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01 神は我々を神に似せてつくった

初作品です。拙いですが、よろしくお願いします。

 今日、僕は兄さんと一緒にお使いに出ていた。家から百キロほど先にある鉱山で取れる、貴重な鉱物を取りに来ていたのだ。採掘も終わって、小さな袋いっぱいに鉱物を詰めた。

「お前は手先が器用だな。私は学問ばかりでどうも細かい事が苦手だよ。いや、おかげて助かった。この石は割れやすくて、掘るのにコツがいるんでな」

「お安い御用だよ。兄さんが居なかったら、どの石か分からなかったもん。でも勉強になったよ。百聞は一見にしかず。見た目までは聞いても良く分からないからね」


 袋を持って採掘場の穴から出た。今日は爽やかな晴天で気持ちがいい。やっぱり空は晴れに限るね。暗い所は好きじゃないや。

 兄さんと僕は背中の翼を広げて飛び立った。上から降り注ぐお日様がとても良い。どんどん元気になっていく。


「帰り道が退屈だよ。なんかお話しして。兄さん」

 百キロも飛んでいるのは、ちょっと飽きてくる。僕は兄さんにお話しをねだった。


「ごほんっ……では我が家族の成り立ちについて講話してやろう」

「えー、それはいいよー。一五六四年七月と十日前に父さんと母さんが生まれた時から、全部暗唱できるって。この前の勉強会で聞かせたでしょ?」

 兄さんは家族の歴史が大好きな人だ。そして僕達、弟妹にそれを聞かせて教える先生でもあるのだ。

「では、辛幸会議が何かだけ答えなさい」

「えー、辛幸会議とは、家族間で意見が割れたり、摩擦が生じた際に家族全員で開かれる会議の事です。お互いの意見を尊重するため、出された意見に歩み寄り、みんなで辛さも幸せも分かち合う事を目的としたものです」

「良し。その通りだ」

 兄さんは満足そうに頷いた。これは僕達家族の大切な決まり事。それは分かってるんだけどさぁ。


「ねー、他の話ししようよー」

 僕達の住んでいるこの大陸は本当に何もない。平地が延々と続いて代わり映えない風景は、上空から眺めてても全然楽しくないよね。たまに、丘があったりするけどさ。さっきの採掘場みたいな所は本当に珍しくて中々来れない場所なんだ。


「ふむ……そうだな。……この前聞いた話しなんだが、どうやら近々、我々の本当の生みの親に会えるかもしれないのだ」

 少しもったいぶって、兄さんはそんな事を言った。凄い事を教えてくれる時、兄さんは髪を少し触る癖がある。僕より深い緑色の髪は風にあおられて、前髪がボサボサになっている。

「親?父さんも母さんも家に居るから、いつでも会えるじゃん」

「それが違うのだ。父さんと母さんを産んだ人だ」

 兄さんは大きく首を振って否定した。


「父さんと母さん達は気が付いた時にはこの大陸に立っていて、それ以前の記憶も無い。その場にはもちろん二人を産んだ者も居ないんだ。それはお前も聞いてるだろ?その、父や母を産んだ者に会う計画がもうすぐ完成し、産みの親に会えるそうだ」

 僕はそれを聞いてビックリした。やっぱり凄い話しだった。父さんと母さんを生んだ人がいる!?


「この大陸はみんなで歩き回って空も飛んで、海の底も泳いで、知らない所はどこにも無いって言ってたのに!その人はどこに隠れていたの!?」

 そうそう。僕が生まれる前に家族みんなで、余すところなく世界を見て回った。と、父さんや母さんから聞いて、話は沢山知っている。どこかに暮らしてるなんて聞いたことが無い!

「なんと、この大陸にも海の中にもどこにも居ないそうだ。私も他の兄弟から話しを多少聞いただけだが、こう言っていた」

 兄さんは一呼吸おいて、思い出しながら話しをした。


『我々が住む星、さらにその星々が集う空間のさらに先にある場所に産みの親は居るの。親は他の場所から我々を見守っているようで、我々を見ようとする時にだけ我々の空間に干渉し、それによって空間にある様々な源の力が歪んだり広がったりするわけ。それを観測し続けた結果、親が我々を見る場所が特定でき、親が我々を見る時に同じような干渉をこちらからも加える事により、親と連絡が取れるだろうね』

 多分この話し方は、技術の研究が好きなあの姉さんだろう。

 僕はまだ習っていない色んな事を調べたり、考えている人だ。干渉とか源の力とか、よく分からない言葉が出てくるけど、そのうち教えてくれるのかな?


「だとな。私たちが作った言葉が親に通じるのかは分からんが、話しかける事が出来るようだな。姿まで見れるのかは聞き忘れてしまった」


「空の星よりずっと遠くの場所!?凄い!ねぇねぇ、その親って人にはいつ会えるの??」

「話によると、次の季節の終わりらしい」


 父さんと母さんのさらに父さんと母さんがいるなんて。考えたことも無かったよ。次の季節の終わり………早く会ってみたいなぁ。そうしたら、その人のお父さんとお母さんも居るんでしょ?

 あれ?でも、子供が産めるのは父さんと母さんだけだよね?ん?その人はじゃぁ、どうやって生まれたの??その人は父さんと母さんを産めたけど………あれ?うーーん。なんだかややこしくて分からなくなってきちゃったなぁ。


 まぁ、いいや!後で家に帰ったら聞いてみよう。会った時にその人に聞いても良い。そんで、家族皆で住みたいよね。一緒に暮らすのは楽しいし、僕たちはいつも一緒だもん。


 そんな事を話していたら、家の上まで来ていた。足元には何十人も兄弟姉妹達が僕らを見つけて手を振っているのが見えた。





 それから話しの通り、次の季節が終わる頃に僕らは産みの親に会えた。あの話は程なく家族の皆に詳しく話され、その日を皆楽しみにしてたんだ。

 僕達の親は男の人だった。僕らとよく似た見た目だけど、髪の色が緑じゃなくて真っ赤だし、見た事ない白い服を着ていたし、羽は生えてない。

 

  父さんと母さんを始め、僕ら兄弟姉妹皆で家族一緒に暮らそう。皆と一緒は楽しい。と呼んだのだが、断られてしまった。

 どうやら、僕ら以外にも他の場所に家族が居るらしく、僕らと一緒に居続ける事は出来ないそうだ。辛幸会議を開くまでもない。少し悲しいけど、僕らは約束通り全員我慢した。


 男の人は終始なんとも不満げな顔をしていた。きっと産みの親である彼も悲しいのかもしれない。だって、折角家族に会えても一緒に過ごせないんだもん。僕だったら悲しいよ。

 また、時々見に来るからその時に話そう。そう言って産みの親は消えて行った。


 親が居たはずの空は元の青空にもどっている。さっきまで親の周りには歪んだような何かの裂け目が見えたのに。背中の翼を広げて近くまで行ってみたが、切れ目はどこにもない。


「ま、いっかぁ。これからまだまだ会えるんだし」

 お日様はとても美味しいし、気をとりなおして僕は皆の所に降りて行った。

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