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15 行為による集団

 前回は先輩のおかげで台無しになってしまったが、最近は人類から信仰を得ることに少しづつ成功している。なので今回は、少数でも良いので俺教とその信者を確立させようと決めた。

 そう、少数精鋭。今回は神が与えた能力、超能力者の世界にしようと思う。



 超能力も魔法と同じで不可思議な現象を起こせる分野の一つだ。例えば同じ火を起すにしても魔法とはアプローチが少々違う。


 魔法では呪文、言葉によって性質のみの物質。俺達から見れば、存在子(そんざいし)に目的を与えて動きを誘導する。得手不得手はあるものの、魔法の才能……つまり存在子へ影響を与える言葉や術式の訓練次第でオールジャンルを習得できる。


 一方超能力では自身の脳波を物質や存在子と同調させて動きを制御する。呪文詠唱も無いので、呪文が開発されてない事柄まで個人の努力で操れるが、大抵発しやすい脳波が限定されている為、単一現象に特化される。


 特別な能力を持った人間を創り、その神となる。そして、そいつらの能力を駆使して世界を牛耳って貰うまで出来れば万々歳だ。

 よし、今回こそいい計画だな。後は人類の微調整を丁寧にやればいい。そして、小まめにその能力を活かすよう天啓を与えて、力と野心、俺への信仰を育てよう。



 俺は丁寧に能力調節を設定した。能力が発動しなくては何の意味もないからさ。結構長い時間プログラミングを続け、大分集中力が切れてくる……。

 しかし、もうすぐ完成なんだ。確認しながら作業をしているし、間違いも無い。このままやりきってしまおう。そしたら後はプログラム開始を行えば観察しつつ休んでいられる。あと少し。あと少し……。



「おーい、そろそろ昼飯でも食いに行かないか?この前言ってた美味いところ連れてってやるよ」

 突然、個人研究室……俺の部屋の扉が開いて先輩が顔を出した。

「あ、はーい。今終わるんですぐ行きますねー」

 そう言って、先輩の声の方に顔を向け返事をする。よそ見をしながらプログラミングのラストを設定し、Enterを押していた。

 これが、今回の大きな原因だったのだ。あーーあ…………





 超能力者達が産まれる世界だが、皆が超能力を持っても特別感がないので産まれる確率を少なくした。そして、よそ見のせいで産まれる地域をランダムにしてしまったのだ。




 俺の眼下では、一人の子どもが泣きながら歩いている。十歳いかないくらいの少年だ。

 学校帰りの様で、人の少ない道をとぼとぼ歩いている。公園が近く、街路樹を隔てた広場では子どもの笑い声が聞こえてくるのが、正反対に見えた。

 後ろから何人かのガキが追いかけてきて、遠くから石を投げた。奴らは絶対に近づかず、離れた場所から罵声と石や小枝を投げつける。罵声は笑い声と混ざって、少年を馬鹿にして面白がり、的にしながら、またゴミを投げつけた。

 少年はそれに黙って俯き家路を急いだ。そう、彼は超能力者だからだ。



 国でも地域の中でも少数派の彼らは、多くの人間達から忌み嫌われ疎まれ、追いやられる存在になってしまった。どこに居ても居場所は無く、家族ですら自分には無い未知の力を持つ子どもを腫れ物のように嫌悪し、厄介な者と接していた。

 彼らは社会、人種、血縁様々な面において差別を受けていた。


 そんな状態にしてしまったので、流石の俺も今回は、丁寧に彼らの夢に現れて生きるよう語ったりして励ましてる。

 そうして段々と彼らは仲間を見つけ、彼ら独自のコミュニティを地域ごとで作るようになっていったのだ。その中でも、超能力者の多い地域が一箇所あった。




 この星では大きな大陸を一つ創ってある。それは大雑把に言えば瓢箪型で、その瓢箪のくびれ部分に能力者は多かった。

 さまざまな地域から追いやられた彼らは、中間地点のその地域に少しづつ集まり、ひっそりと息を殺しながら、仲間達と神から与えられた能力を救いに生きていた。


 コミュニティも安定したものとなってきて、ゆとりが出て来た彼らは能力の訓練に励んだ。唯一の仲間との繋がり。自身のアイデンティティであり、大勢の人間から身を守り、逃げて生き抜く方法だったからだ。


 俺は時折そのコミュニティに降臨して、彼らにその特別さや生き続ける事について話している。女子供老人に至るまで、その場の全てが俺の話しを縋るように聴く。欲しかったもののはずだが、何だか少し苦しく感じる気がした。




 彼らの住む地域は先程も言ったが凄い重要な地域である。西側と東側の大陸を行き来するには必ず通る、流通の要なのだ。

 そんな素晴らしい地域を他国が見逃すはずも無く、様々な国がものにしようと頻繁に争うが起きたりもした。それによって、能力者のコミュニティはまたもや散り散りに追いやられてしまったのだ。


 分散された彼らは能力を駆使して、なんとか生き残る者もいた。そして、能力の精度を上げ続け、仲間と再会する事を胸に追いやられた地域に少しづつ戻って来たのだった。

 そこには既に他民族が多く住む場となっていたが、彼らは溶け込むよう努め、コミュニティを再度立て直してたのだ。




 しばらくそんな期間が続くと、世界規模の戦争が勃発した。

 大陸の中間地点であるこの地域の重要性は益々増し、戦争主要国ではこの地域をどうするか話題になった。その中の一国が、同盟国全体で管理するよう話を始めた。

 そしてその国は問題の地域に住む民族に、戦争に物資支援の協力をする事でこの地域の支配権を与える事。能力者のコミュニティには、能力者の軍事参加を引き換えにこの地に独立国設立の協力をする事を……ってえええええええっ!?!?!?!?


 いや、まてまてまて、この三枚舌の展開はどこかで見覚えがあるぞ……これはマズイ。非常にマズイ。ヤバイ絶対泥沼化する。だって、三者にそれぞれ違う事持ちかけて、協力したらこの土地をお前の物にしてやるぞ!って約束取り付けてるんだぜ?

 俺は焦った。科学バカなので歴史的な事象には疎いが、これは先日見た歴史資料で似たのを見た事があった。同じような事をした後、酷い国際問題になったはず。

 何が何でもやめさせないと絶対困る。人間もだけど、これ管理する俺が……!




 俺は急いでコミュニティのトップの夢に現れ、この取引の実態の説明をした。

 コミュニティに緊急招集をかけ能力者達の前に姿を現し、この取引に応じないよう指示を出すことにしたのだ。


「未来を知る我には破滅への道が見える。ここで欲望に振り回されてはいけない。場所や人種などは我の導きには関係ない事だ。そのような事にこだわらず生きよ。神の祝福がある。それだけで充分そなた達は、一つのものなのだ」


 流石にここは気合入れて説き伏せたよ。そりゃぁ、今後を考えればぜってーやだもん。


 反発する者も居たが、大多数は俺の言葉に従ってくれて、コミュニティはこの地を去ることを決めた。

 ちなみに天罰として、三枚舌の国には災害を起こしてやった。年間通して雨がしとしと降る国である。量を増やせば一年中水害に見舞われる。

 一年もやれば復興に忙しくて戦争どころじゃないだろう。多分大人しくなった。


 後日、彼らは小さな島国で永世中立国として世界で生まれた能力者達を受け入れ、静かに過ごしたのだ。




 俺の方はと言うと、ホッと胸を撫で下ろしていたのである。

 もしも、面倒くさい国際問題が起きたら?その報告書?いやぁ、怖い怖い。

たまには、神様らしい行動してみた回でした。人間の為であり、管理側の勝手でもありますが。丸く収めるのって難しいですね。


次回16話更新は3月28日(土)

深夜0時頃を予定しています。

次回は主人公が調子に乗ってリベンジです。


次回も読んで頂けると幸いです。

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