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13 神の恩恵

 前回、宗教勢力に降臨したら全く話しを聞いてもらえなかった俺は、他に俺を崇めたくなる良い案は無いか考えていた。

 ていうか、こいつらを創造して生み出しているのは間違いなく俺なんだから、それだけでも十分崇める要素になるのに。やはり、目に見えて恩恵を受けている様に感じない為なのか?


 何か人類にいいものを与えて、それによって俺の素晴らしさを認識させ崇拝させる。今回はそんな感じに行こうかと思う。



 人間が欲しがるものかぁ…………金、名誉、権力……うーーん。これらは国の繁栄や衰退によって目まぐるしく変わるんで、中々安定して出来ないだろうしなぁ。権力や名誉なんかは結局全員には行き渡らない。行き渡ったら全て平等になってしまうだろ?


「うむむむ……」

 そんな事を考えながら、どんな風に崇拝してもらいたいか資料データを漫然と眺めていた。んで、目に止まった。

 神に捧げる物の一つ。酒である。


 美味い酒を作るには知識と技術がいる。さらに硬水なんかのミネラルの多い水源の地域、亜熱帯など病原体が発生しやすい場では生水は飲めない。酒は飲用水の代用ともなり、死活問題として重要な存在だったりする。水よりも保存が効くため重宝される。

 そして、なにより人間ってのは酒が好きである。


 かく言う俺も、好き過ぎて先日酷い目にあった。呑んでいた事は全然覚えてない。先輩が居た気がするが、後はトイレで這いつくばって死にそうだった事までしか思い出せない。


 そうなっては意味が無いので、今回の人類は肝機能や腎臓を中心に高性能にしておこう。脳機能障害、高血圧なんかもあるからそこらも耐久性が良く。暴飲暴食で病気になっても困る。代謝の高いものにして、太りにくい体質に変えていこう。

 そんな事考えながらプログラミングを行った。



 環境は水源を貴重なものに。生水で飲めるものは少なく、雨水や植物から主な水分を確保して貰おうかな。

 地下水は基本的にミネラル分を高くする。亜熱帯地域もあっていいだろう。

 酒の文化が発展しやすいように、穀物や果実類の品揃えを良くした方が良いな。品種改良した特に良い物を発見しにくい場所に置いて、俺が天啓を与えて人間にその場所を教える。神の恩恵として人間に与えた物って訳だ。


 最後にアルコール発酵が行いやすいように、メインの酵母や製法を考えるか?ワイン、ビール、清酒、ウイスキー……どれにするべきかなぁ……。

 人類は身体強化をメインにしたので、あまり科学的発展は期待していない。酵母の研究もそんなに捗らないで、経験と勘で作る職人技な発展が強いだろう。

 なので果実酒をメインにするか。果実を潰して放置すれば酒が出来る。まずは基本的なその辺から。麹作ったりだとか、蒸留したりだとかまで出来るかは………ま、俺のアドバイス次第で出来るようにすればいい。


 って事を考えながら、環境設定をちゃっちゃとやってやった。品種改良種のデータを酒用に厳選して入れる。出来上がったプログラムを確認して、俺はEnterを押したのだ。





 さて、酒の発見とか初期の頃はぶっ飛ばして、今の話しをしよう。俺の創った酒豪人類は中々いい感じに発展している。


 俺の天の声にて導き、授けた品種改良の果実や穀物は酒文化の発展に大きな影響を与えたし。具体的な形として俺を象徴する物も出来たので、分かりやすかったようだ。

 酵母も多く分布させておいたおかげで発酵文化が発達した。保存方法の代表が発酵になったので、保存料等の添加物の研究は進まず、俺の予想した通り職人技が光る食文化の豊かな文明へと育っていったのだ。


 美味い酒は神からの恵み。として酒蔵の人間達から信仰が始まり、人々に酒が普及してくると民衆にも信仰は増えていく。酒を飲む時には神への感謝を述べた後に宴を始めるなど、生活に俺という存在が根付いてきたのである。



「ふふーん♪良いぞ良いぞ〜」

  俺はかなりいい気分でその世界を眺めた。

 まぁ、出来たら唯一絶対神として君臨したいところだが。あまりギチギチと縛り付けてもいけない。少しづつ浸透させていくよう、ここは我慢である。

 もう少ししたら、俺の姿を見せて俺教をどんどん普及させよう。今後の人類の発展が気になり、俺は時間の速度を早めつつ、今日はこのくらいにした。





 翌日機嫌良く研究所に来た俺は、早速酒豪世界を眺めてみた。

 相変わらず発酵文明を発展させている。なにやら、色んな酒蔵や酒造を行っている所で神を祀る祠なんかを建てる場所が出てきた。

「おっ、熱心で感心だねぇ」

 これは俺が出て来たらどんなに喜ばれるだろうか。鼻歌交じりに他の場所も見てみると、石像まで造っている奴もいるではないか。

 まぁ、姿を見せていないので本来の俺の姿と違うかもしれないが、俺を象徴する像である。ぬふふふふっ。良きに計らえ。


 俺はどんな石像が出来るのか楽しみで、その場所を眺めていた。

 彫刻家によって石はどんどん削れられ、形があらわになってくる。身長の高い男性像の様だ。髪は短髪で綺麗にまとまったオールバック風。なぜか、この文明には生まれていないはずの、スーツの様な服装をしている……太めの眉に、生真面目な目……そしてフチなし眼鏡……。

 すぐさま他の地域を確認する。



 そして俺は部屋を飛び出して、全力疾走で五部屋隣の部屋に勢い良く入った。

「先輩!!!なにしてんすか!?!?」

 そこには、キョトンと呆気にとられた先輩が居た。

「んん??なんだ?」

「なんだじゃないっすよ!俺の天地創造に何してくれたんすか!?」

 あの石像は確かに先輩そっくりな顔であった。他の地域では神の図として先輩の似顔絵まであった。


「あぁ。お前この前、英雄の再現に落ち込んでいただろう?今回も歴史介入をしてるみたいだから、手伝ってやろうと思ってな」

 このお節介めええぇぇっ!!!!

 つーか、前のやつまで覗いてんじゃねぇよ!!!!

「うっわぁ……なにしてんすか……マジで………あー……ないわぁ……」

「発酵文化の発展だろ?流石に俺でも知識はあるぞ。ちゃんと次の段階に行けるよう天啓を与えておいたし、これで順調に発展が進むな!」

 どこ吹く風で先輩は「頑張れよ!」と檄を飛ばして俺の肩を叩いた。


 俺はと言うと「あーー……はい。もういいっす……次はやる前に、絶っ体っ!!……教えて下さいね……」とジト目で睨みつけてやるしかないのだ。

「なんかあったら言えよ〜」

 とお気楽な返事が返って来た。誰が言うかぁっ!!!!


 そうして、酒豪世界は先輩を酒の神と崇め、美味しい美味しい美食の世界へとなりましたとさ。めでたしめでたし。



 俺は報告書を仕上げて大きく舌打ちをしてやった。

SF描写解禁になったので、主人公がどうやって天地創造するか、少し書けるようになりました。

主な作業方法がキーボードで手動なのはアナログ感がありますが、全部、脳波制御でイメージするだけで出来てしまうと、作業してる感じが少ないのでこんな風にしてみました。


次回14話「神の休日 2」

更新は3月21日(土)深夜0時頃を予定しております。

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