17 偶像と愛
下ネタ?までいかないかな。
そんな話もそろそろ織り交ぜていきます。
絵という物は言語や文字の元として始まり、最初に行われ始めた外部への記録方法の一つかと思われる。
原始においては文字や言葉の発明も未熟であり、古代、中世と人間の識字率はとても低かった。その為、絵を使い図解説明する事は王道なやり方である。
特に長く難しい伝承や伝説を、文字の代わりに絵を用いて教えを広めていった宗教画は、美術史の中でも大きな一派を占める。
目に見えぬ神を筆で描き起こし、ノミを振るい木や石に彫り込む。偶像崇拝である。身近で分かりやすい偶像に祈りを捧げる行為は、子供から年寄りまで、なんの教養もなく出来るやりやすい手段だ。
って事を今回のテーマとした俺は、人類の文化、芸術方面の発展を重視した世界を創っている。
油絵等で神々しく威厳に満ちた俺の姿……ステンドグラスで輝くのもいいし、神殿や教会の天井や壁中に天地創造について描かれるのも悪くない!
俺は何時もの様に俺教を普及させていたが、今回は小さな島国しか上手くいかなかった。まぁ、その島国は中々特殊な文化発展をして、嬉しい事に芸術・工芸などの分野が栄えたのだ。
残念な事をあげれば、この国は元来自然崇拝の多神教の国であった。俺もその一つとして取り込まれてしまったのは頂けないが、ちゃんと俺を祀る建物とか、像とかが出来ているので目を瞑る事にしてやったのだ。
細かいことはさて置き、長い間その国は平和でのんびりしていた。他国との戦争が起きて負けた後は、国の多くが焼け野原になったのだが。その後の発展は目覚ましく、戦争も行わなかった為、技術や文化、様々な分野の発展が行われた。
俺の気にしていた芸術分野も斬新なものから古典的なものまで、数え切れない分野に分かれてくれたのは嬉しいことだな。
そして、現在この国で最も特徴的な芸術分野がいわゆる「オタク文化」という奴である。
ある街では二次元の美少女や美男子のポスターや広告で溢れかえり、街の多くが電気屋とアニメ・漫画・ゲームショップ。という……この街は人間が住むのにはどうなんだろうか……?みたいな地域もある。いや、まぁ以外と美味い飯屋もあるんだけどさ。
こんだけ娯楽に溢れた世界を創造したのは初めてだったんで、堪能しない訳がないよな。
俺が実体化して世界に行くには、その世界の存在子で依り代となる体を創り、それにバーチャルダイブする事で、俺は創造した世界での感覚を体感出来るわけだ。
天地創造で物を創る加工経費の他に、天啓や降臨でのバーチャルダイブは神の干渉経費として、こちらに当たる。まず新人は世界を創る事が優先なため、干渉経費は低予算でスタートする。
予算的に短時間になってしまうが、少しでも実体化して動けるのは楽しい。
俺は今回布教とかそっちのけで、ゲーセン行ったりエロ漫画買ったり、オタク文化を楽しんでいたのだ。
え?金?そんなの創るから豪遊だぜ。そりゃ。
とある夏の猛暑である。俺はある建物を眺めていた。大きな会場施設であるここには、何十万人という人間が行列を作り建物の中に入って行く。モニターから観察してると、蟻の大群を遥かに越す様な、物凄い行列だ。
同人誌即売会……様々な人間が漫画や小説、グッズ等を発表して売る場らしい。内容はオリジナル作品の一次創作から、二次創作、全年齢対象に成人向けまで。中々にごった返した世界である。
全部で三日に渡って開催されるそうで、俺は三日目に実際に行こうかと思う。全日降臨してみたいが時間をそこまで使えない。こうやって上からモニターで眺めて、ズームも出来るんで見てる分には同じだろう。
コスプレイヤーの撮影会場では本当に色んな格好で、これまたクオリティの高い手作り衣装を身に付けた奴が沢山いる。周りでカメラ片手にうろつく男が邪魔だとか思いつつ、どんなコスプレイヤーが居るか調べるのは、神として文化を調べる俺の仕事だから仕方ない!そう。じっくり観察するのは研究業としての仕事だからな!
お、あの胸と太ももの露出度はけしからん。もっとやれ。見えそうで見えないってのは、もどかしいけどそれが良いのだ。ギリギリなところで見せない!見たいけど見えない!矛盾してるけど、ここに心躍るものがあると思うよな。
そんで、マジで可愛い娘もいるじゃん。制服のスカートとニーソの絶対領域!!これ名付けた奴天才だと思う。制服はセーラー服もブレザーもどっちも可愛いのだが、ツインテールとか、ポニーテールとかと合わせたら反則だろう……!大人しめな眼鏡っ子も捨てがたいのだ。本当に年齢もキャラと同じ程度の美少女がやってたりして、これは見ているだけで鼻の下が伸びてくる。同じ服装なのに些細な着こなしが萌えを作ってるんだな!って思うわけだ。
SF系のスーツ衣装は肌の殆どが隠れているにも関わらず、ボディラインが強調されていて、肌に密着してる生地がなんとも艶かしい。スタイルいい奴しか着こなせないからな。胸の辺りは装飾が多いのだが、くびれや尻、足のラインになると生地だけの部分が多くて体の形がよく分かるのだ。言わずもがなに触りたい。撫で回したい。
和服系衣装は首元が大きく空いていて……そこから覗く白くて細い首筋とうなじがだなっ!!ハァハァ……立ち振る舞いも静かで色気のある人が多いし、着崩して胸元が大きく空いてる衣装の奴もいるのだ。上から覗く生乳!!デカイ生乳!!
フリフリしたヨーロッパ風の衣装は、コルセットがくびれを作りつつ、こちらも胸の大きさが際立っている。ちなみに巨乳も貧乳も等しく愛するべきだと俺は思っている。控えめな胸とその衣装の子見逃せない。つるぺたもまな板も良いじゃないか!初々しい少女と大切なのは感度!
「デュフフ……」
おぉっと、変な声が出てしまった。何だ今の。
さてさて、次に端から各スペースを眺めて行った。様々な作品を題材にした創作物が沢山並んでいる。その中のスペースに、歴史上の偉人や著名人がモデルらしい場所があった。
お!俺に似た中々美しい絵も有るではないか。
どれどれと、一人の娘が本を手に取ろうとしている場を見てみる。
なにやら、俺に似た人物と他国の神に似た人物が表紙を飾っている。名前も俺と一緒だ。神を題材とした本か?
そのまま俺は、その娘がパラパラ本をめくるのをモニター越しに後ろから眺めた。その続きには俺が…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。
俺は今すぐこのスペース付近にいる女性達の記憶と欲望を、全て消し去りたい衝動に駆られた。いや、むしろこの建物に地震を起こし、倒壊さた方が効率が良いかもしれない。
「この新刊お願いします。……私、……さんのお話凄く好きで。いつも応援してます!」
い……いや………いやいや、そこの娘よ落ち着け。俺も今一緒に見たが、山もなく落ちもなく意味もなかった気がするぞ?お話?え?お話??
「それと、やっぱりこのツンデレ受け……良いですよね!!嫌がっているフリして、でも大好きな人にはちょっと素直になっちゃう……本当、主人公の感情が凄いよく出てるって言うか……!!」
あ"ーーー!!あ"ーー!!!!!あ"ぁ"あ"あ"ぁ"ーーー!!!!!!
なにも!なにも聞こえない!!!!聞こえない!!!!俺は!!見てない!!そう!見!て!な!い!!!
俺は両耳を両手で塞ぎ、机に頭をガンガンぶつけた。全身の鳥肌が止まらない。
少し落ち着いてきて耳から手を離してみたが、さっき見た漫画が脳裏を過る。オマケにもう一発、机に頭を力なくぶつけた。
恐る恐る、隣、その隣、さらに隣と、他の女性達の描いた漫画などをチラ見してみた。やはり先程と同じ様に……俺に似た人物は裸で組み敷かれているな………俺は美少女に抱き着かれたいんだが……そこに居るのは紛れもなく……だな……あれだな……。
いやもう、お目当てだった成人男性の素敵な本が次ぎに控えてるとか、本当どうでもいいから、この場の全てを塵一つ残さず消し去りたい。
ていうか、よく考えてみるともう既に同人ショップ等と言われる店や、ネット通販なんかで扱われる準備も出来ているんだろうから、最早この呪われた島を海に沈めてしまうのが良いのかもしれない。
うん。そうだ。これは世界平和の為にとても必要な行為だ。
俺はうんうん。と頷き天災のプログラムを作動させた。
程なくすると大きな台風が押しよせ川が氾濫し、洪水が起き島国は壊滅的な被害を受けた。
さっきの建物も水害によって酷い有り様となったのだ。ゲームとか面白くて少し惜しかったが、仕方ない。平和には犠牲が付きものである。そう思ってディスプレイをそっと閉じる。
後日見てみると災害大国でもあった島国はとっくに復興しており、俺のあの様な本も復活して全世界にばら撒かれた後であった。
隣でぷすすっと笑う先輩の足を、思いっきり踏みつけた。
多分、この世界の腐女子の方々には
主人公ツンデレ受けってのが王道ジャンルであるんじゃないですかね。
次回18話更新は
4月4日(土)深夜0時頃を予定しています。
次回は主人公の得意分野の話。




