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10 楽園とその期間

 頭痛で頭がガンガンする…………昨晩の記憶がほとんどない。猛烈な吐気もある。薬とか飲む暇もなく、胃の中を戻し続けた。もはや胃液しか出ない。吐く物が無いのに、胃液から食道を守るために際限なく唾液がダラダラ分泌されている。

 脱水症状なのか眩暈がしてきた。しゃがんで座り込んでいるのに、地面が揺れている。世界がグラグラする。頭の中がわんわん掻き混ぜられている。水分補給に水を飲むと、胃が刺激されてまた吐いた。


 死ぬ………これは……死ぬ…………。


 そして虚ろな意識の中、俺は床に倒れて意識を完全に失った。




 目を覚ますと、冷たい床の感触が心地いい。

 ズキズキと頭痛は続くが吐気は収まっていたので、ぬるま湯をちびちび飲んで少し落ち着いた。神様だって二日酔いくらいする。


 先輩から連絡があった。今日は動けないとだけ伝えておいた。


 そのままベッドで何時間ごろごろしていたかは分からない。食欲なんて無かったから、水分だけで過ごした。






 翌日、とりあえず峠は越したので天地創造に取り掛かることにした俺。


「ゔあ"ーー……………やっぱり……無理……」

 体調は万全になってない。だぐだ項垂れたり、上を仰いだりしながら今回の天地創造に手が付かないでいる。

 なんか戦争とか起こすのも面倒臭いし、知的文明とか疲れるし、原始的な感じでいきたい。もふもふの動物達は先輩が変な目で見てくるし、前回やったし、違うものがいいかもしれない。


「こう……癒し系で…………気持ちが落ち着くって言うか……」

 そんな事を考えていると、ふと、ふよふよしたある生物を思い出した。

 クラゲである。


 あー………星全部水槽。ってのもいいかもしれない。


 何と言っても星に海作れば終わりだ。大陸も要らないし、複雑な気流も気候変化も考えなくていい。とても楽チンだ。

「あんまりデカ過ぎず、可愛い程度で…………」

 と言う訳で、俺は心癒されるアクアリウムの制作を始めた。




 暖かな日差しが降り注ぐ海の中は、キラキラと水面が輝いていた。水面は輝く膜のように揺れ、射し込む光は浅い海底を照らしている。

 海藻は光に照らされ、黄緑に光ってゆらゆら揺れ続けた。

 海藻は風にたなびく林のように、その中から数匹のクラゲが出て来るのが見える。ふわふわと海流に流されながら漂う姿はとても心が和むもんだ。クラゲもまた光が当たり、キラキラと傘や触手の透明感を増している。

 目的もなく、たおやかに流れ続ける姿は心が安らいでくるようで……。


「なーんか……これは………とても、眠くなる…………な……」

 そんな平和な世界を眺めていると、段々と睡魔に襲われ出した。まるで自分もその暖かな陽射しの中にいるように、ほんわかした心地よさに包まれていく。そんな事を感じるうちに、俺はすいま、に……ひき…………こ……






 はっと目を覚ました。

 口から涎が垂れていて、どんだけ爆睡してたんだ。とか思いつつ、クラゲ世界を急いで覗く。


 そこには先ほどまでの優雅なクラゲ世界は無く、エチゼンクラゲだったか。それ以上の馬鹿でかいクラゲが星中の海にところせましと大量発生していて、他のクラゲを圧倒しててるっていう。

 あーあ。虫もだが、数が多くひしめいているものって、なんでこんなに気持ち悪いんだろうなぁ………。


 せっかく作った安らぎのアクアリウムは、夢の様に瞬殺されてしまったようだ。全くもって儚い。そして現実はしぶとい。


「いい夢見れたと思ったんだけどなぁー」

 まだ寝足りない俺は目を閉じて、波の音だけが聞こえる世界に耳を傾けながら夢を彷徨うことにした。

主人公の立ち直り回終了です。

次回から、いつもの調子に戻っていきます。


次回更新は3月11日深夜0時頃を予定しています。

今後は毎週水曜、土曜の週2回更新となります。

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