で喧嘩なんてしてしまった時には、負けた方はおろか勝った方まで心的ストレスで病気になり、主に消化器系の障害を起こして死ぬ。ちなみに喧嘩をしても威嚇行動ばかりで外的損傷はない。


 擬態要素もなく、見晴らしの良い草原のど真ん中で低い木の上に白黒のブチ柄で過ごすため、酷く目立つ。


 外敵が居ない島なんで、それ程敏感な五感をしていない。耳が発達している訳でもなく、視覚も目の前に大量にあるこの植物しか食べないのでとても近眼である。


 活動に使えるエネルギーが非常に少ないから、産まれてくる子どもは母体に負担の少ないよう、胎児程度の状態で生まれてくる。そのくせ二十時間も親が寝ているもんだから、木から落ちたとか親から離れて凍え死んだとか生存率がヤバイ。


 繁殖期は年に一回あるのだが、ストレスを感じてオスに機能しない奴とか出てきたりする。


 ……我ながら何とも残念な生物を創ってしまったものだ………本当にこいつらは、これで良いのだろうか……?



 では、最後の仕上げをしなくてはいけない。ハッキリ言ってこいつらは十年しないうちに絶滅するだろう。

 俺は海洋学者等が生態系の研究をしに近所までやって来るのを先に調べておいて、丁度いい時期にこの生き物を発生させた。

 調査船を海流を動かして無人島に案内する。興味本位で無人島を見て回った人間達は、問題の生物を発見したのだった。


 一目見て、この地域をすぐ様自然保護区にしようと人間達は動き出した。

 そう、こいつらの唯一の売りどころはとても愛くるしい見た目だった。大人も子どもイチコロである。人間達は一度見るとその可愛さに心を奪われ、母性だとか庇護欲の様なものをくすぐられる。こいつらは、人間無しでは生きられない。というコンセプトの生物なのだ。



 その後、食料である植物と一緒に研究の為持ち帰ったら、半日もかからない港へ着く前に死ぬという。大変衝撃的な事件も起こったが、研究者達は慎重に慎重にこいつらの生態を解明してくれた。


 飼育方法が分かってくると奇跡の動物としてこいつらは人間によって繁殖を手伝われ、数を増やす事に成功したのだ。

 いやまぁ、確かに生きてるの奇跡だよな。普通に考えるとさぁ…………。


 動物園でも一番人気のコーナーとして設けられるが、ストレス耐性がなさ過ぎて実物は豆粒程度の遠くから眺める。代わりにリアルタイムに撮影された映像をメインに鑑賞する。

 という、生体展示を行う動物園のくせになんとも不可思議な感じのする公開となった。しかも映像も常に寝ていて写真並みに動かねーし。



 人間も楽しんでるし、こいつらも生き延びているので良しとするのか?

 でもって、報告をすると上司にも先輩にも大爆笑を貰えたのであった。

最弱な生物ってどんなんですかね、どこかの戦車みたいに触ると腐るとか。


次回、19話更新は

4月8日(水)深夜0時頃を予定しています。

次回の主人公の扱いは少し不憫。

いや、それいつもか。

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